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ハイル 救いの物語  作者: 夢落ち ポカ(現在一時凍結中)
第2章 地獄の沙汰も代行者編
26/97

第024話 奴隷商人と代行者

誤字脱字がございましたらコメントよろしくお願いします。

久々にデュケイン様回やってきました。

 



 ところ変わって竜人の国ムシュフシュにある山合いの村。


 そこでは変わった噂が広がっていた。


 曰く、妖精が夜な夜な歪を狩っている。


 曰く、妖精が食堂であり得ないほどの食事をしている。


 曰く、妖精は…と、数え切れないほどの噂が山ほど出来ていた。


「…いやー、噂の張本人としては『実はカミサマなんだよ、テヘ』で済ましたい気分なんだけどなあ」


『言い訳ないだろう…とはいえ、神が妖精と間違われるのは正直何とも言えない気持ちになるな』


 夜も更け、辺りが静寂を覆っている村の一角で小さな声でぼそぼそと喋っている場所があった。


 人影は何故か一つなのに、2人分の声がするのは気味が悪い。


「…まあいいさ、そろそろここから離れる予定だしね。

 必要分の魔力はどうにか繋ぎきれたし、これでいつもと同じ体格に戻れるよ」


 小さな影が次第に大きくなっていく。


 あっという間に元の身体と同じくらいの体格になったデュケインが、普段とは違う衣服で現れたのである。


「…イメチェンしてみたんだけど、どうバル、似合ってるかな?」


 普段デュケインが身に纏っているのは白いローブなのだが、今来ているのは黒と紺を掛け合わせたような服装である。


『…似合っていると思うぞ』


 そういうと、自分の仕事に戻ったのか、念話を切ってしまった。


 視点を変えてみると、神殿の建造に忙しいらしい。


 というか、神殿が今5階建てになってるんだけど。


「さてと、まずは全国おいしい者探しの…たまに歪とか倒したりぶらり旅、レッツゴー!!」


 世話になった村を一度だけ振り返ると、村全体にデュケインに関する記憶を消し、そして歪を寄せ付けない強力な結界を張ると空を駆けていく。


 後日、噂を聞きつけた周辺の偵察隊が噂の妖精を探していたが、何の痕跡もなく徒労を迎える事になる。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「そういえば、今度奴隷商人と会うことになりました」


 山賊たちを殺していたリオンがウルに突然声をかけられて驚いたのだが、既に戦闘は終わっていた。


 歪を討滅することがウルたちの基本方針なのだが、めぼしい依頼書が無かったので仕方なく山賊退治なったのである。


 王都や周りの街は治安が良いとされていたのだが、こうした街道に出てしまうと危険度は異常なほどに跳ね上がっていた。


 そのどれもが山賊や追剥ぎでそのどれもが人間の犯罪者ばかりだったのである。


 ここに来てウルの態度は一貫して敵対者に容赦をしないと決めたらしく、苦しめずに心臓に一突きという幾分ましな殺し方になっていた。


 破軍では人を傷つけることは叶わないので、ウルが作った特製のナイフがここに来て役に立っていた。


 これはリオンやジュリーにも護身用として渡しているものと同一のもので、切れ味はもちろんの事、いつものように呆れるほどの魔法を付与していた。


「…えーと、先生?

 話が全く見えないんだけど?」


 ジュリーがウルの突然の言葉に首を傾げている。


 ウルが奴隷関連で進んで相手に近づいていたことに驚いている2人は、突然の前振りなしのウルの発言に戸惑っている。


「先日ですね、あなた方の事を下衆な奴隷商人が買い取りたいといってきて、思わず声を荒げて失せろといったんですが…知り合いの商人を通じて話だけでも聞いてほしいと頼まれてしまったんです」


 贔屓にしている商人は良心的なのだが、その上役に当たる人物からの命令で、引き受けてもらわなければクビになってしまうからどうにかしてほしいと頭を下げてきたのである。


「…先生が声を荒げるって…相当ね」


「怒っていても言葉遣い丁寧だからね、意外です」


 失礼な評価をもらった気がしたが、気にせず話すウル。


「…本来ならば無視してもよかったんですが…まあ情報収集の一環と思えば、あの下衆な人間と言葉を交わすのは…辛いですが、本当に辛いですが、1時間だけと約束してしまったんですよ…はぁ、憂鬱です」


