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変態なんて潰しちゃうべきだよね。

 「佐原!

 操を苛めるんじゃねえ」

 ……朝から担任(名前覚えてない)から呼び出しを受けた俺は誰もいない空き教室に連れ込まれた。

 それで第一声がこれだ。

 見た目はホストみたいでかっこいいのに中身が残念だ。まさに残念なイケメンだと思う。

 「苛めてないんですけど」

 呆れてしまう。

 どうして毛玉信者は皆同じ事しか言わないんだ。苛めてないって言ってるんだが、何度も。

 「生意気いいやがって……淫乱のくせに

 俺が調教してやるっ」

 担任はそんな気持ち悪い事を言い放って、俺の事を突き飛ばした。

 え、何この人調教って言った? 今。

 ちょ、キモいキモいキモい。

 そして突き飛ばされて床に尻餅ついちゃったんだけど!

 わー、何か担任が倒れた俺の上にのし掛かってきてんだけど。

 しかも妙にはあはあ、興奮してるっていう。………いや、もう何この半端ないキモさ

 しかも制服脱がせようとしてるっていう…。

 教師が何やってんの?

 とりあえず気持ち悪くて鳥肌が立ってきたので、急所を蹴りあげた。

 うん、立派な正当防衛だよね。

 「ぐえっ」

 なんて喚きながら崩れおちる担任。

 ふふっ、いい気味。

 大体担任みたいな毛玉信者ごときが俺を襲うなんて100年早いってーの。俺は襲われる趣味はないし。

 「せんせー

 教師のくせにこんな事していいんですかー?」

 立ち上がって、倒れ伏せている担任ににっこりと笑ってやる。

 担任は痛みにたえながら、俺を睨み付ける。

 アレを手でおさえたまま睨まれても怖くないよ。

 てか今の担任の格好なんか滑稽なんだけど!

 「ふふっ

 そんな情けない格好で睨まれても怖くないですよー?」

 にっこりと笑みを作って、先生に言う。

 「お前こそ、俺にこんな真似して……」

 「いいと思ってますよ?だってせんせーってたかが教師でしょ?」

 なんていいながら、ムカつくので先生のお腹を蹴っておく。

 先生は呻き声をあげながら、どうにか立ち上がった。

 「てめえ、ふざけんな!

 俺は宮財閥の次男だぞ、てめえなんてすぐに潰せる!」

 うわ…、何か権力振りかざしてきたよ、変態先生。最低すぎる。

 てか宮財閥の次男って……変態って克典君の弟?

 あ、克典君ってのは、翔兄の親友なんだけど。

 克典君の方が年は上なんだけど、翔兄と克典君は仲良しなんだよね。

 「ふふ、俺を潰すってどうする気ですか、せんせー」

 俺はわざと笑ってそういって、先生を見た。

 先生は得意気に笑う。

 「ふっ、操は理事長の親戚だぞ

 お前を退学に追い込む事はたやすい

 大体お前の家は一般家庭だろう!潰してやる」

 「ふはっ、馬鹿だねえ、先生

 気にくわないからって潰すってどんだけ単細胞なんですか?

 それに先生が、宮財閥の次男であろうと、宮財閥をそんな簡単に動かす事は出来ないでしょう?

 あと、香川君は理事長の親戚ではないですよ?

