第006話 VS二人の試験官(前)
誤字脱字がございましたらコメントよろしくお願いします。
11/9 『二重属性』関連を修正いたしました。
12/23 サブタイトルに誤変換があるのに気付きました…お恥ずかしい限りです。
「…参ったな、一日余っちゃったよ。
仕方ないから知識方面とかを雑談交じりで教えていこうかな」
七日目に入る少し前、デュケイン様が私に叩き込もうとしていた技術が一通り済んでしまったので、安息日並の緩やかさで最終日ははじまりました。
「…とまあこんな感じだと効果的かな?
あと言っておくけど、この手の異世界の技術は流出させたら絶対にダメだから。
調子に乗ったどこかの種族が絶対に戦争起こしかねないからね」
教えてもらっているのは主に元いた世界の科学についてでした。
とはいえ、若干十五歳の私には聞いたことの無い専門用語ばかりで、言われていることはちんぷんかんぷんです。
「はぁ、まあ私も銃器といった武器はあまり好きではありませんし…危ないですし」
「武器は基本危ないんだけどね…っていうかウルのいた世界って結構異常じゃない?
だってさ、子供がモデルガンを笑顔で銃撃つんだよ、あれって傍から見たら頭おかしいって思うだよね、かっこいいから銃が好きだなんて…殺しの武器がかっこいいで済ませれる神経疑うよ」
それは全くの同感で、私のいた世界の国では娯楽がとても豊富で、いつの間にか銃器をその娯楽に持ち込むという事もいつの間にか含まれていた。
私はそういう娯楽に興味はなかったが、遊んでいる子供たちがいかにも年齢指定されていそうな凶悪なモデルガンを連射しているときは戦慄したものです。
「銃は一方的な痛みしか与えないからダメだね、よくて弓かな。
一番は剣でお互い痛みを味わいながらがいいんだけど…まあこっちの世界じゃ魔法もありだし色々かなあ…まあとにかく、剣と魔法があるのに、さらに厄介なものを入れたら際限なくなるから、流出してもいいのは文化的な技術だけね」
そういうと、過去の文化的発明がどうして、どうやって作られたのかを講義する時間がはじまりました。
もちろんですが、頭と同時に体も適度に動かしていましたが。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ブリッツはいつものように受付のカウンターで日頃の仕事をこなしていた。
かつては史上初のランク称号『金』をその手に入れるとされていた伝説的冒険者だったが、片目と片腕を失って引退したことによりその機会は失われた。
現在は後継の冒険者たちを酒の肴にして日々を過ごしている。
そんな折、ブリッツはここ最近の珍しい事件を思い出していた。
教会が神から使徒を呼び寄せたとか、昨日現れた正体の怪しい少年の事を。
ブリッツは根っからの信者ではないが、神がいることは信じていた。
理由などはなく感覚的にいるという曖昧なものだが、それでもブリッツは信じていた。
使徒と呼ばれる存在がどれだけの存在かは知らないが、これからこの世界に何か変化が起きるという事も、漠然とだが感じている一人でもあった。
そして、昨日現れた少年。
最初は薬草探しをしていたらしいが、最終的に歪を大量に討伐してきたあの腕前。
サメルン草を使って歪を集めてから倒すというのは自殺行為と思ったが、鎧に汚れが一つもないという実力は驚異的だ。
思わずこの坊主が使徒なのではと疑ったが、現在使徒と呼ばれている存在は教皇庁が保護しているとギルドの情報が入っている。
あの少年は使徒ではない、が、実力は確かであった。
そして上位ランカーたちと似た雰囲気を纏っていた。
融通があまり効かなさそうな、変わり者の雰囲気が。
今日の冒険者入会の試験は先日募集をかけていたランク緑以上の冒険者を集めておいたが、適正な実力を持った冒険者はあまりいなかった。
冒険者のランクは白青黄緑茶赤黒の7つ。
白からはじまり、黒に至る道は遠く、寿命が比較的長いとされる獣人のブリッツでも、黒になるのに百年は必要としていた。
最近のランク付けは比較的変わっていて、実力があれば白からではなく実力に応じた色から始められるというものだったが、これは最近だ。
