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ハイル 救いの物語  作者: 夢落ち ポカ(現在一時凍結中)
第2章 地獄の沙汰も代行者編
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第025話 大司教退場

誤字脱字がございましたらコメントよろしくお願いします。


デュケイン様御休み回です。

 


「…王城から使者?」


 男たちをさらし者にして数日後、事態は思わぬ方向へ転がり始めていた。


 朝一の素振りを済ませていたウルが川原の鈴鹿邸に戻ると、見知らぬ兵士がそう名乗ると、王からの召喚状を通知してきたのである。


 しかも一方的な命令で。


 見るからに威圧的で見下している雰囲気なのだが、ウルは興味なさげにそのまま素通りする。


 ウルは人間族でもなければ、このアヴァロンの国民でもない。


 従う理由など、1つたりとも見当たらないのである。


 我慢できずに事情を知った者が無理矢理命じてきたのでしょうか…?


「貴様、平民の分際で陛下の召喚を拒否するというのかっ!?」


「断りますよ、当然じゃないですか。

 そちらに用があっても、こちらには用はありません。

 用があればこちらから出向くとでも伝えておいてください」


 当然の如くウルがそういうと、いきり立った男たちが力尽くで抑え込もうとする。


 ウルの事をただの冒険者だと聞いていた2人は、余裕で抑え込めると誤認したのである。


 が、リオンとジュリーが不意を打って2人を拘束した。


 ウルは見ていなかったが、後ろからはどこかの骨のひしゃげる音がした。


「…リオン、ジュリー、助かりますが受付の方が引いてますよ。

 さっさとその2人を路地裏にでも捨ててきなさい」


 痛みで失神している2人を捨ててくると、今日の予定を確認した。


「さて…王城からの使者がやってきました。

 これは数日前から私たちを監視していた一部の人間が部下を使って強制的にこちらの思惑を知ろうとした、と考えます。

 相手は未だに困惑しているという事ですね。

 次に同じように使者が来ても、使者が高圧的なら適当に痛めつけて捨てておきなさい。

 丁寧に接してきても、こちらに用はないと言って断り続けましょう。

 その間に、大司教とその周りにいる連中を潰します」


 ガマから聞いた大司教トリューマンとその周りにいる貴族との繋がりを根本的に断てばいいと楽観視しているウルだが、それだけで済むなどとは思っていない。


 事態を知った奴隷商人は得意先の貴族に助けを請うているだろう。


 ウルの貴族像というものはすでに崩壊しているので、ことさら期待してはいない。


 とはいえ、いざ協力してこちらを潰しに来られてしまうのは問題で、リオンとジュリーを守りながらだと、数に物を言わせた作戦を展開されてしまえば2人を守りながら事を済ませられるとは思っていない。


「…貴族から潰してから、大司教に止めを刺しましょう。

 リオンとジュリーは動かないように、すべての準備は私がします」


 手伝えないのが悔しいのか、仕方なしに宿屋での待機を命じられた2人は絵を描いたり迷走をしたりと、それぞれ過ごすようだった。


 念のために2人一緒に部屋にいるようにと意味を理解したのか、しきりに頷いていた。


 ギルドから紹介された情報屋にガマの言っていた貴族たちの名前を言うと、すこぶる評判だったのか、嬉々として教えてくれた。


 おまけに割引までしていただけるとは、大変ありがたいです。


 貴族たちの別邸が密集していたおかげか、昼までにどこから侵入すればよいのか十分に把握できていた。


 夜までに大きめの白い記事を買い込んで、夜に紛れやすいよう魔法をかけて闇色にしておくと、まるで忍者のような気分だと思ってしまった自分に、もっと真面目にならなければ、と意気込んだ。


