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黒幕b

 超加速状態になれば、女を圧倒することができる。たとえ手持ちの剣で相手の服を避けなかったとしても、

(命がすり減ったとしても家族が守れるのならばかまわない)

 だが、女は絶え間ない攻撃をつづけ、イットに指輪を使用させる隙をあたえなかった。

「何か狙ってるようだけどさせないよ」

 鉄壁の鎧に身を包んだ女は、少しずつイットを追い込んでいく。


「お兄ちゃん!」

 結界に押しつぶされそうなヴァーニィが、無理やりに立ち上がろうとする。

 立ち上がったところで、まともな援護ができるわけでもないのだが、なにもしないままではいられなかった。

 それをみたローブの男はさらに結界の出力をあげる。

「きゃぁ」

 すると、ヴァーニィが崩れおちる。

 まわりからも、うめき声があがる。

「麗しき兄妹愛だねぇ」

 女は意地の悪い笑みを浮かべると、ふところから取り出したナイフをヴァーニィへと投げつけた。

 まっすぐヴァーニィを狙った投げナイフをイットはワイヤーを操り絡めおとす。

 だが、女の狙いはイットの気をそらすことにあった。

「隙あり」

 イットの死角にまわった女が切りかかる。襲い掛かる刃をとっさに身をよじり交わすイットだが、その手から小剣がこぼれおちる。

「これで終わりだね」

 勝利を確信した女が短剣をふりあげる。

 武器を失ったイットは、とっさに腰にさげたもうひとつの武器へと手をかけた。

 とっさに短剣を引き抜くと、ずっしりとした重量が手にかかる。不思議なことに、それは鞘から抜いたほうが重みを増しているようだった。

 陽光に晒された黒い刀身が、女の振るったナイフを受け止め、その歯をかけさせた。

 イットの本能がこの短剣は『使える』と判断した。

 イットは短剣を構え直すと、女の身体を斬りつけた。すると、それまで斬れなかった服をやすやすと斬り裂いた。

「なっ、アーシの服を!?」

 女は驚愕し傷口を押さえる。

 女の劣勢に背後に控えていたふたりが同様する。

「くっ、このくらいじゃ、まだ引けないね。アータらをつかまえるためにだいぶ金がかかってるんだ。それにその短剣がアーシの服を斬れってわかってるなら避ければいいだけだしー」

 そう言って再び女が斬りかかる。

 女の動きは速く、そして重いものだった。イットは冷静に自分の位置取りを確認しながらそれを手にした短剣で受け流す。

「おらおらどーしたんだい。せっかくの武器が泣いてるよ」

 イットはワイヤーを操り、近くの木を切り倒す。倒れくる木を跳躍し女はかわす。

「そんな手にかか……なっ」

 だが、地面に着地するとそこで動けなくなった。

「さっきの質問、やっぱり間違いなかったようだな」

 姉妹同様、結界に捕らわれ、動けなくなった女へと語りかける。


「まさか、こいつまで見殺しにしたりはしないよな?」

 黒光りする短剣を女の首もとに突き付けるイット。

 だが、振り返ると、そこに控えていたハズのふたりの姿が消えていた。そしてあたりが煙に包まれる。

「くそっ」

 口元を袖で覆いあたりを見回すイット。

 煙の中から「あいて」という声が聞こえる。

「そこか」

 イットは音源にむかいワイヤーを操作すると、確かに何かをつかまえた。煙が晴れ自分が捕まえたものの正体をしるイット。

 それはその場から逃げだそうとしたブッブの身体だった。

 ドサクサに紛れてワイヤーを切断したブッブが逃げようとしたものの、なぜかその場に張られていた魔法のロープに足をとられたのだ。

「ニイニー、マウスィーの紐、役にたった?」

 すぐ近くに、現われた妹の自慢げな顔をみる。どうやら彼女はみなが結界に捕らわれている間も、一人抜けだし罠を仕掛けていたらしいと知る。

「そうだな、ありがとな」


 やがて煙が完全に晴れても、三人組の姿はみつからなかった。

「逃げられたか」

 だが、結界は解け欠陥児童たちも自由を取り戻している。

「ブッブ、オマエにはいろいろと聞きたいことがある」

 手に入れたばかりの黒い刃をブッブの首筋にあてる。

「こんどは手加減しないぜ、仲間を守る為なら俺はなんでもやる」

「しらねー。あいつらが勝手にやったんだ」

 ブッブはそう言ってなにも応えられなかった。

「ふぅ、やれやれだぜ」

 ブッブを縛り直し、一息つくイット。

「どうやら、なんとかなったようだな」

 対魔物結界が解かれたことにより自由をとりもどすドララたち。

「それにしても、アイツらもマヌケよのう。ワシらのうちで最強であるイットになんら注意を払っていなかったのだからな」

 茶化すように言う。

 最強はドララであろうとイットは思うが、別段口にだして否定はしなかった。

「それにしても、無音の跳躍者(サイレントジャンパー)は、毒を手放しても健在のようじゃな。たのもしいことだ」

「その呼び名はやめてくれ」

 笑うドララに嫌そうにイットは言う。

「それよりみんな怪我はないか?」

「大丈夫だよ、おにいちゃん♪」

 代表して、ヴァーニィが応える。


【イット:無音の跳躍者サイレント・ジャンパー

【ドララ:不動の幼児体型(動かぬ幼女)

【ニュウ:慈愛の女神(ふわふわゴッドネス)

【アマホ:天翔る刃(ナントカに刃物)

【ダイガ:華麗なる暴力(ケルナグール)

【スネコ:粘着する愛情(ヤンデレ)

【ワンワ:地獄の境界線(ラインオブヘル)

【ヴァーニィ:将来有望みせいじゅく

【ライテ:躊躇なき双子ノンストッパーツインズ

【レフテ:躊躇なき双子ノンストッパーツインズ

【マウスィー:小さな淑女(騒音)

【カミクゥ:危険な三歳児(取扱注意)

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