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ハイル 救いの物語  作者: 夢落ち ポカ(現在一時凍結中)
第5章 戦闘戦争辟易代行者編
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第055話 黒竜VS代行者

誤字脱字がございましたらコメントよろしくお願いします。

 



『原初の蹂躙者』を放って数分経ち、『管理者の間』はようやく空間を覆い尽くしていた閃光が止んだ。


 大鎌を杖代わりに立っていたメサイアは余程の力を消費したのか、よたよたとデュケインがいた場所を見回した。


『管理者の間』はメサイアの放った力に耐えられなくなっているのか、あれほど白かった空間が徐々にひび割れ崩壊し始めていて見る影もない。


「…やった…の?」


 見覚えのある黒い物体があったのか膝を着き、その細長い、先端が5つに分かれた節くれだったソレ(・・)を手に取った。


「は…は、ははっ!

 やった、やったわ、勝った、勝ったのよあの最強の魔神にっ!!

 神王の最強の矛にして盾、『終わり無き混沌の御子』に私は勝った!」


 瞬間、メサイアの胸に刃が生えた(・・・)


 1本ではない、2本、3本と数を増やす刃に驚きながら、痛みに悲鳴を上げながら振り返った。


 そこには、


「やっほーゴミクズめ3流以下女神、良い夢は見れたかい?」


 怪我一つない、本当に無邪気そうに唇を持ち上げた、


「あ、ああ、あああ…」


「いやはやビックリだね、まさかこの『管理者の間』を奪いに来るんじゃなくて破壊しに来ようとは。

 まぁ実際この場所が無ければほとんどの権限はお前の管理下にあるから、奪うより壊した方が後々楽かも、っていう点はやられてから気付いちゃった」


 メサイアの開いた口が塞がらない、彼女の現実が崩壊していく。


『原初の力』、そのほとんどを費やしたあの一撃を前に、超然と立っている存在に、


「まぁさすがは僕のとお様の力といったところかな、おかげで『管理者の間』が消滅寸前だよ、バルたち逃がしておいて正解だった。

 まぁでも…」


 パチン、と指を鳴らす。


 その音とともに、管理者の魔は瞬きする間もなく元通りの空間となった。


 崩れかけ、何かが外から漏れ出していたボロボロの空間は、以前と変わらない、目を開けているだけで瞑ってしまいたくなるほどの、真っ白な空間に戻っていた。


「僕にかかればホラ、元通り。

 で、どうだったあの迫真の演技!!

 僕結構切羽詰った演技していたでしょ?

 ははっ、あー思い出しただけで嗤える、あの時のお前の顔!