 リオンとジュリーには宿屋で待機するように言ったのだが、2人はこの目で現状を見てみたいといって聞かなかった。


 見ても辛いものを見る羽目になるのに、2人の覚悟を改めて知ったウルなのだった。


 後日、裏通りに入った店にある『グリエルモ奴隷商店』という場所に着くと、警備員がウルたち3人を睨みながら丁寧に何の用かと尋ねてきた。


「ここの商人に話があるといわれたウルというものです」


 そういうと、すでに知っていたのか、案内をしてくれてすぐに応接室にまで連れて行かれる。


 鉄格子の中には、獣人をはじめ多くの奴隷が恨めしそうな顔をしてこちらを見つめている。


 リオンとジュリーは痩せ細って目がすでに見えなくなっている獣人までいるのに気付いて、そんな獣人まで奴隷として扱っているのかと思うと、歯ぎしりをさせていた。


 応接室にはすでにでっぷりと太った男が鎮座している。


 ウルは内心早く帰ってシャワー浴びたいと別の事を考えている。


「おお、ようこそいらしてくれましたウル殿、どうぞこちらへ」


 脂の乗った耳障りな雑音がするわ、とジュリーが小声で言って思わず吹き出しそうになったウルだが、寸でのところで止めた。


 相手を硬化させてしまっては意味がないのである。


 無言で座ると、2人は後ろに立たせておいた。


 従者としては当然の行為なのだが、相手の男は躾の行き届いている獣人とでも思ったのか、ますます関心を示されてしまっていた。


 そして困ったことに、ウルは目の前のガマガエルのように見える男の名前をすっかり忘れてしまっていたのである。


「それでは商談に移らせてほしいのですが…こちらは1匹5000万までなら出せます。

 如何ですかな?」


 単刀直入に言ってきたガマガエルだが、ウルは仕方なく興味が湧いたという演技をすることにした。


 というか、獣人だからといって数え方がムカつきます、このガマ。


「…へえ、安く見られたものですね。

 2人とも結構な容姿と知識、それに実力もあるんですよ?

 あとは…そうですね、2人ともまだ無垢です」


 思わず2人がぎょっとしていたのだが、それもそうだろう。


 ウルがどうして知っているのかという顔をしていたのだが、ウルは別に何も知らない。


 吐き気のする話だが、そういったハツモノ趣味のある買い手がいるというのは聞きもしないのに目の前のガマが勝手に喋って来て知った情報なので取って付けたように話したのである。


