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親衛隊による警告

 *猿渡林 side



 ……あの転入生のせいで隊長が停学になった。

 昨日、親衛隊会議が行われたのだが、隊長は停学中だからスマホで参加したみたい。

 「あの転入生……、隊長は悪くないのにっ」

 隊長と同じクラスの、高等部生徒会副会長親衛隊メンバーである、伊東未那イトウミナ。通称未那ちゃんが、怒ったように声を上げる。

 「理人様が、あんな転入生のせいで停学なんてっ」

 「しかも理人君が全て悪いって言い張ってるんでしょ、あのオタク!」

 「理人さんに殴りかかっといて謝りもしないなんてっ」

 皆が次々に声をあげる。

 その気持ちわかる、僕も隊長を停学にした転入生に怒りを覚えずにはいられない。

 僕たち生徒会親衛隊は僕も含めて隊長を慕っている。大好きな隊長があんな奴のせいで退学になるなんて許せるわけがない。

 「昨日、とりあえず警告する許可は出たんだよね」

 未奈ちゃんがそう言って僕に話しかけてくる。

 そう昨日の親衛隊会議で、隊長はとりあえず警告をするようにいった。

 あの転入生に。

 由月様に気に入られた事もむかつくけど一番ムカつくのは隊長を停学にした事だ。

 隊長は優しいのに。

 僕は今月誕生日だから、隊長お手製のケーキをもらったし。

 隊長は親衛隊メンバー全員覚えてくれている。何かあったら慰めてくれる。

 隊長は理由がなければ人を殴ったりなんてしない。

 転入生が、隊長に殴りかかったからなのにっ。

 「とりあえず、愛斗先輩にも連絡したし、転入生を呼び出そう」

 よしっ気合い入れて転入生に文句をいってやらなきゃ!

 転入生……香川操の靴箱に呼び出しの手紙を入れておいた。

 呼び出し場所は裏庭。

 未奈ちゃんと僕でとりあえず転入生に警告する事になっている

 一人で警告にいけたらかっこいいんだろうけど…、一人で誰かに文句いうなんてする勇気僕にはない。

 だから未奈ちゃんについてきてもらった。

 「うぅ、未奈ちゃん。僕ちゃんと警告できるかな」

 僕はこうやって誰かに警告するのははじめてだ。

 失敗したらどうしよう、と思う。

 そんな僕に未奈ちゃんは笑った。

 「大丈夫だよ、林。林が失敗しそうなら僕がどうにかするからね」

 未奈ちゃん……優しい。

 何だか頑張ろうって気分になってきた時、転入生の姿が見えた。

 よし、頑張って警告するぞ!









 *香川操 side


 今朝靴箱をあけたら手紙が入っていた。

 『昼休み裏庭に来い。生徒会親衛隊』と書かれた手紙。

 制裁って奴か。

 上等だ。

 暁達を悲しませる事ばかりしやがって、説教してやる!

 あの佐原って奴も殴っておきながら謝りもしないし! そんな気持ちで昼休みに裏庭に到着した。

 裏庭にいけば、二人の男が居た。

 二人の身長差は20センチくらいあって、背の小さい方は可愛い感じの男だった。

 こんな奴が制裁なんかできるのか、なんて考えながら二人に近づく。

 「香川操!

 生徒会の方々に近づかないで!」

 近づけば、背の高い方の男が言った。

 やっぱり、親衛隊って最低。

 暁達に近づくなって、そういう事ばっかするから暁達に友達が出来ないんだろーが!

 「それに隊……理人君に殴りかかったんでしょ!」

  理人……?

 俺が殴りかかった奴って、あの佐原とかいう最低野郎か!

 人を殴っておいて謝らないあの最低野郎だな。

 「転入生……理人さんに謝ってよ」

 黙っていた背の低い方もそんな事を言う。

 そして、俺は鋭い瞳で睨まれた。

 謝れ? 何で俺が悪いみたいに言うんだよ、こいつら。俺が悪いわけないだろ!

 悪いのはあの佐原って奴じゃねえか! そう思って怒りがふつふつとわいてくる。

 「何で俺が謝らなきゃいけないんだ!

 俺は悪くない、あの佐原って奴が悪いんだ!」

 そうだ、俺は何も悪くない。

 俺が悪いっていう奴が間違ってるんだ!

 俺の言葉に二人は、冷めたような瞳を俺に向ける。

 やっぱり最低だ。

 悪い事してるのに謝らないなんてっ

 「あんた……最低。

 理人さんが優しいからあんたは警告だけで済んでんのに」

 小さい方が何かをいう。

 冷めたような目付き。

 何処までも冷たい瞳。

 何でそんな言われなきゃいけないんだ!

 佐原って奴が悪いのに。

 こいつらも最低だ! 最低な奴は、俺がこらしめてやる!