 あの勝ち誇った瞬間刺すの一瞬ためらったよ、だって笑いそうになって困る位、お前の顔間抜け過ぎ、マジで死ぬかと思った」


 メサイアの顔から熱いものが溢れている、頬を伝うその熱いものが自分から出ていることに気付いていないメサイアは、なおも呆然としていた。


 なぜ、どうして、それしか頭に浮かばない。


「中々にいい余興だったよ、この数百年でもトップの余興だった。

 褒美だ、お前は生かしてこの場から逃す権利をやる。

 まあ副賞として、その胸に刺さった“呪い”も受け取ってもらおう」


 パチン、と再度指を鳴らすソレは本当に楽しそうで、


「ぐっ、ああっ、ああああああああああああああああぁああああああああっ!?」


 痛みから逃れようと、その3本のナイフを背中から引き抜き、再度悲鳴を上げるメサイアの姿を、それは酷く楽しそうに嗤っていた。


「お前が受けた“呪い”は3つ。

 1つ、満足に力を使えないこと。

 2つ、その痛みが常時不定期で襲ってくること。

 3つ、この20日間を毎日思い出す事、その3つだ」


 メサイアの刺された場所から黒い霧が吹き出し傷を修復しようとするが、傷は一向に塞がらない。


 そしてメサイアの目の前に突如歪んだ空間が現れる。


 メサイアは力を使っていない、となると、それを行ったのはアレしかいない。


「そこに入ればすぐにあちらへと戻れる、僕と違ってお前はルールに縛られていない存在だ、まあ場所は海の上だが大丈夫だろう。

 それじゃあね反逆者、僕の弟子に殺されるまで、その醜い姿で精々あがけ」


 魔神、デュケイン・ヴァッサーゴ・リヒテンシュタインは手を振って、女神メサイアを『管理者の間』から追い出した。


 メサイアの消えた場所をじっと見つめているデュケインはふっと笑うと、そのまま前に倒れ伏した。


「デュケイン!」


 戻ってきたバルが慌てて駆け付けた。


 傷一つもなかったデュケインの身体だったが、次第に黒ずんでいくのが見て取れ、先ほどまでの姿が幻術によるものだったのだとレギオンたちは悟った。


 眼帯も左半分が熔けてしまっていて、神王と同じ深い藍色の瞳が映った。


「…バルか?」


「このバカめっ、あれほど調子に乗っておいてこのザマかっ!?

 左腕など完全に崩れているではないか!」


 バルが全力で治療しているが、直る兆しが一向に見られない。


 腕の形を失くしたその箇所は、もうほとんど無くなりかけるほどに消耗し、どの箇所よりも重傷だった。


「…あいたたた、二重の意味で返す言葉もないね。

 けど大丈夫、少し寝ればよくなるさ。

『管理者の間』の修復を一瞬でした分反動が来ちゃっただけ。

 バルが心配する程じゃない」


『管理者の間』の修復には幻術ではなく、手を抜くことなく手を施しており、結界の強度も以前より遥かに強力である。


 この結界であれば、メサイアの歪を送り込む作戦は頓挫するほどに。


「ばっ、バカかお前は!?

 誰が心配などした、卿に死なれると神王様が悲しまれるからそれを案じているだけの事、か、勘違いするな!!」


 治療しながらデュケインの頭を軽く小突くバルだが、デュケインはバルの言葉にはぁ、と溜息をついた。


「…男のツンデレとか誰得って感じだよバル。

 …悪いけど、僕は少し寝る、それまでこの場所の事は使い魔たちと頑張っておいてよ。

 お礼は…まぁ、僕に叶えられる事なら何でもしてあげる」


「誰がツンデレだっ!?

 …ふん、仕方がないから任されてやる、治療も完璧にしてやるし代行者との繋ぎもしてやる、だから報酬は先に言っておこう」


「…なにさ?」


 ごほごほと咳込んでいるデュケインが、訝しんでバルを見やった。


「これ以上、心配をかけさせるな」


「…………………」


 何を言ったのか理解できない、ありえないものを見るといった顔をしたデュケインだったが、時間も経てば理解できるというもので、顔を真っ赤にして笑い出した。


 血を吐いてまで笑っている時点で、余程面白かったようである。


「ごっふぉっ、あっは、ごっほ…ヤバい、別な所で物語がはじまりそうな予感が…ぷっくく!

 …いいよ、曖昧過ぎる願いだけど、叶えてあげる」


 なまじイケメンだからなおタチが悪い、とデュケインが言っているが、バルには何を言っているのか分かっていなかった。


「…寝る」


 デュケインは疲れたのか、その一言で瞳を閉じてしまった。


 数秒後、落ち着いた寝息が聞こえて、バルはひとまず安心した。


『管理者の間』は最初で最後の大規模戦闘に終止符が打たれた。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 その頃、ウルは黒竜との戦闘で早くも苦戦させられていた。


 強靭な鱗が神器を弾くという、驚愕の事実に一瞬の隙を突かれ、カウンターを喰らってしまったのである。


 すぐさまウルは態勢を立て直したが、カウンターのダメージが全身に残っており、傷をすぐに『癒し安らぐ青の秘蹟(サクラメント)』で治したが、完全に癒すまでに黒竜が追撃を放って、満足に回復できないでいた。


