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ハイル 救いの物語  作者: 夢落ち ポカ(現在一時凍結中)
第1章 お騒がせな代行者編
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第016話 影武者と代行者

誤字脱字がございましたらコメントよろしくお願いします。


デュケイン様ヒマなので新キャラ(?)登場です。

 


「やあ戦神(いくさがみ)、遊びに来たぞ」


「…よりにもよって、なんでお前が来るんだよ、バル」


 調理場から見える位置に現れたのは、貴族風の服装をしたプラチナブロンドの青年だった。


 管理者の間に入ることができるのは、天神位なのだがデュケインの反応からして、目の前の青年の知り合いのようである。


「何でって…神王様から戦神が暇をしているだろうから会って来い、と言われたからなのだがね」


 それを聞いたデュケインが、頭を抱えながら神王(ちち)の采配に感謝と人選ミスだと嘆いた。


「チェンジ」


「残念だがナシだ」


「サービスしてよケチだな」


「それで…君は何をやってるんだね、私が見るに、料理をしているように見えるのだが?」


 バルと呼ばれた青年は辺りを見回すと、巨大な保存庫がいくつも並んでいたり、なぜか中途半端な建造物が出来ていたりと、目の前にいるデュケインが何をしたいのか分かっていないようだ。


「料理してるんだよ、女神がこの場所を占拠したいみたいで、雑魚をけしかけてきてるんだ。

 まあ、そのおかげで材料が増えて暇潰しに丁度いいんだけどね」


「そこの削りかけの柱は?」


「殺風景だから神殿でも造ろうかと。

 けど魔法で造ったらあっという間だし、時間をかけて造ろうかなーって」


 たった数日で暇だ暇だと唸っていたデュケインが出した結論がこれだった。


「ところで、僕のこと戦神っていうのやめてくれない?

 僕の専門は智謀を巡らす知能派っていうねえ…」


 バルがはっと馬鹿にするように笑うと、呆れ交じりにデュケインがそれは違うぞと断言した。


「相手の策略を力尽くで叩き潰せる武力を躊躇なく行使する君が智謀だとか…寝言はベッドでいうものだ。

 ところで、その腕はどうした、怪我でもしたのか?」


 バルがデュケインの左腕を指さすと、デュケインが左腕をぶんぶんと振って何でもないと答えた。


「あーこれ?

 ウルの為に新しい器作ってあげた時に、左腕の力丸ごとあげたんだ」


 それを聞いたバルが、なんていうことだという様子で頭を抱えた。


「…君は世界を1つ滅ぼす気か?」


「まさか、完全勝利に臨むなら、これくらいがちょうどいいって判断して器を作ったんだ。まあ、肘辺りまででも十分な気はしたんだけど」


 それより、とデュケインが先に作っておいたテーブルに紅茶を出すと、料理を食べていけと何故か命令してきた。


「ちょうど新作料理が出来たんだ、食べろ」


「…君は本当に暇だったんだな」


 思わず憐憫の表情を浮かばせたバルに、わざとまずい料理食わせてやろうかと思ったデュケインは、新作料理のソースに悪戯を仕掛けた。


 一口食べた瞬間、バルが余りの辛さにのた打ち回る様子を、面白いオモチャがやってきたと手を叩いて喜んでいた。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「…どこの王族の部屋だよここは」


 シュナイダーが影武者となる任務を受けてすぐに集団生活をしていた部屋を引き払って案内された部屋は、本来は代行者が住むことになっていた部屋であった。


 数年分の給金と思われる絨毯や、銀製のシャンデリア、つややかで落ち着く臭いのする木製の天蓋ベッド。


 元は王侯貴族が客室として使われていた部屋なのだが、ここ数十年はどの王族も歪対策で忙しいため、使われていない部屋だったのである。


 大理石で造られたイスに座ると、呼ばれるまで待機するように言われていたので待っている。


 大量の歪がこの首都ヘルツィカイトへ侵攻してきているとのことで、ウルと呼ばれた少年は教皇庁へ間もなく討伐しに行くとの挨拶と、影武者であるシュナイダーと会うためにやってくるのだそうだ。


