第054話 天と地ではそれぞれⅢ
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『管理者の間』での戦闘がはじまって20日が経った。
依然として優勢なのは魔神デュケイン、劣勢な状況が続く女神メサイアはほとんど抵抗も出来ずに呻いたり喚いたりしていたが、一向に逃げる気配だけはなかった。
既にデュケインは神器での戦闘に飽きたのか、徒手空拳でメサイアを痛め付けていたが、それでも容赦なく攻め立てている。
何も知らない者からすれば、少年が妙齢の女性を容赦なく殴る蹴るの暴行と判断するだろうが、この場にいる者が止める事は無い。
力加減を間違えたのか、蹴りでメサイアを体の中心から真っ二つにしたデュケインだったのだが、うっかりといった様子でぼやいていた。
「あ、やっちゃった」
とはいえ、全く反省した様子もなく瞬時に再生してみせたメサイアに更に追撃をかけているが、10日目頃のような興奮状態ではなく、ただのルーチンだといわんばかりの詰まらなさそうな表情をしていた。
「…あのさぁ、何か狙っているのは分かり切ってるんだからさ、さっさと仕掛けてみなよ。
わざわざ素手で闘ってあげてるんだよ?
ほら、たまに攻撃の手を緩めたり隙を見せてあげてるのに、なんで何もしない訳よ、いい加減にしないとこの場所を完全隔離してとお様の力の供給カットして殺すよ?」
メサイアの力の正体をすでに看破しているデュケインは、そう手の平をプラプラと振っている。
「お前ってあれだよね、裏でコソコソするのは得意だけど前線に立つタイプじゃないんだよな。
一応戦い方はなっちゃいるけど、それってお前を作った時の性能に頼り切った戦い方だもん、まるで棒切れ持ったサルと戦ってるみたい、少しは骨はあったけど、骨があっただけじゃ美味しくないしね、無駄にへし折るのが面倒なだけ。
千日手ではあるけど、こっちの方がゴリゴリ押し切れているし、まぁ別に僕は良いんだけどね、さすがにこのザマは…ふぅ、つまらないな、なんか面倒だから殺そっかなもう」
「くっ、舐めるんじゃないわよっ!」
神器【撫斬】の刃がデュケインを襲うが、素人から見てもそれは悪足掻きの一撃にしか見えず、デュケインはメサイアとの距離を詰めて避けるとメサイアの首を締め上げた。
「舐めるだって、何を勘違いしている?
僕はお前を舐めてなんかいない、過小評価もしていない。
僕は等身大のお前を評価して、結果的にそれほど脅威と期待を感じなくなっているからこんなローなテンションなだけ、はき違えるなあほう。
お前がエインディアに手を出したのは確かに僕の失策だ、僕が地上世界に行く度にとお様のルールを誤魔化すために大量の力を消費して消耗したところに大量の歪をけしかけたりしてさらに力を消耗させる、まぁまぁいい策だ、感心はしたよ」
「ぐ…がっ!」
片手とはいえギリギリと首を絞められるが、驚異的な再生能力の弊害かどれだけ傷を負っても回復してしまうメサイアには拷問に等しい。
「まぁ誤算なのは、消耗している僕を殺してこの『管理者の間』を乗っ取ろうとここに乗り込んできたっていうのは減点だ。
この程度の消耗、昔やった三千世界を巻き込んだ戦争に比べれば、なんてことない。
正直ウルの器を創ったから確かに消耗はしているけど、お前を相手にしても正直まだまだバトれるしね?
だから…」
「ぐぅっ」
更に圧力が加えられる、細いメサイアの首が今にも千切られるのではないかと思うほどの力をデュケインは行使して、なおも油断はしてなかった。
「はやく奥の手見せてよ、殺すのはそれからだ。
それすらも圧倒して、お前を絶望させて殺す」
無造作に投げ捨てると、メサイアはまるで棒切れを投げたかのような軽さで転がっていく。
壁というモノがない以上勢いが止まるまで転がり続け、メサイアの身体はようやく止まった。
デュケインの宣言はもはや予言に近い状況にある、いくらメサイアが膨大な力を誇ろうとも、デュケインの理不尽な力はそれを圧倒する。
デュケインが不本意ながら戦神とまで呼称されているのは、その圧倒的で理不尽な力で相手を圧倒する事にある。
どれだけの策を練ろうと、奸計に陥れようと、神王の愛する魔神はあらゆる力を捻じ伏せる。
「…いいわ、見せてあげる」
メサイアが咳込みながらふらふらの状態で立ち上がった、もはや再生する以外抵抗することが出来ないと見ていたバルたちはデュケインに注意を呼びかけるが、軽く手を振って返すだけである。
メサイアは立ち上がったその場所で何やら呪文を唱えていたが、デュケインからすれば詠唱しなければ力も行使できないのかと呆れるばかりであったが、詠唱の内容を半ばまで聞いた時、様子が変わった。
信じられないような顔でメサイアを睨みつけたが、時間が惜しかったのかバルに向かって怒鳴りつけた。
「バル、この領域からそいつら連れて離脱しろ、早くっ!!」
「分かっている!!」
デュケインが空間を捻じ曲げて『管理者の間』とは別の空間に転位させるために力を使ったが、突然その空間も霧が晴れたかのように霧散してしまった。
「……喰らいなさいっ!!
