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ハイル 救いの物語  作者: 夢落ち ポカ(現在一時凍結中)
第2章 地獄の沙汰も代行者編
29/97

第027話 因果応報字の如く

誤字脱字がございましたらコメントよろしくお願いします。

デュケイン様御休み回でございます。

「さて、2人も分かっているように、王城であれだけ嫌われたのですから、当然私たちを殺そうと嬉々としてやってくるでしょう。

 返り討ちにするのは当然ですが、雇い主を辿るには時間がかかります。

 はいリオン、あなたならどうしますか?」


「はい先生、仕掛けそうな相手が判明しているのなら、先制攻撃を仕掛けてみるべきかと思いますが、どうでしょうか?」


「素敵な案ですがそれは却下です。

 ジュリーは何か案はありますか?」


「…何で2人が嬉々として怖い話しているのかよく分からないんだけど…まあ、昨日のあれを見ればそうもなるかなあ」


 先日の謁見でジュリーも獣人を獣扱いする軍務卿や獣人奴隷解放に異を唱えた宰相に憤りは感じていたが、少なくとも2人よりは幾分低い方である。


 200年かけて獣人を差別してきた人間が、やめてくださいはい止めます、で獣人奴隷を解放するなど、ジュリーは思っていなかったからだ。


 目の前で先制攻撃が素敵だとのたまっている代行者は、反対派の本丸であるローゼンバウト公爵をどう宰相の地位から転がり落とし、且つ排除できるのか。


 情報やから買った情報によると、4家が滅んだ後、反対派の貴族たちは警戒してか、腕利きの傭兵や冒険者を雇って警備を増強していた。


 何に怯えているのかはウルがよく分かっていることだが、こうまで怯えられては手を出した後の対処が面倒と思い、打つ手が限られてくるのだ。


「…そうですねえ、こうしましょうか」


 何か思いついたのか、ウルが話し始めた作戦にリオンは俄然やる気を出し、ジュリーは呆れながらも作戦に賛同した。


 ジュリーは思った。


 目の前の代行者は形はどうあれ、彼が世界を救うという言葉に嘘が無いのだという事を。


 そして、世界を救うために彼がどのような行為に及ぶのであれ、そこに意味はあるのだと。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 アーブラハム・フォン・ローゼンバウト公爵。


 建国当時から初代王家に忠誠を誓ってきた古き家系。


 200年前の旧シュトルンガルド占領時の功績により、王族から降嫁してきた姫を戴くと、その権力を拡大し、以後権力の中枢にあり続けてきた一族。


 侯爵家から嫁いできた妻に3人の息子、2人の娘を持つ7人で構成されていた。


 2人の娘は更なる権力を伸ばすために、王族へ嫁がせるために家から一歩も出したことが無いという筋金入りの権力志向者である。


 三男がつい最近、ある(・・)事故により亡くなったことをきっかけに、彼はある人物を異常なほどに敵視してていた。


 当の本人は事故で済ます気であったが、調べれば調べるほど計算したとしか思えないほどに緻密な策謀を張り巡らしており、ついにローゼンバウトの目の前に迫って来ていた。


 しかし、手を(こまね)いているローゼンバウトではない。


 200年かけて積み上げてきた権力と経済力、そして武力を兼ね備えたローゼンバウト伯爵家にかかれば、たかだか浅知恵の周る小僧程度、簡単に消してしまえるのだと自負していたのである。


 この手で捕まえ、縊り殺してやるために、計算を重ねた結果、周りから崩していくことにした彼は、供をしていた旧シュトルンガルド王家に連なる2人、リオンとジュリーの獣人に標的を定めた。


 手始めにどちらか1人を捕え、痛め付けて情報を吐かせ、人質にした獣人をエサに教会の小僧にローゼンバウトは考えられるすべての苦痛を味あわせ、その罪を贖わせる気でいたのである。


