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ハイル 救いの物語  作者: 夢落ち ポカ(現在一時凍結中)
第5章 戦闘戦争辟易代行者編
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第058話 サーチアンドデストロイ

久しぶりに執筆していたせいか…スランプ気味?

思いのほか難産が続き、お約束がたがえるのかもとびくびくしながらタイピング中でした。

誤字脱字がございましたらコメントよろしくお願いします。

 



「先生、あっちに歪が―――」


「―――『正義の鉄槌(ジャッジメント)』」


 地系統魔法で地中の強固な功績を圧縮して固めた鉄槌がイノシシ型の歪の頭上に振り下ろされる。


 それだけでその歪はウルに近づく事すら出来ずに絶命する。


「先生、空から大型の―――」


「―――『空を切り裂く投槍(ジャベリン)』」


 巨大なワシ型の歪に圧縮した風系統魔法の槍が音速を越えて放たれる。


 羽を切り裂かれ無様に墜落していく歪を一顧だにせず、ウルたちは黒竜が去っていった方角へ歩を進めていく。


 リオンやジュリーが言い終えぬうちにウルは最速の一撃で視界に入った歪を殺戮していった。


 中には空から襲い掛かってくる歪や地面から奇襲をかけてくる歪もいたが、どれも不発に終わっている。


 ウルたち4人の通った道には、赤黒い血を残したクレーターや肉片のこびり付き千切れた木々が残されていた。


 淡々と、周辺を警戒しながら歪を鏖殺(おうさつ)していくウルは、今日何度目かの考えに耽っていた。


 周辺の歪の涌き具合を鑑みて、この付近に黒竜、もしくはそれに関係した者たちがいるはずと思っていたウルであったが、来るのは上位の歪―――ウルにとってはもはやザコ同然の存在―――ばかりで、本丸が一向に見えてこないせいであった。


 歪人―――そう呼ばれる存在や元凶である女神もそこにいると当たりを付けていたウルであったが、やはりこちらも現れる気配を見せなかった。


 現れれば話をする隙もなく瞬殺しようと考えていたウルであったが、こうも当てが外れては若干の肩透かしを喰らった状態で、何とも気欝な状態に片足を突っ込んでいたのである。


 次第に舌打ちする回数も増えていき、仲間たちは下降していくウルの機嫌に注意しながら見つけた歪をウルに教えていっていた。


「…リオン、(ゴミ)どもはどちらから中心にやって来ていますか?」


 そして思考が口に埋め尽くされる寸前、我に返ったウルは今まで殺戮していった歪たちがやって来ていた方角をリオンに尋ねた。


「えっと…大体北からですね。

 奇襲してきた歪はまあ例外ですけど、基本北…あと若干東寄りから来てます」


 と、リオンが言った傍からウルたちからして右前方―――北東の方角からヘビ型の中位歪カズイスナークが現れる。


「今度は図体のデカいゴミですか…『地柱よ聳えよ(ピラーズ)』 『闇よ喰らえ(バニッシャー)』」


 周辺は相変わらずの荒野で媒介になる影は少なかったが、ウルの場合なければ創るという合理性を発揮していた。


 カズイスナークを囲うように4本の地系統魔法で作った柱が現れ、そこに出来た影を媒介に、容赦ない闇の咢が開く。


 巨体なだけあって完食(・・)には5分とかかっていたが、10秒と経たないうちにウルたちは方向修正して北東を目指していった。


「……(ウル)」


「……(リオン)」


「……(ジュリー)」


「……(エーヴァ)」


 黙々と歩いていくウルたち4人は次第に傾斜のきつい小山を昇り始めていた。


 付近を探索しても何も変化が見られなかったため、高い場所から見ようとしていたのであった。


 ウルたちは気付いていなかったが、この時すでに4人は敵が張っていた結界に侵入していたのであるが、完璧といっていいほどの、術者側でしか気づけないほどの結界を張っていたため、気づくことなく山を登っていったのである。


