表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハイル 救いの物語  作者: 夢落ち ポカ(現在一時凍結中)
第2章 地獄の沙汰も代行者編
39/97

第037話 悲願達成、そして?

誤字脱字がございましたらコメントよろしくお願いします。

 

 そして一ヶ月後。


 既に告知していた通り、獣人奴隷関連する法はこの日を以て永久に破棄されることになった。


 各国も連動して細かい法の抜け穴を潰すための法を制定しており、アンドレア大陸での奴隷法は事実上消滅する。


 各国の一部戦力も返還される予定のシュトルンガルドの守備に当たる事にもなり、未だ不安定なシュトルンガルドの防衛はひとまず安定する予定である。


 アヴァロンの貴族を最終的に3分の2ほど滅ぼしたウルは、満足感とともにこの日を待っていた。


 金柳亭はあれから1週間ほどで貴族が来なくなったので、他の候補地で網を張り、減っていけばまた他の候補地へというサイクルを延々と続けていった成果がこれである。


 残りの3分の1は元々アルハザード寄りの思考を持った貴族たちばかりで構成されていたため、偶然会ったとしてもあちらから何かを言ってくることもなかった。


『…もう少し減らしたかったんですけど…まあ贅沢は言わないことにします』


 ウルは極たまに残念そうな顔をしていたが、予定していた賠償額のほとんどを滅ぼした貴族たちの試算で賄うという計画もほとんど成功した状態でこれ以上何を求めるのだと思ってしまったリオンたちだった。


 確かにウルの計画により数十年かけて支払われるはずの予定だった賠償金はそのほとんどを没収した資産で賄うことができ、短期で再興が可能となった。


 今日は獣人奴隷解放を祝って一部の区域では獣人たちによるパレードが始まっている。


 ウルも参加したかったが、人型である以上知らない獣人たちからすれば空気を汚してしまうという事を考えていく事はしなかった。


 そして、ウルたちは往生でアルハザードとの3度目の会談がはじまろうとしていた。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「…という訳で、めでたく獣人たちは解放され、国も戻り、後は歪を打倒すための戦力になるため代行者(わたし)の為に身を粉にして―――まあ程々でいいのですが―――働いてくれれば、今回尽力した甲斐というものがあるというものです」


 会談とは言っても、2回目と同様公式な会談ではなく一部の事情を知っている者たち同士での秘密の会合のようなものである。


「…今回の事、尽力を戴き誠に感謝いたします、代行者殿」


 恭しくも頭を下げてきたアルハザード達に、ウルは軽く手を振って応えた。


 使者であるウルの情報を調べ上げ、推測ではあるが代行者であるという可能性に至ったというだけでも及第点を上げたかったところだが、今回の件ではあまり穏やかとは言えなかった。


「本当ですよ、まったく。

 本来ならば強力な歪から弱小の歪を毎日(ほふ)っているはずの予定だったのに、どうして同じ世界の住人同士で上下関係を付けない状態になっているのやら。

 アヴァロンの事情を知った時、私は獣人たちだけ救ってアヴァロンは…人間を滅ぼす案を提案した位ですよ?」


 過激すぎる提案ではあったが、ヨハンの言葉によってウルはアルハザードの為人をひとまずは信じる事にしたのである。


「…けど、この国に入って来て情報を集めれば集めるほど呆れました。

 至高の存在であるはずの王が、一臣下の発言を退けられない?

 何のための『王』という存在ですか、飾りですか?

 挙句に屑ばかり蔓延(はびこ)り続けてこの始末です、邪魔な貴族を消すにしても本当に面倒でした」


「…はい」


 項垂れるアルハザード達であったが、ウルも鞭ばかりを打ち付けるほど無体ではない。


 ―――邪魔者には鞭を打ち続けるだろうが―――。


 それから会談というより反省会のような趣でウルが一方的に扱き下ろし、アルハザード達が平身低頭して、リオンたちはお茶菓子で楽しんでいた。


「けど、これだけ早く法を撤廃させた手腕は中々のものでした。

 邪魔な貴族を排除して風通しを良くした所為か、政務にも活力のようなものが出始めているようですし、まあ、いい方向へ繋がったんじゃないですかね?」


 これが済めば後は教国からこちらに向かってきているエドワードたちと合流して返還式を行い、事実上のシュトルンガルドが再興されることになる。


 政務に必要最低限の道具屋資料を残し、それ以外は本来のアヴァロン首都に送っている今、王城内は酷く殺風景で静かであった。


 学院はアヴァロン首都に吸収されることになり、学生たちをはじめ、シュトルンガルドからは人間族のそのほとんどが姿を消すことになるだろう。


 そして、ウルが目を付けた中でも一番褒めたかった点があった。


「国境付近にアヴァロンとの交流する地域を設け、人間たちとの関係修復を目的とした都市の建設…候補地もすでに上がっているようですし、地道に続けていけば将来は―――」


「―――ええ、本当に人間と獣人の、対等な立場としての関係を築けていけるような未来に繋がると信じて」


 アルハザードがウルの言葉に続き、リオンたちも深く頷いた。


「ええ、既に未来に向けて中々に優秀な人材も出始めているようですしね。

 少し前になるのですが―――」


 ウルは、平民に変装した貴族の姉弟の礼儀正しさと誠実さに酷く感心して、将来が楽しみだと笑っていた。


 王子と姫が丁度姿を消した時と重なって居たため、ブランニューが思わずネコババ騒ぎの事かと口に出してしまったのだが、機嫌が良かったのかウルは楽しそうにその通りと答えた。


