会長は気づきました。
二話連続更新です。ご注意ください。
「理人、おはよう!」
教室に到着すると、真希と春ちゃんが俺の元にやってきた。
真希の表情は明るい。
鏑木先輩と和解したのか、なんて思いながら真希に問いかける。
「鏑木先輩とはどうなったの?」
「あのな、理人!
美乃君、俺の話ちゃんと聞いてくれたんだ。」
嬉しそうに真希がいう。
今までの毛玉信者は本当、人の話聞かなかったからな。
鏑木先輩はその点においていい人だよな。まぁ、真希の思い人が毛玉信者と同類とは思ってなかったけれど。
周りを見回す。
毛玉君と篠塚君は居ない。
生徒会にでも呼び出されてるのか、なんて思う。
「あ、そうだ。真希頼んでたの調べてくれた?」
にっこりと笑ってそう言えば、真希は紙を数枚鞄から取り出して渡してくれる。
頼んで居たのは、副会長の情報。
やっぱり潰すからには徹底的にしなきゃね。
そうやって話していれば、ガラッと教室の扉が開く。
―――入ってきたのはもちろんあの、俺を襲ってきた担任ではない。
「……っ」
俺の知り合いの女性だったため、俺は驚いた。
茶髪に染められた髪を腰まで靡かせた女性――。
男子校の四宮学園、そこに女性がいる事に周りのクラスメートは驚いているようだ。
「あたしは、龍宮麻理。
諸事情でやめた宮先生の代わりに、あなたたちの担任を努めるわ」
―――龍宮麻理、その人は翔兄の奥さんだ。
ようするに俺の義理の姉。
それにしてもあの変態の代わりに、麻理ちゃんを担任に寄越すなんて……、何か面白くなりそう。
「いっておくがあたしに手を出そうと思うなよ?
龍宮家の龍宮翔はあたしの旦那だ。
あたしに手を出せば翔は黙っていない。
――それにあたしに手を出す奴はあたしにとっての敵だ。
生徒であろうと、あたしは潰すから」
わー、麻理ちゃん、男前。
翔兄ってすぐ泣くとか、弱い存在ってあんまり好きじゃないんだよね。
過去の恋人ってどっちかっていうとかっこいい男だったりしてたし。
そんな事を考えていたら、麻理ちゃんと目があった。
麻理ちゃんは俺と目が合うとにっこりと笑ってくれた。
「なぁ、理人………龍宮翔の奥さんって事は…」
「そ、俺の義姉」
真希に声をかけられ、俺は小さな声で笑って答えた。
―――女だけど大丈夫なのか。
そんな表情を浮かべている真希。
そんな真希に俺はにっこりと笑って、ルーズリーフを取り出して何かを書く。
そして真希に渡した。
―――麻理ちゃんは、『蝶姫』。
ただそれだけを書いたけれど、真希なら知っているはずだ。
「マジ?」
「うん」
真希に向かって、俺は頷く。
『蝶姫』ってのは、昔この地域に居た族潰しの名前。
女にして過去に最強と呼ばれた人―――それが麻理ちゃんなんだ。
翔兄は高校時代、大学時代はある暴走族に所属していた。
その暴走族は今はもうなくなってしまったらしいけど。
翔兄はその族の元総長で、その関係で麻理ちゃんと出会ったらしい。
ちなみに翔兄は今24歳。
「………てか前の担任は理人が?」
「うん。あんな変態嫌いだからね」
にこにこと笑って言えば、流石、とただ一言言われた。
そうやって会話をしてるうちに麻理ちゃんは教室から出ていった。
それからしばらくして、スマホが鳴った。
麻理ちゃんからだった。
―――あたしがいきなり来てびっくりしたか?
