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ハイル 救いの物語  作者: 夢落ち ポカ(現在一時凍結中)
番外編 デュケイン様漫遊記 仕事も良いけど食べます遊びます楽しみます
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第008話 歪人強襲

時間的に、本編抜かしてしまいました…あれ、どうしてこんなことに?

若干の戦闘描写と、本編では知られていない情報がちらほらと出ています。

 




「…蛇が死んだだと…強力な冒険者でも来やがったのか?」


 森の奥深くで、忌々しそうに気配を察した影があった。


 全身を黒いもや(・・)で纏ったその姿に、荒々しい口ぶり。


 近くにあった木々は影が腕を振るうと何かで吹き飛ばされたかのように衝撃が走り、周囲の見通しが良くなってしまっていた。


「仕方ねえ、あの方の言いつけもあるし、確認したらさっさとずらかるとするか」


 もやを纏いながら村へと向かう影は、辺りに黒いもやを撒き散らしながらその場を去っていった。


 どこから集めたのか、山のような死体を残して。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 軽い朝食を摂った後、再び村に戻ってきたデュケイン達は他に生存者や死体がないかと捜索をしていたのだが、一向に見つかる気配はなかった。


 ハイドリヒはこの10日間で探すだけやって1人も見つからなかったと言っていたのだが、子供一人で探せる範囲などたかが知れている。


 建物の下敷きになっている可能性を考慮して探したのだが、結果は同じだった。


「結局、死体は見つからずかあ…ねえハイドリヒ、村のみんなってどうなっちゃったの?」


 食べられたのか、と聞かない辺り少しは配慮をしたデュケインであったが、それでも傷心中の子供に聞くような事ではないだろう。


「そ…それは」


 苦手意識を持ってしまったハイドリヒは、デュケインに話しかけられただけでびくびくと震えている。


 何かやったっけ、と自分がやったことを忘れてしまっているデュケインは当分ハイドリヒと仲良くは出来ないだろう。


「まあそう()かんでも仕方なかろうてヴァッサーゴ卿、ハイドリヒにこれ以上聞くのは酷というものじゃ。

 ここは、わしが探索範囲を広げよう」


『観察者』という性質上、広範囲を観測する術に長けているエインディアはハイドリヒに代わって周囲の状況を観測した。


「…半径5kmを調べておるんじゃが…見当たらんの、おるのは弱小の歪ばかりで、この村の壊滅に関われるような強い歪は…なんじゃこれは?」


「何か見つかったー?」


 暇つぶしなのか、倒れた家屋を繋ぎ合わせて簡易的なテーブルと椅子を作っていた。


 ハイドリヒは少し離れた場所で立っている。


「…ヴァッサーゴ卿、この村に何か来るぞ?」


「また歪?」


「分からん、じゃが昨日戦ったあの蛇よりは強いのお…全身が真っ黒で人型、歪とは思うんじゃが…これは」


 何かを思い出したのか、デュケインは舌打ちすると、現状の使い魔の肉体で勝てるのか判断したのだが、使い魔五人衆と比べても遥かに劣るこの肉体では到底勝てるとは思えなかった。


「…エインディア、ハイドリヒを連れてここから―――」


「バカを言うでないヴァッサーゴ卿、むしろ逆じゃ。

 お主がハイドリヒを連れてここからは離れるのじゃ」


 言いかけたところを、エインディアに阻まれる。


「分かっておるのか、その使い魔にお主の力をどれだけ込めてここへ来たのかを?

 正直言って、未だにわしの10分の1以下の力しかないのに、あのような存在と正面から戦って、タタで済むと思うてかっ!!」


「済むさ、たとえ絶対的な振りであろうと、僕はこれまで勝ってきた。

 ただの一度も敗北もなく、確実な勝利しか持って来た事が無い。

 過去も…そして、未来だって変わらないよ」


「じゃが、それはお主の本来の身体があればこそじゃ。

 使い魔の肉体では、消耗戦になればどう考えても不利になろうっ!!

 ハイドリヒ、主はヴァッサーゴ卿と共にここから……来よったかっ!!」


 暴風でデュケインが作ったテーブルと椅子が吹き飛ばされる。


 揉めているうちにここまでやってきたのか、黒いもやを纏った影が空中で停止した。


 デュケインは未だに座ったままでその影を見ているが、あのとき同様、今度はエルフのようである。


 影は村の中心に降り立つと、無残な最期を迎えたカズイスナークを流し見て、デュケイン達に向き直る。


「…あんだあこいつは?

 せっかく飼いならしておいた蛇がスプラッタじゃねえかよオイ。

 変な奴らもいるし…しかもそこのガキは生き残りかよったく畜生」


 ドレイク同様に彼も犠牲者なのかそれとも賛同者なのかいまいち判断のつかないデュケインであったが、どの道する事は変わらない。


【神斬】を抜くと、何も言わずに影に斬りかかった。


 耳を(つんざ)く回転音とともに、死の舞踏がはじまる。


「おいおい、挨拶もなしにいきなりかよっ!?」


「名乗っても愛着もわかないから、別にいいでしょそんなのっ!!」


「かっ、上等だあっ!!」


 ななめから斬りかかったウルの一撃を影は勢いよく腕を振って応えた。


 よほど頑強なのか、デュケインの一撃を受け止めてお互いが固まってしまう。


 瞬間、デュケインの右頬に鋭い痛みが走った。


「なにっ!?」


 何が起きたのか分からずに一旦引くと後方へ下がって頬をさすった。


 まるで何かに打たれたかのような痕に、何らかの飛び道具かと警戒した。


「かっ、これで少しは話せるか?