ちなみに、最も寿命のある種族は魔人族とエルフ族、それに妖精・精霊も長く、それに続いて獣人族となっていた。
人族は寿命が150年となってはいるが、獣人族の平均寿命は約250年、差は明らかである。
朝から騒がしいギルド一階は、クエスト掲示板で手頃なクエストを探す者、パーティーが揃うのを待つ者、情報交換をする者で溢れていた。
「…しまったのう、あの坊主がいつ来るか聞いておくんじゃった」
既に選抜しておいた緑以上の冒険者が待ち惚けていて、思わず頭を抱えたブリッツなのであった。
「…なあブリッツさん、その坊主って今日来るのか?」
念のためといって聞いてきた魔人族の冒険者―バゼット―は不安そうな顔を浮かべている。
「ああ、今日来るとは一撮ったんじゃが、いつ来ると聞くの忘れていてのお…ほれ、これやるから腹ごなしでもしておくんじゃな、詫びじゃ」
1000ヒトゥンを渡されるとバゼットは苦笑しながら財布に入れた。
渡した金をどうしようと本人の勝手なので、ブリッツは何も言わない。
「…おはようございますおじいさん、試験受けに来たんですが」
それから一時間後、日も高く上がる少し前にやってきた件の少年はブリッツたちの心情を全く気付かずにいた。
「わしはブリッツじゃというとるに…まったく」
先輩を待たせるなど言語道断、という類の規律はないのだが、やはり暗黙の了解はあるもので、さすがにバゼットの内心は予想以上に落ち込んでいた。
ウルはそんなことには全く眉を動かさずに、試験官を見つめていた。
…魔法使いよりの冒険者ですかね、接近戦の訓練が良かったんですが。
あくまで試験を訓練程度にしか考えていないウルの思惑を露知らずか、ブリッツはウルに入会希望用紙を渡した。
「名前と種族名、それと獲物や得意な術など好きな事を書いてくれんかの」
「…嘘の情報とか書いたらどうなるんです?」
ふと思ったのか、ウルが聞いてみるとブリッツの反応は冷たいものだった。
「もちろんじゃがギルドから除名処分、それに多額の賠償金が発生するかの。
お前さん、なんぞ後ろ暗い過去でもあるのかな?」
「いえいえまったく、なんとなく聞いてみただけです」
スラスラと名前をはじめとした情報を書いていくウル。
…デュケイン様にこの世界の文字習っておいてよかったです。
特に難しいという事は無かったので書いているが、これで国ごとに文字が違っていればとてもじゃないが憶えられなかったと思う。
「はい、出来ました」
「…なになに、ウル・シイハ、十五歳、獲物は三尖両刃刀…なんじゃこの武器は?」
聞き慣れない言葉だったのか、実物を見せようとバッグから実物を取り出した。
取り出された獲物より先にバッグに目が行ってしまったのは無理もないだろう。
どう考えても入り切る長さではなかったのだから。
出された武器はいわゆる長モノの部類の武器だった。
刀の基本は片刃なのだが、剣先が三つに山のように分かれており、発達した刃の分岐は攻撃と同時に、敵の刃を受け止める機能も兼ね備えている。
ウルの身長を遥かに超える長さと重さを見てとれたが、ウルは軽々と片手で持っていた。
「随分と重量のある武器じゃのお…お前さん、意外と力持ちじゃな」
「鍛えてますので」
七日間だけだったことは口にしないでおきましょう。
「珍しい武器じゃのお…坊主、ちょっと貸してくれんかの」
「いいですけど、重いですよ?」
「かはは、そんなひょろい腕で重いと言われてものお…おおっ!?」
渡したと同時に受付から轟音が響いて、騒がしかった一階が静まり返った。
「な…なんじゃこの重さはっ、腕が上がらんぞっ!?」
ひっくり返ってしまったブリッツの腕をウルの武器が抑え込んでいるのだが、ウルは平静にして呆れていた。
「だからいったのに…重いって」
バゼットが三尖両刃刀をどかそうとしているのだが、動く気配がない。
バゼットが非力という事だけでは理由が付かなかった。
仕方なしにウルが再び手に取ってようやく事態が収まった。
「…助かったわい」
「…これは私専用の武器なので、他人が持つと誰でもそうなるんです」
