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ハイル 救いの物語  作者: 夢落ち ポカ(現在一時凍結中)
第2章 地獄の沙汰も代行者編
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番外編 クリスマスと代行者

はい、クリスマス限定の番外編でございますっ!!


デュケイン様がはっちゃけてますので、ご注意を。

 


 ふと目を開けると、いつもながら突然なデュケイン様の呼び出しでした。


 何か悪い事をしたのかとここ1週間振り返るのですが、身に覚えがありません。


「やっほーウル、元気してる?」


 目の前にいるデュケイン様は血に染まっている真っ黒な帽子と、返り血満載の白と赤黒のコントラストで現れてます。


「…何をやっていたのですか?」


 いかにもついさっきまで惨劇起こしていましたみたいな姿で現れますと、正直心臓バクバクです、顔には出ませんが。


 あ、よく見たら頬に返り血ついてます、ますます怖い。


「何って…見ればわかるでしょ、サンタコスだよっ!!

 真っ白い服を着たお爺さんがクリスマスの日に煙突から家に忍び込んでは惨劇を引き起こすシリアルキラーなんだよっ!?」


 …アレ、私の知っているサンタと全く違う内容なんですが?


 …いえ、私あまり元の世界の一般常識も知りませんでしたし、デュケイン様の言うことが正しいはず…訳ないですねこれはさすがに。


「…えーと、それでそのシリアルキラー(サンタ)の衣装を着ているデュケイン様は、今日は何の御用なのですか?」


「クリスマスと言ったらおいしいケーキに七面鳥の丸焼きでサンタを迎え入れるって相場が決まってるんだからねっ!?」


 眼帯越しでも目をかっと開いて握り拳をするデュケイン様は返り血と極まって更に凶悪な雰囲気を醸し出してます。


「…拘りますね、そのトンデモ設定」


 とはいえわかりました。


 つまり、何か食べ物寄越せという訳ですか。


「…具体的には、丸焼き以外にどんなケーキが欲しいのですか?」


「チーズケーキかブッシュドノエルを希望するんだけど、希望としてはブッシュドノエルねっ!!

 希望としてはだけどっ!!」


 更にサンタにはクリスマスプレゼントが必須と言いそのためには靴下が必要というと、私とデュケイン様がラクラクに入るような巨大靴下(片方)を渡されました。


 無茶ぶりにも程があります。


 …よく見ると、手編みですね、制作者は…あ、バルって書いてあります。


 …本当に苦労されてるんですね、あの神様。


「という訳で、僕忙しいからいったん帰るけど、今日の夜また来るからそれまでに準備しておくようにっ!!

 これ師匠命令ねっ!!」


「…承知いたしました」


 この調子だとバルという神様にもたかっていそうですねとはついぞ口に出来ずに、目を覚ました。


 起きて気付いたのですが、床には巨大な靴下がだらりと横たわっていて、夢でしたで言い逃れができないことを思い知る私なのでした。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「…という訳ですから、今日の修行は中止です」


 だって、デュケイン様を優先しないと後怖いですから。


 2人とも喜んでいますが、突然手が空いてしまった為やる事がないそうです。


 まあ、狙っていたんですけどね。


「修行はありませんが、今日は一日私に付き合いなさい。

 拒否権はありませんので、そのつもりで」


「「…な、なんていうぬか喜び」」


 息ピッタリですね、仲が良い事で私は安心しました。


「…それで、先生の先生で『デュケイン』っていう神様に食べ物とプレゼントを用意しないといけないのよね?」


 ジュリーが巨大な靴下を見ながらウルに確認をとると、そのままウルは頷く。


 朝起きるとウルが巨大な靴下を前に項垂れているのを見て、先生の落ち込んでいる姿初めて、などと思ったものである。


 何故巨大な靴下が朝起きたらあったのかより重要な事だったらしい。


 リオンも同様に思っていたらしく、ウルが落ち込んでいるので思わず固まってしまった口である。


「ええ…ご丁寧にも材料とレシピまで置いているあたり、作っていなかったら後が怖いですね」


 靴下の中には袋詰めにされた材料とレシピ一式が入っていて、これなら自分で作った方が良かったのではと思うウルなのであった。


 あいにくウルにはお菓子作りの経験はない。


 料理が出来るのは、単に生きるために必要なスキルであったからである。


 お菓子がなくとも料理があるので栄養は補っていると考えてしまっているため、この世界に来てからウルはそういった物を口にしていなかった。


「…お金を渡しておきますから、2人は珍しいものを片っ端から買ってきなさい。

 リクエストは、『なるべく面白おかしいもの』ですから、気を付けるように」


 デュケインの性格を知っているウルがそういうならばとリオンとジュリーは20万ヒトゥンという大金を預かり、川原の鈴鹿邸を出て行った。


 ウルは2人を見送ると、宿屋の主人に食堂の隅を使わせてくれないかと頼み、謝礼金も渡して何とかおいてもらうと、レシピに書かれている通りの順に慎重にお菓子作りを始めた。


