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ハイル 救いの物語  作者: 夢落ち ポカ(現在一時凍結中)
番外編その2 デュケイン様漫遊記 教国でも諸々しちゃいます
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第012話 暗夜逃路

お待たせしました…完全に遅刻です。


そして番外編第2弾が最終回となりました!!


そして、明日…というかこの3月16日から作者日嗣者は執筆活動を一時中断させていただくことになりました。

まことに勝手ながら申し訳ありません。

なるべく早く再開する予定ですので、皆様どうかお元気でっ!!

余裕があれば活動報告などさせていただくので。

では、番外編、お楽しみを。

 



 ―――こちら特号、閣下、指示を戴きたい…閣下っ!!


 夜になり雨の降る中、特号は半ば混乱間際まで追い詰められていた。


 首都を離れて、人目のつかない道を選んで走っており、事態の深刻さを物語っていた。


 背には怪我を負って動けなくなったハイドリヒを背負っており、辺りを警戒しながら走っている。


 脹脛(ふくらはぎ)の辺りには矢が刺さっており、それが原因のようである。


 特号も怪我こそ負っていないものの、魔力の消費も激しく消耗をしていた。


「おかしい…首都からかなり離れているのに、閣下との交信が不可能…?


 いえ、一方的に遮断されているだけで、あちらが気付けば事態の打開も…っ!?」


 殺気に反応して、その場から飛んで回避した。


 特号がいた場所には、長大な大剣が轟音と共に突き刺さっている。


 大剣の持ち主にここ辺りのある特号は、追い付かれたのだと嫌でも悟ってしまった。


「よりにもよって…貴殿が追跡者なのでありますか、ブリンド殿」


「前にも言ったかもしれねえが…お前らに数でかかっても仕方ねえのは分かっているが、こっちにもメンツってもんがある。

 後続からは騎士団も続々と近づいてきている…諦めろ。

 俺はあんたらと教皇の関係を知っている、俺が証人になるし弁護も聞いてやれる。

 何より…ここで逃げたら、大陸がお前らを絶対に逃がさない、そんな逃亡劇をハイドリヒの坊主を連れてやるつもりかっ!?」


 ブリンドの言葉は善意からきているのは特号にも分かっていた。


 しかし、特号はその手を取る事は出来ない。


 彼女の…彼女の掌である『教国』から、一刻と早く逃げなければならないのだ。


「…残念ではありますが、貴殿の手を借りたとしても、事態を打開するだけの可能性は低いと言わざるをえません。

 よって…このまま逃げ切らせていただくでありますっ!!」


 バランスをとりながらナイフを取り出すと、ブリンドに投げつけ即座に反転、逃走を再開した。


 ブリンドは飛んでくるナイフを大剣で弾き追走する。


 逃走劇は佳境に入り始めていた。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


『教皇庁黒竜襲撃事件』で教国内外に衝撃を与えてからすでに3日。


 事態の中心にいた教皇ヨハンの容体は回復して、ようやく起き上れるようになっていた。


 アドルフはヨハンの無事に安堵してはいたが、事態の究明が遅々として進まないのに対して謝罪の言葉を口にしていた。


「…申し訳ありません教皇猊下。

 あの黒竜…エインディア様に酷似した者の逃亡先は依然として見つかっておりません」


「…いいのですアドルフ枢機卿、私は無事だったのですから。

 しかし…あれは酷似したというよりは、本人(・・)でしょう」


 衝撃的な発言をしたヨハンに、アドルフが目を大きくした。


「げ、猊下っ!?」


「あれほどの力をこの結界内で使えるのは…彼の代行者を除いて『観察者』である彼女しかいません。

 何はともあれ…事情を聞かねば事態の究明の一歩にもなりません。

 …デュケイン様とハイドリヒちゃんはどこに?」


 アドルフは、2人が月下亭から一歩も出ていない事を部下から報告が来ていて、ヨハンはそこに騎士団を派遣するように“教皇命令”として命じた。


 命令の内容は、アドルフとしても信じられないようなものである。


「あの2人を…この事件の重要参考人として召喚します。

 拒否した場合は…無理やりにでも連行なさい」


 有無を言わせない圧力でアドルフに命じると、すぐさま行動に移るようアドルフを部屋から追い出した。


 部屋から出て完全に周囲からヨハン以外の気配がないのを確認して、ヨハンは身体を伸ばしながら全身をほぐした。


 まるで怪我をしておらず、ずっと動けなかったのが辛かったかのような様子に、その場にいなかったアドルフが見れば驚いていただろう。


 ヨハンは満足すると、くすくすと笑いながらこの後の状況をまるで見て来たように言う。


「…これで邪魔者は全てここからいなくなる。

 代わり(・・・)の結界も出来たし、動きやすくなるというものね」


 その笑みは大陸一の宗教の頂点である彼女に最も相応しくない―――、



 善よりも悪を好み、



 正よりも邪に耽溺し、



