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ハイル 救いの物語  作者: 夢落ち ポカ(現在一時凍結中)
第5章 戦闘戦争辟易代行者編
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第059話 キジも鳴かねば討たれまいに

遅くなりました、ようやく投稿です。

誤字脱字がございましたらコメントよろしくお願いします。

 


 その戦闘は、リオンたちが見た中でも特に鬼気迫るものであった。


 拳を振り抜いたと同時に発生する『轟』という暴威を躱すウル。


 既に音速を越えているのか、音が後からやってくるほどの速度と威力に、さすがのウルも驚いていた。


 対してウルはエインディアの攻撃を躱したと同時に神器【破軍】を使い遠心力を利用して横殴りにしようとする。


 エインディア同様、音が後から発生し更に地面を抉りながらエインディアに迫ってくるため、回避などは不可能だ。


 必然、唯一露出している頭部を両腕で防ぎながら突貫していき、ウルの懐に入り込もうとする。


 ウルはエインディアの後生を予期していたのか、姿勢を低くしながら突貫してくるエインディアの顔面目掛けて、更に回転してからの蹴りを入れようとした。


 本来ならばバランスを崩して倒れそうな体勢であったが、ウルの鍛えた体幹は軽々と実現する。


 エインディアは側面からやってくる蹴りに対応しようとしたが、支配されているだけあってか反応にブレがあり躱せるはずの攻撃を逆に受けてしまった。


 ゴムボールのように飛んでいくエインディアを更に追撃するため、ウルはエインディア目掛けて魔法を詠唱する。


『大地の鉄槌(ハマーエレ)っ!!』


 魔法というものは魔力を仲介してそれぞれの系統に変換される『現象』である。


 火系統ならば火に、水系統ならば水に―――上位互換も同様だ―――魔力が込められている故に、ウルやエインディアの纏っている神器の鎧は魔力を崩壊させて無効化させることが出来るのである。


 しかし、唯一欠点と言えるものがあった。


 火も水も、物質としては『重み(・・)』というものが欠けていた。


 そしてウルが放ったのは、地系統により発現した『超重量(・・・)の鉄塊』による圧殺攻撃であった。


 例え魔力を崩壊させたとしても、あとに残るこの鉄塊は崩壊せずそのままエインディアに降ってくる。


 鎧の欠点を知るウルならばこその攻撃で、エインディアはまんまとウルの攻撃を受けた訳である。


 デザインされた鉄槌は黒い立方体で、とっさに逃げようとしたエインディアだったがすぐに考えを止めて鉄槌の破壊に乗り出した。


「はっはっは!

 やるのお代行者よ、あっという間にわしピンチじゃな!」


 喜んでいるのかぼやいているのか、そんな呑気な言葉をウルに向けたエインディアだったが、両手の武具は忙しなく鉄槌の破壊に勤しんでいた。


「…その攻撃はデュケイン様との修行の際に使われた戦法でしてね、こうして足止めと対処できない状況、そして隙を作り出すという事で有用だったんですよ。

 こうして話が出来る位には……っ!?」


 ウルはさらに鉄槌を重ねようとしたが、不意打ちにより接近してくる高密度の鉄塊弾を跳んで躱した。


 態勢を立て直すために『世界は氷で出来ている』で大気中に氷の足場を作り『黄金照らす風鏡』で索敵した。


 相変わらず何らかの妨害が入りそのほとんどは分からずじまいの周辺であったが、唯一不意打ちの攻撃した地点と思われる場所周辺だけ、実に『丸わかり』な状態だったのである。


「援護にしては中々ですが、愚かな。

 黙っていれば寿命は延びたものの…『天の威を知らぬ愚者に鉄槌を』っ!!」


『薄明光線』をイメージして発動されるようで、歪限定にしか通用しないこの術であったが、空間を歪ませるほど高密度の光は単純な『熱量』による『超高温』による攻撃である。


