第056話 去る者は追撃する
誤字脱字がございましたらコメントよろしくお願いします。
さて、GWも今日で最終日です、明日からまた忙しい毎日が続きます、相変わらず作者の目途が立っていないため、再び投稿が停止します。
読者の方々にはご迷惑をおかけして、大変申し訳ありません。
なるべく早く再開しようと思いますので、どうかご辛抱を。
最終章までのプロットも完成しておりますので、あとは書く時間さえあれば…!!
『管理者の間』では、瓦礫の山と化していた神殿他を使い魔五人衆とレギオンが作業している中、バルは地上世界にいる代行者であるウルを呼びだそうとしていた。
デュケインが行っていた術式を隣りで見ていただけあって、最初は調子が良かったのだが、途中から複雑な防御式が張り詰められていて、ルールを掻い潜るのに難航していた。
「くっ、まさかこれほど複雑な術式だったとは。
更新され続けるルールの抜け目を掻い潜りながら常時展開させる等なんという無茶苦茶!
デュケインめ、さすがに技巧派と冗談半分に言うだけある、私などでは解析するのに時間がかかるか」
幾度も繰り返すが不規則に更新され続けるルールに苛立ちながらもバルは術式を展開しては失敗するが、それでも術式を展開し続けた。
失敗するたびに拒絶するかのような強烈な一撃がバルを襲うが、結界を張りながら術式を続けているバルにとっては痛くも痒くもない。
「…なるほど、不規則と思ったが根幹部分はこういう風になっていたのか。
これならあと40時間もあればあちらへ繋げる事も可能か」
目途が立ったのか、そう呟くバルが視線をデュケインに向けた。
あれから一度として目覚めない魔神に溜息をつくが、愚痴や説教を言うのは後にしたバルは、作業工程を早めた。
地上へ叩き出したメサイアが何をするか不明だが、ロクでもない事は確かだと思いながら。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「「「追いかけるっ!?」」」
3人がウルの言葉に驚いて声を上げ、その声に冒険者の何人かがこちらを睨んできていた。
ウルは何かおかしなことを言ったのかと首をかしげたが、結局その疑問は放棄した。
「ええ、あの黒竜はおそらく操っている者の元へ帰ったはずです。
行先は大体わかりましたし、ここは追跡して今度こそ仕留めることが肝要かと判断しました。
あの巨体です、身を隠すにしても結界を張るなどして必ず魔力を使うはず。
探査すれば恐らく1週間以内には見つかるでしょう」
ウルは黒竜との戦闘の際、何度か黒竜が魔法を使ったことに気付いていた。
風系統魔法で周囲の空間を把握しウルの動きを先読みしてブレスを吐くという連携は、単純だが強力な攻撃手段だと理解していたが、その際に黒竜の魔力の質を憶えたウルは、追跡する事にしたのである。
そして、驚くべき事実も知った。
「そしてあの黒竜ですが…歪ではありません、魔獣、あるいは高位の竜族です。
おそらくは元凶の力から逃れていた所を見つかり捕えられたのでしょう、なんにしても、あの黒竜はそれだけの力を持っているという事が分かっています。
今回の件、おそらくリオンたちには荷が重すぎます。
この件には私が対処しますので、あなた達は街で復興作業を―――」
「いやです!」
「行くに決まっているでしょっ!!」
「是が非でもお供しますわ!」
言い終えぬうちに拒否され、思わず固まってしまったウルだったが、3人の返答に思わず顔を顰めた。
「しかしですね3人とも、あの黒竜がもしあなた達に牙を向いたらどうするんですか?
ブレスなんて浴びれば間違いなく死にますよ?」
「先生が守ってくれるでしょ?」
危険要素を挙げたウルだったが、ジュリーの当然と言わんばかりの言葉に思わず絶句してしまう。
…ま、まあ、枷を外せば守ることも可能…ですか。
「…ジュリー、貴女随分な事言いますね?」
「そりゃあ先生の弟子だもの、2人も似たようなこと考えていたんでしょ?」
と振られてリオンとエーヴァが苦笑しながら頷いた。
…なんて言うんでしたっけこう言うの、ああ、『ブルータス、お前たちもか』、でしたか。
「先生が枷を外す時、周りの被害を考えているときが多かったから黒竜との戦闘は全力じゃないと思ったんです。
僕の予想ですけど、おそらく黒竜は人里から離れた場所にいるはず、先生が全力を出せるなら、僕たち位の枷があってもちょうどいいと思いました」
うまい事言ったのか、リオンが珍しくにやっと笑って見せるのを見て、ウルは思わずため息をついた。
初めて街を守れたという事もあってか、3人の精神状態は比較的安定していた。
リオンはとりわけ調子が良いようで、訓練をしていた際もキレの良い攻撃を何度も見て、これでとりあえずは元通り、とウルは安心したものである。
「リオンの予想に補足しますと、あの黒竜は当分村や町を襲わない可能性が高いと思われますわ」
エーヴァの言う根拠はウルが黒竜と戦った際、優位を保っていたのにも拘らず先頭から離脱した様子を挙げ、敵方に何らかのアクシデントが起き、それが解決するまで守りを固めるのではないかという事だ。
黒竜が逃げた方角は東、2日ほどの距離に首都アンヌンがあるが、おそらく黒竜は一直線にアンヌンを抜けてさらに東へ向かう筈と推測したが、今首都へ向かえば間違いなく面倒事がやってくるとウルは難しい顔をしてしまった。
「…この街で食料を買い込みましょう、アンヌンへは黒竜の件を解決してから向かうとします。
前と同じ方法で移動しますから、あなた達はここで復興作業でもしていなさい」
「あ、あの方法ですか?