 幸福よりも不幸に歓喜し、



 創造よりも破壊を狂喜する、



 凶悪なまでに歪んだ笑みであった。











 ハイドリヒは特号に手を引かれて人並みの少ない狭い路地を走っていた。


 突然月下亭に押し入ってきた騎士から、身に覚えのない身柄確保状を突き付けられ、従わねば強引にでも連れて行くと言われて、特号がその態度にブチ切れた。


 そして窓から外を見てみると、1個中隊規模の人数に月下亭を囲まれていて、何者かの意図が隠れていると判断して特号は、教皇庁への侵入を決めた。


 屋根を上って追っ手を一度振り切り、ハイドリヒを安全な場所に隠れているように言い、特号は修繕中の教皇庁へとたどり着いた。


 デュケイン特製の使い魔である特号には多彩な機能が搭載されており、その内の一つが『変身能力』である。


 任意の人物、または架空の人物を肉体含めて形成し、情報を収集するためにデュケインが設定していたものである。


 任意の人物に至っては、本人の思考回路を投影して本人そのものになり変わる事も可能であるが、記憶までの投影は出来ない。


 あくまで外見と思考の一致までが限界であり、それ以上の模倣は本体であるデュケインのような神位にしかできない。


 程々に地位の高い司祭に変身し、教皇庁へと侵入した特号はすぐに情報収集を開始した。


 やはり話題は教皇ヨハンを襲撃した黒竜についてで、流言飛語からヨハン死亡説まで流れており、やはり聖職者とはいえ人には変わりないのだと特号は感想を浮かべて、その中で興味深い情報を仕入れた。


 襲撃事件の犯人は黒竜と2人組の子供で、騎士団を総動員して2人組の子供を捕えようとしているとある人物が話していたのである。


 伝言ゲームの様に情報が錯綜しているとかと特号は思ったが、思いの外その情報は真実味を帯びており、何者かが偽りの情報を流したのだと特号は判断した。


 そして、最悪の情報が特号の耳に入った。


 教皇庁が、ギルド本部に黒竜と2人組の捕獲依頼を出したというのである。


 しかも報酬は1人5000万ヒトゥンという事も聞くと、特号は急いでハイドリヒの元へと急いで戻った。


 安全な場所とはいっても、騎士団どころか冒険者組織を敵に回してまで相手にしては、首都にハイドリヒや特号に安息の場所などありはしない。


 先ほどから主であるデュケインに更新をしている特号だが、何故か返事の来ないのに違和感を抱きながらハイドリヒの元へ戻った。


 ハイドリヒは無事のようだったが、少し前に冒険者が通り掛かったと息を殺して隠れていたのである。


 おそらく無意識のうちに、『隠身不可侵(バーステクト)』を発動していたのだろうと判断すると、手を引いて首都から離れると伝えた。


 最初こそ無実を証明しようと息巻いていたハイドリヒだったが、自分たちが何者かに嵌められたのだと根拠を上げて説得した特号に、悔しそうな表情になりながらも頷いた。


 特号はハイドリヒを連れて外に出ると、しばらくして騎士団に見つかり逃走劇が始まった。


 外壁の高所から矢まで放たれる始末で、特号が魔力で弾いて難を逃れているが、矢を落とすという高等技術はハイドリヒにはまだ無理な芸当で、一度で弾ききれなかった矢に怯えながら回避しているので精一杯であった。


 首都にある四方の門には既に騎士団が待ち構えており、強行突破以外に方法はない。


 後方からは冒険者も追走してきており、他の門の戦力を確認する余裕はなく、特号とハイドリヒは覚悟を決めた。


 まず後方の憂いをなくすために、ハイドリヒが煙玉を投げつけ、そこを特号の魔力弾が襲った。


 冒険者を吹き飛ばし、さらに外壁と周りの建物に被害が及んだが、罪悪感にとらわれている暇はなく、前方の騎士たちにも不意打ちとばかりにさらに強力な魔力弾を放った。


 爆発に気付いた騎士団ではあったが、対応に遅れて特号の魔力弾に抵抗できず無力化され、特号たちは倒れた騎士団を踏み越えていく。


 ここまでは危な気ながらも順調であったが、予期せぬ事態に見舞われた。


 後方から別働隊の騎士たちの追っ手が迫ってきており、その内の1人の矢がハイドリヒの左脹脛に命中したのである。


 ハイドリヒが置いて逃げてと痛みに堪えながら特号に言ったが、友を置いて逃げるなどありえないというと、周辺の建物を巻き込んだ強力な範囲魔法を後方へ放った。


 おそらく建物の中にいた者たちは無事では済まないような被害ではあったが、ハイドリヒとどちらが大事かといわれれば、即座に友であるハイドリヒに天秤を傾ける特号である。


 矢をある程度邪魔にならない程度に切ると、ハイドリヒのバッグから煙玉をありったけ地面に叩きつけた。


 その隙に特号はハイドリヒを背負うと、今度こそ門から飛び出した。


 後方から弓矢での追撃はあったが、特号に当たる筈もなく。


 無実の罪を背負わされた2人組は、大陸きっての大犯罪者へとされてしまったのであった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ハイドリヒを背負ったままブリンドと逃亡劇をしている特号は、即席トラップを難なく切り抜けるブリンドに苛立ちを覚えながらその足を緩めない。