放課後理人の空き部屋行くから。
そう書かれていた。
それに、了解とだけ返事を返す。
「ねえ、理人。この問題わかる?」
春ちゃんがそう言って、俺の元に数学の教科書と、ノートを持ってきた。
春ちゃんって、本当真面目だなあ、と思う。
「これは~~して、これを………」
そう言って、説明をする。
春ちゃんは元が頭いいから、説明を一回で理解してくれるから楽だ。
「あ、わかった」
春ちゃんは、嬉しそうに笑った。
数学の問題がわかったからって嬉しそうな顔をする春ちゃんが可愛くて、俺は頭に手をのばす。
そしていつものように春ちゃんの頭を撫でる。
「理人って頭撫でるの好きだよね、本当」
「うん。
可愛い子見ると頭撫でたくなるよ」
春ちゃん何か可愛いから頭撫でたくなるんだよねえ。
か、可愛いってと照れてる春ちゃんが何か可愛い、本当。
そんな風に思っていたら、またメールの着信音がなった。
画面を覗けば、渕上隗という文字が写し出されていた。
メール画面を開けば、直哉さんと義彦さんまじウザイんだけどという文字が。
会長の事書かれてないって事は、会長は上手く俺に興味を持ってくれたのかな?
会長潰さなくてすむなら愛ちゃん達喜んでくれるだろうしな。
それにいきなり生徒会長っていう学園のトップが消えたら、学園が混乱するだろうし…。
まあ、会長次第だな。
そんな事を思いながら、また何かやってんの? 馬鹿二人は、と返事を返す。
すぐに返事が返ってきた。
――生徒会室で害虫にキスする、抱きつく、押し倒す。下手したらヤりそう。
害虫拒否してはいるけどまんざらでもない。
つか3Pになりそうな勢いで会話とか気持ち悪い。
視界に入るのがウザイ。
……隗のメールにうわっと思った。
副会長と下半身会計何やってんだ!
副会長、下半身会計、毛玉君の3P……ダメだ考えれば考えるほど気持ち悪い。
というか毛玉君カツラのはずだが、ヤったら取れるんじゃね?
まあヤりそうなだけでヤるまでに至ってないみたいだけど、毛玉君って淫乱なのか…?
というか隗が居る前でそんなするって、変態?
毛玉君達の公開プレイなんて誰も見たくないよね。
隗可哀想……というわけで俺は返事をうった。
――そこに安住君いる? 居るならさ、安住君に俺と真希とで話した空き部屋の場所わかるか聞いて。
あそこ俺専用の空き部屋だから、そこで生徒会の仕事すれば?
空き部屋使うかどうかメールして、使うなら鍵持って行くから。
しばらくすれば、使わせてもらう、とメールが返ってきた。
それを見て、俺は立ち上がる。
「真希。
俺ちょっと行ってくるから春ちゃんの事よろしく」
「ああ、わかった」
真希の返事を聞いて、俺は教室から出る。
空き部屋に向かってのんびりと歩く。
そうやって歩いていれば、
「あ、あの……暁様」
愛ちゃんの声が聞こえた。
どうやら会長に話しかけているらしかった。
また愛ちゃんが、会長に殴られたら困るから俺は慌てて声のした方を見た。
覗けば、会長と愛ちゃんが居る。
ふふ…、この前会長が俺に興味を持つように仕向けたし、接触してみますか。
ってわけで、話しかけてみた。
「愛ちゃん!」
もちろん会長にじゃなくて愛ちゃんに。
愛ちゃんと会長は俺の方を見る。
俺は見られながら、愛ちゃんと会長に近づいた。
「理人君」
「お前……」
「愛ちゃん、何やってんの? この前殴られたんだし、二人で会っちゃ危ないよ?」
会長は放置して俺は愛ちゃんに言った。
「でも僕……暁様と話したくて」
「ふふ、愛ちゃんは可愛いね」
「おいっ」
愛ちゃんと会話してれば会長が俺の肩を掴んできた。
その掴んでいる手を手にとって中指を思いっきり曲げてやる。
「いっ……」
痛みに会長は声をあげるが、俺は会長に視線もむけないで愛ちゃんに言った。
「愛ちゃんが会長の事大好きなのはわかるけど、危ないから会長と話したい時は俺を呼びなよ
そしたら、愛ちゃんが殴られないように守ってあげるから」
「いたたっ、いっ、離せ!」
あ、ちなみに未だに指を思いっきり曲げてるよ?
だって会長みたいな奴に肩捕まれるとか最悪だし。
「り、理人君! 暁様離してあげて!」
愛ちゃんに頼まれて、俺は会長を離す。
会長は痛みに指をおさえて、俺を恨めしそうに睨んでいる。
「この前ぶりですね、会長さん」
「って、先に謝れよ!」
何か、会長に突っ込まれた。
「え、嫌」
にっこりと笑って俺は続ける。
「会長が、愛ちゃんに殴った事謝って、愛ちゃんの名前ちゃんと覚えるっていうなら謝ってあげてもいいですよ?