 それじゃあ自己紹介だ。

 俺はソロモン、女神メサイアの駒の一人で元はエルフ族だ。

 お前は、ちっこい剣士?」


 ソロモンという名に反応したのか、なおも油断はできないとデュケインは気を張り詰めながら口を開いた。


「僕はデュケイン…三千世界の神王が長子にして今回の反乱の首謀者の対策を命じられた魔神だよ。

 ついでに言うと、これから貴様をブチ殺す予定ね」


 今度はデュケインの名に驚いたのか、影の構えが緩んだ。


 その反応に、女神が一定以上この人型の歪に対して情報を公開しているようで、デュケインは頭を悩ました。


 この世界の成り立ちや神の存在について神が何かを伝える行為は禁則事項に明記されているからである。


 破ったらその時点で重罰が待っている。


 とはいえ、反乱を犯した時点で女神の罰は死でしか償う事は出来ず、今更罪状が増えた所でどうという訳ではない。


 単純に、デュケインの気分の問題であった。


 歪の力の根源を知るデュケインからすれば、目の前にいる影にしてもそうだし、かつて滅ぼしたドレイク同様、憎むべき敵であるという事に代わりはない。


「はあっ、どういうことだそりゃあっ!?

 女神が天神の類はこの世界に来れねえって言ってたんじゃねえのかよっ!?」


 どうやら女神はデュケインが見抜いた世界のルールの抜け目に対して気づいていなかったようで、デュケインは目の前の影はなんとしてもこの場で始末しなければならないと再度決心する。


 お互いの手札が見えない以上、より多く強力な手札を保持しておかなければならないのは、戦いにおいては基本である。


「うっわ最悪、あの女神(クズ)こともあろうに禁則指定にまで触れてるしっ!!

 …ってエインディア、どうしたのさ?」


 いつの間にかデュケインの隣にまでやってきたエインディアが影と対峙した。


 ハイドリヒはいつの間にか姿を消してしまっていて、デュケインからは確認できない。


 どこかに隠れたか、遠くへ行ってしまって気配が薄れたのか。


 どちらにせよ、エインディアがこちらへ来た以上安全地帯にいるという事なのだろう。


「いやなんじゃ、わしも仲間に入れてもらおうと思っての?

 ヴァッサーゴ卿、奴はなんじゃ?」


「…見れば解るでしょ、歪に憑りつかれた討伐すべき存在だよ。

 元はエルフらしいけど、今さっき受けた一撃は魔力によるものじゃない。

 接近戦、もしくは中距離も可能だなんて、あのクズも厄介な駒を持っているなあ。

 …ここで始末すれば、ウルの負担を減らしてあげられる…お礼して貰わなくっちゃ割に合わないなこれは」


 両手両足に魔力を込めたエインディアが、臨戦状態に入った。


 彼女の人型の際での基本的な戦闘は殴る蹴るでの超接近戦である。


 よほど時間が有り余っていたのか、体術や魔法、ありとあらゆる技術を修めている『観察者』に、隙はない。


 とりわけ人型での戦闘はこのスタイルを一貫しており、その実力は先日見ての通りで一撃一撃が強力である。


「ほほう、さながら『歪人(わいじん)』といった所かの。

 元が優秀じゃったのか、手強い駒じゃのお…冷や汗がしてきたぞい」


 わざとらしく苦笑するエインディアに、歪人―――影が嗤ったようにみえた。


「それはこっちのセリフだぜ、てめえはこの中で一番あり得ねえだろ?

 漏れ出してる力だけでも俺の方は震えが止まらねえよ…ったく、仕事(・・)も済んだからずら狩る予定だったのに、こんなのと遭っちまうだなんて、ついてねえぜ」


「仕事っていうと、この村を滅ぼすのが、お前の仕事かな?」


「その通りだぜ魔神様よぉ、いくら上位の歪といっても全部が全部俺たちの言うことを聞く訳じゃあねえ。

 一部の強力で知恵のある歪を配下に収めて、俺たちは村や都市を襲ってる」


 俺たち―――という言葉を聞き、ドレイクや目の前の影以外にも、女神が作った強力な駒は複数いるという事なのか。


「…それにしても、ペラペラ喋ってくれる。

 おかげでいろいろと対抗策が増えた…お礼に、泣き叫ぶ位の苦痛を与えてから殺してやるよ」


 回転をさらに上げた【神斬】はカズイスナークを斬った時同様に刀身が輝き始めた。


「エインディア、ハイドリヒの事は気にしなくても平気?」


「出てこない限り、問題はないじゃろう…今頃寝泊まりをしておった場所まで避難しておるはずじゃが」


「それならいいよ、それじゃあ…再開だ、適当に合わせてよ?」


 再度攻撃を開始するデュケインに、影の男は両腕を広げる。


 デュケインにとっては二度目の、エインディアにとっては最初の『歪人』との戦闘が始まった。


読んで戴き誠にありがとうございました。

新敵キャラ登場、その名もソロモンさん。

デュケイン様との今回のお相手です。

番外編も佳境に入ってきましたし、次も含めて戦闘回が増えていきます。

さて次回予告。

次回、『四苦八苦十二苦』

ではでは皆様、また次回まで。

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