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え、何で俺が生徒会の奴らに遭遇しなきゃいけないんだ。

 週末、俺は巨大な建物の前に居た。

 明らかに一般家庭の家よりも馬鹿でかい、真っ白な壁のその建物は、俺の実家―――龍宮家本家だ。

 インターホンをおして、名前をいうと、門が開いた。

 そうして、玄関を開けると、「お帰りなさいませ、理人様」とメイドや執事がずらりと並んで出迎えてくれた。

 ちなみに俺は料理は家にいるメイドや執事に習ったんだよね。

 「ただいま」

 そう言いながら、メイドや執事達の並ぶ間を歩く。

 そうして、階段を登って、実家の自室に向かおうとした時、

 「りー兄!」

 勢いよく、前から突進された。

 突進してきた人物―――都を俺は抱き止める。

 「久しぶりー」

 俺より15センチも背が低い都は見上げる形で俺を見て笑う。

 うん、可愛い。

 都は暴走族入ってるし、髪は赤みがかった茶髪に染められてて、耳に幾つもピアスをつけている。

 それが似合ってるんだよね

 俺の可愛い弟には。

 腕の中にいる都の頭を撫でながら、俺は口を開く。

 「ただいま、都」

 「久しぶりのりー兄だあ」

 都はそう言いながら思いっきり俺に抱きついている。

 何か都が可愛くて顔がにやけそう。

 「可愛いなあ、都は」

 「りー兄だって、十分可愛いよ?

