第010話 暗鬼暗躍
誤字脱字がございましたらコメントよろしくお願いします。
佳境に入って参りました番外編。
デュケイン様御休み回です
その日教国では、2ヵ月ぶりに雨が降っていた。
教国全体が影に覆われて、視界もあまりよくない状態である。
とはいえ、その飴も教皇ヨハンの結界で首都は建造以来一度として建物を雨で濡らした事すら無いが。
「…ふむ、侵入は成功のようですな」
首都ヘルツィカイトの一角で、暗い声が響いた。
全身を黒に染まっていて、その肌さえも黒で、まるで真っ当な生き物ではない気配を纏っている。
「さて、件の『駒候補』はどのあたりにいるのやら…我が主は小間使いが荒くて困りますなあ」
呑気そうに語る存在は、人目を避けて密やかに行動を開始する。
結界の外では、雨音が強くなってきていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ヨハン殿がわしに話じゃと?」
デュケインは『管理者の間』に戻っており、ハイドリヒの修行を特号とこなしていた所に、アドルフの遣いがやってきた。
ヨハンがエインディアに内密の話があるようで、デュケインが丁度いない今なら話が出来ると思ったそうだ。
何故デュケインがいない事に疑問を感じて一応だが使いの者に尋ねてみると、ヨハンからの言伝を預かっており、そこに答えがあったようである。
「そういえば…ヨハン殿はヴァッサーゴ卿の契約者じゃったのお、結界内の違和感位気付くというものかの」
そうごちると、遣いの女性と共にエインディアは教皇庁へ向かっていった。
教皇庁へとつくとすぐにアドルフが案内してヨハンの執務室に案内された。
エインディアの事を知らなかった者たちは、枢機卿であるアドルフがわざわざ案内するほどの人物が一体どのような存在なのか興味津々であったが、親しそうな2人の様子に一体どのような共通点があったのか、さらに混乱していくのだった。
執務室に着くと、アドルフは自分の執務室へ帰っていった。
呼ばれているのはエインディアだけなため、アドルフには入る必要が無いのだという。
エインディアはノックをして数秒後にヨハンからどうぞといわれて執務室に入った。
執務室に入ると、先日デュケインが痛め付けた『守護騎士』を名乗ったエルフィーとリードが入室しており、ヨハンの両側に控えていた。
「お久しぶりですわエインディア様、先日は知らぬとはいえ部下が失礼をいたしました。
一度謝罪の手紙をアドルフからも受け取っているとは思いますが、やはり、直接謝罪の言葉を受け取っていただきたいと思い、今回はこのようにいたしましたの」
エインディアはヨハンの意図をすぐに察知した。
これがデュケインならば、その言葉を逆手にとって2人の首をその手で落とせとでもいうような発言だったからである。
今デュケインがその場にいないからこそ、穏便に事が済ませられるのはエインディアしかいないと理解したからこその行動であったという事だ。
あの時エインディアはリードの言動が気に入らずに痛め付けるような発言をしたが、喉元過ぎれば何とやら、既にアドルフから謝罪の手紙を受け取っており、すでに終わったことにしていたのである。
本来ならばここまで謝罪をする必要はないだろうとエインディア辺りは思ったが、手紙だけで済ませられるほどデュケインは甘い性格をしていない。
気まぐれを起こして現在不在のあの魔神が、いつ直接頭を下げろと言ってくるか分からないため、ヨハンが時期を見計らっていたのである。
ここでエインディアにヨハンと2人が頭を下げれば、デュケインの怒りを抑えてくれる役を買って出てくれると知った上でのしたたかさに、エインディアも苦笑いしてしまった。
「人の扱いがうまくなったものじゃなヨハン殿、伊達に齢は食っていなかったようじゃな?」
「ええ、何せ契約主があの性悪な魔神様でしたから」
くすくすと笑うヨハンに、エルフィーとリードの表情が一層硬くなった。
「まあよい、わしもあの時は気が立っておった。
人身となっているわしの事を知っているものなど、この世界に10人といないからのお。
…ともあれ、謝罪は受け取った。
次からはもう少し穏便な対応の仕方をとるんじゃぞ、2人とも」
「は…はい。
申し訳ありませんでした」
「誠に申し訳なく思っています…はい」
しょんぼりとへこんでいる2人の姿をエインディアは少しだけ『視』た。
既にエインディアの【神言】で自らの【異能】で傷つけた傷はすでに跡形もなく関知しており、あの後無事に済んだという事に少しだけほっとしたのである。
「ではあなたたち、次の任地に赴きなさい。
任務を完遂するまで、教国に変える事は許しませんので、そのつもりで」
「「はっ!!」」
ヨハンに敬礼をとると2人はエインディアに軽い挨拶をして部屋から出て行った。
ヨハンの先ほどの命令は、2人にとっての罰に当たる事なのだろうと思いながら、残ったエインディアはヨハンに促されるまま席に座った。
「最高戦力を首都から話しても良いのか?