本当は会長何か瀕死ギリギリぐらいまで痛みつけてやりたいんですけど…。ま、愛ちゃん達が悲しむから我慢しててあげます」
笑ってつづければ、会長は唖然とした様子で俺を見てる。
何か目を見開いて、口をポカーンと開けてて面白い。
「………お前」
「何ですか、馬鹿で下半身な俺様会長さん」
「なっ……、お前この俺様を――」
「自分で俺様って恥ずかしい人ですね」
「……貴様、こ――」
「はい、黙ってください。第一貴様とか何処の悪役キャラですか?
なんか小説とかの悪役とか貴様何者だとか言ってそうですよね」
さっきからことごとく会長の台詞を遮ってんのはもちろんわざと。
「な――」
「喋らないでくれますか? 俺会長の事嫌いなんですよね。
声聞いただけで苛立ちますね。
というより何で会長が、皆にしたわれているか全くもって理解不能なんですよ。
だって会長って求められたら誰でも抱くただの下半身の緩い男ですよね。
妙に偉そうすぎて勘にさわります。
大体、あんな気持ち悪い香川君なんかを追い回してる時点で頭いかれてるんですよ。
ようするに俺から見た会長は下半身が緩い最低で馬鹿で頭のおかしい変な恥ずかしい俺様です」
一気に言って、会長を見る。
あ、何か俺様会長のくせに泣きそうな顔してる…。
苛めすぎたか?
なんて思いながら、俺は会長ににっこりと笑う。
会長の泣きそうな顔とか……なんか気持ち悪い。
まあ、可愛い子の泣き顔ならともかく、嫌いな会長の泣き顔なんか見たくないよね。
「あ、暁様……、大丈夫ですか?」
愛ちゃんも泣きそうな会長に戸惑っているらしい。
戸惑ってる愛ちゃんは可愛いよね。
「愛ちゃん、会長なんかに様付けする必要ないって、きっと
寧ろ馬鹿って呼んでもいいと思う」
「……貴様、本当に親衛隊か!」
何か愛ちゃんに向かって言ってたら会長が口を挟んで来た。
「正真正銘生徒会親衛隊メンバーですが、何か文句ありますか?」
「文句というか………貴様が親衛隊メンバーとか色々おかしいだろ!」
「そうですか?
おかしいのは会長の頭だと思いますけど」
「な――」
「香川君の貞操狙って追い回す生徒会って何か無能すぎて滑稽ですよ
というか俺用事あるので行きますね」
隗を待たせてあるんだし、はやく行かなきゃってわけで会話を切り上げる。
最後に俺は会長に向かって言う。
「あ、会長
愛ちゃんに手を挙げたら許しませんからね?」
俺はそれだけいうと呆気にとられていう会長と戸惑っている愛ちゃんを置いてその場を後にした。
* 東宮暁side
何なんだアイツは……。
俺様は去っていく、佐原理人の後ろ姿を見据えて唖然となる。
生徒会親衛隊―――それは最低で淫乱で生徒会に媚を売る。
そんな存在では、なかったのか?
「あ、あの暁様……理人君の事悪く思わないでください。
理人君…本当は優しい人なので」
親衛隊隊長―――光永愛斗は俺様に向かってそう言った。
佐原理人は謎だ。
親衛隊隊長の前で俺様に暴言を吐いて、責められるどころか庇われている。
「……あんなのが親衛隊に居て、反感もたれたりしないのか?」
俺様を嫌いだと堂々と言ってのける奴が、生徒会親衛隊に居るなんて……、普通ならそういう存在は反感をもたれるんじゃないのか?
「理人君に反感持つなんて……っ
そんな子ほとんど居ませんよ!」
「……あんな風に暴言吐いてもか?」
「はい、もちろんです。
それに理人君は本当僕達に優しくしてくれるんです」
そういう光永愛斗は、嬉しそうに笑っている。
「優しい…?」
何処が優しいのか、正直俺には理解出来ない。
あれだけ毒舌で容赦のない男が、優しい?
「理人君は…、嫌いな人には容赦ないんです」
………俺様は滅茶苦茶嫌われているって事か。
というか考えて見れば光永愛斗と普通に喋るのはこれが初めてかもしれない。
光永愛斗を抱くだけ抱いて、他には干渉しなかった。
ただの淫乱、だと思ってたのに、何か違う気がしてきた。
―――親衛隊メンバー全員が、淫乱なわけではない…?
