第005話 無茶ぶりにもほどがある
はい、第5話でございます。
誤字脱字がございましたらコメントよろしくお願いします。
ちょっとした昔話をしよう。
なに、随分昔の話だから仲間内でしか知らないけどね。
不本意ながら、僕が『戦神』っていう名で呼ばれていた頃の事だよ。
とお様、神王様の御世がはじまってすぐに反乱が起きたんだ。
三千世界においてもまさに存亡の危機と言っていいほどのもので、とお様と配下にいた魔神たちや他の天神たち、管理をしていた一部の神達を総動員しての大争乱。
僕はその騒乱の中でも最前線にいた。
まあ向かうところ敵なし…ではあったんだけど、争乱を起こした首魁と話した時、正直同調してしまったんだ。
“今の神王に三千世界を統べる資格はない。”
普通神王となる資格を全て兼ね備えていたとお様に、よもやそんなことを言うバカがいるだなんて誰が思うよ?
けど、知っていた。
僕の気持ちは首魁と同じだった。
あまりにも優しすぎて、あまりにも甘すぎて、あまりにも強く、あまりにも賢く、あまりにも悲しすぎる、あの存在には。
数多ある世界を統べるだなんて、無理があったんだと。
結局、争乱は反乱軍を残らず滅ぼした僕たちは、何事もなくことが済んだと思い込んでいた。
けど…また起きてしまった。
一柱の女神の反乱が。
だから僕から志願した。
あの神王の代わりとして、全てを終わらせると。
どれだけの駒を犠牲にしようと。
どれだけの悲しみが神王様に降りかかろうと。
願いを叶えるために。
願いを…叶え続けるために。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そんなわけで、訓練です。
どうしてかって?
決まってるじゃん。
「この肉体使いにくい…」
『なら使いこなせ』
というバルの言葉を受けてからだ。
やっぱり感覚共有とかしていても、ブレというのは出てくるみたいで。
自分の身体だとできることが、使い魔の身体ではできないという事が結構解ってきた。
という訳で、獲物を振るってエインディアと練習試合中です。
白杖じゃなくてちゃんとした兵器を持って戦闘中なのだ。
甲高い音を響かせながら回転を続けるソレは、火花を散らしながらエインディアの頭上へ振り下ろされる。
僕の身体の倍はあるだろうそれを軽々と振るう姿は、遠巻きに巻き込まれまいと見ている者達からしてみても異様の一言だろうね。
エインディアは頭上から振り下ろされる一撃を避けながら刀身の腹に拳を当てる。
一瞬だけど通常より大きな火花が上がる。
けど、その程度じゃエインディアの攻撃は終わらない。
殆ど長物の様な僕の獲物は、一度懐に入り込まれると対抗する手段がかなり少ない。
けど、大きささえ違ってくればまだ抵抗の仕様はある。
魔力を柄に流し込むと、僕の獲物が一瞬で縮んでいく。
そのまま再度叩きつけようとエインディアに向かっていくが、相手も分かっていたようで逸らす準備万端だった。
「甘いぞいヴァッサーゴ卿っ!!」
鉄甲を付けているエインディアは再度叩きつけようとしている一撃も難なく逸らすと、こちらも鉄甲付の具足で容赦なくこちらの手首に一撃当ててきた。
両手で塞がっていていつもなら簡単に避けられるんだけど、本来の身体でないという情けない理由で、避けられない。
結果、僕の右手首が蹴られた瞬間にそのまま消失した。
それからはもう一方的な展開で、血が噴水みたいに出てきながら拳を避けようとしたら蹴り飛ばされ、蹴りを受け流したら傷口を殴られて再度蹴りで滅多打ちにされてのサディスティックまっしぐらな酷いものだった。
…もっと強い歪食べて強くならないとなあ、という反省点しか見つからない試合結果でした。
「…今日はこれで終わりにしよっか。
…っていうかエインディア、治療よろしくね、僕これ以上魔力使うと維持できない」
魔力が切れた後の使い魔というのは酷いもんで、まああっという間にボロボロのバラバラになってしまうんだなこれが。
いろんな歪を繋ぎ合わせて作ったこの使い魔の身体は、いわば映画フランケンシュタインで創造された怪物だ。
魔力で編んでいる以上動力源である魔力が無くなれば、肉体の結びつきが無くなり、そしてあっという間に歪の肉体がそこらに転がる事になるってこと。
エインディアは無言で僕の千切れていった手首を探してきて無理矢理治療してくれた。
さすが『観察者』、この程度の魔法は簡単にできちゃうか。
辺りに撒き散らしている僕の血の処理をどうしようかと思ったけど、エインディアがいつの間にか蒸発させていた。
「…こんなもんでどうじゃ、ヴァッサーゴ卿?
