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ハイル 救いの物語  作者: 夢落ち ポカ(現在一時凍結中)
第1章 お騒がせな代行者編
19/97

第017話 お披露目会って意外と緊張しますね

誤字脱字がございましたらコメントよろしくお願いします。

 


「バルー次はこれやって~」


「…今手が離せないんだ、後にしてくれ」


 調理場から離れた所からデュケインの声がし、調理場からなぜかバルの声がした。


「バルーこれも~」


「君もしろよ!!」


「なんで僕が!?」


 信じられない、といった声を発するデュケインに、思わずバルもキレ気味に答える。


「君が始めたことだろう!?」


 バルがきてから、管理者の間ではデュケインはバルに料理を作らせたり、建設中の神殿をさせたりといつの間にか自分では何もしなくなっている。


 バルは用が済めばすぐに帰っていく予定だったのだが、デュケインのワガママに付き合わされてしまっていた。


 正確に言うと、管理者の間を囲っている結界の所為で、出て行く事が出来なくなっているのである。


 お互いが苦手意識を持っていたのだが、デュケインに関しては苦手な相手の困った顔は良い娯楽のようで、今も四苦八苦しながら料理を作るバルを見ながら楽しんでいた。


 普通ならば、苦手な相手とは同じ空間を共有したくないと、普通の精神ならば考えるのだろうが、娯楽を追及するデュケインにまともな精神は期待できそうになかった。


「今僕は新しい遊びを見つけたからそっちが忙しいの!!」


 自由過ぎる発言が目につくデュケインに、フライパンを揺らすバルがため息をついた。


「…で、今は何をやっているんだ?

 何やらそこらに転がっている残骸で使い魔を作ろうとしているように見えるのだが?」


 デュケインは現在進行形で送られてきている歪を倒したのち、その骨や魂などを使って特製の使い魔を作ろうとしているように見えた。


「見ての通り使い魔だよ、ここにいても暇は潰せるようになったからいいんだけど、やっぱりあっちの様子をじかに見てみたくてさあ…これ作ったら、あっちの世界に送り込もうと思ってるんだ。

 あ、そうそう、視覚共有とか感覚の共有とかしてるから、まるでもう一つの身体がある仕様になるんだなこれが」


 送り込まれてくる歪はどれも上位に位置している魔獣たちばかりで構成されていたため、長所のみで構成された特製の使い魔が出来上がることは間違いないだろう。


 面白半分で、角を付けたり、眼球を赤色にしたりと無駄な遊びが盛り沢山であるが。


「…ちょっと待て、天神はあちらの世界には行けないだろう?」


 神王が作ったルールを思い出したのか、バルが疑問に口にする。


 その疑問に関して、デュケインは明快に答えた。


「大丈夫、バルが必死に料理している間に僕の力だけを込めた歪の死骸をあっちの世界に放り込んだんだけど、弾かれずにそのまま素通りしたから。

 結論として、僕の力を込めてあちらで起動すれば、めでたく僕の暇は解消されるという訳さ!!

 さすが僕、技巧派と呼ばれることあるね!!」


「…知能派と前言っていた気がするんだが」


 皮肉を言ってもデュケインには届かず、管理者の間からは哄笑が響き渡っていた。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 仮面を付けた白い騎士が教皇庁から出て数分後、通り掛かる人々が割れるように避けていく。


 白い鎧は教会の騎士団の証でもあり、現在噂が静かに浸透している首都では擦れ違った仮面の騎士が神より遣わされた代行者という存在なのかと、ひそひそと声を潜ませていた。


 そんな様子をよそに、視線を向けられながらも無視を決め込むほどウルは歪を討伐する際の光系統の魔法をどう発動させればいいのか、考えあぐねていた。


 ウルがデュケインに教わったのは、あくまで基礎であって、使い方としては魔力に物を言わせた光弾のみである。


 神の威厳もへったくれもない、力任せの一撃になる事は間違いないだろう。


 闇といえば分かり易い影というイメージがあったおかげか、水系統の次に闇系統も使えたが、光というイメージをイメージするには、ウルの想像力はあまり潤沢とは言えなかった。