『原初の蹂躙者』!!」
詠唱の完了したメサイアの術がデュケインに向かって、領域を覆い尽くすかのように放たれた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
黒竜を追跡しているウルたちは、これで何度目かの滅ぼされた街に到着した。
死傷者はすでに1万を優に超えていて、もはや種の危機と感じていたウルたちであったが、現状に対処するのに精一杯な街の者に協力は求めなかった。
黒竜がどの方向へ向かったのか、それを聞いた後に数少ない食料を分けるという事を繰り返して、次の進路を決める。
後味の悪い日が何日も続くと、若い2人は気も滅入って来ており、エーヴァも気丈に振舞っていたがいつもより精彩を欠く場面がしばしみられ、ウルは一刻も早くこの惨状を引き起こした黒竜を止めなければと思った。
「それにしても…ますます妙です」
「…先生、何が妙な事なの?
これだけの状況を見て落ち着いている先生の方が妙だよっ!!」
「ジュ、ジュリー落ち着いて!」
参ってきているジュリーがウルに噛みついたが、リオンが抑えたおかげで少しは落ち着いた。
それでもこの状況は問題で、情報が殆ど無いのにも拘らず、『妙』だと判断したウルの発言は確かに何かおかしかった。
「これだけ町や村を破壊しておきながら、黒竜は直接的な被害、つまり竜人たちを殺していません。
いえ、正確に言うと建物が壊れた事で死傷者が大量にでたり、駐留して居た冒険者たちが黒竜に抵抗して殺されたりしているのですが、率先して竜人たちを殺したという話が全くないのは、妙を通り越しておかしいと言わざる得ません」
「…ウル様、わたくしの予想なのですが、操られている黒竜が反抗しているという事ではないでしょうか?
身体のほとんどは操られてはいるものの、直接的に殺すことを避けているのはただの偶然とは思えませんわ」
ウルもそれに同意した、リオンとジュリーは思い出しながらそういえばというような表情をして納得したようである。
「…追いかけるのはもうヤメです、これだけの被害状況から見るに、黒竜は近隣の村や町を破壊して行っています。
先回りしてそこで迎え撃ちます」
地図を広げると、ウルは数多くの×マークのされた地図の一か所に○を書く。
進路方向を予測して、次の襲撃場所を予測したのであるが、それでも現在いる場所よりかなり離れていた、精神的、肉体的に疲労している3人を連れての強行軍には無理がある。
しかし、ウルの考えついた作戦は3人の為にもなる点が多く、3人は最初こそ反対したが、結局ウルに押し切られる形で作戦に同意する事になったのだった。
―――2日後、ウルは予想した時間より数時間早く襲撃予想した街へ着き、3人を呼び寄せた。
すぐさま冒険者ギルドへと3人を連れて乗り込むと、エーヴァに説明をさせて非難をするように指示をした。
ウルは3人と別れ1人で街の外へ出た。
門番に事情を説明して逃がすと、ウルは街へと向かってくる黒い物体に目をやる。
「…さて、お相手願いましょうか黒竜。
この代行者が来た以上、これ以上の被害は許しませんよ?」
神器を構えながら枷を外す、最初から全力である。
黒竜が吼え猛りながら向かってくる、ウルの目には黒竜を操る人影は見当たらないが、警戒を怠っていない。
こうして、ウルと黒竜の戦いが始まった。
読んで戴き誠にありがとうございました。
…デュケイン様、何油断しているんですか、隙は見せても油断しちゃダメじゃん!?
『管理者の間』側は少々キナ臭くなってきましたが、地上の方も結構被害がひどいです。
残酷描写はなるべくカットしていますが、ジュリーのヒスっぷりでどれくらいひどいかはお察しください。
さて、次回予告。
次回、『黒竜VS代行者』です。
ではでは皆様、また次回まで。
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