 ふふ、それに理事長は俺を退学にする事はしません……いや、できません」

 馬鹿らしくて笑えてくる。

 ただの思い込みの苛めで人の家庭を駄目にする気なのかって。

 結局悪いのは毛玉君じゃないか。

 大体克典君はそんなしょうもない理由で家庭を潰すなんて許可しないだろうし。

 きっと変態先生が勝手にやってるんだろうけど……克典君にチクってやろうかな。

 つか渉兄が俺を退学にするとかあり得ないし。

 したら、翔兄も敵に回す事になるしねえ

 渉兄は馬鹿ではないからね、毛玉信者には成り下がってるけど。

 俺が、有言実行するって知ってるだろうし。

 笑う俺に、先生は眉を潜めた。

 馬鹿にしたような俺の言葉に呆気に取られていたようだ。

 「それはどういう――」

 何かをいいかける、先生。

 だけど最後までは言わせず、鳩尾に拳を入れた。

 呻き声と共に先生は崩れ落ちていく

 それを覚めた目で見下ろしながら俺は電話をかける。

 プルルル……と音がなる。

 そして、音が止んだと同時に真希の声が聞こえてきた。

 『何か用か?』

 「まーき

 二階の渡り廊下近くの空き教室に紙とマジックとなんかヒモとテープもってきて」

 俺の声がよっぽど楽しそうだったのだろう。驚愕したような真希の声が響く。

 『……おまっ、何する気だ!?』

 「変態先生に罰を与えようと思ってねー

 ね、もってきてよ。ヒモなら、俺の空き教室にあるから」

 『何であんの!?』

 「何かに役に立つかなって田中さんにもらった!」

 田中さんって渉兄をよく拘束してプレイするから持ってるんだよね拘束する道具。

 真希への電話を切って、ふう、と息をはく。

 とりあえず、先生……結局下の名前が不明な変態には、たっぷり恥を書かせてやらなくちゃ

 それを思うと頬が緩む。

 ――たっぷり後悔してもらわなきゃね?

 そんな事を考えていたら、ガタッと物音が響いた。

 驚いて、音がした方を見る。音がしたのはドアの方だった。

 誰かがいるらしい……あまり人が来ないと思っていたが、誰だろう。

 面倒な人じゃなければいいけど、それを思う。

 そうして俺はその人影に声をかけた。

 「誰ですか?

 名乗りでてくれる方が俺は有難いんだけど」

 俺の言葉に、空き教室へ足を踏み入れたその人物に、俺は驚いて目を見開いてしまった。

 入ってきたのは――、茶髪の髪を靡かせた少年―――生徒会書記の双子

 多分、兄の隗の方だと思う。

 てか俺今担任のしちゃってるんだけど、どうしようかね?

 「何してんだ?」

 渕上隗は、俺と変態を交互に見て口を開いた。

 ……渕上兄って弟と一緒の時はもっとテンション高いってか、明るいのに一人の時は何処かクールにも見える。

 何か、面白いかも。

 「何って、この先生キモいからちょっとね

 渕上君――兄の方だよね? 君は何してんの?」

 「ただの暇つぶし。

 ……お前が、佐原理人か?」

 渕上君はそう言って、俺を見た。

 本当に謎だ。

 『クラッシュ』の溜まり場で会った時は元気な印象だったのに。

 弟がいる時といない時で喋り方が違うとか、興味深い。

 俺が佐原理人だって確認してどうするつもり何だろうか。

 変態みたいに苛めるなって言ってくんのかね、なんて思いながら俺は答える。

 「そうだよ?

 俺が香川君殴った佐原理人だよ?」

 「そうか…、お前が佐原理人か

 親衛隊って聞いてたけど、俺に媚びないんだな?」

 渕上君が、面白そうに笑った。

 まあ親衛隊の子は渕上兄と仲良くなりたいと思ってる子沢山いるしね。

 それにしても香川君について何も言わないって…渕上兄って不思議。

 何か興味深くて、話してみたくなっちゃった。というわけで俺は話しかける。

 「あー、俺親衛隊でも、生徒会好きじゃないし寧ろ嫌いだし

 もちろん渕上君の事も嫌いだったんだけど――……何か面白そうだね、渕上君って」

 ニヤリッと口元を上げてやれば、渕上君は驚いたような顔をする。

 そして、その表情を面白そうに歪ませて、言った。

 「俺も……親衛隊何か大嫌いだったけど、お前は面白そうだとは思ったぞ?」

 「へえ……

 ところで渕上君、俺が香川君殴ったの怒ってないみたいだけど何で?

 生徒会はあんな性格悪の香川君を追いかけてるって思ってたんだけど」

 やべえ! 渕上兄予想以上に面白い逸材かも。

 今まで以心伝心の似た者双子としか認識してなかったけどやっぱり人間って話してみないとわかんないな。

 そう思って愉快な気分になって仕方がない。

 「あー、俺あんなキモいの嫌い」

 「ぷっ、いいね、渕上君

 俺はっきりしてる奴好きだよ?

 てゆーか嫌いなら何で追いかけてたの?」

 「……螢がキモいのに夢中で追いかけるっていうから。

 俺なるべく螢と離れたくないし」

 「まさかのブラコンか!」

 俺は思わず声を上げた。

 いや、だってさ……、弟が追いかけるからって一緒になってあんな毛玉君追いかけるなんて意外すぎない?