 あ、でもりー兄の場合はかわかっこいいって感じだよねー」

 いや、可愛いは絶対俺より都が似合う。

 都は背も低いし、女顔だしなあ。これでタチなのは、流石俺の弟って感じ。

 「都、今日翔兄は?」

 「かー兄はね、お仕事で居ないよー」

 「そうか、それは残念だ」

 翔兄仕事で忙しいもんなあ。久しぶりに会いたかったのに。

 そんな風に思ってたら都にお誘いをかけられた。

 「てかりー兄。溜まり場行こうよ。

 葉月さんもりー兄に会いたがってるし!」

 「ああ。

 じゃあ、着替えてくるから待ってろよ」

 制服より、私服の方が動きやすくて好きだしね。

 というわけで都に離れてもらい、自室へと向かう。

 久しぶりの自室に入って自室を見渡す。

 漫画やら小説やらが大量に置かれている、俺の部屋。

 学園からあんまり出ないから、インターネットで注文するか、こうやって学園の外に出た時に買うか、しなきゃいけないんだよな

 クローゼットに近づいて、私服を取り出し、着替える。

 ちなみにフードが着いた奴なんだけどね。

 ついでに机の引き出しからグラサンを取り出してかけた。

 『クラッシュ』の溜まり場って仮にも暴走族の溜まり場だから、いつ『ブレイク』とかが攻めてくるかもわからないし。

 会長と学園で対面しちゃったからバレて絡まれたら面倒だし。

 部屋から出れば、にこにこと笑う都が俺を待っていた。

 「じゃ、行こうか。りー兄」

 「ああ」

 『クラッシュ』の溜まり場に行くのは久しぶりだ。

 元カレ―――今は海外に行ってるんだが、そいつが『クラッシュ』に所属してたから、そいつが海外に行ってからも『クラッシュ』のメンバーとは普通に仲が良い。

 あ、ちなみに俺元カレもいるけど、元カノも普通にいる。

 まあ、俺バイだし、両方経験あるし。

 龍宮の実家からそんなにとおくないから、溜まり場まで歩く。

 そうして、しばらく歩いて溜まり場に到着した。

 『クラッシュ』の溜まり場はあるバーだ。

 『クラッシュ』の先代がやってるバーで、そのバー、『star』は代々『クラッシュ』の溜まり場になっている。

 俺はご機嫌そうに鼻歌を歌っている都と並んで、そのバーの中へと入った。

 「都!」

 「そいつ、誰?」

 中にいたメンバーが声を上げる。

 まあ知らない奴が居ても無理はない

 俺が此処に最後に来たのは3ヶ月も前だ。

 「僕のお兄ちゃんの、りー兄だよ!」

 都が、嬉しそうに笑って俺を紹介する。

 若干都の笑顔に顔を赤くしている奴が居る……。まぁ、都可愛いからなぁ。

 「都の兄?」

 「てかりー兄って事は噂の理人さん?」

 次々に声が上がるが、噂って何だ、噂って

 「都、噂って何?」

 「あーそれは………」

 都が口を開こうとした時、バーンっと勢いよく奥の扉が開く。

 ―――奥は『クラッシュ』の幹部室みたいになっていたのだ。

 そうして、その扉を開けた人物は、

 「りーひーと!」

 なんて、俺の名を呼びながら俺に向かってくる。

 抱きつこうとしてるのは目に見えているので、俺は体をずらしてそれを避ける。

 そうすれば、ドーン、と勢いよくそいつは俺の後ろの壁にぶつかった。

 「くっ、何で避けるんだ!」

 壁にぶつかったそいつは、俺の方を見る。

 「逆に聞くが、何で俺が葉月に抱きつかれなきゃいけないんだ?」

 「何でって、俺が理人を抱きしめたいからに決まってんじゃん!」

 そいつ――寺口葉月テラグチハヅキは、『クラッシュ』の現総長だ。

 真っ赤に染められた髪を靡かせている、俺よりも10センチ以上背の高い葉月は、イケメンに分類されるであろう。葉月の背の高さは羨ましい。

 「俺は抱きつかれたくないから

 で、都。噂って?」

 「あー葉月さんの惚れてる相手って事で『クラッシュ』内じゃりー兄有名なんだよ」

 「ふーん…」

 どんだけ、葉月俺が好きだって言ってんだよ。まぁ、別にいいけど。

 「総長、その人が総長の思い人ですか?」

 「おう、可愛いだろ! 俺の理人!」

 葉月が得意げに何かいってる。けど、一つ突っ込みたい。

 「は?

 俺は葉月の物になったつもりないし」

 「葉月さん、何言ってんの?

 りー兄は葉月さんのじゃないよ!」

 俺と都は同時に口を開く。俺は葉月のものではない。

 「理人は俺の物になる運命!」

 「いや、ならないって。

 大体葉月って俺の好みじゃないし」

 「いつか、理人に、俺の事好きだって言わせたい。

 つか久しぶりの理人、可愛い、つかもう抱かせろ! って気分

 つかもう理人が許可してくれるなら俺は理人は滅茶苦茶に…」

 「葉月……、俺はネコじゃなくてタチだし。

 そもそもんな許可出さないから

 そしてお前には羞恥心がないのか? 抱かせろとかさ…」

 何か毎回だが、呆れてしまう。

 つか断っても断っても葉月はかんな感じ。

 こいつ、俺が元カレと付き合ってる時からこんな感じだった。

 葉月は俺に一目惚れしたらしいから。

 その元カレが葉月に俺を紹介しなきゃよかったって後悔してたんだよなあ。

 いつも葉月の発言にその元カレは反発してやたらと俺にスキンシップ取ってきたんだよなあ…。まぁ、見ているぶんには楽しかったけれど。

 「本心をいってるだけだ!

