とりあえず、会長ムカつくよね。
「失礼しまーす」
愛ちゃんから話を聞いた次の日。
俺は理事長室に顔を出していた。ノックもせずに入ったけれど、それはいつもの事だ。
扉を開ければ、
「おー、理人君か」
爽やかに渉兄を縛り上げてる田中さん、24歳と、
「うっ………隆道」
縛られながら田中さんの名を呼ぶ渉兄がいた。
「田中さん、お久!
別に田中さんが渉兄とどんなプレイしようが別にいいけど、俺の前でしないでくれますか。
別に渉兄と田中さんの見ても楽しくないし」
「これからおしおきをしようと思ってね
理人君は、転入生の事を聞きにきたのかい?」
うわ、田中さん超爽やか。
それ渉兄縛りながら言う台詞じゃないよね、確実に。
昨日転入生と渉兄が仲良くしてたって俺が田中さんにチクったからおしおきしてるんだろうね。
何でか全く理解できないけど田中さん、渉兄の事大好きだしね。正直こんな可愛げの欠片もない渉兄となんで付き合っているのか正直よくわからないけれど。
「そうだけど、田中さんは渉兄にまだ問い詰めてないの?」
「ああ。理人君も来ると聞いたからそん時でいいかなと思ってね」
「ふうん、そっか
じゃ、一緒に問い詰めよっか!」
「ああ」
田中さんがうなづいて、二人でニヤリッと笑って渉兄を見れば、渉兄の顔は蒼白に染まっている。
青ざめている渉兄も気持ち悪いだけだよね。というか、青ざめるぐらいなら最初からやらなきゃいいのに馬鹿だなーなんて思う。
「で、渉兄
あの毛玉君が、理事長の親戚って噂聞いたんだけど……。
俺、あんな毛玉君知らないよ……?」
「渉…、理人君に聞いたが、転入生と仲良くしてたんだろ?
膝に転入生のせてたらしいじゃないか。
俺以外に触らせるなと言わなかったか?」
わー、田中さん男前。
田中さんって美形なんだよね。
渉兄以外には基本的に爽やかなんだけど、渉兄に対してはなんかS。
まあ渉兄微妙にMだからぴったりなカップルだけどね。
渉兄なんかの何処がいいかわかんないけど。
「え、てか理人! 何で俺が操膝にのせてたの知ってんの!?」
「何でって、情報通な友人と一緒に見てたもん
隠しカメラから。あ、安心してね、渉兄。田中さんとヤってる最中には見た事ないから。だって俺他人の見る趣味ないし」
にっこりと笑ってそう言えば、渉兄は固まった。
「な、なんて事をするんだっ」
「ふふ
縛られた状態のまま睨まれても怖くないよ、渉兄。そして俺は渉兄に発言を許してないよ
質問に答えてくれる…? 答えてくれないなら縛られてる渉兄の写真を撮って掲示板にはるよ?」
そういえば渉兄の顔は蒼白に染まる。
ふふ、面白い。
「……み、操はっ、あの、その……」
ふふ、何だか渉兄ってば田中さんの事チラチラ見てる。
もしかして、
「原口さん、関係?」
そういってにっこりと笑ってあげれば、渉兄は固まった。
あ、原口さんってのは妻子いるくせに渉兄と体の関係持ってた男。
原口さんと渉兄は今は体の関係ないみたいだけど、渉兄が原口さんと関係持ってたのって、田中さんと恋人関係の時………要するに渉兄浮気してたんだよね。
田中さんは原口さんの事知らないから不思議そうに俺を見てる。
「あのねー田中さん、原口さんってのは…」
「ちょ、理人!」
わーお、渉兄必死。
まあねえ、転入生と渉兄は体の関係持ってないっぽいけど、原口さんとは体の関係あったもんね。
田中さんにおしおきされるのが怖いんだろうね。
ふふ、でも俺に転入生の事渉兄言わなかったんだもんね。ばらしちゃうもんね!
