第006話 ふとした違和感
誤字脱字がございましたらコメントよろしくお願いします。
デュケイン様御休み回です。
お気に入り100件越え、誠にありがとうございました。
「…あれ、今日は特号さんなんだ。
ヴァッサーゴ様は?」
「はっ、エインディア様、ハイドリヒ殿、9時間と25分02秒ぶりでありますっ!!
これより某が警戒行動をとらせていただきますので、よろしくお願いするでありますっ!
閣下は現在『管理者の間』にて英気を養っているとのことですっ!!」
忠義心の高い特号はデュケインが『管理者の間』でだらけた生活をしていることを他の使い魔から聞き及んでいたが、都合の良いように解釈していた。
殆ど盲目的なまでにデュケインを心酔している特号は、エインディアから見ても憐れにしか見えないようで、ハイドリヒに助け舟を出した。
「…要はサボりじゃハイドリヒ、わし等はいつもの様に過ごすぞ?」
「…え?」
「了解いたしました、これより某はハイドリヒ殿の護衛任務に移りますっ!!」
今日は午前中の訓練が終われば午後は休みになっており、各自自由行動になっているのだ。
デュケインは教国に来て好き勝手に店を回っており、もう観光の方には飽きてしまっていて、休みの日は『管理者の間』に籠っていることが多くなった。
エインディアも午後の予定を組んでおり、何か用事があるのかハイドリヒとは別行動をとる事になっている。
「…そうじゃ、おそらくハイドリヒの方に監視の目が行くじゃろうから、適当に摘んでおいてくれんかの?」
「了解いたしましたっ、快適な休日をハイドリヒ殿に過ごして貰う為、監視者は殲滅いたしますっ!!」
特号の現在の最重要指令は、『エインディアとハイドリヒの身の安全』である。
もちろん特号の肉体はデュケインを地上世界に降臨させるための依り代として最優先ではあるが、強化した現段階では特号の障害になりそうな者はこの教国にはほとんどいない。
何より、護衛対象に傷一つでも付けば、特号は怒り狂って何をするか分からないため、ハイドリヒは危ない事をする事も出来ないのである。
とはいえ、ハイドリヒは危ない事をするほど度胸がある訳ではないが。
「じゃあ、俺たち遊んできますっ!!」
「それではエインディア様、退室させていただきますっ!!」
「ああ、気を付けるんじゃぞ」
ハイドリヒと特号が部屋から出て行き、階段を降りて行くと、2人組と擦れ違った。
1人はエルフの老人で、身形からしてかなり裕福な人物。
もう1人は護衛なのか、変わった短槍を持った人間族の少年である。
とはいえ、短槍をこの狭い場所で扱えるかといわれればかなり自由度は低く、ナイフの方が有効なのでは、とハイドリヒは思ったのであった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「…失礼いたします、エインディア殿」
ノックをすると返事も待たずに扉が開いた。
エインディアは扉を開けたものを知っていたのか、呆れたような声で出迎える。
「まったく、主は相変わらずマナーというモノをしらんのう…」
「わしとしましても、その位であなた様の機嫌が損なわれるとは思っておりませなんで…ざっと300年ぶりですかな、エインディア様?」
「だいたいそれ位かのうアドルフ、あの頃の主はまだそんなにしわくちゃの爺じゃなかったとは思うが…ふむ、そちらが影武者の小僧か。
代行者殿が随分と良い装備を作ったと見える」
「は、はじめまして。
シュナイダーと申します」
枢機卿であるアドルフは代行者の影武者であるシュナイダーを護衛にして、内密にエインディアに相談事を持ち込んできたのである。
仲が良いのかといわれれば300年ほど前にアドルフがまだ信仰を広めようと旅に出ているときに出会い、1週間ほど寝食を共にした程度の仲である。
『観察者』であるエインディアの事を好意的に見ており、現在この世界について最も憂いている人物の1人でもあった。
シュナイダーの席は用意されていなかったので壁側に立つと、アドルフがどっこいせとばかりに空席の椅子に腰を下ろす。
「…最近、何やら首都近辺がきな臭くなってまいりましてな」
それを皮切りに、アドルフがここ最近で起きている違和感を説明し始めた。
以前は下位の歪位しか周辺にいなかったはずが、いつの間にか中位の大型種が目立つようになり、騎士団の方でも被害が広がり始めたこと。
「これに関しては教会の最強の盾である『守護騎士』を動かそうかどうかも議題に上り始めておりまして…教皇猊下はこれ以上騎士や民たちに被害が及べば、彼らを出撃させるとのことです」