 俺は理人に触れたいし、キスしたいし、理人を抱きたい!」

 「はいはい、そんな事はさせないから」

 「流された…。でも俺は信じてる、理人が俺の物になる事を!」

 「いや、信じないでよ」

 本当、こいつは諦めが悪いというか……。

 初めて会ったのはまだ四宮学園に行く前…中二の4月ぐらいか。

 そん時から常にこんな感じだ。

 つか毎回抱きたいとか言ってるが、欲求不満なのか、こいつ。

 ちなみに葉月は俺より一つ上。

 別に葉月の事嫌いなわけじゃない。

 でも、恋愛感情なんて葉月には持ってない。

 だから期待させない方がいい。

 思わせ振りな態度なんて、葉月を傷つけるだけだから。

 そんな事を考えながら葉月を見た時、奥の幹部室から別の誰かが出てきた。

 「よう、理人久しぶりだな」

 「あ、理人だ」

 出てきたのは、『クラッシュ』副総長・風見当真カザミトウマと幹部の道原智基ミチハラトモキだ。

 「当真君、智基君久しぶり」

 「おう」

 俺の言葉に、当真君はにっこりと笑う。

 当真君はかっこいい系の黒髪の男だ。

 副総長を努めるカリスマ性を持っていて、肩に刺青をいれている。

 「久しぶりだね~」

 なんてにっこり笑う智基君はかっこいいというより可愛いという言葉が似合う、茶髪の男だ。

 「そういえば理人、お前の学園に『妃龍』が来たらしいな」

 当真君が口を開く。

 あ、『ブレイク』が生徒会って事と俺が親衛隊隊長な事、『クラッシュ』のメンバーには一通り話してあるんだよね。

 「うん

 噂に聞いてた以上に『妃龍』はうざいね」

 本当、噂以上にうざくてびっくりしちゃうもん。

 「まあ、『妃龍』は外見だけだからな」

 「学園では変装してその外見も隠れてんだけど」

 外見だけ、という当真君に俺は言う。

 本当に謎なのはさ、毛玉君に惚れてる連中。

 唯一のとりえの外見さえも隠れてる性格が最悪な奴に何で惚れるのかね。

 「へえ、『妃龍』って変装してるんだねえ」

 智基君が面白そうに笑う。そんな智基君に俺は説明する。

 「そう、それなのに『妃龍』にどんどんイケメンが落ちていくんだけど

 何か『妃龍』にはイケメンを惹き付ける変な魅力でもあるのかな?って思っちゃうよ俺」

 「理人ー!」

 説明していたら、葉月がそう言って、後ろから抱きついてくる。邪魔。

 何だよ、とでもいう風に俺は後ろを振り向いていう。

 「抱きつくな、暑苦しい」

 「当真と智基とばかり話さずに俺に構ってよ!

 久しぶりに理人が居るのに理人と話せないとか俺悲しい!