「渉兄邪魔」
とりあえず縛られてる渉兄を蹴ってだまらせる。
そして俺は田中さんの方を向いてにっこりと笑う。
「原口さんはねー。渉兄の浮気相手!
今は体の関係ないみたいだけど…。どうやらあの毛玉君……原口さん関係みたいだね」
「浮気、相手?」
田中さん、怖い顔してるねえ…。
つか渉兄たまに浮気するんだよね!
本命は田中さんなのに。
おしおきは怖いんだけど、渉兄Mだからたまにするんだよね。多分おしおきされたいんだと思う。なんだかんだで。気持ち悪いよねー。
「そうだよ。
ね、渉兄。あの毛玉君、香川って名字だけど、原口さんとどんな関係?」
「……む、息子」
それを聞いて浮気相手の息子普通に学園入れちゃうなんて、馬鹿だねえ何て思って呆れてしまう。
てか浮気相手の息子と仲良くしてほっぺちゅーまでしてるなんて、田中さんにたっぷりおしおきされなさい! としか言い様がないよね。
さて、田中さんがおしおきモードに入りそうだし邪魔者は退散しますか。
「じゃ、俺行くから
田中さん、たっぷり渉兄苛めていいからね!
あ、渉兄。
毛玉君に俺の可愛いわんこ達が軽く嫌がらせはしちゃうかもだけど、手出ししないでね? したら許さないから」
まあ強姦や度の過ぎた嫌がらせはちゃんと止めるけど…。
わんこ達も、憧れの大好きな生徒会達に毛玉君が近づいてるのに苛々してるからね。
自分達は親衛隊ってだけで相手にされないのに、何であの毛玉君はってね…。
ま、親衛隊の会議の時に毛玉君をどうするか決めるんだけどね。
俺は理事長室を出て、廊下を歩く。
授業中だから廊下には人が居ない。
授業受けなくていい権限は特待生と生徒会と風紀だけだしね。
それにしても、毛玉君が原口さんの息子だとはびっくりしちゃったよ。
流石に予想外だったんだよね。何て思いながら廊下を歩いてれば、
「暁様っ」
何処からか愛ちゃんの声が聞こえてきた。
声のした方を見れば、愛ちゃんと会長が視界に映る。
会長と愛ちゃんが並ぶと、20センチぐらい違うから愛ちゃんが余計可愛く見える。
あ、愛ちゃんは俺と同じ特待生なんだよね。
「あの、もう僕を抱いてくれない、ってどういう事ですか…?」
視界に映る愛ちゃんは泣きそうな顔してる。
あ、ちなみに愛ちゃんと会長が階段の下にいて、俺が上から見てる状態なんだけど。
「俺様には操がいるからな。
お前は他の奴にでも抱かれてろ」
……会長、潰していいか。聞いてて思った事はまずそれだ。
つかあの毛玉君会長の物じゃないだろ!
そして何故転入してすぐの毛玉君をそんなに気にいったんだ!
つか愛ちゃんは可愛いんだぞ!
会長以外と体の関係なんて持ってないんだぞ。
死・ね☆って感じしかしないよね、ぶっちゃけ。
「そんな……っ、僕は暁様だけが…」
愛ちゃんが、泣きそうな顔して会長の制服を掴む。
もう、その仕草からして可愛いと俺は思う。
あんなに可愛くて一途な子いないってぐらいの愛ちゃんの可愛さを理解しないとか、会長マジありえない。
「は? 淫乱が何をいう。
俺様は操以外抱く気にはもうなれん
そのへんの奴に抱いてもらえ」
「あ、暁様っ」
去ろうとする会長の制服を掴んだままの愛ちゃんは、行かないでとでもいう風に引っ張る。
それに対して会長の目が鋭く細まった。
そして、ドカッという打撃音がする。
俺の目の前で、愛ちゃんが殴り飛ばされた。
会長に。
馬鹿会長が愛ちゃん殴りやがった…。
「愛ちゃん!?」
俺は思わず、階段をかけおりて愛ちゃんに駆け寄る。
愛ちゃんも会長も俺が此処にいるとは思ってなかったみたいで驚いたように愛ちゃんにかけよる俺を見ていた。
愛ちゃんの頬には、殴られた青い字が出来ている……。
「愛ちゃんっ、大丈夫!?」
「り、理人君……」
愛ちゃんが泣いてる。大好きな会長に殴られて泣いてる…。可愛いわんこ代表が、涙を流している。
「なんだ、貴様。この淫乱の友人か?」
会長は悪びれもなく俺に向かって言葉を放った。
会長は俺が親衛隊の一員だって知らないみたい。
「………愛ちゃんに謝ってください」
俺は言葉を放った。敬語なのは会長が先輩だから。
「は?