 例え歪でなかったとしても、高温の熱が敵に襲い掛かる―――しかも魔力を帯びていないため魔法防御不能―――ため、対処できなければどんな生物であろうと細胞を欠片も残さず燃焼する事は間違いない。


 巨大な光の柱が天空から落とされたことを確認して、再度エインディアに鉄槌を追加したウルは、更に枷を外した。


 当初『理解(ビナー)』まで解放していたが、更にウルは『知恵(コクマー)』にまで解放する。


 既に溢れ出している魔力は大気を穢しはじめたのか、ウルの周りからは白い蒸気なようなものが発生して、それが魔力だと後にリオンたちは知る事になった。


 鉄塊をぶち抜いて出てきたエインディアだったが、待ち構えていたウルに【破軍】の一撃が頭上に振り下ろされた。


 両腕で交差するように防いだエインディアの表情は、やはり嬉しそうなもので、ウルはエインディアがデュケイン同様戦闘狂の面が見えると思うのだったが、エインディアの突然の言葉に呆気にとられた。


「…ほぉ、これはありがたい。

 喜べ代行者よ、つい今しがたわしを操っていたものが死んだようじゃ。

 あとはわしを操るために残っておる魔力を消費し続ければ、わしは自由の身となるじゃろう。

 正味な話もっと戦いたかったんじゃが…また後日してくれればよい、急ぎわしに魔力を使わせ続けよ」


「…ああ、それはきっと先ほど攻撃した存在でしょうね…。

 攻撃したから大規模範囲魔法で焼いたんですが…まさか術者本人とは。

 まったく、攻撃などしなければ寿命が延びたものを」


 取り留めもしなかった攻撃であったが、ウルは先ほどの『天の威を知らぬ愚者に鉄槌を』でエインディアを操っていた術者を倒していたようであった。


 気の抜ける話であったが、ここに来てウルは敵は狡猾なのか間抜けなのか、評価に迷う感情が浮き上がって来ていたが、今は目の前の対処である。


 以前エインディアの支配は続いており、エインディアの魔力が枯渇するまで攻撃を加えねばならないようであった。


 ウルはエインディアに攻撃を繰り返していき、エインディアはここにきて魔法を使っての迎撃を始めた。


 どうやら支配されたころは満足に抵抗できていなかったらしいが、術者が死んだことによる支配率の変動で攻撃手段の幅が広がって来ていた。


 ウルは炎弾や光弾を切り裂きながら、エインディアが自由になるまで延々とこの茶番を続けていくのであった。


 それはまるでバッティング練習のようで、投げるエインディア、|打つ(切る)ウルという何とも見る者によっては鬼気迫る戦闘だが、本人たちからすると『早く終わらないかなぁ』とぼやく声の聞こえる、緊張感もへったくれもない時間となるのであった。


「デュケイン様ってひどいでしょう?

 私なんて修行の際に何度惨殺死体にされたことか、あの方と戦闘するなんて是が非でも二度とごめんです」


「主もか、わしもヴァッサーゴ卿に酷く苛められての。

 足に使われたり都合の良い盾にされたりと散々な待遇じゃったわ。

 まぁ最近は弟子で遊んでおるからあまり被害は受けておらんかったが…」


「え、また犠牲者を作っていたのですか、あのドS魔神?

 可愛そうに、その弟子とやらは近い内に根性がねじ曲がりますね、断言してもいい」


「いや、それが実によい子でのお、あまりにもピュア(・・・)すぎてあのドSもそこまで酷い事はしておらんのじゃ。

 まぁ、扱いは面白いオモチャじゃがの」


「ナニソレコワイ」


 と、共通の知人であるデュケインを扱き下ろすという余裕の展開が終始続いていた。


 支配率は次第にエインディアが取り戻していき、1時間もしないうちに本来の肉体の所有者であるエインディアに取り戻されるのであった。


 激戦、であることには違いなかった。


 しかし、ウルからすればこれほど間の抜けた戦闘は以前アヴァロンで貴族に襲われたとき以上に、重い溜息をつくような戦闘でもあった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「よし、繋がったぞ!!

