第030話 邪魔者排除、念願成就
誤字脱字がございましたらコメントよろしくお願いします。
デュケイン様御休み回です。
この世界にある裁判所を初めて見たので、何とも言えないのですが。
こんなに豪華じゃなくてもよいのではないでしょうか?
見るからに接ぎ目が見えないくらいに整えられた石畳に、細かい細工をした石柱。
一定間隔ごとに花が飾られており、何故か歴代裁判長の肖像画まで飾られているという税の凝りぶり様は、どこか違和感を感じます。
まあ、文化の違いという奴ですかね、そうしましょう。
別に、金の無駄遣いが得意なんですね、とか、それだけ余裕ならば賠償も期待してもいいんですよね、とか思っていませんよ?
という訳で、現在私は以前記憶を弄ったローゼンバウト公爵さんの裁判を見物しに来ています。
席は予約しておいたので、公判がはじまって少し遅れてきましたが余裕でした。
残念ながら3人分の席は予約できなかったので、リオンとジュリーは留守番です。
最前列で表情が見える場所から見ているので、眠気が来ることは無さそうです。
証拠を元に追及をされて、顔を青くさせながら反論する公爵さんの顔は何とも愉快な気分にさせるものでした。
全力疾走している訳でもないのに、青息吐息でぜえぜえいっている公爵さんはどこからどう見ても道化にしか見えません。
ちなみに、この裁判は予定調和といいますか、既に判決は決まっています。
反論無用の死刑、それが5親等まで及ぶらしく、財産も国庫に入れられるため、事実上の一族断絶に等しい状態らしいです。
一族郎党根絶やしにならなかったのは、6親等から為る家系の人達はむしろ被害者のようだったらしいです。
この世界での裁判は基本1日で終わるらしく、3時間ほど追求して裁判長が判決を下しました。
ちなみに、控訴というものはなく、あったとしても裁判長の決定を覆すことは王以外には不可能らしいです。
「判決を言い渡す」
初老に差し掛かったくらいの裁判長が重々しく口を開きます。
「被告、アーブラハム・フォン・ローゼンバウト公爵を爵位剥奪の上死刑。
その罪科は5親等にまで及ぶものとし、徴収した資産はすべて国庫に帰属するものとする。
以上で閉廷するっ!!」
このあとあの元公爵さんに待っているのは、ギロチンかロープでしょうね。
「さようなら公爵さん、悪役としては2流でしたが、道化役としては1流でしたよ」
元公爵さんにだけ聞こえるように声をかけると、体を震わせながらゆっくりとこちらを向いてきました。
まあ当然ながら驚いています、殺したはずの人間がひょっこり出ているんですから。
「どっどっど、どうして貴様がっここにいるっ!?
お、お前は死んだはずだっ!!」
「…さて、どうしてかは自分の記憶に尋ねてみればいいでしょう」
指をぱちんと鳴らすと、元公爵さんが気絶してしまいました。
以前デュケイン様が、魔法に慣れてきたらこれで一度やってみるといいとおっしゃっていたのでやってみたのですが。
気障っぽいですがまあ面白いかと。
そしてあまりのショックに耐えられなかったんでしょうね。
気絶した元公爵さんを衛兵が連れて行く間際、一瞬こちらを見られましたが、フード被っているしばれはしないでしょう。
裁判所を出ると、王都の外周を走り終えてきていた2人が青息吐息で待ってくれています。
気絶した時の元公爵さんの涎をだらしなく垂らしながら涙を流していた顔を思い出すと、思わず口元がにやけていました。
さて、こういう時はギルドへ行って歪を狩るのが一番です。
一日で狩れる最高記録が更新されるかもしれません。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「…なに、使者殿が代行者だとっ!?
どういうことだブランニュー!!」
同時刻、ローゼンバウト元公爵の死刑判決が伝えられたと同時にブランニューがアルハザードに報告した情報は、その場にいた者全員の度肝を貫くものだった。
「…以前、陛下に報告したのですが、先日ローゼンバウト公爵の告発文書を使者殿から頂いた時、彼の泊まっている宿屋の一室に、代行者が所持していたとされる長物を見まして」
「それだけでは証拠にならぬだろう。
第一、教国にいるとされる代行者がなぜわざわざ冒険者などになって諸国を回るのだ。
騎士団に護衛させるなりなんなりさせるだろう」
「それは…そうですが」
言い淀むブランニューだったが、アルハザードはブランニューの報告がまるきり嘘だとは思えなかった。
仮に教国にいる者が影武者だったとして、どうして代行者がわざわざ足を運んでまで来たのか。
実際に自分の目で確かめないと納得できない性格なのか、それとも教会の考え方と相容れないため別の戦力を必要としているのか。
それを考えると、影武者を置いてきたというのは真実で、謁見の間であった教会からの使者は代行者本人という事になる。
「…代行者かどうかはまだ別の件だ。
それよりも、城下での反応はどうだ?」
奴隷を解放するという御触れが出た頃から、奴隷商人たちは雲隠れするかのように王都から出て行くようになり、少しずつだが寂れはじめてきていた。
アルハザードは教会からの手紙通り、賠償するに当たり、奴隷商人の資産を徴収し、厳罰に処する事も新たに加える法に記載しており、獣人奴隷に関する法は近々撤廃されることになる。
占領していた旧シュトルンガルド領からも去る事になり、領地を分け与えられていた領地持ちの貴族たちはこれに反発していたが、反発する者たちには爵位を剥奪した上で少しでも獣人たちの溜飲を下げるために、見せしめとばかりに処刑していった。