 最初会うとされていた日からなぜか2日ほど経っているのだが、何故かウルはシュナイダーとは会わずにそのまま教皇庁を出て行った。


 理由をアドルフから聞き、眠気に勝てずに戻っていったといわれたときは、目が点になっていた。


 偵察に出た騎士たちからの報告では、あと数時間もしないうちに、首都周辺は歪たちの漆黒の海で埋め尽くされるとのことなので、代行者ももうすぐ来るだろうとのことだった。


 既に騎士団はウルの力を見るために城壁近くで展開しており、ウルの登場を待っているようだ。


「…本当は、俺もあそこにいたはずなんだよな…」


 ぼやきながらも手に持っている槍を強く握りしめると、扉をノックする音が聞こえる。


 この扉も頑丈な仕様になっており、魔法使い数人がかりでも破壊することのできない特注品である。


「代行者様、入ってもよろしいでしょうか?」


「あっ、はいどうぞっ!!」


 慌てていて口調を戻したまま扉の向こうにいる相手に声をかけてしまったが、シュナイダーは内心代行者としての対応が違うことに冷や汗をかいた。


 ウルの口調はなるべく丁寧で落ち着いた口調らしいという報告書を呼んでいたが、緊張状態が続いてしまっていたせいか、空回りしているようだった。


 顔に手を当てて、仮面をつけていることを再確認して相手が入ってくるのを待つと、案内した時とは違う司教がやって来て、客人がやってきたので面会をどうするかと聞いてきたのである。


 シュナイダーは一も二もなく会うと返事をして、司教に案内されて客人の待っている部屋へと歩いていく。


 部屋へ着いて司教が頭を下げて何処へ戻っていくのを確認すると、シュナイダーは扉をノックした。


「どうぞ」


 澄んだ少年の声が聞こえ、シュナイダーは一度だけ聞いたあの代行者の声だと確信して扉を開けた。


「…失礼いたします」


「失礼するなら帰ってください」


 扉を開けたと同時に、突然ウルが笑いながらシュナイダーにそう声をかける。


 この場合の失礼という言葉は、相手の時間に割り込むことに対して、「失礼にあたるかもしれませんが御邪魔します」という事であって、言葉通りの「失礼」を働く言葉ではない。


 思わず固まってしまったシュナイダーの姿がツボに入ったのか、くっくと笑っているウルに、シュナイダーは隣で座っているアドルフを見てどうすればよいのかと目でコンタクトを試みた。