「そ、そうなのですか、てっきりウル殿が手を付けていたとばかり…それにしても、ウル殿も端正なお顔立ちをしておりますね、さぞかしオモテになるのでしょう?」


 …今このガマ、ジュリーは女の子だからそういう下世話なこと考えるかもしれませんが、リオンまでその枠に入れないでくださいよ。


 何故か自分の容姿の話に変わったのに首を傾げたウルなのだが、後ろの2人は顔が引き攣っていた。


 話を逸らしたのだと勘違いしたウルは、別の話に無理やり変えようとした。


「それはそうと…この国の王は獣人奴隷について反対と言っているのに、未だに法を整備することが出来ていないようですね。

 ガマ…いえ、商人殿はその所何か知っていますか?」


 王についての話になって、少しだけ表情が硬くなったガマがぽつぽつとウルの知らなかった情報を喋り出した。


 王は推進派に抑えられてしまって、すでにその権限を行使できないから始まり、現在は軟禁されているという根も葉もないうわさまで、その数々を聞かされる。


 一番信憑性のある情報が、教国に秘密裏に口裏を合わせて推進派を黙らせようとしている計画がある、というものなのだが、これも噂の域を出ていないようである。


「…そうなれば、あなたも罪を問われて下手すれば死刑になってしまいますね。

 大丈夫なのですか?」


 わざとらしく心配したウルに、嬉しそうな顔をするガマは大丈夫ですともと言って腹を張った。


「…ここだけの話、わたしめには後ろ盾がありましてな。

 いつも贔屓にさせてもらっておりますので、首は繋がるのですよ…はっはっは」


「…へえ、それは興味深い。

 どのような御仁で?」


「エルリック子爵家にございますよ。

 優秀な魔法使いの家系でもあるエルリック家は、魔法による実験のため我が商店から多くの奴隷を買っていただいているのです」


 それからも不愉快な自慢を続けていくうちに、ある(・・)情報が入った途端に確信した。


 チェックです、これで完全勝利の軌跡が見得ました。


 ウルはこれでもう充分だと思ったのか、満足そうに立ち上がった。


「分かりました、情報提供感謝します」


「は?」


 ウルはガマの首を締め上げると、無詠唱で雷系統魔法を使いガマを昏倒させた。


 どうやら外には気づかれていない様子だったので、ガマを角側に押し込めて応接室から出ると、警備員がまだ待っていたのか、商談はどうだったのかと聞いてきた。


「残念ながら無かったという事にさせていただきました。

 機会はないと思いますが、それでは」


 案内を待たずに商店を出て行ったウルたちは足早に表通りまで戻る。


 ウルは2人が何も喋らずに我慢していたことを感謝と謝罪の言葉を伝えようとしたのだが、何故か心配そうな顔をしていた。


「…なんです?

 ああ、無垢の話ですか?

 適当を言ったのでそんな心配しなくても…」


 分かってないといった顔をした2人に、再度首を傾げるウル。


「先生…もうちょっと気を付けた方がいいと思うわよ?」


「なんというか、僕は別の意味で先生が心配になってきましたよ…」


 ニュアンス的に失礼な事を言われたと思ったのか、普段の倍以上の修行時間を使って徹底的に2人を疲れさせた。


 情報を纏めて後日動くことにして、その日は疲れを癒すため早めに就寝する事になった。





 ウルたちが奴隷商人たちと話をした深夜、数人の男たちが川原の鈴鹿邸へやってきた。


 あの後気付いたガマが、強硬手段に打って出る事を予想していたのか、廊下で待ち続けていたウルが男たちと鉢合わせしたのはある意味運命だったのだ。


 宿屋周辺はウルが風系統魔法『微睡の風香(ナクウォンス)』で強制的に眠らせた。


 侵入してきたのは5人、なるべく物音を立てずに男たちの喉笛を潰すと、ウルは面倒臭そうにロープで縛りあげる。


 猿轡を使ってしゃべらせないようにして引き摺っていく。


 極力音を立てないようにして外に出て、少し離れた下水場へ辿り着いた。


 ここでなら少し位叫び声が聞こえても気づかれないだろうと、事前にウルが調べて置いた場所である。


 とはいえ、既に男たちは声を上げる事も難しい状態である。


 没収した持ち物には、奴隷拘束用の首輪やそのカギ、あと脅しに使うためにナイフが数本である。


「さてと…別に殺しはしないから安心してください。

 あなた達に死んでもらっては困るんですから」


 ウルは紙を男たちに張り付けていくと、その場で地系統魔法を使って男たちを拘束させた。


 張られていた紙には次のように書かれている。


『私は奴隷商人です』


『私は獣人を誘拐しました』


 とかかれており、残りの3枚は全て同じ内容だった。


『私たち奴隷商人はクズです』


 満足そうにうなずくウルは5人をそのままにして帰っていく。


 朝になり、散歩中の老婆が5人を見つけて騒ぎになるのは、もう少し先の話である。


読んでいただきありがとうございます。

久々のデュケイン様出てましたね。

何やら他国で食べ物行脚するようで…うらやましい。

ちょっくら情報収集をするウル君たち。

奴隷に関してはまあ、いろいろな用途があるわけでして、はい。

ウル君が言った2人に関してどうかはわかりませんよ?

適当に言っただけなので、不明です、不明です。

さて次回予告を。

次回、『大司教退場』です。

ではでは皆様、また次回まで。

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