実際に横領や法に触れる犯罪を裏でしてきた者たちばかりだったので、言い分は立った。
「…睡眠時間を削れば来月中旬ぐらいにはできるか?」
既に長年為に溜めた原案などがある為、通常以上に早くできるのだろうが、それでも時間はかかってしまう。
加えて、身を削ってまで政務をおこなおうとするアルハザードに、ブランニューが待ったをかける。
「余裕をもって下旬にしましょう陛下」
「…そうか」
今後アヴァロンを導いていく際、周辺諸国に対しての外交をどのように行っていくのか。
税に関しても同様で、領地も減り、税率が落ちれば貴族たちが騒ぎ出すことになるだろう。
遠くない将来、アヴァロンは内戦状態になるのではないかとアルハザードは危惧するのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「…依頼が多いですね」
王都から出て行く商人たちが増え始めたのか、護衛任務や食料確保のための依頼が多く掲示板に張り出されており、昼に入ってからも掲示板には依頼が所狭しに張り出されていた。
その中でも、ウルは歪討伐に関しての依頼を片端から取っていき、受付へ持っていき依頼を開始した。
依頼は24件あったので、20件をウルが引き受け、残りの4件はリオンとジュリーに任せると、獣人奴隷を推進していた貴族たちが襲ってくる可能性を考慮するよう注意して3人は分かれた。
一人で歪を狩るのは殆ど初めてだったので、討伐部位を一々剥ぎ取る作業に苛立っていたが、ある程度狩った後にまとめて剥ぎ取ることにしていた。
近づいてくる歪を破軍で真っ二つにし、茂みに気配があれば魔法で弾き飛ばして影を使って切り裂いていく。
突進力のあるベルグンドの一撃を避け、緩やかに旋回した瞬間を狙って首を落とした。
討伐依頼に含まれていなかったが、以前食べ損ねていたので見つけたら確保しようと思っていた歪であったのだが、意外とすぐに出会えたことにウルの機嫌はさらに良くなっていった。
歪たちからすれば悲劇だが。
ウルが1日で狩った最高記録は110前後、昼から初めてはいたが、4時間ほど経って80を超えていた。
依頼内容もすでに達成して、後はリオンとジュリーに合流すればそれで終わりなのだが、うっかりしてか、森の奥深くまで入り込んでしまって、元の場所が分からなくなってしまっていた。
「…もしかして、迷ったのでしょうか?」
答えてくれる者はおらず、辺りには歪の気配しかない。
時期が冬になって来てか、太陽もかなり傾いてきている。
視界も悪くなり始めているので、感覚強化の魔法をかけようとした時、茂みから何かが飛び出してきた。
あまりの速さに魔法を使わず破軍で防御をしたことが裏目に出たのか、襲撃してきた何かは空中で態勢を整えてウルの鎧に飛び蹴りを加えた。
この世界に来て、ここまで重い一撃を受けたのは初めての経験だった。
頑丈な鎧のお陰か、それほど大事には至らなかったが、襲ってきた何かは再び茂みに入って姿を隠す。
「…歪…いえ、獣人でしょうか」
ウルより遥かに身長の高く、どこかで見覚えのある獣人だった。
得物は見えなかったが、身体能力がブリンドと同等かそれ以上だと思わざる得ない一撃である。
しかし、相手がどうであれ襲ってきた以上はウルも容赦しない。
歪であろうと人間であろうと獣人であろうと。
自らを脅かす存在に一方的な蹂躙を受けるほど、ウルは被虐趣味ではないのだから。
ウルは闇系統魔法『その身封じる闇の影』を使って茂みにいる者を引き摺り出すか動きを止めようとした。
飛び出してきた獣人は『その身封じる闇の影』を自慢の身体能力で躱そうとしたのだが、森の中は影が多分にあり、初撃を避けた瞬間にウルは『知識』に強制同期して魔力に物を言わせると、森一帯の影を自分の手足にした。
木から木へと高速移動する何かは空中で実体化した影に絡め取られて縛り上げられる。
どうして襲ってきたかなど至極どうでもいいといった様子で感想を述べたウルだったが、それを聞いた獣人が影から抜け出そうと動いていている。
「貴方がどのような理由で私を襲おうとしたのかは知りませんが、私は忙しいのでまた今度にしてください」
拘束したまま放っておくことにしたのか、森の内部の影を使って把握したのか、出口に向かって歩き出した。
出口へ出て行ってからようやく魔法を解除して、周囲を警戒した。
一人になった所を背後から急襲するというのは理に叶っていると思っていたが、二の手三の手といった保険を用意しているのではないかと疑ったのである。
結局最高記録更新は余計な妨害者が現れたため更新する事は出来なかったが、ベルグンドの肉が手に入ったので、豪勢な夕食になると思えばまあいいかと思えるほどに、ウルの機嫌は良かったのである。
一足早く川原の鈴鹿邸に戻って待っていたのだが、リオンとジュリーは帰ってこなかった。
不審に思ってウルは夜になっても帰ってこない2人を捜索したのだが、見つからない。
その日、2人は帰ってこなかった。
読んでいただきありがとうございます。
さて、公爵閣下退場されました、そして獣人たち解放へ…と思いきや?
リオン君とジュリーちゃんが行方しれずに!?
さてさて、第2章も佳境へ入ってきました。
さて次回予告。
次回、『代行者、逆鱗』です。
ではでは皆様、また次回まで。
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