 俺は例えば都があんな毛玉君追いかけるなら一緒に追いかけるではなく止めるかな。あんな毛玉君追いかけたくない。

 「ね、ね、渕上君

 いつもの弟君とのシンクロ具合とかって何なの?」

 「螢が一緒に行動する双子やりたいって言い張るから俺が合わせてる

 可愛い螢の言う台詞なんてすぐ予想できるからな」

 「あはっ、いいねえ

 渕上君面白いよ。てゆーか俺にそんなベラベラ喋っていいの?」

 本当、実は合わせてるシンクロだとか俺にベラベラ喋っていいのかね? と思って問いかければ、渕上兄は笑う。

 「なんか、噂と違って面白いからいいかなと」

 「面白ければいいんだね、要するに」

 話を聞いていて、何か渕上兄とは気が合いそうに思えてきた。

 「まあな…

 つかそれはお前も一緒だろ、佐原理人

 面白い事大好きってそう いう目をしてる」

 「ふふ、そりゃそうだよ

 俺は面白い事は大好きだよ、わくわくするしね」

 「……今更だがそこの担任はどうしたんだ?

 ムカついたから何て言ってたが」

 本当に今更だよ、渕上兄!

 まあ俺も渕上兄との会話が面白くて変態の事忘れてたけど。

 「あー、俺が香川君を苛めてると調教すると襲いかかってきたから蹴って殴った」

 「……キモいな」

 「しかもはあはあ興奮してるんだよ?鳥肌ものだよ、全く

 俺は襲われる趣味ないし」

 変態に視線を向けながら会話を交わす俺と渕上兄。それにしても真希来るの遅くないか?

 「それは最高にキモいな…

 俺も背が低いからネコにみられるのかたまに襲われかけて鳥肌ものだ」

 「わかるわかる

 俺もタチなのにネコにみられるらしくてさ、たまに変態な輩がいてもうキモくてキモくて

 しかもこの先生とかさ、なんか襲えば俺が服従するとでも思ってたらしいんだよ? 馬鹿らしすぎてもうねえ」

 渕上兄って俺より背が低いしタチって言っても顔は男にしては可愛いものだし苦労してきたんだろうな、と渕上兄を見ながら思う。

 実際に生徒会親衛隊の中にも渕上様を抱きたいとか言ってる子居たしな。

 「そういう馬鹿、たまにいるよな

 俺を淫乱とでも勘違いしてんのか、ヤればいう事聞くみたいな」

 「だよねえ…

 何か自分がヤるの上手いとでも勘違いしてんのか、変に゛俺にヤられれば誰でもいう事きく゛とか思ってる奴とかいるけど気持ち悪いよねえ

 そんな奴に迫られたらぶちのめしたくなる」

 俺が笑顔でぶちのめしたいと言ったのに大して、渕上兄は面白そうに笑っている。

 「俺そういう奴に押し倒された時、噛みついて怯んだ隙にボコしたぞ」

 「ふふ、俺はねー、さっきこの変態に襲われた時急所思いっきり蹴ってやったよ」

 「急所狙いか、いいなそれ。

 つかいっその事担任みたいな奴は去勢させた方が世のためだろう」

 「ふふ、渕上君ナイスアイデア!

 去勢させるのもいいねえ……この俺に襲いかかってきたんだしねぇ」

 ふふふと笑う俺と、面白そうに口元をあげる渕上君。

 これ周りから見れば不気味だろうな、二人して笑ってるし

 「理人、持ってきたぞって何で渕上が居るんだ?」

 ようやくやってきた真希はそう言って、驚いたように俺と渕上兄を見る。

 「真希、渕上君面白い! 渕上君シンクロ双子なだけかと思ったらブラコンだった」

 「は?」

 「渕上弟が大好きだからって一緒に香川君追い回してただけらしい」

 「ブラコン……よし、渕上俺の前で弟といちゃつけ!