「くっ、まさか神器の通じない歪が存在しようとは。

 あとでデュケイン様にクレームを入れなければなりませんね」


 ぼやくウルだが、神器が効かないのであればウルの作った魔道具でも通用しないだろうと判断し、魔法による戦法に切り替えた。


「とはいえ、背後に回ろうにも黒竜の見た目に反したあの反射速度は脅威ですね…となれば、『世界は氷で出来ている(グラッチェイス)』!」


 ウルは黒竜の周りに大量の氷を出現させた。


 中空に浮かんだままの氷は落ちる気配も溶ける気配もなく、その場で固まったままで、ウルは躊躇せず、氷の1つを足場にして、別の氷に飛び移った。


 黒竜が背後に回ろうとするウルにブレスを放つが、放たれた場所には既にウルはおらず、氷だけが溶けただけである。


『世界は氷で出来ている』は大気中の水分を空間に凝縮させ時属性でその空間に固定させるという高等魔法である。


 本来であれば、空間魔法で足場を作れば済む話だが、ウルには空間属性の適性がなかった為、別の方法で工夫していた。


 ウルは黒竜の背後に回る振りをして魔法による攻撃をしたり、足場をわざと崩して隙を着いたりと攻撃をするが、黒竜に目立った傷はつけられず、どちらかというと黒竜の勢いが増していて、ウルはどこかやるせなさを感じていた。


「…なんて言う理不尽、まさかこの世界で私に仕留めるのにここまで時間のかかる敵がいようとは…これは本格的に女神が用意した駒という訳ですか、敵ながら見事と言わざる得ませんっ!」


 デュケインがその場にいれば猛反対するだろうセリフを吐くウルだが、それでも目には諦めといったものは映っていない。


 後背からの攻撃にようやく成功したウルであったが、やはり人影は存在しなかったため、ウルは嫌な予感がしていた。


 もし、本当に操っている者がいるとすれば、今その者が一体どこにいるのか。


 ウルが考えるとすれば、既に町へ侵入してしまっているという最悪のケースだった。


 その為にリオンたちを街の避難に向かわせたが、それがアダとなってなければと願わずにはいられない。


 無詠唱で火系統上位魔法『焼き尽くす炎刃(エンシス)』で炎の大剣を形作り斬りつけるが、黒竜は仕返しとばかりにブレスを放ってきた。


「なんて頑丈な…これ以上は枷を外さなければ対処の仕様が…しかし、枷を外してしまうと街への被害が…」


『先生、避難はもうすぐ終わります、合流できそうですか!』


 ちょうどよくリオンから念話がやってきて、ウルはこちらへ戻ってくるよう命じた。


 エーヴァはギルドから留まるよう願いが出ていたが、適当な理由を付けて少し遅れるが合流するとの返事が返ってくる。


「…いっその事、黒竜に一部町を破壊させて、それに便乗して魔法で攻撃をすれば、あとで避難されても誤魔化しが効く?」


 と何とも腹黒い画策をしたウルであったが、黒竜の様子が緩慢になっていることに気付き、すかさずウルは魔法で追撃した。


 何か黒竜を操作している者にアクシデントが起きたのか、黒竜の瞳に活力のような物が見え、ウルはもしや洗脳が解かれたのかと思ったが、黒竜は強烈なブレスを放ちその場から離脱していく。


「なっ、まさかここで離脱ですって!?」


 防御結界でブレスを防いだウルであったが、門の一部が焼け焦げてしまっているのを忌々しく思いながら、はるか上空に飛んでウルの視界から消えていく黒竜を睨みつけた。


「…あり得ない、一時はあちら側が有利だったはずなのに、その優位性を無視してまで離脱するなんて…これは、あちら側で何かありましたか?」


 街を守れたと安堵したかったウルであったが、別の不安要素も上ってきたせいか、素直に喜べないウルなのであった。


 街の被害は外円部に被害が及んでいたくらいで崩落していた箇所はなかった。


 ウルが地系統の魔法で城壁を強化していたが、黒竜のブレスに耐えきれない場所が一部あったらしい。


 死傷者は慌てて避難した際に怪我人が出たくらいで、死者においては0人であった。


 不完全燃焼での勝利ではあったが、ウルと黒竜との戦いは、これで切り上げられることになったのだった。




読んで戴き誠にありがとうございました。

なんというか、デュケイン様まさかの一時離脱。

女神の一撃は予想した以上に協力だったようで…後半おかしな場面がありましたが、お気になさらず、一部のリクエストに対処しただけです。

地上ではウル君と黒竜との戦いでしたが、ウル君初の劣勢に、とはいえ前半の予想通り、異常事態が起きてしまったため、いったん黒竜も離脱したというわけです。

さて、どうなってしまうのか、というわけで次回予告。

次回、『去る者は追撃する』です。

ではでは皆様、また次回まで。

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