現状の首都の戦力は分散し過ぎて、再び歪の大群が来れば幾らヨハン殿でも消耗は免れまいに…」
「その時はウル様が…代行者様が助けてくれるので、それまで耐えておけばどうとでもなるでしょう。
しかし…『守護騎士』は確かに首都に1人は最低必要かもしれませんわ。
近々任務が終了しそうな騎士に心当たりがあるので、アドルフに呼び戻しておくことにしましょう。
御忠告、感謝いたします」
「いや、年寄りの戯言を聞き入れてくれて感謝してはおるよ。
わしもヨハン殿の結界の手助けとなるよう、『九点結界陣』を起動させようと思っておってな。
近い内張るので先に報告しておいた方がいいんじゃないかと思っておったんじゃ」
するとヨハンが驚いたような表情をして恥ずかしそうに俯いた。
どうやらヨハンはエインディアがそこまで手を貸してくれているのに対して、自分の力に不安を覚えているのだと錯覚したようである。
思わぬ勘違いであったため、エインディアはすぐに訂正した。
「や、勘違いされるなヨハン殿?
そなたの負担を少しでも軽くできんかとアドルフに請われたから手を貸すんじゃ、何もそなたの能力に疑心あっての事ではない」
「そ、そうでしたか…助かりますわ。
この200年で結界を維持し続けるのにも少々苦しく思い始めておりまして…恥ずかしながら、一時結界に綻びが出てしまったことがありましたの」
アドルフが気付いていた違和感をヨハンが口にして、エインディアはこれで実証されたと思った。
「これで…首都の結界に使う力を他の手間に移すことが出来ます」
エインディアはヨハンの笑みを見て一瞬だが違和感を抱いた。
あの表情を以前どこかで見たことがあったはずなのだが、齢の所為か忘れてしまっているようだと内心苦笑してしまう。
「左様か、何はともあれ手助けになるならば重畳じゃ。
確か…アドルフが明日報告に来る、その日の内に済むじゃろうから、明日から少し結界を解いて休むとよかろう」
「何から何まで…ありがとうございます。
このご恩は、いつか必ずお返ししますわ」
「楽しみにさせてもらうとしよう、出は失礼する。
弟子が待っとるでな」
「実績も中々のものですし、数年もすればあっという間に高みに上ってくるでしょう。
教会に来る日を楽しみにしております」
エインディアはヨハンの執務室を出ると、エルフィーとリードが待っていた。
どうやらヨハンにもしもの事があった時には飛び入って盾になる気でいたようである。
エインディアは2人にもう用はないのでそのまま言葉も交わさずに擦れ違って教皇庁を去っていく。
既に日も傾きかけ、ハイドリヒと特号に菓子でも買って帰ろうと露店を回っていた。
エインディアは適当にいくつか見繕うと、ギルドの演習場にいた2人と月下亭へ戻っていく。
エインディアはヨハンの笑みの事をすでに忘れてしまっていた。
そして、その異変に気付いた時には、時すでに遅かった。
読んで戴き誠にありがとうございました。
ネタバレになるので今回は特になしということで。
さて、次回予告。
次回、『暗鬼躍動』です。
ではでは皆様、また次回まで。
コメント、ご感想をお待ちしています。