「なるほど、国の舵取りは少々危な気ですが、父親としては十分にその役目を果たせていたようですね。

 良き子を育てていたものです、元気ではありましたが聡明でいてとても利発な子どもたちでした」


 手放しで褒めるウルは、大盤振る舞いで飴をあげているのだが、本人はいつの間にか匙加減が大雑把になっているようだ。


 噂をすれば影というべきか、扉を開けて小さな影が2つやってきた。


 1ヶ月前にネコババ騒動で知り合った貴族の姉弟たちがアルハザードに一直線で向かっていったのである。


 ウルはおやと首を傾げ、アルハザードは溺愛している子供たちにウルを紹介した。


「2人とも、こちらは教国の使者でウル・シイハ殿だ。

 ほら、ご挨拶なさい」


 王子と姫はウルの事を憶えていたようで、しかし立場というものをしっかりと理解していたのか、堅苦しくもかわいらしい挨拶をしてくれた。


「は、はじめまして使者様。

 わたくしはアヴァロン国第一王女アーデルハイドと申します。

 以前はお助けいただき、誠にありがとうございまいた…あ、かんじゃった」


 隣にいるジュリーがリオンに可愛いを連呼しており、リオンがジュリーを宥めている。


「は、はじめまして使者様。

 ボクはアヴァロン国第一王子ヴィルヘルムと申します。

 以前はお助けいただき、誠にありがとうございました」


 弟の方はきちんと言えたようだったが、どちらも堅くなってしまっていて、ウルとしてはあまり嬉しくない。


 子供は子供らしくが一番と思っているウルは、以前会った時の様にはち切れんばかりの元気と明るさを持った2人の方が気に入っていた。


「はい、改めましてはじめまして。

 私はアンストル教国から使者としてきましたウル・シイハと申します。

 そして、冒険者をしていますが、本来は神から遣わされた代行者というものです。

 とはいえ、力があるだけでそれ以外は特筆する点などない一般人ですから、私に堅苦しい言葉遣いはする必要ありませんよ?」


 代行者の事を知っていたのか、2人は目を光らせて言葉遣いについても不問とすることになり、最低限の礼儀を保って子供たちの質問会へ移行していった。


 夕食会の後も続き、その日は往生に泊まるという貴重な体験をしたウルたちは、次の日も王子と姫の質問攻めを受ける事になるのだった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ムシュフシュにある高山地帯では、情報収集のためにデュケインの使い魔が高速で山を駆けていた。


 現在はふててしまっているデュケインに代わり、独立起動させているため使い魔は独自の思考を持って山の向こう側にあるムシュフシュ首都に向かっている。


 とそこへ、巨大な影が使い魔の頭上を覆った。


 すぐに危険を察知したのか、使い魔はその影から一目散に離れて距離を保つ。


 巨大な影は使い魔を一瞥すると降りてきた。


 全身を黒く磨き上げた鱗は太陽に反射し、頑強な翼を羽ばたかせながら、紅い瞳を瞬きさせる。


 口を開いて人吼えし、使い魔を睨みつけた。


 竜、という超常に至った存在である。


 使い魔は悟る、この存在と戦ってはいけないと。


 保有している力ではどうあっても対抗することが出来ない事を悟ると、瞬時にこの場から離脱できる方法を検索し始めた。


『…主は…使い魔かの?』


 凶悪な牙を並べた口が開くと、まるで超音波のような衝撃波と共に声が聞こえた。


 使い魔は相手に意思伝達の出来る存在に気付くと、ゆっくりとだが頷いた。


「そうであります、(それがし)はある神より遣わされた使い魔で、現在は情報収集の任に当たっている最中。

 申し訳ないでありますが、貴殿と話している余裕は。

 ―――あれ、『観察者』じゃないか。

 どうしたのさ、僕の使い魔に何か用かい?」


 デュケインがこの状況に気付いたのか、使い魔の意思をそのまま遮って目の前にいる竜に対峙した。


『…その声、まさかヴァッサーゴ卿か?

 これはまた…この世界に干渉するとは無茶な事を』


 竜がくくく、と笑い、ヴァッサーゴと呼ばれたデュケインもまた笑う。


「とお様に代理を頼まれてね、いま健気に頑張っている所なのさ。

 ところで、『観察者』であるお前が出張っているという事は…ようやくかい?」


 呆れた調子で使い魔越しから竜を睨むデュケインに、唸るように答えた竜は、この世界で起きている事態についてどういうことなのかと聞いてきた。


「…そこからか、まあ僕も手が欲しかったんだ、道すがら話すから手伝え」


 有無を言わさず命令するあたり、力の関係をともかくとした上下関係が分かる図である。


『…よかろう、我もそなたほどの力の持ち主と合流できて僥倖というもの。

 謹んで微力を尽くそう』


 代行者(ウル)とは別の視点から、デュケイン達は行動を開始した。


読んでいただきありがとうございます。

和やかに終わってデュケイン様は竜と合流して情報収集に。

第2章も次で最後…ですか、あっという間でした。

それが終われば次項から少し設定などを投稿する予定ですので、少し本編からさらに離れます。

といっても、2章の次は番外編ですが。

さて次回予告。

次回、『シュトルンガルドに至る』です。

ではでは皆様、また次回まで。

コメント、御感想、御質問をお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