 そして俺は動き出した。









 *東宮暁 side



 昼休み、生徒会の仕事をこなしていたら何処かに向かっている操を発見した。

 操………、俺様に刃向かった、面白い存在。

 操を好きだと感じたからこそ、セフレだった親衛隊メンバーを全員切った。

 ……そういえば、生徒会親衛隊隊長の、光永愛斗がウザくて殴った時、俺様に意見した奴、最近忙しかったせいで、名前も調べられてない。

 あの隊長が、理人君と呼んでたが……。

 それにしても直哉と螢と義彦の奴……仕事もしねえで何やってやがるんだか……。

 隗と由月はまだ生徒会の仕事してくれているが、ここ数日直哉達は生徒会の仕事そっちのけな気がする。

 ま、直哉、螢、義彦の仕事は由月と隗がやってくれていて、ちゃんと生徒会として活動は出来てるから、いいか。

 そんな事を考えがら、操が居た方へと視線を向ける。

 「―――っ」

 視線を向ければ、二人組に何かを言われている操が居た。

 ―――親衛隊かっ

 一昨日も親衛隊の一人が操を殴ったらしいし…、まあ停学処分になったらしいから、そいつはとりあえず今はどうでもいい

 ――あの二人組、操に手を出したら許さねえ

 そんな思いで操がいる方へと俺は駆け出した。

 操達のいる方へと近づいていくと、徐々に声が聞こえてきた。

 「何で俺が謝らなきゃいけないんだ!

 俺は悪くない、あの佐原って奴が悪いんだ!」

 操の声が耳に届く。

 佐原、って誰だ?

 どうやら操は謝れと言われたらしい、その佐原って奴に。

 「あんた……最低。

 理人さんが優しいからあんたは警告だけで済んでんのに」

 近づいていけば、親衛隊であろうその二人組のうちの、背の低い方の冷たい声が耳に響いた。

 理人……?

 その名前に俺は動きを止めた。

 あの生徒会親衛隊隊長をやたらと庇っていた、俺に意見した奴の名前……。

 もしかしたら、操を殴った生徒会親衛隊メンバーというのは、あの男なのか…?

 そんな事を考えていたら、ゴンッという鈍い音が聞こえた。

 俺ははっとなって操達の方を見る。

 そしてそこにあった光景に俺は唖然とした。

 「林っ……」

 背の高い方の男が、殴られたのだ、操に。

 背の低い方の男は吹っ飛ばされた男に駆け寄ろうとする。

 だけど、その前に……、ゴンッという鈍い音がなって背の低い方も地面へと体を横たわらせた。

 …何で操、あんなに強いんだ?

 「うっ………」

 倒れた親衛隊の一人が、うめき声を発する。

 そんな倒れたままの奴に、操は近づいていく。

 ――俺様は、その瞳が冷たい事に気がつく。

 まさか、と思ってその場に飛び出した時――――操は、林とよばれた男に足を振り上げていた所だった。

 「操っ……」

 俺様は、操の名を呼んだ。

 「あれ、暁じゃん」

 操は、嬉しそうに笑って俺様を見る。

 足を振り上げたまま、笑顔を浮かべる操。

 行動とその表情が対称的すぎて、何処か恐ろしかった。

 「操、お前、何しようとしてる…。その足は何だ?」

 そりゃ、俺様は苛つく事あると誰か殴ってしまうけれど…

 つかよく殴ってしまうけれど…、もう立ち上がれない奴に暴力振るう趣味はない。

 「え、だってこいつら俺が悪いなんていうんだぜ。

 こいつらが悪いのに!だから俺がその性格なおしてやろうって思って!」

 「……そいつもう動けないし、やめとけ」

 何て言ったらいいか、わからなくて俺様はそう言った。

 「え、何でだよ!

 暁は俺の友達だろ! なのに何で、こいつらを庇うんだよ」

 ………しばらく言われた事が理解できなかった。

 俺様は操の事が好きだ。

 それは確かな事だ。

 だけど、というか俺様は親衛隊を庇っていってるわけじゃない。

 「別に俺様は庇ってなどいない。

 ただ動けない奴に暴力振るうのはどうかと思うだけだ」

 「何だよ。俺が悪いっていうのか。俺がやってる事間違ってるっていうのか。

 暁……ひどい!

 俺は……っ、俺はっ」

 操の瞳から涙が溢れ出す。

 俺様はそれを見て慌てて、いう

 「操は間違ってない。だから泣くな

 悪いのは親衛隊だから、な?」

 操に泣いてほしくないのだ、俺様は。

 実際親衛隊は性格最悪な淫乱ばかり出しな…、自業自得だとも言えるし…。

 ……操が少し可笑しい事に気付いた。

 だけど、それでも涙を浮かべて俺様を見上げる操は可愛くて、自分の物にしたいと思った。










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