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ハイル 救いの物語  作者: 夢落ち ポカ(現在一時凍結中)
第2章 地獄の沙汰も代行者編
36/97

第034話 計画通り、次の予定

誤字脱字がございましたらコメントよろしくお願いします。


 

 権威を振りかざす際に、注意することがあります。


 一つ、後出しが有効です。


 調子に乗って権威を振りかざしてきた相手のさらに上位の権威を振りかざすと、相手は逆上してきてとても滑稽な姿が見れます。


 一つ、無闇に使う事は自分の価値を貶めます。


 相手の愚かな行為を自らがする必要はなく、必要なときに必要最低限の権威を少しだけ振りかざす、これで波風は立ちますが最小限にとどめられるでしょう。


 この二点が守られるならば、権力を持つ者はある程度の…そこそこの分別と思慮を持った人物となれるはずです…たぶん。


 つまり何が言いたいかと言いますと。


「道化は道化らしく愉快に踊っていなさい、という訳です」


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


貴族(ゴミ)掃除をしましょう」


 突然食事中に声を上げたウルにスープを飲んでいたリオンのスプーンの手が止まり、パンを口に含んでいたジュリーの咀嚼が止まる。


「せ…先生?

 何か今普通の言葉がものっすごく物騒な言葉に聞こえたんだけど、気のせいかしら?」


「先生最近ストレスが溜まっているから、きっととんでもなく物騒な事に決まってるよジュリー」


 スプーンを置いたリオンが冷静に答えると、満面の笑みでウルが首を縦に振った。


 2人は初めてウルの邪気が無いはずの笑みに呆れの混じった笑みで返すしかなかった。


 この笑顔を経験上ロクな事の起こる前兆と記憶している2人は、どんなことをしでかすのか、内心不安に思った。


 教国にいた頃、ブリンドの苦労を今度は2人が請け負う羽目になっていたのであった。


「リオン、人聞きが悪いですよ?

 何も私は、ここ最近のストレスのはけ口をようやく見つけて、どう掃除(しょり)をするか効率的な方法をやっと思いついたんです、もっと喜びなさい」


 支離滅裂すぎて怖いと弟子2人は思ったのだが、黙って聞いている。


 言葉の端々に物騒な言葉が飛び交うウルの表情は、年相応の子供の笑顔であることを除けば本当に残念だと思うしかなかった。


 非公式での会談を終えてから3日経ち、暇を持て余したウルが依頼をこなしていくうちに、未だに残っている貴族たちの排除に乗り出そうとしていた。


 200年前より圧倒的に貴族の数は増加しており、シュトルンガルドの多くを治めていた貴族たちのほとんどは領地なしの貴族となる事になるだろう。


 アヴァロンへ戻ったとしても、昔から治めている貴族たちがいる以上は領地を拝領する訳にもいかず、宙ぶらりんな形で浮く羽目になる。


 そういった貴族たちは総じてウルから排除指定にされてしまった者たちで、未だにこの王都で足掻いているのである。


 ウルの存在はすでに王都にいるすべての貴族たちに知られており、寝首をかこうとする者や懐柔しようとする者が後を絶たない。


 とはいえ、ウルは教国から来た使者であり、手を出して失敗し、その正体が知れたら待っているのは破滅のみ。


「それで…先生はどんなこわ…すごい作戦を思いついたんですか?」


 リオンの言い直したことにまるで気づかずに、意気揚々とウルは説明を始めた。


「高級料理店を1ヶ月ほど借り受けます」


「それでそれで?」


 ジュリーは食事を終えたのか、楽しそうに聞いていた。


 リオンは食事をしながら聞くことにしたのか、パンを頬張りながら視線だけ向けている。


「貴族たちが私たちにいちゃもん(・・・・・)をつける状態を用意させて、私たちに危害を加えようとしたら反撃するんです。

 生かすも殺すもどちらでも構いません。

 貴族たちは小狡いですから手を出そうとしてこないでしょうが、その子息や子女は大抵愚かでしょうから調子に乗ってやってくるでしょう。

 そこをつくのです。

 どうです、おいしい食事が出来て(私の胃袋を満たすため)、貴族を減らすことのできる(主に私の為の鬱憤(うっぷん)晴らし)この策はっ!!

 一石二鳥とはまさにこのことですよ!?」


 力説していた。


 そして副生音が幻聴の如く聞こえてきていた2人は、どっちも本音なんだろうなあ、と生暖かい視線を送っている。


 いくら食事や睡眠の必要ない体でも、おいしいものは食べたいし、快適な睡眠をしたいという、生活サイクルが崩れると何かしらのストレスも溜まるという事の実証が、2人の目の前にあった。


「え、えーと、候補地はあるんですか?

 ほら、こういうのってお店の許可とかいるじゃないですか?」


 食事を終えたリオンが穴の空いているように見えた候補となる料理店がどこなのかを聞くと、いい質問です、ウルは不敵に笑う。


「王様に頼んで、強制的に場所は決定します。

 王都一の高級料理店が今回の戦場になるでしょう」


 ウルの指定した店は、開店して150年を誇る老舗的名店であり、貴族たちもこぞって店へやってくるそうだ。


 まさに格好の狩場である(諸々含めて)。


「…計画的に見えて、かなり強引な作戦よねこれって」


 ジュリーが嘆息したのだが、今回の作戦はいわば自分を囮にした捕り物である。


 良心的と言ってください、と隣に座っているウルが何か言っているが、2人は無視した。


「はいはい、あたしたちもおいしい料理が食べられるからとってもいい話よね。

 それじゃあ作戦名とか決めちゃわない?