 俺は見たい! 兄×弟の仲良い絡みを!」

 俺の言葉に真希が何かテンション上がったように渕上君を見る。

 いきなり絡み見せろとか、真希ってば馬鹿だね。

 渕上君何言ってんだこいつって目してるし。

 「それよりさ、真希。早く頼んだもの渡してよ」

 俺がそう言えば真希は本来の目的に気がついたようで、持ってきた袋を渡してくれる。

 「ふふふ~ん♪」

 俺は鼻歌を歌いながら中からヒモを取り出す。

 ヒモで変態の手と足をまず縛って、次に体全体を縛り付ける。

 これで変態も身動きとれないだろうし

 そして次にマジックで紙に『変態』、『変質者』、『私は強姦魔です』など書いて先生の体に張り付けた。

 「佐原理人……担任をそうしてどうするんだ?」

 「どうするってもちろんこの状態を人前にさらすに決まってるじゃん。

 てか渕上君、呼び捨てでいいよ? フルネームって呼びにくいだろ?」

 「俺の事も隗でいい」

 「隗さー、俺が渕上弟と隗の事見分けられるの驚かなかったけどどうして?」

 ふと、気になった事を聞く。

 渕上弟は自分達を見分けられるからって毛玉君を気に入ってるはずだけど…。

 「そりゃ、俺らの事見分けられる奴なんていっぱいいるだろ

 親衛隊の奴らだって俺の事間違わないしな」

 「へえ

 じゃあ何で渕上弟は気づいてないの?」

 「……螢は馬鹿だからな」

 「へえ」

 「ま、馬鹿な子ほど可愛いっていうだろ?

 螢は可愛いぞ」

 「ふふ、そっかあ」

 隗って、渕上弟の事本当好きなんだなそれを思って口元が緩んだ。

 大事な弟があんなキモい毛玉君を追い回してるって、きっと隗は嫌だよね?

 ふふ、と笑いながら俺は口を開いた。

 「ね、隗

 俺と協力しない?」

 「何を?」

 「隗さ、香川君の事嫌いなんでしょ?

 俺ね、香川君と香川君信者潰したいんだよね

 だからさ、手伝わない?」

 にっこりと笑ってそう言ってやれば、隗は驚いたような表情を浮かべる。

 隗が渕上弟の事が大好きだというならば、毛玉君の事が隗は邪魔なはずだから。

 「あいつを潰す?」

 「そう、あまりにも害だから潰そうって思ってね。

 いいアイデアでしょ?」

 「まあな、確かにアイツは害だ

 螢も何であんなのを気に入ったんだか……、別に恋愛相手が男だろうと螢が本気なら構わないが、アイツだけは許せん」

 隗ってブラコンだね、本当。

 俺の認めない相手には螢はやらん。って感じかな?

 何か男前だね、隗って。男前な子は好きだよ、俺。

 「ふふ、隗って実は相当香川君にむかついてるでしょ?」

 「当たり前だろ。

 螢の分の仕事をやるのは別に嫌じゃねえが、直哉さんや義彦さんの分までしなきゃとかダルいんだよ

 大体、あんな奴の声聞いただけでキモいし。あれは害虫だろ、本当」

 「だよね。で、俺と協力しない?

 ついでに弟君の目を覚まさせてあげようよ」

 その言葉に、隗は笑った。

 「いいぞ。やってやろうじゃねえか…」

 ちなみにそういう風に会話を交わす俺らを見て真希は興奮している。

 「……渕上兄×理人っビジュアル的にいい!

 でもこの場合どっちが受けに………ブツブツ」

 「………理人、菅崎は何ブツブツいってんだ?

 今受けとか聞こえたが」

 真希の言葉が聞こえたらしい、隗が言った。

 「真希は腐男子だからねえ

 俺と隗で妄想してんじゃないの?」

 「ふぅん」

 「とりあえずさ、隗。連絡先教えてよ。連絡するから」

 「ああ」

 隗とメアドとかを交換して、妄想に浸ってる真希の肩を叩いて現実世界に引き戻させる。

 そうして俺は真希に言った。

 「変態さ、明日朝から教室に放り込んでおいてくれない?

 してくれるなら理事長と秘書の絡み写真をあげる

 キスしてる奴とかもあるよ」

 真希はその言葉に目を輝かせて頷いた。

 ちなみに渉兄と田中さんの絡み写真は、田中さんがくれた。

 田中さんってキスシーンとか人に見せつけたい人だから

 「じゃあ隗、俺行くからまた連絡する」

 隗の方を振り向いて、にっこりと笑ってやる。

 それに隗も笑顔で答えてくれた。

 うん、タチでも隗は笑顔は可愛いと思う俺。

 変態に襲われたのは最悪だけど、協力者が出来たし、まあ良しとするか。


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