「生徒会親衛隊メンバーは………、全員淫乱では、ないのか?」
俺様は聞いた。
光永愛斗を真っ直ぐと見つめて。
「……もちろんです。暁様。
生徒会親衛隊メンバーは、中等部、高等部合わせて700人近く居ます。
入った理由は様々ですし、誰とでもヤるって子はほとんど居ません。」
「……俺様は、前会長に、生徒会親衛隊は、淫乱で悪質だと、そう聞いていたが」
卒業した、前会長は常々言っていたものだ。
生徒会親衛隊というのは親衛隊の中で最も淫乱で悪質で、最悪なのだと。
生徒会親衛隊メンバーは嘘を吐き、生徒会のメンバーを惑わすのだと。
だから俺様は今まで親衛隊は性欲処理の存在としか思ってなくて、親衛隊メンバーの言葉に耳を傾ける気もなかった。
「……生徒会親衛隊は、人数が多いので、統一するのが難しいのです。
隊長の命令を無視する人だって居ます。
昔は、僕が入学した頃の、親衛隊は本当にひどかったんです。
何年か前までは……悪質な事をする人は多かったです
でも……、今の生徒会親衛隊は昔とは違います。
昔よりよくなってきてるんです、生徒会親衛隊は」
昔と今は違う。
そう言って、光永愛斗は俺様を見つめた。
生徒会親衛隊メンバーが、淫乱ではないなら、俺様は………、ただ純粋に俺様を好きだと言ってきた奴を、性欲処理のように、したのか…?
生徒会親衛隊は、淫乱だからどんなにひどくあたろうが、いいって、そう思ってた。
どうせ誰とでもヤる奴らなんだ、抱いてもいいって、そう思ってた。
光永愛斗は、嘘を言ってるように、思えない。
…俺様は、結構ひどい事をやってしまってたのかも、しれない。
「………貴様も、淫乱ではないのか?」
「……はい。僕は、暁様にしか抱かれた事ありません」
それを聞いて、一気に罪悪感にかられる。
佐原理人とはじめて会った時に言われた事を思い出す。
―――愛ちゃんは、会長が大好きなだけなんです
――――会長の方が、遊び人です。人の事淫乱なんて、会長は言えませんよ
「………そうか。すまなかった。光永愛斗」
そうして俺様は、はじめて光永愛斗の名前を呼んだ。
* 龍宮理人side
「ねえ、隗。
副会長潰す件についてだけどさ」
俺は今隗と一緒に空き教室に居る。
隗を此処まで案内してきた安住君は此処に真希が居ない事を知ると去っていった。
空き教室に置かれた机で、生徒会の仕事を黙々とやっていた隗は俺の言葉にこちらを見る。
「何か面白そうな潰し方でも思いついたか?」
「うん。
とりあえずさ、副会長を闇討ちしよう!」
俺がそう言えば、隗は一瞬きょとんとした表情を浮かべた。
そして、次の瞬間、面白そうに笑う。
「闇討ちね…。いいな、楽しそうだ」
「これあげる」
俺はにこにこと笑いながら、袋からある物を取り出す。
―――取り出したのは仮面とフード付きの上着。
「…これどうするんだ?」
「もちろん、闇討ちの際に付けていくの!