「「それを早く言わんか(言えよ)!!」」
「貸してって言うから渡したのに…なんだか理不尽です」
憮然としながら不貞腐れている仕草はまるで拗ねた子供の様で、周りの冒険者たちはその異様さに違和感を覚えてか、少し離れた場所で様子を見ていた。
起き上がったブリッツは書かれた用紙を確認しながら注意書きに色々と書いていった。
「…ふむ、専用の武器持ちと、それに得意な魔法は水系統で…ほお、お前さん魔人族の者じゃったか、どおりで…」
正確に言うとこの世界の魔人とは少し違うのですがね…。
元人間ではあるが、現在の肉体は魔神お手製の超高性能な魔神の肉体である為、嘘ではないのだ。
魔人族と人族の特徴はその内にある魔力のみとされていて、ぱっと見ではどちらかは分からない。
そして一部の噂程度だが、比較的魔人族の方が美形が多いというものもあったが、容姿というのは千差万別なもので根も葉もない噂である。
「含むところがあるようですが、もういいです?」
「本当はもう少し聞いとかんといかんのじゃが、まあいいとするかの」
本来ならば出身地のギルド紹介状が必要なのだが、これは単に証明証と同義なもので、それほど必要という訳でもないようだった。
隣の施設が大型の訓練場になっているのか、一部の暇な冒険者たちが見学に来ている。
小さなコロッセオのような建物で、観客席まであるのは懲りすぎているような気がしたウルだった。
審判は何故か受付をしていたブリッツ、どうやら受付は予想以上に暇な仕事のようだ。
「別に勝てとは言わんがの、殺しは御法度じゃ。
戦闘に関してどれほど精通しておるのか、それを見るための試験じゃ」
その上、今回は中位の実力者として試験を受ける以上敗北したらそれだけでも減点となる。
ブリッツは遠回しに勝てと言っているようなものだった。
「手加減しないといけないわけですか…歪倒すのだけなら楽なのに」
「…ま、まあこちらとしてもそう簡単に負けれないけどね」
ここでようやく、ウルは試験官の顔を見た。
バゼットはウルと同じ魔人族出身で、近接魔法のオールラウンダーで通っていて将来有望株とされている。
短く刈り取った髪型に真面目そうな顔をしているが常に眉間に皺を寄せているのが特徴的で、いつも考え込んでいるのが普段から見る彼である。
落ち着いた戦闘スタイルと思いきや、得意な戦闘スタイルは超近接戦から持ち込んだ零距離の火属性魔法だ。
何故かは知らないが、バゼットは自分の情報を教えてきた。
何事に対してもフェアであることに何か思う所があるようだが、これはもちろん決闘などの対人戦のみといえよう。
相性からすればウルが有利な話だが、歴戦の冒険者は例え不利でもそれを上回る力でその逆境を乗り越えなければならない。
本来の実力はウルが断トツに上だという事に、バゼットはすでに気づいているようだった。
それでもウルと戦いたかったのは、単に彼が戦闘狂だったわけではなく、格上で、更には相性の悪い相手とどれだけ渡り合えるかを確かめるための訓練でもあったのである。
「…見た目通りに嫌な性格ですね、それに反して戦闘スタイルが特攻型…変な人です」
「君こそ、変わった武器も気になるけど、魔法使いとしての腕も相当と見た、胸を借りるぞ新人君」
「……普通は逆でしょう先輩さん」
「…二人とも、はじめるぞい?」
呆れ顔をしていたブリッツが二人から離れて審判の立ち位置に着いた。
ウルとバゼットも所定の位置について、ブリッツが合図をかけたらそこから試験開始である。
「それでは両名…はじめぃ!!」
「先手はもらうよ新人君っ!!」
腰に備え付けていたナイフを二本で先手を仕掛けてきたバゼット。
向かってくるバゼットに呆れながらも、ウルは三尖両刃刀『破軍』を迎撃の態勢で構える。
ウルの武器を使った戦い方は基本的に一撃必殺である。
ヒットアンドウェイで近くにいる敵を見境なく攻撃していくという身も蓋もない戦法だが、歪相手には使えるのだが対人戦では全く使えない。
「…だから、普通は逆でしょうって言ってるのに…はあ」