久々なもんじゃがうまく出来とると思うぞ?」
相変わらず口調が年寄り臭くて残念だと思うけど、まあ仕方もない。
実際に年寄りだもんね。
『卿はそれ以上にジジイだろう』
『…何か言った?』
『いや何も?』
バルが最近調子に乗っている気がするけど…まいいや。
今度『管理者の間』に戻ったらイジメてやろっと。
とそこへ、この練習試合場所を貸してくれたギルドの人間が近寄ってきた。
最初コイツも僕の事女の子と勘違いしてきて、どいつもこいつもと思ったんだけど、それをネタにちょっと優先的に広めの場所を使わせてもらった。
…いっその事女装でもしてバカを誘き寄せて虐めてみようかなあ…ふふ、いいかも。
「いやー、すごかったねお嬢さん方。
坊っちゃんもすごかったぞ、あんなすごい剣、どこで見つけたんだい?」
…僕の腕じゃなくて、獲物の方褒めやがったなコイツ。
「…っていうか、これ剣じゃないよ?」
「え、だって柄があって両刃で、変わっているけど魔法剣の類なんじゃあ…?」
魔法剣と魔剣には違いがあって、魔法剣っていうのは魔法使いとかが使う魔法を剣自体に書き込んでいるんだ。
書き込んでいる魔法は一種類だけ、それ以外は特に何も出来ない。
普通の剣よりは遥かに少なくて、この世界じゃあんまり作られてないみた。
で、魔剣はというと魔法剣と違って出来る事がまあいろいろとあるんだな。
魔法を書き込むことを始め、魔力があればさらに他の魔法を書き込むことが可能になる。
材料次第だとそれこそ魔法が幾らでも書き込めて、変幻自在で圧倒的な兵器になるんだ。
で、これは僕が使っているのは、僕がかつて『戦神』と呼ばれてきたころからの愛機。
「これはねえ…魔力融合型兵器、万能鎖鋸【神斬】っていうんだよ。
これにかかれば、切る、切裂く、削る、削り取る、そして貫くことも可能という、何でもござれの致命的な武器なのさ」
ウルの持っている【破軍】と同じ材料で作られていて、あっちほどじゃないけど、こっちも結構えげつない性能なんだよね。
所有者の半径10mを重力操作で通常の倍以上の負荷をかけ、所有者との身体能力を限界以上に引き上げ、尚且つ副作用なんてこれっぽっちもないという理不尽仕様。
あとは部分、全体的な大きさの変化も可能で、柄だけを大きくして長物みたいに扱ったり、剣だけを伸ばしてみたり、そのまま巨大化させてみたりと超が付くほどの近接戦闘特化の能力ばっかり付いているんだ。
まあ、他にも機能付いてるんだけど、ここでは割愛ね。
これにも当然神殺しの力も込められていて、ちまちまとだけどウルの歪狩りを手伝っていることになるのかな?
…そのうちバイト代請求しよ。
「そ、そりゃあ…すごい…んだよな?」
首を傾げながら苦笑いしている、まあ意味わかんないか。
分かったら分かったでこれ目当てに襲ってくる奴出て来そうだなあ。
ギルドに登録するには一度教国に行かないといけないんだけど(意外とアマもいるもんで調べてみたら教国に行くのが面倒で行っていない奴も結構いた)、面倒だから行かなかった。
収入が少し減るけど、それほど困らないからいい。
…本当は、グルメ観光とかしたいけど、今はそんな時じゃないしね。
アンヌンは結構殺風景な首都で、綺麗に整備された場所だったんだけどなんだかあんまりいて楽しい所じゃないみたい。
殺風景な上に空気もピリピリしているみたいで、あんまり長居したくない場所だったかな。
「…それでヴァッサーゴ卿、今日はもう仕舞いかの?
わしはもう疲れたから眠いんじゃが…」
年寄りめ…この程度で眠気に負けやがってっ!!
「…今日はもう帰ろっかな」
まあ一理ある、仕方ないから寝るかな。
ギルドに戻ると、練習場を使い終わったと報告して、宿屋に戻っていく。
とりあえず、この首都を中心に強そうな歪を探して食っての繰り返しを続ければ、当分は困らないかな。
情報収集も並行していかないといけない、急がないと。
あとの事は全部使い魔に丸投げして、『管理者の間』に戻ってきた。
戻ってきてまずやったことは、最近ナマイキになっているバルをイジ…もとい、嫌がらせだった。
いつの間にか高層ビルみたいな(というより、これダンジョン?)神殿を今度は一回もまとめて木っ端微塵にして、バルの叫び声が泣き声に変わるまで楽しんだ後、満足してベッドで寝た。
一日を総括、良いことした後の睡眠は気持ちいいね。
読んで戴き誠にありがとうございました。
昔話も交えながら番外編、というのが本来の番外編のコンセプトでした。
鎖鋸…ぶっちゃけいうと、どっかの殺人鬼が使っているアレです。
デュケイン様はこれ使うの大好きなんです…色々使えるようでして。
さて次回予告。
次回、『皇女ってこれが?』です。
ではでは皆様、また次回まで。
コメント、ご感想をお待ちしています。