正体不明の存在から狙われるなら副会長もまいるだろうしね」
仮面付けて顔が見えない二人が、いきなり目の前に現れたら副会長も怯むだろうしね。
二人でなら副会長闇討ちって出来るだろうけど、副会長は『ブレイク』の副総長だ。用心に越したことはない。
「理人って喧嘩出来るのか?」
「出来るよ。
てかね、俺の元カレが暴走族に居たから、その関係で喧嘩の仕方元カレの仲間とかに仕込まれたんだよね」
「へえ……何処の族だ?」
「ふふ、『クラッシュ』だよ」
にっこりと笑ってやれば、隗は驚いたように目を見開いていた。
隗って、俺の言葉に驚いてばかりだよね。本当。
「『クラッシュ』か……」
「ふふ、俺元カレと別れた今でも溜まり場たまに遊びに行くんだよね。
俺の弟も所属してるしね」
「へえ…」
「てか、隗達が『クラッシュ』の溜まり場に来た時に居たフードの男って俺だよ?」
さらっと暴露してやれば隗はまた固まった。
何か驚いて固まってる隗って無防備で可愛い。
「ふふ、隗ってば固まっちゃって可愛い」
何て言いながら悪戯心から、隗の耳をパクッと口に含んでみた。
「――……っ」
隗は瞬時に反応して、噛まれた耳を手で抑える。その顔は、赤い。
「お前は……いきなり何してんだよ!」
「だって隗が固まってるから、ちょっと悪戯したくなっちゃって…。
てか隗顔真っ赤でかわいー。
隗って意外に遊んでないの?」
「………噛んだり入れたりした事はあるけど逆はなかったんだよ」
「ふふ、隗、タチだって言ってたもんね」
やった事はあるけど、やられた事はないって奴なんだね、要するに。
まあ、俺も隗と同じでやられた事はないけど。
*
隗の耳を噛んだ後、隗の手伝いで生徒会の仕事やり、生徒会の仕事が終わると隗は帰る、と言って去っていった。
麻理ちゃんが、来るわけだしって事で俺は放課後まで空き教室でのんびりしていた。
そうしていたら、
―――ガラッと扉が開いた。
入ってきたのは、もちろん麻理ちゃんだった。
「理人、久しぶりね」
「うん、久しぶり。麻理ちゃん」
麻理ちゃんはズカズカと歩いて、空き教室に置かれている椅子に腰をおろした。
「理人、何か飲み物ある?」
「あるよ。アップルジュースとお茶と牛乳の何れがいい?」
「お茶」
空き教室に置かれている小さな冷蔵庫からお茶を取り出して、麻理ちゃんに渡す。
ごくごくっ、と勢いよくお茶を飲み、麻理ちゃんはプハァと息を吐く。
「やっぱり運動の後のお茶はいいわ!」
「……運動?」
麻理ちゃんは国語の教員として雇われているらしいし、運動なんて何をしたんだ、そんな目で俺が問いかければ、
「飢えた狼退治をしたのよ。
思いっきり暴れられてすっきりしたわ」
と、麻理ちゃんはにっこりと笑った。
「流石、麻理ちゃんだね。
てか麻理ちゃんが翔兄の奥さんとわかった上で襲う奴とか居たんだ…」
龍宮家って、権力あるし翔兄の奥さんに手を出す馬鹿は居ないと思ってたんだけど、どうやら居たらしい。
あの変態教師みたいにヤれば言う事聞くと思ってたのかな?
馬鹿だな、と思ってしまう。
「おう、あたしを押し倒そうとするから気絶させて風紀に引き渡したぞ」
「わー、流石だね」
本当、麻理ちゃんって強いよなあ。
流石としか言い様がない。
「てか麻理ちゃん、何で教師なんかに?」
麻理ちゃんって普段デザイナーとして活躍してるんだけど。
本当、何で教師としてやってきたんだろうか。
俺翔兄とかから何も聞かされてないし…。
「ふっ、理人が学園で最近色々やってるみたいだから、ちょっと拝みに来たんだ」
「色々って…俺は悪影響な存在潰そうとしてるだけだけど」
そう言って、俺は麻理ちゃんと反対側の椅子に腰かける。
「悪影響……?」
「そう、そいつが俺のクラスに居るんだけど学園そのものに悪影響与えてんだよね。
俺のお友達とかもそいつのせいで被害受けてて潰す事にして色々やってる」
そう言って、俺は毛玉君の事を、麻理ちゃんに簡単に説明する。
転入してきて、一ヶ月近くしかたってないのにかなり悪影響だからな、あの毛玉君は。
毛玉君について俺が知っている情報を伝えれば、
「へえ、そんなアホな奴実在すんの?」
と、麻理ちゃんは呆れたように言った。
「うん、だから駆除しようとしてるの。邪魔だから」
「そうか…。
ま、あたしは邪魔はしねえよ。
寧ろそのアホがあたしの邪魔するなら協力する」
そう言って、麻理ちゃんはニヤリッと笑う。
「ふふ、麻理ちゃんも邪魔だと思うよ?」
そう言って、俺は笑った。
会長含む親衛隊以外の人たちは愛ちゃんを親衛隊隊長と思い込んでます。