 傍目から見たリオンとジュリーは、そんな隠密行動自体が不真面目な気が、と思っていたが、内心で黙っておいた。


 夜になり、昼よりは警備が増やされているがどうやら数だけである。


 真剣に警備をしているようでもなく、あくびばかりで警戒すらしていない。


 ノルマンディー男爵家、フォビラ伯爵家、ラスタート伯爵家と犯罪行為の証拠を見つけていく。


 書斎の中には脱税その他多くの証拠書類があり、手当たり次第にバッグに入れていった。


 しかし、エルリック子爵家に入ろうとした時、ここだけ警備が異常に警戒されていることに気付いたウルは、慎重に庭の中を見回してみる。。


 警備しているもののほかに、調教された警備犬までいて、この場所に何か重要な証拠があるのかと期待した。


「…まあ、媒介(・・)はありますし、騒がれずに仕留めますか」


 今は夜である。


 闇系統魔法を使うのに、これほど適した時間帯はない。


 敷地をぐるりと確認して、結界の類は張られていないのも確認すると、詠唱無しに『影喰う混濁(エッセシャタン)』を発動。


 無詠唱で発動する魔法が日ごとに増えていくことに満足感があったが、出来ない魔法の方が未だに多い。


 とはいえ、無詠唱で魔法を使うのは事情を知っている者が周りにいるときくらいだ。


 もしくは、知られても構わない状況である時のみ。


 庭に配置されている警備員や警備犬を音も無く全て影に飲み込ませると、そこには何も残っていなかった。


 ウルは警戒しながら進んでいく。


 これだけの警備で、別邸内の警備も厳重だろうと予想したからだ。


 別邸の二階の窓から廊下や見える範囲を探ってみると、書斎では窓に背を向けた男がもくもくと何かを書いていた。


 魔法にどれだけの腕があるのかは分からないが、結界も張れずに物量による警備を任せた所為か、男の様子から見て余裕が見られる。


 ウルは魔法で影を操り男の首を絞めると、酸欠にして気絶させた。


 気付く様子もなくあっけなく気絶してしまったエルリック子爵に、この程度なのかと肩透かしを食らっている。


「…まあ、研究よりの魔法使いだったんですよね。

 …まったく、警備が厳重だからすごい魔法使いがいると思ったのに」


 何の抵抗もなくあっけなく事が済んでしまい、思わずぼやいてしまったウルだったが、証拠集めには入念だった。


 ここに来てようやく、目当ての書類が見つかったのか、思わず頬がにやけてしまったウルだったが、すぐに顔を振って気を引き締めた。


「…さて、帰りましょう。

 明日はお祭りですよ」


 間抜け面で気を失っているエルリック子爵の額に落書きをしたい気分にさせられたが、証拠は残すものでないとその誘惑を退けた。


 窓を閉めて警戒していくウルは、急いで戻っていく。


 川原の鈴鹿邸に戻ったウルは起きていた2人にウルの部屋で寝るように言い、告発文を作るために1人寝る間も惜しんで朝まで書き上げていた。


 朝日が昇る頃、出来上がった告発文に目を通し、書類をそれぞれの封筒に入れると、王城に出仕する男を見つけて路地裏に誘い込んだ。


 顔を見られずにそのまま気絶させると、仕事道具と一緒に入れておいた。


 後は見つからずに去っていき、男が出仕していくのを確認してウルは宿屋に戻っていった。


 数時間後、王城では貴族の脱税他犯罪の証拠を集められた証拠と告発文が物議を醸し出し、その後1週間に及ぶ審査により次の4家の貴族がその血を滅ぼされることになる。


 ノルマンディー男爵家、フォビラ伯爵家、ラスタート伯爵家。


 そして、エルリック子爵の4家だ。


 大司教トリューマンがなぜか弁護をしたらしいが、証拠書類が決定的であり、弁護しても無意味だと悟ったのか、暗い表情で王城を出て行く姿を噂されていた。


 こうして大司教に群がる周りの貴族を一蹴したウルは、意気揚々と首都にあるバルディン教会へ行くのだった。


 残す首はあと1つ。


 さあトリューマン大司教、教国から素敵なプレゼントが届いています。


 今から私に行くので待っていてくださいね。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 バルディン教会では、追いつめられたトリューマンが逃避行の準備をしようとしていた。