 つか理人、いい匂いする…。抱き心地抜群だよな!」

 「とりあえず離せ」

 そう言って、俺は葉月を自分から剥がす。

 それにしても葉月って本当ストレートに何でも言ってくるよな。まぁ、こそこそストーカーみたいにされるよりはこっちの方がいいけれど。

 「葉月、俺らは『妃龍』についと話してるんだ」

 「あー理人の所に居るんだっけ? あのキモい奴。」

 「そうそう。

 『妃龍』が来てから色々面倒なんだよねえ。

 あ、てか松崎ってさー、葉月の所の下の会社だよね?」

 俺が今日、此処に来た理由の一つが実はそれだったりする。

 葉月の実家、寺口家は龍宮家と並ぶ権力を持つ。

 そして松崎君の実家は、確か葉月の家の下の会社のはずだ。

 あ、『ブレイク』は総長、副総長、幹部……全員権力者の息子なんだけど、『クラッシュ』は葉月と都以外は一般家庭なんだよね。

 というか、ある会社の御曹司とかで成立している『ブレイク』の総長、副総長、幹部ってある意味凄いよね。

 葉月の場合、前総長に助けられて憧れたからって『クラッシュ』に入ってて、都は俺がよく行く場所だからって付いてくるようになってそれで入ったんだ。

 生徒会は何で暴走族してるんだろう、なんてちょっと思う。

 「そうだけど、松崎家がどうかしたのか?」

 葉月が不思議そうに問いかける。

 「松崎総矢ってわかる?」

 「あ、わかるわかる。

 松崎家の次男だろ? 何度か会った事あるけど、アイツがどうかしたのか?」

 「松崎君さ。同じクラスなんだけど最低すぎでさ。

 見事なまでに『妃龍』の信者になってるし、春ちゃん……最近友達になった子を裏切ってさ。

 その俺の友人が傷ついてんの、松崎君のせいで」

 にこにこと笑いながら、一気に言ってやる。そうすれば、葉月も悪い笑みを浮かべて、俺に聞いてくる。

 「ふーん。

 で、理人は俺に何をしてほしいわけ?」

 「ふふ、葉月は話が早くて助かるよ。

 葉月は松崎君の両親にちょっと頼み事をしてくれればいいだけだよ。」

 そう、松崎君を精神的に痛め付けるために、逃げ場を無くす手助けをしてもらうだけ―――、真希に聞いた所松崎君は反省してないみたいだしね。

 「その頼み事って?」

 「それは―――」

 そして俺は葉月にある事を頼んだ。






 *



 葉月に頼み事をした後、俺は『クラッシュ』の幹部室でのんびりと過ごしていた。

 幹部室にあるヤンキー漫画を読む

 こういう、熱い男っていいよなあ、なんて思う。

 漫画読んでたら、

 「理人! 漫画ばっか読まないで俺と話そうよ」

 とか葉月が言ってたが、面白いシーンだったので無視した。

 「俺へこんじゃうよ! 理人」

 「……あとで構ってやるから黙ってて」

 「おう、じゃあ待ってる!」

 葉月って単純だよな、本当と思う。

 当真と智基はソファに座って対戦ゲームをしている。

 幹部はあと二人いるけどその二人は今日バーには来てないらしい。

 そうやって過ごしていたら、幹部室の扉が勢いよく開かれた。

 ……入ってきたのは、都だった。

 「葉月さん! 何か『ブレイク』の幹部が来たんですけど!」

 えー、何で俺がいるタイミングで来ちゃうんだ、生徒会。

 葉月は都の言葉に俺をちらっと見る。

 「理人、奴らと面識は?」

 「悲しい事に最近会長と接触した。

 というわけで、俺は隠れてていい? 『クラッシュ』と仲良いとかバレたら面倒だし」

 本当、会長と接触なんてしたくなかったのに……あの会長が愛ちゃんを悲しませるから。

 考えたら苛々してきた。

 「じゃ、理人、此処にいろよ」

 「ああ」

 俺は頷いて、大人しく幹部室に居る事にした。









 *寺口葉月side



 『ブレイク』の総長、副総長、幹部の6人が俺の前に居る

 こいつら何をしに来たんだ。

 わざわざ幹部だけでやってきて何の用だ。

 というか何で今日来たんだ!

 理人が折角溜まり場に来てくれてるのに! 久しぶりの理人なのに!

 そう思いながら理人の事を考える。

 理人、いつ見ても可愛い。

 つか可愛い俺の理人が『ブレイク』の奴らの親衛隊やってるのに目の前の奴らにムカつく。

 理人が『ブレイク』の幹部達嫌いなのは知ってるけど…。つか理人と同じ学校通ってるなんて羨ましい!

 「何の用だ?」

 俺は真っ直ぐに、『ブレイク』総長東宮暁を見て言った。

 「『妃龍』は何処だ?」

 「は?」

 いきなりこいつは何を言ってるんだ。

 と言うか、『妃龍』なんてどうでもいいし。

 「二週間前から『妃龍』が姿を消したのです。

 『龍虎』のメンバーにも『探さないでください』って紙を残して消えた様で……」

 三谷直哉がそんな事を言いながら俺を睨んでくる。

 ………こいつらは馬鹿なのか。

 そもそも『妃龍』はお前らの学校に居るし。しかも理人の話じゃ追い回しているだろうに、それなのに気づかないものなのか?