 元いた世界でもう少し勉強するべきでしたね…。


 後悔しながらゆっくりと歩みを進めていく内に着いた門は既に厳戒態勢で閉まっており、警備をしている騎士がいるのみである。


「…む、何者だ。

 仮面を取って所属を申せ」


 不躾ではあるが言い分はもっともなので仮面を取ろうとしたのだが、影武者のシュナイダーの事を思い出して仮面を手に当てた所で止めた。


 居丈高な物言いになりますが、仕方ありませんかね。


「私は代行者です、神の名のもとに歪という驚異を退けるためにこちらへ来ました。

 そこを通しなさい」


 騎士は本来ならば仮面を取れというべきなのだろうが、ウルの存在は知っていたのだろう。


 慌てて小口を通っていくと、ファレルを連れて戻ってきた。


「…これは代行者様、この度は誠に―――」


 長々と話を聞くことになるのかと察知したウルは、ファレルの口上を切り上げた。


「かまいません、それよりファレル騎士団長、少しお話があるのですがよろしいですか?」


 いまだにイメージの固まっていない光系統の魔法について、何か良い案が無いかと率直に質問したウルに、ファレルは額に眉間の(しわ)を寄せた。


「そうですな…光系統となると難しいかもしれませんな。

 (それがし)としましては、神罰といいますと子供の頃は雷を連想していましたので、光系統の魔法となると…なんとも。

 申し訳ありません」


「そうですか…はぁ」


 余り有力な助言は得られなかったようで、仮面越しでも落胆している様子が見て取れたファレルは、慌てて思い出したことを口にした。


 本来ならば自分で考えろというのだろうが、ファレルとしては気まぐれを起こされて得意な魔法で歪たちを料理されても困るのである。


 個人的にはそこまで考えなくても、ファレルが口にしたような雷を使った魔法でもよいと口にしたかったのだが、目の前にいる代行者からは、ぶつぶつと光から連想する言葉が漏れていた。


「そ、そういえば、代行者様がこの世界に来られた時、光の柱が降臨の塔に現れたと部下がいっておりました、あの時の光景はとても印象深く覚えております、はいっ!!」


「光の……柱?」


 ファレルの言葉に反応して、ウルが仮面越しからこちらに向けた。


「……」


 門が開くと、無言でファレルと共に進んでいき、首都をようやく出たウルが視たのは、門を左右に陣列をしている騎士たちの姿であった。


 視覚に移るものすべてから何か連想できる物はないかときょろきょろしながら進んでいくウルに、戦闘に位置している騎士たちから、こいつ大丈夫か、という視線が向けられている。


 仮面は騎士の方向を向き、地面を眺め、平原を見つめ、そして空を見上げながら歩いていく。


「光…柱…雲…雨…いや、これは少し違いますね。

 何か…何か…あ」


 空を再度見上げた時、ウルの視線にはあるものが映っていた。


 雲の切れ目から、光が漏れ出しているように見えたのである。


「…ありました、これです、薄明光線です」


 別名、天使の梯子ともいうこの現象を見て、ウルはこの現象が起こりうるだろう気象状況を思い出そうとしていた。


 薄明光線というのは、太陽光線をさえぎるくらいの厚みがあって、かつ切れ間のある雲の発生が必要である。


 簡潔に言うと、雲の切れ間から雲を構成する水滴よりも小さく、また目に見えない水滴が多く浮遊した状態であれば、光が散乱されて薄明光線は見えるようになるのだ。


 現在の状況を把握すると、天候状況は厚い雲が発生していて、水気も多く含んでいる。


 湿った空気も息を吸うと実感でき、後条件が必要なのは、隙間なく分厚い壁を擁している雲のみであろう。


「むしろ好条件ですね」


「は?」


 付いてきていたファレルが何事かと重いウルに訊ねたが、ウルからはこちらの事ですといわれてすげなくあしらわれた。


「なんでもありません、それより、歪はいつ来るのですか?