上段で構えているウルに対して、躊躇なく間合いに入ったバゼットに躊躇なく破軍を振り下ろした。
振り下ろした速度は素人目に見ても視認できたか怪しいほどの一撃だったが、バゼットはそのまま体を少しずらしただけで驚異の一撃を躱した。
『天まで焦がせ赤の柱 ヴァーンピラー!!』
カウンター越しに、バゼットの零距離魔法が炸裂する。
ウルのいる地面から火柱が上がった。
前方に態勢を崩していたウルはそのままバゼットとすれ違う形で火柱から逃げた。
油断しているつもりはなかったが、それでも実戦経験の少ないウルからすれば、今のカウンターで終わってもおかしくなかった。
受け身をとって難を逃れたウルは急いで距離を取ろうとしたが、バゼットはその隙を与えない。
「やるね、大抵これで終わるから、ちょっと嬉しくなってきたよ!!」
「これだから対人戦闘は苦手です…っ!!」
好きの無い連撃でウルの攻撃を封じているバゼットは、隙あらば『天まで焦がす赤の柱』を放ってきて、為す術がないように見られていた。
「はぁ、はぁ、はぁ、ま、まったく恐れ入るな君は、かれこれ十分以上私の攻撃から逃れるとは」
開始十分で訓練場のあちこちがクレーターだらけになっているのは全てバゼットの所為である。
重量のある破軍を以て逃げ回っているウルも相当体力を消耗しているはずだが、ウルの表情は試験開始から全く変わっていない。
対してバゼットは連続で魔法を放つのに消耗してきたのか、息切れを初めていた。
「…あ」
「あ?」
「飽きました、行儀よく戦うのは私の性分じゃありません」
“今出来得る限りの全力であなたを叩き潰します。”
「おじいさん、観客席に退避してください、ここを水浸しにします。」
破軍を片手にもう片方をバゼットに向けて詠唱しようとするウルに、バゼットが飛びかかった。
「させないっ!!」
「甘いです」
更に速度を上げた一撃はバゼットに向けてでなく地面に向けられた一撃だった。
轟音を上げて叩きつけられた地面は砂埃を上げてバゼットの視界を一時的に妨げる。
そのまま後方へ下がったウルは再度魔法を詠唱した。
『この場を青に満たせ ブラウゲライヒ』
既にブリッツが観客席に上ったのは確認を取っている、被害は目の前にいるバゼットだけなので躊躇なく放つ。
それは突然現れた水鉄砲のようだった。
どれだけの魔力を込めたのか、1メートルを超える水流がバゼット目掛けて襲いかかったのである。
一瞬の隙を突かれたものの、放たれた魔法をギリギリのところで避けたバゼットは未だ放出され続けている水流に慌ててウルに怒鳴った。
「こ、こら!!
試験が終わってもここはまだ使うんだぞ、使い物にならなくなるだろう!?」
それでも半身がずぶ濡れで、水分を吸収した分服の着心地は悪そうだ。
「ちゃんと後始末はしますから問題ありません…それにしても、余裕ですね」
”次で終わりなのに。”
その言葉を聞いて慌てて辺りを見回した。
まだ全てではないものの、殆どの訓練場には水が敷かれていた。
ウルの得意な魔法は水系統。
既にここは彼のテリトリーであるという事に気付いてしまった。
『この場を白に満たせ ヴァイスンゲライヒ』
ウルの詠唱に、近くにいた観客とバゼットは耳を疑った。
明らかに先ほどと違う系統の詠唱を聞いてしまったのである。
瞬時に水を凍らせ始めたウルの魔法は、訓練場にある水分に容赦なく氷の洗礼を与えた。
辺りが凍り始めていたのに気付いたバゼットも慌てて逃げようとしたが、氷の足音はバゼットの速度より何倍も速かった。
足元から腰まで凍らせた段階で氷の浸食は止まり、そのまま訓練場を氷漬けた。
「…まさかこれほどとは、恐れ入ったよ」
「降参してくれますよね、これ以上やったら殺しちゃうことになりますし?」
身動きできない以上、バゼットに為す術などない。
完全に動きを封じられている上、相手はまだ余力を十分に残している。
「ああ、私の負けだ、降参しよう」
その言葉を聞いたのか、ブリッツが氷で覆われた大地に降りてきた。
辺りを見回しながら、困った顔をしている表情が、ウルのツボに入ったのか笑っていた。
「笑い事じゃないんじゃがのお」
