第040話 誇り高き王女
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どれだけの時間が経ったのだろう。
気が遠のいた程に時が経ちすぎて、全てが目まぐるしい程に物事は進んでいった。
巨獣たちが反映して衰退していく様を眺め、氷の時代も終わり、新たな命が育まれ始めていく。
それをただただ眺め記憶していくという、意義も見出せなければ意味があるのかと自問してしまうほど、私は退屈していた。
私の中に初めて生まれた感情が『退屈』とは、何とも不思議な気持である。
私が何をしようにも、私の声は誰にも届かなければ、誰も私に気付きもしない。
ただ、この世界を『 』し続けていくだけ。
命の溢れているこの世界は、広大でいて美しい。
しかし、この世界で、私はいつも独りぼっちだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「…リオン、ジュリー、あのエルフ族の王女は今なんて言ったのでしょうか?」
ウルの声は落ち着いているように聞こえたが、弟子2人は師が若干落ち込んでいることにすぐに気付いていた。
最近はウルの事を奴隷商人などという輩もいなくなってきていたのだが、ここに来て久し振りにウルの古傷をえぐるような事件が発生してしまったのである。
内心ではウルがどれだけへこんでいるのか、分かるのはリオンとジュリー位のものである。
「あー、シュトルンガルドにいた時みたいな勘違いが発生していると思います先生」
「出て行くときにも一度あったものね、いつものことだけど先生って大変ね」
と冷静に答えたリオンであったが、ジュリーの方はまるで他人事のように口にして更にウルの心情にダメージが入った。
「……(ウル)」
「……(リオン)」
「……(ジュリー)」
「な、なんなの貴方たち、というかそこの奴隷商人、離れなさいってばっ!!」
今度は魔法を使ってきたのか、突風のようなものがウルに襲い掛かってきたが、ウルは面倒臭げに突風を弾いた。
「…あのですね王女さん、私はその2人の師匠で冒険者です。
そう何度も『奴隷商人』と連呼しないでください、女性だろうと叩きのめしますよ?」
心情を吐露していたウルなのであった、上昇していた機嫌が一気に下降していく様が秒刻みのように3人は気付いていた。
エーヴァはウルの迫力に押されて一歩後ずさったが、さすがはランク黒の冒険者、すぐに態勢を立て直した。
「夢見が悪い上に現実でも勘違いで嫌な事が続くなんて…とはいえ、国と喧嘩するなんて面倒な事はごめんです、どうすれば私が奴隷商人じゃないと信じてくれますか?」
そう言われると、エーヴァはむっとして悩み始めた。
どうやら一方的にウルが奴隷商人だと思い込んでいたせいか、そう切り返してくるとは思っていなかったようである。
「そ、そうね…冒険者を隠れ蓑に犯罪を犯す者もいるし…他に貴方のことを証明できるようなものがいれば、信じてあげなくもないわ」
「…となると、やはりこの2人ですね。
リオン、あれを出してそちらの王女さんに見せなさい」
「あ、はい」
ウルに言われ、リオンがエーヴァにバッグからあるものを取り出した。
「えっとですね、紋章はシュトルンガルド王が僕たちの身の証明をしてくれるために一筆認めてくれたもので、これがあれば―――」
「あ、あなたそんな者たちを襲っていましたのっ!?」
「…話は最後まで聞いてくれませんか、話が進みません」
エーヴァが思わず攻撃しようとしたところを、ウルが冷静に止めた。
教会の十字架を見せてもよかったが、そんなものを見せた所でエーヴァが信じるとは思わなかったせいでもある。
リオンがエーヴァに見せたのは、エドワードがウルたちの為に今後の身の保証を立てるという意味も兼ねて作られた世界でただ一つの代物らしい。
作られたと同時に妖精の国以外に親書が届いているので、一部の関係者はこれを見せればウルたちの事を信用してくれるはずである。
しかし、目の前のエーヴァは王女でありながら冒険者、しかもランク黒の実力者。
そこまで事情を知っているのかと不安になる点も見受けられた。
「…確か、お姉さまがこの紋章について話していたのを聞いていた気がするのだけれど…」
「それじゃあ、後方に待機させている仲間を下がらせてくれませんか?
今にも襲いかかってきそうに睨んできてますよ」
視線の主たちに手を振るウルだったので、仕方なくエーヴァが手を挙げた。
すると、ぞろぞろとエルフ族が4人ほど出てきて剣呑な空気を出している。
雰囲気から察するに4人が4人ともかなりの実力者で、リオンたちと同じかそれより少し上といった所だろうか。
それでも、ブリンドよりは弱いと判断したウルは、とりあえず警戒はするがそれほど脅威だとは思わないことにした。
「エーヴァ、こいつどうするのよ?」
エルフ族の少女がウルを指さしてウルの処遇をどうするのか聞いてきていた。
あまり褒められた行動ではないが、ウルは別段気にしていないようである。
「捕まえようにもなあ…正直、こいつに勝てる気しねえぜおい?
あんだけ魔法ぶっ放していたのに、汗一つかいてねえっていうのは魔人族から見ても異常だ。
かといって、こんまますんなり通すわけにもいかねえし…どうするよ?」
青のターバンを付けた青年が念の為なのかウルに弓を向けながらぼやいている。
この中で一番冷静なのは彼だろう、ウルの実力を把握していつでも攻撃に出られるよう警戒している。
残りの2人も同様のようである。
いくら自分より実力が低いからと言って、少しでも油断していない方がいいとウルはすぐに考えなおした。
「…いいわ、情報は誤りだったという事にしましょう。
この魔人族は奴隷商人じゃない、それで終わりよ。
こ、攻撃したりして悪かったわ」
そういうと、エーヴァは軽くだがウルに頭を下げた。
「いえいえ、以前もよくあったので、勘違いと分かってくださればそれで結構です。
リオン、ジュリー、行きますよ」
「「はい、先生」」
ウルは気にしないと軽く笑ってエーヴァ達の横を通り過ぎていく。
姿が見えなくなるまで、ウルはエーヴァ達がいる後方へと振り返る事は無かった。
「…行ってしまわれましたね、王女殿下、如何いたしますか?」
口を噤んでいた赤いターバンを付けた青年がエーヴァにウルを本当にステルヴィアに入れてもいいのかと尋ねたが、エーヴァは聞いていない。
「…かわいかった…かも」
「は?」
「な、なんでもありませんっ!!
それと、あの3人には何もしない方がいいわね。
シュトルンガルド王がその身を証明しているのなら、悪人という事はありえないわ」
慌てるようにエーヴァが早口で青年に言い、自らも神木へ向かって戻っていくのだった。
エーヴァの頬が少しだけ赤かったのは、誰も気づいていない。
読んで戴き誠にありがとうございました。
うう、なんだか番外編書いていたせいか、少し本編の調子が悪い。
もう少ししたら調子を取り戻しますので、それまで少々お待ちを。
ていうか、サブタイトルと合ってないこのお話…本当に申し訳ありません。
むしろ恋する乙女ジャンこれ…とまあ、少しおいておいて。
次回は戦闘パートなので、それほど考えなくてもいいかもです。
さて次回予告。
次回、『剣と魔法と王女様』です。
ではでは皆様、また次回まで。
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