 「知らねえよ

 あんな奴どうでもいい」

 俺がそう答えれば、

 「「えー僕の『妃龍』に興味ないとかありえないー」」

 茶髪の髪を靡かせた、ドッペルゲンガーのようにそっくりな双子・渕上隗と渕上螢が口を開いた。

 「君可愛いねえ~」

 『ブレイク』の幹部峰義彦はそう言って、都にはなしかけている。

 金髪の髪を靡かせた、美形なんだけど、理人曰く下半身野郎。

 男でも女でも行けて抱きまくってるらしい。 

 「お前、都に近づくな」

 「都こっちおいで」

 「死ね、変態!」

 『クラッシュ』内にいる都の可愛さにやられている面々が、峰が近づかないようにさっと行動する。

 「……よし……めっ。『クラッシュ』……敵」

 『ブレイク』の幹部安住由月はそう言って、峰が都を口説くのをとめている。

 どうでもいいけど、邪魔。

 「とりあえずさ、お前ら帰れ。

 邪魔だから」

 俺は『ブレイク』の連中が好きじゃないんだ。

 此処に長々いられても困るし。

 『ブレイク』ってNo.3の暴走族だしこの六人ぐらい俺一人でぼこせるけど、ぼこすのダルい、こんな奴らを。

 「『妃龍』が居ないという証拠がないなら俺様は帰らん」

 ……東宮、そこは帰っておけよ。

 そしていつも思うんだが自分を俺様と言って恥ずかしくないのか。

 「はあ、お前らはどうしたら帰るんだ?」

 「幹部室を見せろ

 それで居ないなら帰ってやる」

 幹部室………無理。

 理人が今日は居るんだ。理人は生徒会……『ブレイク』の上の連中に会いたくないって言ってた。

 「無理」

 「そんな風に拒否するなんて、やはり奥に『妃龍』が居るのでしょう?」

 三谷がそう言って、得意気に俺を見る。意味のわからない見当違いの事を言うのはやめてほしい。

 「絶対にそれはあり得ない。

 だけど、無理」

 俺の可愛い可愛い理人をこいつらに見せるとか嫌だ。

 大体こいつら変わった奴と顔がいい奴にすぐ惚れるから、理人に惚れられたら困る。

 「本当に居ないなら見せろ」

 「そうですよ、見せなさい」

 「「そうだよ、見せてよ」」

 「あー、あの子可愛かったなあ」

 「………よしっ、……ンパ……めっ」

 一気に喋り出す『ブレイク』の奴ら。

 峰と安住は『妃龍』の事は言ってないが、あとの4人は『妃龍』に執着している。

 というか峰は、『妃龍』の変装姿に惚れたらしいけど相変わらずナンパっぽい事はしているようだ。

 どうしようかな、とちらっと当真達を見る。

 此処でぼこしたら、『妃龍』が溜まり場にいるとかいうわけのわからない噂が出回るだろうし……。

 そんな事を考えていれば、当真がこちらにやってきた。

 そして、『ブレイク』の奴らに向かっていう。

 「じゃあ見せてやる

 ただ中に俺らの友人がいるから絡むなよ」










 *龍宮理人 side

 「おーかっけーなあ」

 俺はのんびりと幹部室で、漫画の続きを読んでいた。

 生徒会メンバーが幹部室に入ってくるとまずいから、一応フードを被って、サングラスを装備している。

 さて、次の巻を読むかと思って手に取った時、幹部室の扉が開かれた。

 ―――『ブレイク』の奴らは帰ったのか、と視線を向ければ、葉月達と生徒会メンバーが居た。

 って何で幹部室に生徒会を入れているんだ? 断れなかったんだろうか。

 「ほら、『妃龍』は居ないだろーが」

 葉月が呆れたような声を発して、生徒会の奴らにいう。

 毛玉君が此処にいると思ってたのか。

 流石生徒会………馬鹿だ。葉月が毛玉君嫌っていることも理解してなかったのか。

 「確かに、居ないな

 それでそいつが貴様らの友人か?」

 会長がそんな事を言いながら俺を見ている。

 フードとかサングラスで顔が隠れててよかった。

 学園で接触しちゃったし正直面倒だからな。

 「『龍牙』が幹部室まで入れる友人ですか、興味があります」

 副会長、俺はあんたには全く興味がない。

 というかわんこ達じゃなくて毛玉君を気に入ったあんたなんか嫌い。

 「『龍牙』のー」

 「お気に入りー」

 「「興味あるなー」」

 渕上の双子書記……、ちゃんと近くで見んのは初めてだけどそっくりだな。

 双子の親衛隊の子に双子の写真よく見せられて双子の違いについて語られるから見分けはつくけど。

 「顔見せてよ」

 黙れ。下半身会計。俺は親衛隊泣かせのあんたが嫌いだ。

 「………まえ……何?」

 安住君…………、君は何を言ってるんだ?

 理解出来ないぞ。

 少なくとも俺には。誰か通訳してくれ。

 「……な…え、何?」

 俺が意味がわかってない事を察したのか、安住君はもう一度言ってくれた。

 理解した、名前、何? と聞かれてるらしい。

 「……秘密だ」

 いつも喋る時よりもトーンを低くする。

 会長とは一度だけ接触しただけで他の面々とは初顔合わせだし、バレないだろう、これで。

 葉月はいつもとは違う声を出す俺に、面白そうに笑っている。

 「教え………れ……、ない?」

 何か安住君が悲しそうな顔をしてこっちを見ている。

 ……何か可愛い。

 だけど名前教えたら面倒だからなあ。

 「すまない。教える事は出来ない」

 口調も少し、変えとこう、そう思って変えてみる。

 「貴様……顔も見せず名前も言わないつもりか」

 会長……、貴様とか言って恥ずかしくないのか? そしてあんたなんかに教える事は何もない。

 「葉月」

 俺は会長を無視して、葉月の名前を呼ぶ。

 「ん?」

 「帰る事にする」

 「そうか、また来いよ」

 「ああ」

 ソファから立ち上がって、葉月と会話を交わす。

 そうしていれば、

 「貴様、俺様を無視するな」

 会長が何か喚いて、近づいて俺の肩を掴む。

 そうして会長の方を向かせようとする。

 ウザいな、そう思っていたら、パシッという何かを弾く男がした。

 ―――葉月が俺の肩に置いていた会長の手を払ったのだ。

 ナイス、葉月。

 よくぞ払ってくれた。

 会長に触られるとか気色悪すぎるからな。

 「何をする、『龍牙』」

 「こいつに触るな。というか『妃龍』が居ないのわかってんだから出てけ」

 葉月の冷たい声が放たれる。

 俺が名前言いたくないのわかってるからか、敢えて名前を言わない葉月は流石だ。

 ま、葉月は俺の嫌がる事はしないしねえ。

 「……『龍牙』、貴様はそんなにこいつが大切なのか?