 中腹に着くと、ウルはようやく違和感に気付き警戒し、神器を取り出して神経をとがらせ、それに呼応するかのようにほか3人も辺りを警戒し始めた。


『…主らか、ほとほと縁があるようじゃな』


 頭上から突然声をかけられ咄嗟にウルは『空を投げる投槍』を声の主目掛けて放つ。


 ばきん、という音で周囲を覆ったが、すぐにウルは距離をとった。


 と、ようやく声をかけてきた存在を視認して、ウルは空いた口が塞がらず、ありえないものを見てしまった、という表情をしてしまっていたのである。


 リオンたちはウルの驚き振りに逆に警戒レベルを上げたのか、緊張で足がすくんでいるようであった。


 それほどに、彼女(・・)の圧倒的存在に押されていたのである。


 腰まで伸びきった黒髪に褐色の肌、そして紅い瞳。


 そして禍々しい程の重鎧を付けた美女が悠然と浮かんでいた。


 気配を全く感じ無かったウルたちは、彼女の気まぐれに一瞬だけ感謝し、次いでその余裕っぷりに怒りを覚えた。


「貴女は…何故ここにいるのですか?」


 ゆっくりと降りてきた彼女に、ウルは殺意を送りながら神器を構えていた。


『何…ヴァッサーゴ卿の弟子が…代行者が来ていると分かっての…迎撃せよとの命令が下ったんじゃ。


 まったく、連中のわしの扱いは最悪じゃな、この身が自由になればそっ首千切ってやりたいんじゃが…肉体を完全に支配されておってな、抵抗が出来んのじゃよ』


「まさか…貴方は観察者…エインディア様?」


 両手両足の武具をがんがんと鳴らす美女、エインディアは首を縦に振る。


 観察者、本来は世界を高みから観察し続ける存在が、なぜこんな場所へいるのか。


 彼女の口ぶりからして、何らかの力が作用して操られていると判断したウルは、解除する方法がないのか訊ねてみた。


『そうじゃな…わしを行動不能にするくらいしかないじゃろう。

 極端に言えば、殺して進む気概を持たねば…悪いが死ぬぞ?

 今のわしは最初から全力全快じゃ、手加減なぞ出来ぬで、一撃で周辺が吹っ飛ぶ』


 さも当たり前の様にいうエインディアに、ウルは目を細めた。


 3人を守りながら戦うことになるのは既に確定していたが、一撃が強力過ぎて、ウルもかなりの力を解放しなければと内心溜息をつくのであった。


「御心配なく、こちらも最初から手加減などいたしません。

 次いで操られた貴女の失態をデュケイン様に報告する義務も発生しましたしね、先に仕置きを受けておけばもしかすれば手心を入れてもらえるかもしれません。

 遠慮なく受け取ってください」


「…殺伐とした会話ねぇ」


「あの2人ってなんか似てるね、特に目付きとか」


「わたくしたちは頑張って戦闘の邪魔にならないよう気を付けねばなりませんわね」


 と3人の仲間たちは好き勝手言っていた。


『…さて、やるかの。

 おお、あらかじめ言っておくが、この鎧は神器での。

 並大抵の魔法は効かぬから、戦闘の基本は接近戦になるじゃろう。

 わしの獲物はこの両手両足の武具でな、神器のような特異な能力はないが強度に関してだけは神器に匹敵する、気を付けてくれ』


 会話だけは支配されていないだけあってか、ペラペラと情報を流してくれるエインディアにウルは小さく礼をとった。


「本当はもっと聞きたいことがあるのですが…時間がありません、あなたを倒して、進ませていただきます、『観察者』エインディア」


『来ると良い代行者よ、彼の戦神が評価したその実力、我が身を破り証明してみせよ!』


 刃と拳が唸りを挙げて衝突し、轟音がまるでゴングのように響き渡った。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ―――『管理者の間』では。


「くっ、あともう一歩の所で時間制限だと!?

 神王様め、ここまで悪辣なルールを組み込むとはなんと単純にして叡智に溢れた結界だ!


 いや待て、あともう一歩で届くのだ、先ほどの工程を簡略化し…」


 バルが独り言をぶつぶつと呟きながら、下界へと繋げようとしていた。


 使い魔五人衆やレギオンはデュケインとメサイアの戦闘の惨状を黙々と片付けていて、なるべく邪魔にならないよう、音を立てないように行動していた。


 バルは気付いていなかった。


 失敗をする度にルールが更新されて難易度がさらに高くなっていることを。


 それを知っている唯一の存在は、現在も床に臥したままである。


「何とかせねば…もう代行者はあのクズどもの目と鼻の先にまで近づいている。

 こちらもあと一歩なのだ、急ぎ伝えねば最悪の事態が…!!」


 既に代行者とエインディアの戦闘が始まっているのを確認しているバルからすればなるべく時間をかけてくれと願わずにはいられない。


 デュケインが目を覚ます気配は一向にない、寝息が安定しているため心配はそれほどしていないバルだが、いざとなれば自らの魔力を譲渡するくらいの覚悟は出来ていた。


 バルの表情に若干の焦りが見られるが、努めて冷静であろうとしているため、高弟が半分過ぎても問題はない。


 残り時間は短い、それを自覚してからのバルの集中ぶりはデュケインが見ていれば舌を巻くほどだったといえよう。


 時間をさらに短縮して、バルは肯定を進めていく。


 時は、一刻と迫っていた。




読んで戴き誠にありがとうございました。

唸る拳を余裕でかわし、迫りくる刃をはねのける。

2人の超越者たちの戦いの先に倒れたのは…。

次回、第059話『キジも鳴かねば討たれまいに』です。

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