「代行者様、お戯れはその辺にしてほしいのお。

 もうすぐ歪共もやってくるんじゃ、言葉遊びはまた今度じゃ」


「分かりましたアドルフ、それでは影武者君、扉を閉めてこちらへ」


 その言葉を受けてようやく再起動したのか、シュナイダーは扉を慎重にしめると、今度は一礼してから席に座った。


「仮面もここでは外しても構いません、ここにいる者はあなたの事を知っています」


「…それでは」


 仮面を取ると、ウルがシュナイダーに再度立つように言って、近づいていく。


 ウルはシュナイダーが付けている鎧を観察して、次に鎧を脱ぐように命じた。


 言われるままに上腕部から胸当てまで脱ぐと、なぜかぺたぺたと触ってくる。


「…やっぱり騎士というだけあって、鍛え方が違いますね。

 私は武術方面はそれほど鍛えていないから、なるべく貴方のようながっしりとした体格にしないと、いざとなった時影武者がいることがばれてしまうかもしれないです」


「それについては心配いらんじゃろう、代行者様に近づけるのは武芸の心得の無い者で構成する予定じゃから、そう神経質にならんでもよいはずですぞ?」


「…ふむ、アドルフがそういうなら納得しましょう。

 それで、シュナイダー君はこの任務を全うすることができますか?」


 アドルフに対して一定の信用があるのか、ウルは軽く流してシュナイダーに覚悟があるのか、ずっと目を見つめている。


「…はい、俺に出来る事は何でもします」


 短い返事ではあったが、ウルは先ほどとは違う安心感のある笑顔を見せて、アドルフのいる席に戻った。


「まあ、覚悟は出来ているようですしいいでしょう。

 あとはこれを渡しておきますから、後でその鎧と槍を交換しておきなさい」


 ウルは自らの三尖両刃刀と鎧を机に置いた。


「これは私が魔法で作った模倣神器と鎧です、これがあれば大抵の歪は紙の様に切り裂けますし、鎧の方も大抵の魔法攻撃や衝撃にも耐えられるでしょう。

 実験的に作ったものですが、よい出来です」


 この2日間で図書館に会った魔法書を読み漁ったウルは覚えた魔法を片っ端から地系統の魔法で作った鎧にかけ、最後に時属性で固定させるという荒業を行っていたのである。


 出来上がったのは準神器といってよいほどの出来で、余程の事が無い限りかすり傷すら負わないような一品らしい。


「その仮面にも付与させます、借りますよ」


 返事も待たずに白い仮面を取ると、魔法を連続でかけ続けていくウルにさすがは代行者といってアドルフが目を丸くさせていた。


 ウルが付与しているのは、四大属性耐性から希少属性耐性、耐衝撃・斬撃、更には回復促進などの上級魔法ばかりなのである。


 最終的に時属性で永続的に続けさせていくので、劣化することの無い最上級に強度のある仮面が出来上がった。


「さて、私はもう行きます。

 仮面はこのまま借りていきますよ、帰ってきたら返しますので、あなたは部屋で待っていなさい。

 アドルフ、後の事は任せます」


「お任せください」


 ウルは魔法で鎧の色を白に変えると、仮面をつけて部屋を出て行った。


 残された2人は、(ウル)が去っていった事に安堵したのか、深く息を吸ってため息をついた。


「…アドルフ枢機卿、あの人自由過ぎませんか?」


「まあ、責任を放棄するような方じゃないんじゃ、これくらいの気まぐれは許容範囲内じゃな」


 テーブルに置かれた鎧と三尖両刃刀を眺めながら、2人はこれから始まる代行者の戦いに置いて、余計な心配だろうが無事に帰ってくれるように祈っていった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「…ねえリオン、あたしたちも代行者…様?

 あの子の手伝いに行かなくてもいいのかしら?」


「あの性格じゃあ、邪魔ですって言われてあしらわれるだけだろうね。

 観光してろって言われていたから、大丈夫なんだろうけど…」


 朝から10万ヒトゥン渡したウルは、『これでヘルツィカイト見物でもしていなさい』といってどこかへ行ってしまった。


 この2日間で、ウルが酷く気まぐれなことを実感した2人は、今日が歪が大量にこの首都にやってくると推察していたのだが、ウルは何も説明せずに、すぐに終わるとしか言わなかった。


 とそこへ、ウルの相棒であるブリンドが勢いよく月下亭の扉を開いてリオンたちのいる食堂へやってくる。


「お前ら、ウルを知らねえかっ!?

 あの野郎、担当している区域サボってどっか行ってやがるっ!!」


 ブリンドは治安維持のために冒険者を首都の巡回に使うことに反対して、騎士団と共に歪討伐に参加したいといったのだが、ギルド側からの命令は首都内での大気、もしくは首都の巡回でイライラが溜まっていたのである。


 ウルが代行者という名の超越者である事をリオンたちは知っていたが、事が済むまではブリンドにも秘密だという事を言われていたので、知らないとしか答えることはできなかった。


 ブリンドは顔を真っ赤にさせると、近くにある食堂を片っ端にしらみつぶしに調べていくといい月下亭を出て行った。


「…あのブリンドって人、苦労してるのね」


「うん、ウルって人の相手してるのは並大抵の神経じゃできないだろうしなあ」


 出て行ったブリンドを心配する2人をよそに、当の本人であるウルは1人城壁を今まさに出ようとしていた。


読んでいただきありがとうございます。

新キャラがちょっと登場しました。

この方も前作でちょっと登場した方ですが、お気になさらず。

さて、シュナイダー君とウルが初対面で弄っていじられてましたが、ウル君はこういう方面で突き進んでいく予定です。

ウル君の性格は、天然腹黒に決定。


次回『お披露目会って意外と緊張しますね』です。

ではでは、また次回まで。

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