「何故だ…なぜ、こんな…時期に罪がばれてしまう。

 あと何か持っていく物は…、しょ、証拠をっ!!」


 懇意にしていた貴族たちが、軒並み輪になって告発さ、それが全て一族断絶の極刑を言い渡されて、トリューマンは焦っていた。


 とそこへ、大司教のいる部屋に見習いの神父がやって来て、面会の者が来ているといってきて、追い返せと慌てながら答えた。


 しかし、相手は教国からの使者と聞くと、真っ赤だった顔がみるみるうちに蒼くなっていく。


 見習い神父はトリューマンの悪事などに気付いておらず、青くさせたトリューマンの体調を気にする様子を見せた。


「…ここですか、教国からの使者を追い返せとは…トリューマン大司教、何か緊急の問題でも起こりましたか?」


 異常なほどに平坦で落ち着いた声が聞こえてきて、見習い神父の声ではないことに気付いたトリューマンだったが、それは予想もしない来客であった。


 全身を黒い軽鎧で統一し、整った顔立ちに黒髪という印象的な姿をした少年。


 そして、その目を見てトリューマンの思考と体が硬直した。


 まるで深淵を覗き込んだような、暗い昏い吸い込まれるような、闇の目をしていた。


 これが本当に教会からの使者、とは誰も思わない。


 闇からの使者というのにしっくりくるほどである。


「まあ、どのような緊急な用件でも、こちらが優先なのですがね」


 そういうと、少年が手紙を差し出してくる。


 宛先はトリューマンの者で、差出人を見て愕然としていた。


「きょ…教皇猊下と…あ、アドルフ枢機卿の、れ、れ、連名だとっ!?」


 既にこの事態を見越していたかのように教国への召喚状が書かれており、その理由を見て愕然とした。


 貴族と癒着していたことを始め、トリューマンのこれまでしてきた悪事全てを所狭しと書かれていて、即刻教国へ出頭するように厳命をしていた。


「読み終わりましたか?

 それではあなたのこれまでの功績とはすべてお別れです。

 アヴァロンのバカ貴族と結託して、獣人奴隷解放の妨害をするだなんて、教会の恥を生んで教皇猊下もさぞかし悲しまれるでしょうね」


 少年がドアを塞いでいる。


 見習い神父も新調ばかりで肉のついていない痩身で、肉ダルマのような体格をしたトリューマンなら吹き飛ばせるだろう。


 こんな所で終れない…こんな所ではまだっ!!


 旅行鞄を少年に向かって投げつけると、視界を塞がれたのか一瞬だけ固まってしまった少年と神父を突き飛ばし、その体格に似合わぬ俊足で逃げようとした。


 1階へ降りて行き、扉を開く。


 朝日の眩しい日に一瞬だけ視界を奪われてしまい、思わず目を閉じてしまう。


 そして、トリューマンの体は宙を浮いて背中に衝撃を受ける。


 衝撃で息が出来なかったのか、がはっと呻くとそのまま抑え込まれて両手首にロープで縛られた。


 視力が回復したのか、目を開けてみてみると、そこには2人の獣人がトリューマンの目の前に立っていた。


 一方は金髪と黄金の瞳が印象的な獅子の獣人。


 もう一方は、銀髪が印象的な狐の獣人だった。


 その意味を知っていたトリューマンは、力なく項垂れた。


 そして、追い付いてきた少年がトリューマンの元へやってくる。


「じきに貴方を護送する騎士たちがやってくるでしょう。

 あなたの今後を考えると笑いが込み上げてきますが、他にすることがたくさんあるので一言だけ言っておきましょう」


 暗い目をした少年はトリューマンの首を締め上げて場違いな笑顔を向けた。


「あの世で4人と仲良くしてくださいね」


 その時、トリューマンは逃避行をすることになった全ての原因が、目の前の少年の所為だと気付き、最後の力で射殺すような目でにらんだ。


「がっ、きっさ、まぁっ!!」


「息をするな、臭い」


 首に衝撃が走り、その場でトリューマンは意識を失った。


 最後にトリューマンが見たのは、まるで汚物を見るかのような目で見降ろしてくる少年の姿だった。


 そして、貴族の中でも教会と手を結んでいた邪魔者を排除した少年は、次の目標へ移っていった。



読んでいただきありがとうございます。

今回2人に台詞が…少ないですね。

リオンとジュリーなんて0ですよ。

さて、暗躍…チックに4つの貴族と大司教を潰したウル君。

次の標的は誰なのか?

…この回、戦闘シーン少ないですね。

さて次回予告。

次回、『代行者と王』です。

ではでは皆様、また次回まで。

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