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訪問です。


 *菅崎真希 side



 ………俺は今学園をサボって、学園から抜け出し実家に来ている。

 何故か、と言われれば、菅崎望―――香川信者と化している弟から会いたいと連絡があったからだ。

 俺も望が香川信者のままは嫌だし、しっかり話し合うために実家に帰ってきた。

 「わー真希ん家でかいね」

 俺の隣にはにっこりと笑う理人が居る。

 実家に帰ると言ったら面白そう、と付いてきたのだ。

 本当、俺ん家がヤクザって知っていながら笑顔で付いてくる理人はすげえと思う。

 「お帰りなさい。若」

 家の門をくぐれば、迎えのヤクザ達が俺を見て頭を下げる。

 俺は長男だから、いずれ組を継ぐ。

 だから皆俺を若と呼ぶ。

 「若、そちらの方は?」

 一人が、理人に気づいて言った。

 「俺の親友だ。

 …ところで望は?」

 「望さんなら中に居ますよ」

 ……俺は理人をちらりと見た。

 理人は楽しそうに笑って頷いた。望が香川信者だというなら、どうにか目を覚まさせたい……そう俺は望む。

 だって理人は本当敵には容赦なんてないから。家の中へと入って、望がいるという部屋に俺と理人は向かう。

 「~~♪」

 鼻歌を歌いながら、平然と俺の後ろをついてくる理人。

 組員を見かけて笑顔で「お邪魔しますー」なんて言ってるんだから流石だと思う。

 ……そうしてしばらく歩いて俺たちは望のいる部屋へとたどり着いた。

 そして、ガラッと扉を開けた。





 *龍宮理人side


 扉を開けた先に、望は居た。

 血を連想させる赤い髪をなびかせ、ピアスを耳につけた少年―――それが真希の弟だ。

 「兄貴に理人さん! 久しぶり」

 俺たちに気づいた望は人懐っこい笑みを浮かべて、俺と真希を見た。

 「久しぶりだね、望

 単刀直入に聞くけど、望は香川操――原口操が好きなの?」

 敵か味方か……きちんと見極めなきゃいけない。

 だから俺はそう問いかけた。

 「はぁ?

 何で俺があんなの好きな事になるわけ?」

 ……真希の弟をつぶさなきゃは嫌だなと問いかけたのにばっさりとそう言われた。

 あんなのって言ったよね、今望。

 もしかして毛玉信者じゃない?

 でも『龍虎』の情報屋やってんのは確かだろうし。

 俺と真希が何か考えたように望をみていれば望は溜め息混じりに言った。

 「……何で俺があんなの好きな事になってたかわかんないけど俺彼女居るし」

 「マジか…。俺お前が香川信者にでもなってるかと思って説得する気満々だった」

 「兄貴! んな信者とかキモイ事いうな!

 確かに『龍虎』の奴らはあいつの信者っぽいけど俺はあんなの好きじゃねえよ!

 ただ俺の彼女があいつの義妹だからないがしろにもできねえだけだ!」

 「義妹って?」

 確か渉兄の原口さんとの浮気の時(六年ぐらい前)に調べた時は息子一人だけだったはずだ。

 この六年で妹ができたっていうなら望が小さい子と付き合ってるロリコンになるし…。

 親友の子供とかを引き取ったのか、なんて考えてたら望は答えてくれた。

 「理香――俺の彼女は操の父親の浮気相手の子らしい

 理香の母親が三年前に亡くなって操の家に引き取られたんだって」

 それを聞いて思ったことといえば、原口さん浮気症なのか? とかそういう事だった。

 というより原口さんの奥さんは健全なはず。

 望の彼女が浮気相手の子なら家に引き取るなんてして大丈夫なのか?