僕正直アレ苦手なんですが」
リオンが言う苦手といったのは、ウルが取り出した魔道具である。
【転移結晶】、ウルに空間適性が無かった際に、魔神デュケインがウルに手渡した魔道具である。
目印の結晶に転移するという魔道具だが、この魔道具は誰にでも使えるため、リオンたちに転移できる【転移結晶】を渡し、目印となる結晶を持ってウルは全力でこの街へと移動してきたのである。
ウル1人だけならこの程度訳ないが、そもそも性能差が3人とあるため、一緒に行動できなかった際にこの移動法を考えついたという事だ。
これには納得したのか、リオンたちは修行の片手間で復興作業をすることになった。
次の日、ウルは3人と別れ東に向かった。
『観察者』である、黒竜エインディアを追跡するために。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
女神メサイアが目を覚ました時、傍に控えていたのは自らが手間をかけて作った【神】と視線が合い、ゆっくりと起き上がろうとしたが制止された。
「そのままでメサイア様、胸の傷を現在修復中でございます」
そう言われ、メサイアは自分の胸の辺りを触ってみた。
『管理者の間』で最後の最後に刺された3か所の刺突痕は、既に無くなっていた。
自分を貫いていた証拠が無くなったと安堵したメサイアだったが、次の瞬間頭の中に嫌な記憶がリフレインし始める。
凝縮された20日間が繰り返しメサイアの脳裏に巡り続け、更には全身を貫くような痛みにも襲われた。
「くっ、ああっ、あああああああああああっ!!
いたい、いたい、いたいイタイイタイイタイイタイぃっ!!」
「メサイア様っ!?」
【神】が慌てて暴れるメサイアを押さえつけようとしたが、メサイアが手を振るうと細腕とは思えないほどの力で【神】が吹き飛ばされる。
壁にぶつかって小さく呻くが、主である女神の叫び声は止む気配がない。
近寄ろうとしたが衝撃波が邪魔をして、【神】は仕方なく女神の居る寝室から退室した。
部屋の外には同じく『女神の御使い』である、【呪】、【盾】、【破】が待っていて、【神】に詰め寄った。
「どうなのだ、主の調子は!」
「め、女神さま、泣いてた、大丈夫だったの?」
「どういう事だよ【神】、怪我は治したはずじゃなかったのかよ!?」
「…怪我は間違いなく治した、そして我らが主は魔神から手痛いが呪いを受けたようだ。
2つ、いや3つか、それ以上は分からないが、メサイア様の呪いを解くにはとにかく時間がかかる。
…今している竜人の国への破壊活動は、一旦中止し【呪】は我と儀式場を起動させろ。
残りの2人は周囲の警戒をしろ、黒竜を使っても構わん」
【神】は一度に言うことを全ていうと、1人3人を放って儀式場へと足を進めていく。
【神】はメサイアの様子を見て、おそらく作戦が失敗したのだと察した。
『管理者の間』への侵攻は表面上『管理者の間』の残りの権限を奪取するための作戦だったが、本当の目的は『管理者の間』の破壊であった。
今残っている権限だけでも十分に計画を進行出来るため、念には念をと思ってやった作戦だったのだが、今回はそれが裏目に出た。
結果は主である女神の離脱、及び作戦の一時凍結である。
儀式場、神王の残していた『原初の力』を取り出すための間へと辿り着くと、いつの間にか先回りしていた【呪】がくつくつと笑っている。
「…黒竜の調子はどうだ?」
「いまは安定状態を保っています、さすがは『観察者』というべきか、今なお抵抗を続けていますが『原初の力』の前には歯が立っていないみたいですな」
報告を受け、おそらくこの拠点も早々に廃棄しなくてはならないだろうが、せめて魔神から受けた呪いの解呪はしなくてはと2人は頷くと、儀式を開始した。
読んで戴き誠にありがとうございました。
少し切りの良いような、悪いような、区切りよく終わらすのは難しいですね。
バルさんはウル君と連絡取るのに四苦八苦していて、ウル君は黒竜を覆うとシャカリキ状態、最後は女神とその駒たちのいら立ちを書いてみました。
あっぷあっぷですが、主要人物はほぼ全員が出ました、ということで。
次回予告は今回話ということで。
ではでは皆様、また次回まで。
コメント、ご感想をお待ちしています。