 三男の死亡は彼にとって予想外の出来事であった。


 アンドレア教に多額の寄付をしているローゼンバウト公爵家は少しずつだがその権力を教会にまで伸ばそうとしてきていたのである。


 ゆくゆくは教皇に近づく事の出来る地位にまで上り詰めさせ、アヴァロンを、ひいてはローゼンバウト公爵家の力を伸ばすための道具(・・)が、思わぬ場で壊れてしまったのである。


 既に次男は他の公爵家へ婿にしてしまったため送り出すこともかなわぬし、例え2人の娘を教会に送り込んだとしても、三男以上に時間がかかることに違いはなかった。


 子飼いにしている腕利きに情報を与え連れ去ってくることを命じると、昼にも拘らず葡萄酒を飲み干した。


「…待っていろ小僧め、この私の計画を邪魔した罪、万死に値するぞ」


 ギラギラとした彼の目には、狂気という妄執に取りつかれていた。



「…リオンだな、俺と一緒に来てもらおう」


 ほ、本当にきました。


 一人王都を歩き回り、貧民街の中頃辺りでリオンは顔を布で隠した男に声をかけられた。


「…すいませんが、知らない人間に付いて行ってはいけないと先生に言われてるので、お断りします」


 リオンとジュリーがウルに教えられた作戦はこうだった。


 わざと捕まって敵の懐へ入るという作戦だ。


 王都は日が落ち始め、暗がりの貧民街では敵にとっては格好の場所のはずである。


「…ならば、力尽くだ」


 男は両手にナイフを構えると、リオンに襲い掛かってくる。


 リオンは体中に魔力を張り巡らせ、肉体を強化した。


 全ての生命には魔力が宿っており、アンドレア大陸にあって獣人族というのはその中でも特異な一族であった。


 そのほとんどは、魔力を外に放つことが出来ないのである。


 その為、獣人族のほとんどは一族特有の身体強化などの補助的魔法しか使えなかったが、その能力はすでに血系特殊魔法(エクストラ)と呼ばれる物にまで昇華していた。


 そして、その血系特殊魔法を最初に発現した一族こそ王族に連なる3つの一族。


 金獅子と呼ばれる王者の一族。


 銀狐と呼ばれる賢狐の一族。


 そして、今なお行方の知れぬ銅鷹の一族。


 その一族の中で、特に血系特殊魔法を濃く受け継いだリオンは、先祖返りともいえるほどの能力を秘めていた、いわば近接戦闘における天才であった。


 リオンは剣を抜いて左から向かってきたナイフをはじき、死角から向けられた右のナイフを後方へ下がって避けた。


 男は追撃するかのように器用にも懐から短剣を取り出し、リオンの心臓に向けて放つ。


 捕まえる気でいるはずの男が心臓に向かってナイフを放つ行為に訝しんだが、リオンは剣の()で叩き落とした。


「…ちっ、正攻法では手間取ってしまうな」


 忌々しそうに呟く男だが、気配はさらに濃くなってきていた。


 ウルには及ばずとも、目の前の男がかなりの実力者であることはリオンの肌を通して気付いていた。


 男が続けてナイフを投擲しながら接近してくるのを避けながらリオンも接近していく。


 リオンは本気で男に斬りかかると、ナイフで逸らしながらナイフが手首に振り下ろされる。


 殺傷能力が低いナイフでも、毒などを塗り付けて置けば殺傷能力は飛躍的に上がる。


 ナイフまで特注なのか、柄や刀身まで黒く塗りつぶされている刃に何か小細工されていると判断したリオンはその一撃をわざと掠らせるよう(・・・・・・・・・)に避けた。


 男の目が怪しく光った。


 浅く斬りつけられたことに迫真の演技でしまったという表情をしたリオンが、男に必死の形相をして踊りかかる。


 案の定麻痺毒の類が塗られていたのか、次第にリオンの動きの切れが悪くなっていき、息も絶え絶えの状態で立っていた。


「毒だなんて…卑怯な」


 わざとナイフの一撃を受けたことに気付いていない男は、余裕なのか笑ってみせる。


「さて、そろそろ毒で立っているのもやっとだろう、眠っておけ。

 素敵な場所へ連れて行ってやる、楽しみにしているんだな」