 ますます顔が見たくなった」

 会長は全力で俺に興味を持つな、と頼み込みたい。

 あー今日溜まり場来なきゃよかったかも。

 生徒会に遭遇するなんて。

 「何でてめえに見せなきゃいけねえんだよ」

 「はっ、俺様がみたいんだよ。見せろ」

 てゆーか、お二人さん。何本人放置で喋ってんの。

 「……俺は顔などさらすつもりはない

 出ていかないなら、俺が出ていく」

 口調変えるの疲れてきたからさっさと家に帰りたい。

 生徒会に絡むとかめんどくさすぎる。

 出入り口へと歩こうとすれば、目の前に副会長、双子、下半身会計が立ちふさがる。

 ちなみに会長は後ろで葉月に止められてて、無口会計は何か見てるだけ。

 「お前ら、邪魔すんな、こいつの」

 「そうだよ!」

 当真君と智基君がそう言いながら、前にいる連中をどかしてくれる。

 後ろにいる会長は、「待てよ!」なんて言って、肩を掴んでくる。

 うん、ウザイ。

 というわけで、一発殴りつけました。

 日頃からムカついてるから顔面に。

 会長が勢いよく後ろに倒れる。

 何かすっきりしたかも!

 学園では愛ちゃん達が悲しむから会長殴れなかったけど…、会長は今俺が佐原理人だって知らないから…。

 愛ちゃん達も会長を殴ったのは正体不明の族関係者って思うだろうしね。

 「そ……ぉ」

 安住君がそう言って心配そうに会長に近寄る。

 ……今のは総長って言ったのか?

 やっぱり通訳なきゃ一回じゃ理解出来ない。

 「では、俺は帰るとする」

 俺はそう言って、会長がぶっとばされた事に唖然とする副会長を放棄して溜まり場を後にした。











 *三谷直哉side


 「さて、俺は帰るとする」

 そう言って、謎の男は去っていく。

 それを私は呆然と見ていた。

 ―――暁が一撃でぶっ飛ばされて、今も床に倒れ込んだままなのだ。

 「……っ」

 暁が痛そうに体を起こす。

 「そ……ぅ、大……ょ夫?」

 心配そうに暁を見ている由月。

 「会長がぶっ飛んだよー」

 「しかも一撃ー」

 「「凄いねー」」

 双子はそう言って面白そうに笑っている。

 「顔見たかったなあ」

 なんて残念そうに義彦は言葉を発していた。

 暁を一発で倒れさせるなんてただ者ではありません。

 本当に彼は誰なのでしょうか。

 「……『龍牙』彼は誰ですか?」

 「はっ、てめえら何かに教えるわけねえだろうが」

 そう言って、『龍牙』は笑っている。

 仲間ではない者を『龍牙』――寺口葉月が入れるとは聞いた事がない。

 きっと彼は、『龍牙』の特別なのだ。

 「貴様がそんなに隠したがる存在か…。面白い」

 起き上がった暁はそう言って面白そうに笑っている。

 どうやら暁は彼に興味を持ったらしい。

 私が一番今興味を持って知りたいのは操の事。

 暁が彼に興味を持って、操を興味の対象から外してくれないかなと思います。

 私は操を手に入れたい。可愛がりたい。

 自分の恋人にしたい。

 だから、ライバルには減って欲しいのです。

 「はあ……、とりあえず去れよ

 もう用はないだろ」

 『龍牙』は、暁の興味を持った。面白いとかいう台詞にため息は吐いていった。

 どうやら暁が彼に興味を持った事実は『龍牙』にとって面白くない事らしかった。

 まあ彼が誰かは気になりますが、私はそれよりも操に会いたいのです。

 だからすぐ暁達を連れて帰る事にした。

 ―――学園に戻ったら操を抱き締めてあげましょう。

 そんな事を考えて口元が緩んだ。







・操が来てから生徒会は会長、双子兄、無口会計によって機能されている。

・会長は自分の仕事しかしないので、双子兄と無口会計は結構ハードな生活を送っている。



☆理人の強さについて

大体この辺の不良の強さは、

葉月>当真>『龍虎』副総長>『クラッシュ』幹部>暁>『龍虎』幹部>直哉>『妃龍』(毛玉君)>『ブレイク』幹部>その他大勢

↑のようになってます

で、理人は『クラッシュ』幹部と同等か、暁<理人<『クラッシュ』幹部ぐらいの強さです。

※『クラッシュ』のメンバーとは仲がいいので色々仕込まれた+龍宮家は護身術を学ぶために今の理人の強さがあります。


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