 そろそろやって来てもおかしくない時間だと思うのですが」


「もうすぐ偵察に出ていた騎士が帰ってきます、それまでお待ちを」


 ファレルがそういうと、後方にいる騎士たちに何か激励する言葉をかけてほしいといわれ、どういう風に魔法を使えば効果的なのかと考えようとしていたウルは面倒だという空気をありありとしながらも、仕方なく受けた。


 仮面越しですから、シュナイダー君に迷惑はかからないですし、まあいいとしますか。


 破軍を取り出してファレルに示された立ち位置につくと、ウルは少しばかり考えて、騎士たちにとってどう士気を上げれば満足するのかを模索していた。


 他者に対して励ましなど欠けた経験などなかったウルとしては、短くも簡潔に、且つ分かり易い言葉をかける事しかできなかった。


「…安心するといい、私が来た以上、これ以上歪の蛮行はありえません。

 見ていなさい、我が力の前に、世界に(あだ)を為す悪逆の徒に、神の裁きを下しましょう!!」


 …言っていて恥ずかしいものがあります…顔が熱い。


 破軍を掲げながら強く意気込んだウルであったが、中身はまだ15歳の子供である。


 多くの面で冷めている部分が見え隠れしている場面があるが、15年を費やした人生の中で、これほど恥ずかしいと思った事は無いように思えた。


 ウルの掛け声とともに歓声が鳴り響き、門の向こう側では何事かと一部の冒険者がやってきた程であった。


 丁度よく帰ってきた偵察がファレルに報告をして下がっていくのを確認して、ウルがファレルに歪がいつ頃来るのか聞いてみる。


「あと半時もかからないうちに来るでしょう、準備はよろしいですか?」


「いいイメージが浮かびました、これなら文句なしに気に入られるはずです」


 ファレルはいかめしかった表情を崩して、幸運を祈るといって後方へ下がっていく。


 10メートルほど距離を取って、遠くからくる視線に耐えながら今か今かと歪たちが来るのを待った。


 遠くから地響きが聞こえてきて、ウルはその方向へ視線を向ける。


 森が何かによって蹂躙されているように見受けられたその光景は、緑から黒に変わってしまう衝撃的なものであった。


 そして、歪が現れてウルが思ったことといえば、酷く冷たい物言いであった。


「……なんというか、アリの大行進にしか見えませんね。

 やられると分かって向かってくるのが憐れに思えてきました」

 破軍を地面に突きたてると、さっさと終わらせたいのかいつものように仕事を始める。


「『王国(マルクト)』を『基礎(イェソド)』に移行、『基礎(イェソド)』から『栄光(ホド)』、次いで『知識(ダアト)』と同期…暇だろうデュケイン様の為に、たった数分だけの劇を送りましょう」


 今も管理者の間で見ているだろう魔神は暇だ暇だと声を上げている様子を想像すると、くすりと笑うウルに見る者がいれば気を引き締めろと厳しい声が上がっただろうことは確実である。


『天照らす御柱よ』


 魔力を込めはじめると、ウルの身体を光が包み始めた。


 詠唱と同時に光系統魔法を使う時に未熟なウルが見せる失態なのだが、見る者によってはどよめきが起きたりざわめきが起きたりしているが、代行者の力の行使のカウントダウンという見方をする者が幾人かいた。


『禍津き毒を祓い清め滅ぼし給え』


 空が割れ、雲っていた空からは光が漏れ始めると、その光に当てられた歪たちはたちどころに消滅を始める。


 これがまだ詠唱を終わらせる前なのである、発動すれば推測で出されていた1000以上の歪がこの場で消滅するだろう。


 滅ぼされるのが恐ろしくないのか、周りの歪が消滅してもなお進行してくる歪に不快感を憶えながらも、ウルは詠唱を続けた。


『天の威を知らぬ愚者に鉄槌を ツァタッシャーン!!』


 曇っていた天気が一気に晴れ渡り、空を光が覆い尽くした。


 見る者は巨大な光の柱ができて、直下にいる歪たちに惜しみない光を当てると、まるで蒸発でもしたかのように、跡形もなく消滅していく歪を見て、代行者の力を目の当たりにした。


