第019話 契約とさようなら教国
誤字脱字がございましたらコメントよろしくお願いします。
第1章はこれにて完結、読んで戴き誠にありがとうございます。
デュケイン様、並びにバルさんはお休みです。
朝になり、朝食を済ませたウルたちに、エドワードが先日のウルが提案していた案に同意してくれた。
「そうですか…受けていただきますか。
正直、アヴァロンに対して復讐でもされると後々面倒なんで、どうしようかとは思っていたんですが…」
うまくいってよかったと思ったウルだったが、それでも懸念材料は残る。
解放された獣人たちが、報復として人間たちに牙を向けるのではないかという事だ。
正直に言えば、その権利はあると思っているウルだが、そんなことをしている暇があるのなら歪を討伐してほしいというのが本音であった。
「確かに、アヴァロンの…今の人間族に対しては失望の一言しかない。
だが、全てに置いて神の力に頼っていては、我ら獣人の誇りが廃れるというもの、獣人族解放とシュトルンガルドの再興。
この2点をお願いしたく存じます」
解放されてからの獣人たちの扱いについては、教会が責任をもって保護すると確約するとウルが確約し、バッグから転位結晶を取り出した。
ウルが説明して魔力を込めると、青く光り出して少女の声が聞こえてくる。
『…この光は…代行者様ですか?』
恐る恐るだが聞こえてくる声は相変わらず耳心地がよく、そして安心する気持ちになれた。
「はい、そうですよヨハン。
先ほど金獅子族の長と契約を結びました。
後の事は依然話し合った通りに進めますので、対応の方をよろしくお願いしますね」
教皇ヨハンが諾と答えるとそのまま魔力を切り、エドワードに確約させたと伝える。
「…まあ楽しみにしていてください。
2ヶ月ほどでアヴァロンの獣人に対する法を捻じ曲げて見せます」
笑顔でそう言ってみせるウルであったが、それを見た全員が安心と同時に背筋に冷や汗をかいた気になったのは当然といえたのかもしれない。
他種族である魔人族とはいえ、人間族に対してここまで苛烈な嫌悪感を出す者はそれほどいない。
ここ200年になって、人間族に対してはあまり好感情を持たなくなってきてはいたが、当の被害者である獣人族以上に感じられたからだ。
人間族に何か酷い事をされたのかと誰もが思ったが、当の本人が喋らない限りは分からないだろう。
「さて、エドワードさんたちはこれから教国に行ってください。
私が紹介したといえば、知っている者が来てくれますから」
ウルはエドワードに、今のうちに国を再建した際に国を導くための知恵をつけるように言い、3人もそれに同意してくれる。
同時に、教会が背後にいる事を臭わせておけば、いざ人間族の妨害に遭おうとしても、教会、ひいてはウルに対して弓を引くことになり、人間族の立場というものがさらに悪化するという事を見越しているからである。
「…さて、私はこれからアヴァロンに向かいますが…リオン、ジュリー。
あなた達とはこれでお別れです、なるべく早くアヴァロンから獣人たちを解放するので、待っていてくださいね」
突然の別れに、リオンとジュリーも驚いていて、逆に何故2人が驚いているの不思議そうに首を傾げていた。
「え…ウルさんが保護してくれるって言っていたから、僕たちはまだ一緒にいるって思ってたのに、ど、どうしてですか!?」
「あ、あたしだって、先生にまだ色々教えてほしいこといっぱいあるのよ!!」
「最初は私もそう思っていたんですが…あなた方のご両親が存命、しかも実力の高く経験ある大人と一緒にいた方が落ち着くでしょう?
私なんて、まだまだ未熟、しかも力はあってもまだまだ修行の身です。
安全策で言えば、あなた方は教国からはなるべく出ない方がいいのですよ、わかってます?」
ウルが2人を連れてきたのは、一度気持ちの整理をさせて、本来の目的であったリオンを王にさせるための覚悟を聞くためだったのである。
若いリオンにそのような重責を押し付けるのは心苦しくはあったが、獣人族全ての王、シュトルンガルドを再建させる若き王というのは、獣人たちにとっての希望につながると思っていたからだ。
それが予想を大きく外れたリオンの父やジュリーの両親の存命である。
いや、この場合良い意味で予想が外れてくれて、よかったと思えていた。
血の繋がった親子がいれば心の支えにもなり、国の結びつきも強くなるはずだろう。
教国であと数ヶ月待てば、全てが叶うのである。
まさかそれを嫌だというとは、ウルはついぞ思っていなかったのである。
「…我からもお願いしたい。
2人を代行者殿の従者として連れて行ってくれないだろうか?」
エドワードからもそういわれて、ウルはどういう事かと聞いた。
「2人はまだ世界というものを知らない。
この洞窟にある書物で、大まかではあるがこの世界の常識や歴史というものは理解している。
しかし、実際に目で見て、耳で聞き、肌で感じたという経験が圧倒的になりないのだ」
「…私の目的は、この事態を起こした元凶の討伐です。
ただ歪を狩るようなこととは訳が違うのですよ?」
目的の見えないエドワードの言葉に少し苛立ちを覚えたのか、少しばかり表情が硬くなる。
「それなら…そうだな、これならどうだろうか。
2人の覚悟を聞きませぬか?