「…何で代行者ともあろう者がケーキ作りなど…えっと、混ぜたチョコクリームを生地に流して…冷やすの面倒ですね、魔法で短縮しましょう」


 時系統の魔法で時間を早送りにするという案を思いつかずに、急激に冷やしたのがまずかったのか、置いてある鉄板と生地が引っ付いてしまった。


「…そ、そうでした、短縮なら氷で急激に冷やすより時間そのものを短縮すれば…ま、まだ材料と時間はありますし、大丈夫です…だい…じょうぶ?」


 ダメになってしまった生地は後でリオンたちのおやつにアレンジする事にして他の場所に置くと、再度材料を一から始めていく。


 既に七面鳥は4羽ほど焼き上がっており、時間を止めているので出来立て熱々の状態を保っている。


 黙々と作業を続けていくウルの様子を不思議そうに厨房にいる料理人たちは見ていたが、集中しているウルはまるで気づいていなかったようである。


「…生地の状態は問題ないようですね…よかった。

 あとはラップで固めているケーキを冷やしておいておけば…あと時魔法もかけて時間短縮しましょう」


 囲い込んでいる氷の周りをウルが時系統魔法で時間を早送りにする。


 手作りパン作る時楽になりそうですねと使いながら思っていたウルは、冷え切って充分に固まった生地の両端を切り落とした。


 綺麗な『の』の字にロールされていて、見た目も問題ないようであった。


 クリームを全体に塗り株を載せてさらにクリームを塗ると、株の模様を付けていく。


「…ココアを振って断面をホワイトチョコで年輪のように…よし、なかなか上手に出来ました」


 完成したとウルが呟くと、観戦していた厨房の料理人たちが拍手でウルの料理を称賛していた。


「すごいね君、ちょっとこっちの余った生地を食べてもいいかね?」


 料理長の老人が一口失敗してしまっている記事を食べると、これはうまいと絶賛していた。


 生地に失敗があったのではなく、鉄板に張り付いていたので味について問題はなかったようである。


「…先生、王都にある商人さん達から色々買ってきましたって…わーいい匂いっ!!」


 丁度よくジュリーがリオンと共に戻ってきた。


 ウルはリオンたちに手を洗ってくるように指示して、失敗してしまった生地をナイフで正方形に均一に切っていき、皿に置いた。


 余っているチョコクリームを2人分の皿に垂らしていき、ブッシュドノエルではないが、ブッシュドフィーユにはなったようである。


 余った材料で2人分を軽く作ると、一足早く夕食の準備ができたようであった。


 シチューをはじめハンバーグやカレーといった子供が大好きなメニューをどんどん作っていくウルに、多彩な料理を作るウルの姿に感動した料理長が思わず『ここで働いてみんかね』とスカウトしたことは秘密である。


「相変わらず先生の料理はおいしそうですね…ジュリー、今どんな料理教えてもらっているのかな?」


 リオンが深呼吸するように料理の臭いを堪能している中、ジュリーはウルに一つ一つの料理のレシピを教えているようであった。


「これは肉を叩きにしてタマゴやタマネギと一緒にですね…」


「ふんふん…なるほどーって、今シチューとチャーハンっていう料理を習得中なの、もう少し上手になったらリオンにも食べさせてあげるからね」


 偶然見つけた米を使って披露した時、リオンがチャーハンをいたく気に入ったこともあってか、イの一番にジュリーが覚えようとしたのがチャーハンである。


 ウルとしてはもう充分においしくできているのだが、ウルが作った黄金チャーハンを目指してしまっているジュリーはコツをよく教わっていた。


 いつになるのでしょうねえそれって、とぼんやり思いながら2人が食べる様子を見て、ウルは束の間の平和に夢心地になるのだった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 再び私はデュケイン様に呼び出されました。


 巨大靴下に大量の料理とプレゼントを変形するほどに詰め込んで、準備は万端です。


 前会った時と同様、赤黒い衣装に身を包んだデュケイン様がお見えです。


「やっほーウルどうどういいの出来た出来たよねうんうん僕は信じているよウルが僕の為においしい料理とおいしいケーキを持って僕の元に来てくれるって信じていたんだっ!!」


 テンションが高い事で何よりです。


 奥にはあのバルという神様が作ったのでしょうか、三階建てのビル相当の高さをした木が一本生えていて、一部削れています。


 …もしかして、ケーキで木を作ったとか?


 よく見ると葉っぱも茶色と白で飾ってあって、果物もふんだんに使われている。


 …次元が違いすぎて泣けてきますねこれは。


「…へー、シュトルンガルドって今こういうのが流行ってるんだ。

『エドワードせんべい』『エドワードクッキー』…なんかエドワードばっかりだね」


 …2人とも、なに宣伝してるんですかこのリスペクトは。


 まあ、『面白おかしい』に違いなくもないですし、問題はないですか。


『エドワードクッキー』を頭からバリバリ食べるデュケイン様を見ますが、ケーキや七面鳥の方にも問題はなかったようです。


「…ふー、ごちそうさまでした。

 ありがとウル、元気でたよ」


「それじゃ僕からもプレゼントね。

 これあげるから、今後も頑張ってね」


 渡されたのは小さな靴下でした。


 何やら中に入っているようですが、目が覚めるまで中を見てはいけないそうです。


「それじゃあ今日はありがと。

 僕はまだあの木食べないといけないから、ウルはもう帰ってもいいよー」


 本当に自由なデュケイン様は、手を振ると私の意識を強制的に落としていきました。


 目が覚めると、空はまだ真っ暗で、いつの間にか巨大靴下はなくなっていて、手には小さな靴下が。


「これは…包丁?」


 ―――『今後も頑張ってね』。


 歪退治じゃなかったんですかっ!!


 夜中な事で叫ぶ事も出来ず、デュケイン様に次会ったときなんて言えばいいのか。


 とりあえず、むちゃな注文をしないでくださいとお願いする事にします。


読んで戴き誠にありがとうございました。

デュケイン様…それサンタじゃないです、ただの危ない人ですよ!!

バルさんも頑張って作ってたんですね…チョコケー木。

さて、次回から番外編でございます。

といっても、現在候補がいくつかありまして。

1.ブリンドとブリッツのぎくしゃくした関係。

2.教国騎士団でのシュナイダー君奮闘記。

3.リオン&ジュリーと王子と姫のお茶会。

4.デュケイン様漫遊記。

の4つです。

ご希望がありましたらお受けいたしますので、ドシドシご応募を。

ではでは皆様、また次回まで。

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