守護騎士というのは、世界でも特異な魔法を保有している者たちの事で、現在その数は8名となっている。
1人1人が代行者ほどではないが、1個師団ではとても敵わないほどの戦力で構成されており、公の場では公開されていない。
守護騎士たち以外にもそれをサポートする騎士たちで周りを囲んでおり、公開されている騎士団よりどれも優秀な者が揃っている。
主に上位歪の中でも『名付き』と呼ばれる強大な力を持つ歪の殲滅任務を秘密裏に執行している。
「…ふむ、以前わしも歪と間違われて守護騎士の2人に追いかけられた記憶もあるが…アクの強い連中ばかりじゃったのう…大丈夫なのかえ?」
苦々しそうな顔をするエインディアに、アドルフが申し訳ないと頭を深く下げた。
これまでエインディアは竜の姿で生活をしていて、姿も歪と同じ黒だったため、エインディアを名付きではないにせよ強大な力を持つ歪と勘違いして攻撃していたのだ。
その時の守護騎士もとんでもない光系統の魔法を操る実力者で、思わず本気で相手にしてしまう所だったと思い出していた。
「…あとは、教皇猊下の結界に支障が出始めたと申しますか。
わしも正確には言えませぬが…ある日一時的に結界が解けたのではという錯覚に陥ったのです。
わし以外の誰もが気付かなかったゆえ、気のせいじゃと思いたいのですが…推測するに、200年も強力な結界を張り続けて、教皇猊下のお力に陰りが見え始めたのではと危惧しておるのです」
教皇であるヨハンの結界の異変を感じて、アドルフが教皇の執務室へ向かったところ、疲れた様子のヨハンがぐったりとしながら執務に当たっている姿を見てさすがに1人で結界を張りながら執務を行うのに精神的に参って来ているのではないかとアドルフは思っているので
ある。
デュケイン達がこの首都に来て結界についての違和感のことについては今の所ないのだが、そういう事ならば何らかの協力をした方が良いのではないかと考えていた。
これを聞けば、いくらモノグサで腹黒なデュケインでも少しぐらいは手を貸すだろうと思ったからである。
「…そうじゃな、単純に結界の強化が第一じゃろうて。
『四方結界』…否、『九点結界陣』辺りでも使えば500年程度は持つじゃろう。
とはいえ、代行者殿が近々元凶に引導を渡す方が早いじゃろうから、それほど強力なものでなくてもいい気はするがの」
エインディアが使える結界術の中でもかなりの力を消費する魔法で、展開されれば例え代行者でも苦労するほどの密度のある結界になっている。
力押しで敵うような結界の類ではなく、地下の霊脈等とも同期して稼働を続ける特殊な魔法なため、破壊する事はまず歪には不可能だろう。
「…ヨハン殿にはわしから伝えておこう、アドルフは結界の基点を9か所ほど探して貰えればよいじゃろうて」
「よろしいので?」
アドルフが疑うような顔をしたのを見て、エインディアがにやりと笑った。
「主が持ちかけてきたのじゃろうが?
乗ってやらんでどうする、わしはそこまで非道じゃない。
ヴァッサーゴ卿と一緒にされてはたまらんわい」
本当に友人なのかと疑うような言葉を吐いてはいるが、エインディアとしても本心であるから仕方がないといえよう。
気まぐれな上に、どちらかといえば気性の荒い性質のデュケインとエインディアでは、正直言って相性が悪いのである。
「…わしの事は良い、主らは主らの事だけを考えておればよい。
話は終わりじゃ、後日また会うじゃろうから続きはその後じゃな」
「それでは…」
「うむ、気を付けて帰るんじゃぞ」
「…退室いたします」
言葉を選んだのか、硬い表情でシュナイダーを先頭にアドルフたちは出て行った。
出て行った扉を眺めながら、ぼそりとエインディアが呟く。
「…前会ったときはヨハン殿に変調は見受けられなかったのじゃが…巧妙に隠されては叶わんな」
考え込むエインディアの独り言が、部屋中に響く。
ハイドリヒ達が帰って来るまで、エインディアの思考は止まらなかった。
読んで戴き誠にありがとうございました。
さて、ちょっとばかり特号さんの過激な一面がちらりと出ていました。
てなわけで、少し閑話含めてお出しする予定です。
こちらはすっごく短いので、別段読み飛ばししていただいても可能です。
とはいえ、次回予告はしっかりとさせていただきますが。
次回、『特号の評価』です。
ではでは皆様、また次回まで。
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