その覚悟を以て、貴方のその旅に付いて来られるのか見極めてほしい」
「「お、お願いします!!」」
勢いよく頭を下げる2人に、根負けをしたのかウルが渋々承諾した。
とはいえ、生半可な気持ちで付いて来られても困るのは正直なところで、どれくらいの覚悟があるのかと2人に訊ねると、ウルの障害を自分たちが排除するという、何とも言えない気持ちにさせる答えが返ってきた。
「それは…例えば同族であってもですか?」
つまり獣人族がウルに牙を向けた時、リオンやジュリーが同族を処断する覚悟があるのかという事だろう。
「…心苦しくはありますが、や、やります!!」
…リオン、そんな生き生きとした表情見せないでください。
正直引きます。
内心ドン引きしているウルではあるが、覚悟があることは確認できた。
目的を円滑にするのであれば、やはり仲間というのは必要であるというのはウルも当初から考えていたことである。
ブリンドがその筆頭候補ではあったが、彼は教国から離れる気が無いらしく、先送りにするつもりであったのだ。
パーティーを続けたいといっていたにもかかわらず、教国から出ないといわれたのは何か理由があるということで、諦めるほかなかった。
「…分かりました、一緒に行きましょう。
従者となるのですから、身の回りの手伝い、お願いしますよ?」
長く考え込んでもこれ以上の案を見出せなかったのか、2人の動向を許可したウルは、従者の仕事をよろしくといってエドワードに頭を下げた。
「未熟者ではありますが、2人の安全には極力気を付けて獣人族の未来、お届けしてみせましょう」
「こちらこそ、よろしく頼みます」
握手を習慣としていないウルではあったが、エドワードに手を差し出されて、まるで信頼の証の様に力強く手に取った。
「まあ、先生には誰かついていないと、生活できないもんね。
あたしたちがいないとだめだって思ったくらいだもの」
と、ジュリーがそう辛口のコメントを括りにして、洞窟内でウルを除いた全員の笑い声が上がる。
山を下りていく6人は教国方面とアヴァロン方面の分かれ道に着く。
朝早くから下りていたので、まだ太陽は昼を少し過ぎたばかりだ。
「…それじゃあ父さん、元気で」
「時間があったら手紙書くわね」
「お前たち、くれぐれも代行者殿の迷惑にならぬよう仕えるのだぞ?」
「くれぐれも体に気を付けるんだぞジュリー」
「手紙を待っているわ、元気でね」
エドワードとウルはお互い目を合わせて頷き合うと、2組はそれぞれの道へと歩いていった。
「…そういえば先生、父さんたちとなに話してたの?」
ジュリーが言うのは、山を下る少し前にウルは大人たち3人と奥の部屋で何かを話していたようなのである。
リオンも気になっていたようで、いつの間にかジュリーと同じ先生呼びになってウルに何を話して居たのか聞いてきた。
従者といっても、主人と従僕といった厳格な関係ではなく、主にウルに欠けている生活補助といった仕事がメインだという事で、基本的にそれ以外ではフランクな関係で構わないという事なのである。
「…ああ、3人に御守りを上げていたんです」
「御守り…ですか?」
「そうです、私特製の御守りです」
歩いていくウルたち3人はアヴァロンに向けて歩いていく。
「…リオン、ジュリー、もう一度聞きます。
あなたはどんな覚悟を持ってこの度に同行したのですか?」
突然の質問でリオンとジュリーは目を合わせたが、歩きながらではあるが少し考えて自分の答えを出した。
「僕はいなくなった皆の復讐じゃなくて、未来のために戦いたいんです。
その為に、僕に戦い方を教えてください」
「あたしがいないとリオンが遠くに行っちゃう。
だから先生、あたしに魔術を教えてください」
帰ってきた答えはどうにも頓珍漢で、答えになっていないといいたかったウルだが、真剣に答えた2人に対して、どうしてこんなことにとぼやいた。
「私…まだ15歳なのに弟子みたいなのが出来ちゃうなんて…幸先が不安ですね」
ウルの年が聞こえた途端、自分達より年下だったことに驚いた2人。
ウルはそんな2人をよそに、気分を入れ替えて歩を強める。
お騒がせな代行者とその従者たちは、教国をあとにしてアヴァロンへ。
混迷渦巻く人の国へと向かうウルたちに、歯車はさらに加速して回り続けていった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
夢を見ていた。
世界を眺め続けているという、退屈でもあり刺激的な夢を。
永き時を経て、その夢から覚めるとその長い鎌首を上げて下界を見下ろす。
どうやら下界で何かが起きているらしい。
夢から覚めた存在は下界で何が起きているのか、じっくりと眺める事にする。
全身を黒く磨き上げた鱗は太陽に反射し、頑強な翼を羽ばたかせながら、紅い瞳を瞬きさせる。
「…何かが、起きた」
世界の監視者として、自らの使命を果たす時が来たのか見極めるため、監視者は世界を眺めていた。
読んでいただきありがとうございます。
終わりましたー、第一章、お騒がせな代行者編。
いかがでしたでしょうか、あきれられたり文章力引くっ!!
みたいなことになっていないか戦々恐々しながら書いておりました。
次回からは舞台が変わりまして人間族国家アヴァロンへ。
実力付けて頑張ります!!
次回 第2章『地獄の沙汰も代行者編』『そんなに人相悪いのでしょうか』です。
ではでは皆様、また次回まで。
コメント、ご感想をお待ちしています。




