ある夏の日
初めてなのでいろいろとわかりづらいかもしれないですがぜひ読んで下さい。
自分とは違う遠い空間で銃を撃ったような音が聞こえた。
俺はどこか体にだるさを感じながら発砲音のした方を見る。
直線になった真っ直ぐな道を7人の男子が走っているのを見ながら俺は隣の芝生で横になった優に話しかける。
「あと何分で招集時間っていう奴になるんだ?」優は寝転んだ状態で腕時計を見ると「あと15分くらい」と淡々と答える。
俺は優と同じ様に寝転ぶと「時間になったら起こしてくれよ」と言うと優が何かを言っているのを無視して目を閉じた。
今日は中学生の市陸上大会だ。
俺、橘 亮司はハンドボール部の部員で普通の学校であれば全く陸上に関係を持つはずがないのだが俺が通う中学校は例外的に掛け持ちを認められる人間がいた。
どうやらバスケ部顧問で体育教師の桑田が優秀な人材をバスケ部に入部させたいがために作ったルールだという噂が俺達の周りではあるが俺には関係ないと思っていた。
関係ないと思っていたある日、ハンドボール部の練習が思いのほか早く終了したため、陸上部の優を待っていると体操着姿の優がこれから100mを計測をするという。
面白そうだと思った俺は冗談で「俺も計ってもらっていい?」と頼んで陸上部が見ている前で計ってもらった。
そのタイムは陸上部で5番目に速く、陸上部からは勧誘され、顧問からは半ば強制的に入部させられ今に至る。
ちなみに優は陸上部というか、俺達の学年でトップ3に入る程の実力者だ。サッカー部の原、バスケ部の水野と常にタイム争いをしている。体育祭の学年別競走は一種の名物と化している。
体を揺らされ目を開けると雲に隠れていた太陽が隙間から顔を覗かせ地面を照らしていた。
後光の様に太陽を背負った優がニヤりと真っ白な歯を見せながら「時間だや、そろそろ行くべさ」と立ちながら言う。
寝転んでいた芝生から学校のテントへと向かいゼッケンが付けられたユニフォームとスパイクを持っていくと招集場所へと向かった。
競技場の管理棟に付けられた時計を見るとまだ午前の9時過ぎだった。
優が俺に話しかける。
「どう?やっぱり初めてだと緊張する?」
「緊張なんかするかよ、するとしたら告白と受験くらいさ」
「告白ってまだ里奈ちゃんに告白してないのかよ」
「当たり前だろー!本当に俺のことかどうかも不明なのに勘違いして俺が告白して振られたらやってらんねーもん」
実は同じ陸上部の坂本里奈が俺のことをどうやら好きだという。中1の時に幼馴染みと付き合っていたが引っ越すと同時に自然破局して以来1年近く彼女はいなかったが特に気にしていなかった。その時は俺から告白したがどうもあの緊張感は苦手だ。
「ぜーたくな野郎だ」優が呟くのを上の空で聞き流した俺はスパイクの点検、ユニフォームのゼッケン番号の確認と走る組とレーンを優に教えてもらいながら確認するとランニングウェアを脱いでユニフォームを着ると上にウェアを着なおした。
軽くアップとストレッチをすると100mのスタート地点周辺で待機することにした。
優が2組5レーンで俺が8組2レーンだ。
少し優と喋っていると突然優が真顔になる。
「どうした?」と尋ねると
「なぁ、折角だから勝負しようべ」ニヤりとしながら優は言った。俺も釣られてニヤりとしながら「負けたら?」
優は少し考えると「俺が負けたら刻パン屋のメロンパンでお前が負けたら.......。」次の優の言葉で俺はスイッチを入れる。
この勝負は絶対に負けられなくなった。
そんな恥ずかしいことは出来ないし、やる訳にもいけないからだ。
太陽を隠していた雲はいつの間にか遠くへ流れていき跡には遮るものが何も無い青空が広がっていた。