 俺がそんな事を考えていたのがわかったらしい望は苦笑しながら言った。

 「操の両親は操のいう事は大抵何でも聞くんだ。

 操の両親は理香を疎んでるけど操を味方にしとかなきゃ理香は生活できない状況なんだ」

 望から聞いた話を纏めると、理香ちゃんの母親は原口さんに内緒で子供を産んだらしい。原口さんはよく浮気をして浮気相手が妊娠したら中絶させるような人間なんだそうだ。

 だから隠れて産んだ。

 生まれてしまった子を殺すなんて流石にできず養育費は払っていたらしい。

 母子家庭で母親が亡くなり、原口さんに引き取られたんだそうだ。

 原口さんは理香ちゃんを疎ましく思い、冷たい態度。

 奥さんは浮気は容認しているが子供ができてるとなると話は別で理香ちゃんに冷たくしていたらしい。

 当初は育児放棄なるものをしようとしていたようだが毛玉君がそれを反対しとりあえずご飯などはもらえているらしかった。

 要するにだ。

 理香ちゃんは家での居場所を確保するために毛玉君の性格が嫌でも毛玉君によく見られるような態度を取っているらしかった。

 「理香にさ、俺ん家に来ればいいじゃんって言ってんのに甘えられないって言っててさ……を。

 だからまああいつか理香の義兄じゃなければあんなのに優しくしないし」

 うんざりしたように望は言った。

 優しくしたくないのに優しくしなきゃいけない…って大変そうだ、本当。

 「望が香川君の事好きじゃないのはわかったけど…。本題は何なの?」

 「んーとさ、操がそっちの学校行ってるの俺のせいなんだよね…。

 迷惑かけてるみたいだし謝んなきゃって思って」

 突然の言葉に俺と真希は固まった。

 そんな俺たちに望は続ける。

 「操の前居た学校さ。操と『龍虎』の幹部達の独裁でさ、色々生徒達の不満が爆発しそうで・・・。

 そこの仲良かった先輩にどうにかしてくれと頼まれてさ

 兄貴と理人さんいるなら・・・・・・どうにかなるかなって思ってさ」

 つまり毛玉君はどこでも被害を出してるんだな。

 てか毛玉君と毛玉信者の独裁ってなんて恐ろしいんだ。

 きっとかなりの被害がでてるんだろうな。

 「だから本当ごめん」

 申しわけなさそうに頭を下げられては怒れないなと思った。

 望も操をどうにかしたいと思っているんだろうし。

 「望が香川君を追い出したのはわかったけど……を香川君が簡単に転校するなんてどんな手を使ったの?」

 仲間がいる高校……しかも入学したばかりから転校するなんてよっぽどの事があるんだと思った。

 「……え、あーと、言いにくいんだけど」

 望は視線を揺らしながら言いづらそうに言った。

 「……操の好きな奴二人いてさ」

 ポツリポツリと望はいう。その時点で、突っ込みたくなった。なんで二人も好きな奴がいるんだよと。

 「それでさ…、その好きな奴の一人が……」

 言いづらそうに顔を歪めていう。

 「……『銀猫』、兄貴なんだ」

 そうして望は爆弾発言を落とした。

 「それは……なんとも言い難い事実だね」

 「……」

 真希に関しては隣で絶句している。

 まあ無理もない。

 毛玉君がどんな奴かわかっているのだ。そんな毛玉君に好かれて真希が嬉しいはずがない。

 「まあ『銀猫』の時の兄貴しかあいつ知らないからバレないだろうとは思ってるけど…

 つかあいつ滅茶苦茶やってるんだろ?」

 「そうだねえ

 俺の大切な子達がそいつのせいで傷ついたから潰してる最中だけど……

 てかさ、好きな人二人いるって何? もう一人はどうしてんの?」

 ……好きな人が二人いるってさ、真希以外にも哀れな人がいるって事だし。

 もう一人は誰なんだろうって気になって聞いた。

 「もう一人は…調べたら今日本に居ないらしい。

 理人さん、『クラッシュ』と仲良いなら知ってるかも」

 ……あれ。日本に居ないって。

 なんか、滅茶苦茶日本に居ない『クラッシュ』関係者に俺心当たりあるんだけど。

 嫌な予感を感じながら、俺は問いかけた。

 「名前は?」

 「吉井千尋ヨシイチヒロ

 元『クラッシュ』のメンバーらしい」

 「……うわぁ」

 思わずそんな声が出たら、望に問いかけられた。

 「理人さん知り合い?」

 「いや、千尋って俺の元カレ」

 そうである。吉井千尋は、俺の元カレだ。

 ……親友と元カレが毛玉君に惚れられてるって何て偶然。

 「……元カレ?」

 「うん

 千尋が外国いくまで付き合ってたよ」

 それにしても千尋と真希って共通点あるわけじゃないのに何処に惚れたんだろう。

 というより千尋に毛玉君が惚れてるって事は少なくとも俺が千尋と付き合ってる間に毛玉君と千尋に接点があったって事だよな。

 ……千尋って結構モテてたから、誰々に告白されたとかちょくちょく聞いていたがその中に毛玉君が居たのか?

 「……を香川が俺に惚れてる」

 真希は隣に座りながら呟いて顔を真っ青にしている。

 そんな真希はとりあえず放置で俺は望に問いかけた。

 「千尋や真希との接点は?」

 「……両方一目惚れらしい

 てか、あいつ幹部達に何も言わずに転校したからあいつの事『龍虎』の奴らが探してる」

 一目惚れねえ。

 要するに外見で惚れたってわけか。

 あれ…でも真希って『銀猫』としては顔隠してるよな。

 それを思って俺は聞く。

 「真希って顔隠してるだろ。それで一目惚れって何?」

 「よくわかんないけど兄貴の喧嘩に見惚れて惚れたらしい」

 「喧嘩に見惚れるって圧倒的な強さに惚れたって事?」

 「さあ、よくわからない」

 やっぱり毛玉君ってよくわからない。

 というか何で『龍虎』の仲間達に何も言わずに転校してきたんだ。

 まずそれがわからない。

 変装する意味もわからない。

 ……つか毛玉君潰すにあたって絶対『龍虎』の奴ら出てくるだろうな。

 一回『龍虎』に接触してつぶす対象かどうか見極めないと。

 「り、理人!

 香川が俺を好きとか怖い! いや。本当はやく潰して!」

 ぶつぶつ言っていた真希は、青ざめてそう叫んだ。うわあ、真希滅茶苦茶必死。

 ……というかヤクザの次期組長なら毛玉君ぐらいどうにかできるんじゃね?

 そんな事を思って苦笑いが浮かぶ。

 「うんうん。真希も協力してね。

 あ、それと望さ。

 『龍虎』の情報教えてあの毛玉君つぶすために使うから」

 そう言って、にっこりと笑えば望は頷いた。




 ――――――そうして俺の菅崎組訪問は終わるのであった。


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