 黒いシミを絶対的な白で埋め尽くす行為は、まるでオセロの完全勝利(パーフェクトゲーム)のようで、見る者を圧巻とさせた。


 発動を続けるウルもいい加減にしてほしいと思うくらいに歪の数は多かったのだが、森から抜けてくる歪も次第に数を減らしていき、5分もするとその気配も消えていた。


「…終わりですね、味気なさ過ぎてデュケイン様の機嫌が下降したかもしれないです」


 破軍を引き抜くと、思い出したかのようにウルの背中を見守っていた騎士たちに勝ち(どき)を上げた。


「…見なさい、神の力を前に、災いは去りました、我々の勝利です!!」


 早く帰って先輩に任された地区に戻らないと…今頃カンカンでしょうねえ。


 そう内心でぼやきながら、騎士たちの歓声が鳴りやまぬこの光景を目に焼き付けた。


「さて、帰りましょう」


 門が開かれる、破軍を掲げながら騎士たちの歓声に囲まれながら、ウルは死傷者を一切出さない完全勝利を手にしたのであった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「…うわ、前より更に酷くえげつない魔法で歪倒してるよ…ウルってやっぱりドSだね」


「…あの神器は増幅器か何かか?

 何やら神殺し以外にも何か機能があるように見受けるのだが?」


 使い魔製作を一時中止して、鏡越しからウルのあっけなくも圧倒的勝利を目にした2柱の魔神は、それぞれ好き勝手に言っていた。


「あーあの神器ってかなり酷いよ?

 杖と兼用に出来るようにしてあるから制御と増幅はもちろんの事、ある程度の伸縮自在、後投げたら絶対に対象貫くっていう鬼畜性能っぷり…父さま面白半分に色々付けてたみたい」


「どこの最終兵器だそれは…」


 ウルの選んだ神器は用意された神器の中でも断トツに危険なもので、デュケインがわざわざ神殺しの力を使わなくてもどうにかなるのではと思うほどの機能を多分に組み込まれていた神器なのである。


 武器の扱いにはある程度慣れたウルではあるが、神器の機能を使うとすれば、単に切れ味位のものだと、デュケインはひどく呆れていた。


「だってさあ、投げたら確実に必中するだなんて、単純にして最悪じゃない?

 しかも造ったのはあのとお様だよ?

 標的女神にしたら今すぐにでも終わる気がするんだけど」


「いや、女神の事だから別の次元の隠れているのかもしれないから、どうせ投げても真っ新なままで世界一周して終わるのがオチだな」


 バルがそう答えると、鏡から離れていく。


 押し付けられた用事がまだ全くと言っていいほどに終わらないのである。


 鏡越しからウルが騎士たちの歓声を受けながら年に戻っていくのを見て、デュケインが楽しそうにつぶやいた。


「…まああっけなくもあったけど、ウルの力に心配することは無さそうかな。

 お疲れ様ウル、僕が行くまで五体満足でいてよね」


 鏡から離れると、ほったらかしにしていた使い魔の元へ戻っていくデュケイン。


 鏡からは、仮面を付けた騎士がぎこちなくも手を振りながら、簡易的なパレードを催しているのだった。


読んでいただきありがとうございます。

さあ、終わりました、あっという間に…おいおいこれでいいのかよ、と思いの方が多数おられると思います。

すいません、殲滅戦なんで細かな描写を細々としても、読むの疲れると思ってかなりライトにしました。

トカゲをやった時より、ある意味えげつなさは増しましたが…まあきれいさっぱりにことが済んだので良いのではないかと。

それでは次回『確認と覚悟と契約を』

ではでは、また次回まで。

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