「…ち…く、しょ…お」


 …先生、ジュリー、後は頼みます。


 途絶えかかっている意識の中、リオンは信頼している2人に後事を託し、地面に倒れてしまった。


 男は合図をすると、後方から部下がやって来て、リオンを袋に詰めた。


 周囲を見回しながら誰もいないことを確認すると、男たちは暗がりの中消えて行った。


 その様子を、はるか上空から見ている者たちがいる事を知らずに。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 上空からリオンと黒尽くめの男との戦いを見守っていたウルとジュリーは、リオンを連れ去っていく男たちを悠々と追跡していた。


 魔法を使って空を飛ぶという事は不可能ではない。


 理論上では可能とされているこの魔法は、使用するための魔力が膨大過ぎて、今では誰にも使う事の出来ない古代の魔法とされていた。


 実際にウルが使っているのは全く違う魔法で、相変わらず魔力に物を言わせて空を飛ぶという、魔法研究者からすれば目の敵にされるような魔法なのであった。


「…リオン、痛そうだったなあ」


 戦いの最中に幾度となく手を出そうとしていたジュリーは、悔しそうに唇を噛んでいた。


 ウルたちが男たちを追跡しているのには理由があった。


 リオンが連れ去られたとして、正門から堂々と入っていけるような身分のとは思えない。


 たとえ裏門からでも難しいだろう、警備を厳重にした今、現在あの公爵邸は進入することはウルでさえ至難の業である。


 となると、可能性は一つしかない。


 誰も知らない、秘密の通路(・・・・・)を使って出入りしているはずだと。


 暗がりであるが、感覚強化の魔法によって夜であろうと昼間同様に見えているので、追跡は比較的に簡単である。


 空から監視している等男たちはまるで気づかず、慎重に行動はしているがどこか間抜けに思った2人であった。


 次第に公爵邸に近づいていくが、左右の分かれ道になった時、左へ行けば公爵邸に向かうはずだったが、反対の右側へと男たちは向かっていった。


 じっくりと観察していくと、男たちは近くにある共同墓地へと入っていき、門番に金を渡すと門が開かれて入っていった。


 門番もグルなのだという事も確認して、ウルは男たちに注視していた。


 男たちはある墓の前に立つと、辺りを見回しながら何かしている。


 墓を倒すと、何か穴のような物が見え、男たちは慎重にその場から降りて行った。


 最後に部下の男が辺りを見回しながら墓を元のように戻し自らもその穴に降りて行く。


 一部始終を確認したウルはジュリーと共に空から降りて、念のために辺りを警戒しながら慎重に男たちのいた墓に近づいた。


 名も知らない墓石名を一瞥したが特に思うわけもなく、きっかり10分待つと、男たち同様に墓を持ち上げてジュリーに先導させた。


 この先が公爵邸に繋がっているのは間違いないだろう。


 ふふふ、待っていてくださいね公爵さん。


 ローゼンバウト公爵家の権威を地の底にまで落とし、その絶望の叫び声を獣人たちの手向けにして差し上げます。


 感覚強化の魔法をそのままかけ続け、ウルたちは闇の続いていく地下通路を進んでいった。


ここまで読んで戴き、ありがとうございました。

久々の戦闘シーン…でしたね。

にしても、戦闘能力高い味方人ばかりですね、はい。

サブタイトルに少し疑問を感じる方がいるかもしれませんが、ご容赦を。

さて次回予告。

次回、『嫌いな人の不幸は蜜の味』です。

ではでは皆様、また次回まで。

コメント、御感想、御質問などお待ちしております。


あ、あとご指摘や評価なんてあるととっても作者が張り切るので、

アメください(必死)!!


デュ) 何言ってるのかなこの作者、ちょっと来なよ、説教部屋行きね

作)  ヒィ、お助け!! 

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