そこの淫乱が悪いんだろ」
ムカつく。本当にムカつく。
つか愛ちゃんに淫乱淫乱って、愛ちゃんの名前すら覚えてねえのかよ……。
俺の視線は愛ちゃんに向けられたままだ。きっと怖い顔をしてたんだろう。
「理人君……怒らないで」
愛ちゃんはそういって、頬を押さえながら立ち上がる。
「理人君……」
愛ちゃんが俺を止めるように制服の裾を掴む。
愛ちゃんは俺が会長に怒ってるのわかってて、好きな人と俺が争うのがイヤで
止めてるんだろう。
殴られたのに会長が大好きな愛ちゃんに胸が痛くなる。そして益々怒りがわいてくる。
「何だ、貴様
友人ではなく淫乱のセフレか?」
「そんなわけないですよ。
愛ちゃんは俺の大事な友達です。だから、殴らないでください……。愛ちゃんを」
愛ちゃんは、可愛いわんこ代表。
俺の友達……。
今、俺が切れたら愛ちゃんがますます悲しんじゃう。
それを思って、どうにか怒りを収める。
だけど、これだけは言わせてもらおう。
「会長…。
愛ちゃんは淫乱じゃないですよ。
愛ちゃんは、会長が大好きなだけなんです」
愛ちゃんは会長だけが好きで、だから一生懸命なだけだ。そして、俺は続ける。
「だから、淫乱じゃなくて愛斗って呼んであげてください。
会長が、転入生に惚れようが、構いません。
だけど、体の関係持った人間の名前ぐらい呼んであげてください。
もし愛ちゃんの名前覚えてないっていうなら、会長の方が、遊び人です。人の事淫乱なんて、会長は言えませんよ」
俺はそういうと、唖然としてる会長を放置して愛ちゃんの腕を掴んで、歩き出した。
……殴らなかっただけで俺我慢したよな、うん。
「り、理人君…よかったの?
理人君って生徒会に関わりたくないって言ってたのに」
俺に腕を捕まれている愛ちゃんは、心配そうに言った。
もう、わんこちゃん達本当可愛いの。
俺が生徒会に関わりたくないって知ってて関わらないように手助けしてくれたしね。
生徒会嫌いだし、関わると面倒って避けてたのは事実……。
だけど、
「いいの!
愛ちゃん、俺の大事な友達だもん」
愛ちゃんの事大切だから、いいんだよね、別に。
「理人君……優しいね」
「ふふっ。俺は優しくないよ?
愛ちゃんは友達だから優しくしてるだけ。
俺嫌いな奴には優しく出来ない性格だもん」
てか俺より愛ちゃんの方が優しいと思う。
そんな事を話しながら歩いてれば、目的の場所……保健室に辿りついた。
「千里せんせーっ」
俺は、そう言いながら、保健室の扉を開ける。
「理人じゃねえか…。
って光永…それどうした?」
保健室の奥から出てきたのは、保険医の千里先生。
髪ボサボサで、顔隠れててわかんないけど、千里先生美形だったりする。
俺はよく親衛隊の子を連れて保健室に来るから(生徒会やらに殴られた子)、仲良しだったりする。
「実はさー会長が愛ちゃんの事殴ったんだよね、俺の目の前で……。我慢して殴らなかったけど」
「へえ、よく我慢したな。偉い偉い」
そういって千里先生は俺の頭を軽く撫でると、光永、と愛ちゃんを呼んで椅子に座らせる。
「痛そうだな…。東宮の奴本気で殴ったのか」
「ムカつくよね!