 特号が手にしているのは、デュケインが創った即席神器【暗殺玩具箱(アサシントイボックス)】である。


 周辺地域を瞬時に把握し、即席の罠を周辺に張り巡らせる道具を攻撃手段とした諜報能力に特化した特号の為に用意したものである。


 情報収集に適した道具も呼びだせるが、使い勝手が酷く限定されており、使い勝手の悪さが所々目立つ神器としてはお粗末な出来である。


 とはいえ、殺傷能力のある道具に関してはオリジナルから完全な模倣がされており、特号の希望に沿った能力が自動で発揮される。


 森を駆け抜ける特号を負うブリンドだが、どこからともなく襲い掛かってくる黒い矢や地雷式のような魔道具、おまけにいつ掘ったのか底が見えないほどの落とし穴まであってなかなかその距離を縮められずにいた。


 むしろ次第に距離を離されていると感じたブリンドは、不安感に苛まれながらも自分の能力を信じていた。


 酷く追い詰めながらもどこか期待していたあの性悪なカミサマ(・・・・)の思惑に乗るのは不愉快極まりないが、自分の作ってしまった壁を破るために、ブリンドの意識はむしろ興奮の絶頂に達している。


 罠を切り抜けていく毎に思考が最適化されていき大剣を握る力も強くなっていく。


 そして、いつの間にか距離の縮まっていたことに気付いたブリンドは、輝く大剣を特号に向けて振り下ろした。


「こんな時に扉を開けたのかっ!?」


 忌々しそうに吐き捨てた特号はとっさに片手で魔力の壁を作ったが、大剣は易々と壁を切り裂いた。


 特号の右手首を切り落とすと、落ちた手首がどす黒い煙を上げた。


 ブリンドは咄嗟に離れてその煙を吸わずに済んだが、煙はだんだんと周囲に広がっていき、特号とハイドリヒ達を完全に見失ってしまった。


「…ここまで追い詰められるとは、正直思わなかったでありますよブリンド殿。

 煙は麻痺性の煙であります、吸えば貴殿といえどタダでは済みますまい。

 扉を開けた貴殿にこの先の幸あらんことを…お祈りするであります」


 どこか疲れたような―――実際かなりの魔力を消費しているから当然ではあるが―――声で特号はブリンドに声をかけ、そして煙が消えた頃にはその場から姿が見えなくなってしまっていた。


 輝きを失った大剣を見つめながら、特号たちがどこへ消えたのか予測したが、この方向からすれば1つに2つだ。


 1つは現在復興中のシュトルンガルド。


 もう1つは現在侵入不可侵である妖精の国フィンヴァラだ。


 その気になればあの魔神が出てきて、侵入不可侵とされるフィンヴァラに逃げ込む可能性を考えたが、ブリンドはシュトルンガルドへと足を進めた。


 本来ならば一度ギルド本部に戻って報告をすべきなのだろうが、今回の依頼ばかりはブリンドの納得いかない理由でしかなく、戻る気にはならなかった。


 依頼に乗じて、最高戦力である黒が教国内から1人もいなくなるのは異常事態ではあるが、ブリンドとしては知ったことではない。


 少しばかり倦怠感を感じながら、ブリンドは教国から1歩ずつ外に向かっていく。


 夜も更けていく中、雨の勢いも次第に強くなる一方でブリンドは教国から出奔した。








 デュケインがこの異常事態に気付いたのは、エインディアがムシュフシュを襲う時ですでに遅く、完全に不意を打たれた結果になってしまい、特号からの情報を受けた時、デュケインは事態の全容に気付くのであった。


読んで戴き誠にありがとうございました。

特号さんの能力とか、どこぞの誰かの変貌とか、いっぱいありますねっ!!

そしてブリンドさんが最後の最後で変な活躍ぶり、殻を破った的な感じにしたかったのですが…作者の限界を感じましたね一瞬。

お休み中にもっといろんな本を読んで精進します。

さて、次回予告…と行きたいのですが。

残念ながら予定が未定…いえ、プロットはありますが題までは考えておりませんので今回だけは次回予告話の方向で。

それでは皆様、作者が戻るまで壮健なれ、との言葉を送らせていただき、本性を締めくくらせていただきます。

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