 あとは座標を固定して…よし、あとは戦闘が終わってからこちらへ呼び出せば…」


 バルが戦況を見守る中、ウルに不意打ちを喰らわせようとした歪人に注目した。


「愚かな、悪手を指すとは…魔法使いとしては1流かもしれんが、戦術にかけては3流以下か。

 何とも情けないが…まぁ、こちらとしては敵は愚かな方が助かる。

 この件は早く終わらせた方が…お?」


 バルはウルの攻撃で歪人が死んだと思っていたが、意外な事に生きていたのに気付いた。


 とはいえ既に虫の息な状態であったため、放っていおいても死ぬかと思ったのだが、どこから取り寄せたのか、強大な力を使い歪人は回復した。


 その強大な力に心当たりのあったバルは、その端正な顔が硬直した。


 次いで、神器【鳴神】を取り出すと、安定状態の門に向かって矢を放った。


「神王様の力を掠め取る盗人め、その罪を贖え」


 矢は次元を超えて下界へと現れると、歪人の心臓に吸い込まれるように射ぬいた。


 本来ならば『管理者の間』から下界への攻撃は明確なルール違反であり、その罰則は即座に来る。


『管理者の間』からバル目掛けて黒い雷が襲ってきた。


 バルの反応する速度を遥かに超える速度で襲い掛かってきた雷だったが、バルを傷つける事は無かった。


 思わぬところで助け舟が入ったようで、バルの周りに張られた結界の魔力により誰だかわかると、バルは大声を上げ怒鳴りつけた。


「デュケイン、このバカモノが!!」


 怒鳴りつけられた魔神は寝込んでいた頃とうって変って元気そうで、眼帯や服装など、いつもと変わらない姿をしていたのであった。


 端整な顔立ちでの不敵そうな笑みは相変わらず似合っておらず、とりあえずは体長が回復したのだと安堵するバルは、安堵のため息をついた。


「目を覚ましたらいきなりバルが襲われてるんだもん、世話になった分ちょっとは助けてあげないと目覚め悪いしね。

 どう、僕って優しいでしょ?」


「優しい奴は自分の事を『優しい』なぞいわんよデュケイン。

 …まったく、心配ばかりかけさせる」


 これまで四苦八苦して下界へと繋げようとしてきた苦労も忘れてしまったのか、苦笑いするのだった。


「それよりバル、ウルに連絡してくれた?

 繋げれてたみたいだし、てっきりもうしちゃったんだと思ってたんだけど…その顔からして、繋げられたのはついさっきで、時期を見計らっていたっていう事なのかなぁ?」


「その通りだ、正直あれだけの工程を一瞬でしてしまう貴卿に尊敬の念を抱かずにはいられんな。

 冗談半分に技巧派というだけある」


「それじゃあバルはもう休んでいていいよ、あとは僕がやるから…そんな顔しないでよ、最低限の事しか言わないし、すぐに終わらせるから。

 約束はちゃんと覚えてるって」


 デュケインがふくれた表情をしてバルをじとっと見て、バルは仕方ないとばかりに顔を顰めながら頷いた。


 眠るときにした約束―――心配をかけさせない―――というものをちゃんと覚えていたデュケインの言葉に、渋々と言って納得したのであった。


 デュケインが手をかざすと、複雑な魔法陣が現れる。


 以前のデュケインならば魔方陣などという補助すらも必要としていなかったが、やはり完全な状態では回復できていないようだとバルは気付く。


「さってと、可愛い弟子と再会しよっかなー」


 ニヤニヤと笑いながら、デュケインは下界にいるウルを呼び出すのであった。




読んで戴き誠にありがとうございました。

何とも間抜けな話…さて、歪人って強キャラなはずなのに、何この不遇なやられっぷりはwww

さてと…エインディアを解放したウルたち、エインディアの先導により山深く進行していく中、妨害にも遭いながら目的の場所へと進んでいく。

そこで出会ったのは…次回、第060話 初めまして死んでください です。

ではでは皆様、また次回まで。

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