 あたしは、『邪魔な貴族をお料理しちゃうぞ作戦』とかいいと思うんだけど」


「そのままのネーミングですよジュリー。

 ちなみに私は『貴族でキッチン』といって、これは殆どジュリーと似たような感じですね。

 自分のネーミングセンスの無さに少し落胆しました…はぁ」


 傍から見ていたリオンは冷静のように見えたが、内心面白そうとばかりに何か良い作戦名がないか探していた。


「ノリノリだね2人とも…じゃあ僕は、『料理と戦争』っていうのはどうかな?」


 と、食堂の一角では和気藹々(わきあいあい)と物騒な談義が夜遅くまで詰められていた。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 その様子を見ていたデュケインは、バルが作っていた材料不明のプリンを食しながら笑っている。


「…ほんと、飽きさせないよねえウルって。

 ほら見てよバル、ウルがまた面白そうなことはじめようとしているよ?」


 いつの間にかコック帽と白い制服を着こんでいたバルが中華鍋や寸胴鍋の火の調整をしながら、忙しいと切って捨てていた。


「バルー、今度はパスタとかピザとか食べたいな~。

 窯とか製麺機とか造ってあげるからさ、作っといてよ」


 本当に自由な魔神はからからと笑っている。


 空間に穴が空き、再び女神から送り込まれた高位の歪たちが雑多とデュケインに飛びかかっていく。


 と、その瞬間、5つの影が立ち塞がり、歪たちを吹き飛ばした。


「使い魔五人衆、頑張って倒しておいてね~」


「「「「「はっ!!」」」」」


 ウルたちのいる世界へ送り込むことのできない程の力を保持していた使い魔たちを手駒として、送り込まれてくる歪たちの撃退を任されていた。


 全て人型の使い魔にされていて、送り込んだ使い魔の数十倍の素材で作り上げられた傑作たちである。


 戦闘能力は折り紙つきで、戦闘中の騒音を除けば完璧な戦闘用使い魔である。


 デュケインは自らの送り込んでいる使い魔をムシュフシュの都市部へ移動させながら、おいしい料理屋を探させている。


 が、背後から突然聞き覚えのない声が聞こえてきた。


「悪魔どもめ、神の裁きを受けろっ!!」


 思わず笑いそうになったが、そんな場合でないことは分かりきっていた。


 何事かと振り返っていると、全身黒で覆われている人型の何かが、5人衆と闘っていた。


「…何あれ?」


 とはいえ、考えられた可能性は一つしかなかった。


 歪に憑りつかれた魔獣以外の存在、であった。


「ぐあっ!!」


 考えているうちに、双剣を持った使い魔が剣を破壊されて肩から切り裂かれてしまった。


 漆黒の大剣を持つ歪は、なおも4人の使い魔を相手取っている。


「あ、5番がやられちゃった」


 観察している間に4番、3番とやられていき、いつの間にかデュケインの傑作たちは2人となってしまった。


 バルはちらっとその戦闘の様子を見たが、すぐに視線を鍋に戻していた。


「…2人とも下がって、ちょっと僕がそれ始末するから」


「「し、しかし、主のお手を煩わせるなどっ!!」」


 思考回路を統一させているため、発言が左右同時から聞こえてきたのだが、その言葉にデュケインが煩わしそうに怒鳴った。


「下がれ馬鹿ども、僕の命が聞こえないのかっ!!」


 歪はその様子を見ているとはっと吐き捨てるように蔑みの目を向けている。


 その様子を見たデュケインは、目の前の歪には自我があり、明確な目的を持ってこの場にやってきたと判断した。


 使い魔たちは倒された3人を引き摺って行き、デュケインの攻撃範囲から遠ざかっていた。


「…で、何お前は?」


「俺の名はドレイク、女神メサイアに選ばれた勇者だっ!!

 悪魔め、その―――――」


 その名を聞いた瞬間、デュケインの目に怒りの火が燈った。


 それだけ聞いて満足したのか、デュケインは手を振り上げる。


「そうか、分かったよ。

 じゃあ死ね」


 振り下ろす。


 管理者の間の全方位から、デュケインが作り込んでいた魔剣が瞬きをする間もなくドレイクと名乗った歪に襲い掛かる。


 反撃する間もなく、ドレイクは他の歪たち同様、その肉体を完全に再生不可能なまでに破壊された。


 さらに強力な魔法で魔剣に内包された魔力を解放させ、大規模な大爆発を発生させた。


 爆発はデュケインをも巻き込んでしまったが、手で振り払うと爆風を払いのけた。


 念には念を入れた手段に、爆発音に顔を顰めたバルは使い魔たちに材料を持ってくるように命じてきた。


 慌てて敬礼して、歪たちの素材を切り取っていく使い魔たちの横を通って不機嫌そうな溜息をついた。


「…使い魔減っちゃった」


「それより、あの歪は問題だね。

 代行者に伝えた方がいいだろう」


「…あのクズ、魔獣だけならまだしも、人にも手を出し始めたみたいだよ…ちょっと調べないとな」


 ボロボロにされた使い魔を元に戻すと、3人に材料の切り取りを命じた。


 楽しい気分を台無しにされたデュケインは作りかけの鍋を強奪して、テーブルに載せて不貞寝ならぬ不貞食い(・・・・)を始めた。


「…作りかけなんだがね?」


「ナニコレ、味ないじゃん、バル、調味料っ!!」


 食事をしながらデュケインはムシュフシュにいる使い魔に情報収集を命じさせるのだった。


読んでいただきありがとうございます。

さて、ウル君たちは楽しそうなことを始めましたね。

ところ変わって管理者の間では不穏な事態が…そして女神さんのお名前がついに出ました。

物語は加速してきます。

さて次回予告。

次回、『ゴミ狩り』です。

ではでは皆様、また次回まで。

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