第000話(B) 物語の始まり。
誤字脱字がございましたらコメントよろしくお願いします。
11/5 魔術⇒魔法 に変えました。
目を開けると、そこは真っ白な空間で埋め尽くされた場所に辿り着いた。
その上広大な様で、十分近く歩いているが壁らしきものすら見当たらない。
「…困りました、現状の把握が困難です」
「道に困ったときは誰かに尋ねるというのが常識じゃない?」
からかう様に声をかけられて辺りを見回すが、誰もいない。
不思議だと思いながら、足を進めようとした時、再び声をかけられた。
「ちょ、ちょっと、もう少し状況判断しようよ、僕が誰とか予想つくでしょう?」
「からかわれた様なので意趣返ししようかと…貴方がマスターの?」
姿をようやく表したのは、自分と同じくらいの背丈をした少年だった。
健康的な肌をしていて、異様な威圧感のある眼帯を両目に付けた、不思議な少年である。
「そう、僕がとお様の…というか、神王さまから聞いているだろう代理の魔神だよ」
自らを魔神と名乗りを上げたデュケインという少年は、笑顔で私を迎えた。
ていうか、神の王様の子供が魔神って…大丈夫なのだろうか?
「これから行く異世界について、色々とレクチャーするように神王さまから言われてるんだ。
ついでに、向こうに行っても万端といってもいいくらいの装備も渡すよう預けられてるよ。
感謝するんだね」
豪快に笑う仕草が全くと言っていいほどに似合わないのだが、本人は気に入っているのだから、特に思わないことにする。
「ちなみに、すぐにここから異世界に旅立つんじゃなくて、きちんと訓練するからそのつもりで。
期間は7日、それまでに異世界のある程度の常識と生き方、あとメインの仕事である戦闘の訓練を重点的にこなしてもらうから」
意外なことに、すぐに行けと言われると思っていたのだけど、そうはならないようだった。
とはいえ、素人に行かせると勝率というものが格段に落ちるだろうことは明白。
ここである程度鍛えて送り出すという事に、反対する理由など全くなかった。
「さて、器を入れ替えたら早速この世界の成り立ちを素振りをしながらレッスンしよう。
先に言っておくけど、ばてたりしたらノルマ増えるよ?」
そう言われてデュケインは私の器を破壊して、姿形が全く同じの私に吸い寄せた。
「…何をしたので?」
「ただの人間の身体にこの修行は耐えられないから、人間の身体を破壊して魂だけ抜き取り、僕特製のおよそ神の軍に一人で喧嘩売れるレベルの器に入れました」
何故そこで敬語に、というのはさておき、どうやら私は気づかないうちに死んで、尚且つとんでもない身体に移されたらしい。
というか、そんな力を与えてしまっていいのだろうか?
「いいのいいの、どうせその力は神とその眷属限定にしか反応しないから。
まあ、基本性能なんて一人で世界を滅ぼせるくらいの力にしたんだけど」
結局危険物指定確実の人間に早変わりした。
視点が変わっただけで全く違和感がないというのはかなり驚異的である。
手を握ったり足首を廻してみたりと、違和感を確認しようにも、全く異常がない。
「不備なんてあるわけがない、なんせ僕の特製なんだからね!!」
そして少し話していて気付いたのだが、目の前にいるこの魔神はかなりの自信家らしく、またプライドも天井知らずの高さのようだ。
「…その、すばらしい肉体に入れていただいてありがとうございます?」
「疑問符をつけるな、普通に感謝しろ!!」
そんな無茶な。
それから7日間に亘って拷問ともいえる修行をこなした私は、最終日を迎えて当初言われていた神王からの装備を渡された。
「武術体術魔法、あとついでに基礎的な知識まで底上げしてあげるだなんて…なんて優しいんだろう僕。
…と、とお様に言われて仕方なく手伝っているだけだから。
だからといって、退屈させたら世界を滅ぼすからね?」
最初は代理で頼まれていて嫌そうだったのだが、のめり込むと熱中してしまうらしい。
予定を大幅に繰り越して――その分メニューがまるで地獄だったが――6日で済んでしまった所を、役に立つ知識やなにそのムダ知識というものまで頭に詰め込まれた。
とはいえ、さすが魔神というべきか、要求してきた注文が高すぎる。
退屈させたら世界を滅ぼすって…いやダメでしょそれ。
「さて…僕の訓練に耐えられたんだ、予定通り、いくら時間はかけても構わないから目標を…女神を殺してこい」
そう、私が神王から言われたのは神を殺すという、およそ人が対抗するにはまず不可能な命令だったのである。
「…師匠、7日間でしたがお世話になりました」
「心配するな、また話す機会はある。
それまで息災でね、『ウル・シイハ』」
はじめて名を呼ばれて驚いた私に、まるでイタズラが成功したような笑みを浮かべた師匠が再度告げた。
「息災で、ウル。
神王に代わり、世界に平穏と秩序をもたらして」
眼帯を付けているにも拘らず目など合うなどありえないのだが、一々そんなことに驚いていない。
お互い目が合ったと思ったと同時に、私たちは再度笑いあい、そして私はこの白い空間から消えた。
「…とはいえ、相手の女神も存外手強い。
なんせとお様が加減を間違えて生んでしまった存在だからね。
手段は与えた、あとは成し遂げてくれるといいんだけど…」
考え込むデュケインはため息をつくと、簡易的なベットに寝そべって鏡を召喚した。
「さてさて、面白くも面倒な物語が幕上げだ」
読んでいただきありがとうございます。
修業の内容については、おいおい本編で書いていく予定にございます。
それでは、また次回まで。