族の総長やってる奴が愛ちゃんを殴ったんだよ」
そう、会長は族の総長だ。
それなのに愛ちゃんを殴ったのだ。
………力加減も考えずに。それだけでも最低だ。
「光永、少し染みるけど我慢しろよ」
千里先生はそういって屈んで、治療をする。
俺は、愛ちゃんの隣に立って、
「痛いの痛いの飛んでいけ~」
って言いながら愛ちゃんの頭を撫でた。
ふふ、俺が怪我すると翔兄がいつも頭撫でてこうやってくれたんだよね!
だから翔兄の真似しただけなのに……
「理人君……可愛い」
って、愛ちゃんに言われた。
「いやいや、愛ちゃんのが可愛いからね! 絶対」
うん。
愛ちゃんのが、絶対可愛いよね!
愛ちゃん、わんこだもん。
絶対ネコの方だろうし!
俺ヤるならタチだもん、狼の方だもん!
「いや、両方可愛いぞ」
千里先生はそう言いながら湿布を貼っている。
「む、俺可愛くない!
だって俺タチだもん」
「そうなのか…。でも、可愛いぞ。理人は」
「千里先生ー、そういう台詞言われても俺嬉しくなーい
俺かっこいい男目指してるし!」
俺は可愛いよりも翔兄みたいな、かっこいい男になりたいんだよね。
「てかさ、愛ちゃん」
俺は湿布の張られた愛ちゃんの顔を見る。
あー、見ていて痛々しい。
やっぱり我慢しないで殴ればよかったかも。そんな思いがわいてくる。
「大丈夫…?」
「うん…」
「会長にあんな事されても会長の事好き?」
問いかければ愛ちゃんは、こくんと頷く。
「……そっか
人の恋愛は自由だし、諦めろとは言えないからさ。
ま、何かあったら俺に相談してね、愛ちゃん。
力になるからさ」
そういって、愛ちゃんの頭を撫でる。
本当は諦めた方が幸せだっていいたいけど……、人の恋愛は自由だから、言えないんだよなあ。
愛ちゃんの頭を撫でていたら、
「隊長っ、愛斗先輩が殴られたって本当ですかっ」
猿渡君が、保健室に慌てた様子で入ってきた。
ちなみに猿渡君は俺と同じ高一。
愛ちゃん、可愛いし優しいから親衛隊に慕われてんだよね。
「うわ、愛斗先輩顔殴られたんですか!?
会長最悪です!」
ちなみに猿渡君は、無口会計の親衛隊のメンバー。
生徒会親衛隊の中にも会長が嫌いで無口書記が好きな、とか副会長は嫌いで双子が好きとか色々あるからねえ。
「猿渡君、心配してくれてありがとう」
愛ちゃんの笑顔、本当可愛い。
会長にはもったいないよね、愛ちゃんは。
あーてか今日俺会長に接触して、普通に意見いったけど、面倒な事になったらどうしようか……。
ま、どうにでもなるか…。
・生徒会親衛隊について。
中等部and高等部の生徒会の親衛隊をまとめて生徒会親衛隊という。
生徒会親衛隊の中で高等部生徒会会長親衛隊、中等部生徒会会長親衛隊などに小さく別れている。
理人はかなりの数がいる生徒会親衛隊の総隊長。
小さな隊には入ってはいない。
強姦や度のすぎた苛めは理人に止められてしていないが、ちょっとした嫌がらせはする。
でも理人のおかげで他の親衛隊(風紀の親衛隊とか一般生徒の人気者の親衛隊)よりは過激ではない。
(てか理人は他の親衛隊メンバーでも強姦しようとしてれば止める人間)
たまに親衛隊会議を開く。
生徒会親衛隊は学園の親衛隊の中で一番大きい。
生徒会親衛隊メンバー以外は基本的に愛斗が隊長と思い込んでる。
とりあえず生徒会親衛隊メンバーのほとんどに慕われている理人はある意味最強。