「っていうかこれで緑ならもう少し上でもよかったのに、おじいさんは私を過小評価し過ぎです」
「ついさっき戦った相手の目の前でそういう事言われると結構堪えるな」
ウルの辛辣な言葉にへこんでいるのか、バゼットが身動きの取れない状態で重いため息をついていた。
ウルは魔法を解呪すると、次第に辺りを覆っていた氷が蒸発を始めた。
一度魔法を発動し終えてしまえば解呪することなど出来ないのだが、ウルはまだ魔法を発動し続けていたため、解呪できたのである。
魔力量が常識外れなウルに可能なことで、誰にも出来る事ではない。
「…試験的には合格なんじゃが、もう少し上の方が良かったかの?」
「黒でもよかったんですけどね?」
余りに不遜な言い方で思わずブリッツも怒鳴りつけたくなったが、解呪されて氷漬けにされた個所を解しているバゼットがやんわりと止めた。
「今黒ランクの冒険者は出払っていないかな、赤も出払っているし…今いるのは、茶ランクのブリンドだな」
現在もっとも『金』のランクに手が届くとされている実力者の一人である獣人のブリンドは、今年で117歳。
当初は傭兵として世間に名を馳せていたが、冒険者に転向してわずか40年足らずで茶ランクに上り詰めた。
実力としてはすでに黒相当のようで、現在ギルド本部でも最高戦力の一人として数えられていた。
「ブリンドか…あいつが試験官なんぞするかのお?」
ブリッツが観客席を見回してみると、ある場所に目が留まった。
胡坐をかいて訓練場にいる三人を眺めている狼の獣人がいた。
赤銅色の髪と赤い両目が印象的な、歴戦の戦士の雰囲気を思わせた。
「…どことなくおじいさんに似てますね、彼」
「…ワシの息子じゃ」
苦々しく口にしたブリッツにウルは今更適当な事を言ったとはいえなかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「暇つぶしに見に来てみれば、今回は生きのいいのが来たじゃねえか」
背中に携えている大剣を握りしめて、獰猛な笑みを浮かばせた。
眼下で繰り広げられていた戦闘は、一見試験官側が押していると思っているものが大半で埋め尽くされていたが、歴戦の戦士であるブリンドの鼻は誤魔化されなかった。
「試験官側のやつもやるが…決め手に欠けるな、まだまだ火力が足りねえな」
緑の中では上位に当たるバゼットだったが、ブリンドにかかればまだまだ無駄なところの多いことこの上なかった。
しかし、それ以上に問題だったのは受験者側であった。
「てんで基本しかできねえのに、力尽くとは恐れ入るなおい」
その基本もまだ荒く洗練されていないのに、力ずくで発動させたあの魔法。
あんな魔法は少人数で発動しなければできないレベルの魔法を一人でやってのける魔力量にも呆れたが、連続して別系統の魔法を使ったことにも驚いた。
これに関しては訓練場にいるすべての者たちが勘違いしていた。
ウルは水と氷の二重属性を操ったわけではないのだ。
あの魔法は水属性の上位互換『氷』属性。
高位の魔法使いが使えるとされる上級魔法の一つである。
「戦えるならああいう奴がいいな、歯応えがありそうだ」
歪を討伐してきてみたが、最近はどうも昔の事ばかり思い出してくる。
そうこう考えているうちに、忌々しいあの男がこちらを見てきた。
何事かと思って耳を澄ませてみると、どうやら先ほどの試験官では満足出来ないので、更なる実力者を試験官にしようとしているらしい。
そこで白羽の矢が立ったのがブリンドという訳である。
「ちょうどいい、たまには歪以外とじゃれ合うのも悪くねえ」
本気で相手にするのも馬鹿らしいと思いながら、全力で戦ってみたい、と矛盾した願望を持ちながら観客席を下りていくブリンドなのであった。
読んでいただきありがとうございます。
れ、連続投稿!!
目、目が痛い…。
頑張って戦闘描写とかもろもろ書いてたらこんなにだらだらと…もう少しコンパクトな文章をがんばって書いていくので、なにとぞよろしくお願いします。
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