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ハイル 救いの物語  作者: 夢落ち ポカ(現在一時凍結中)
第1章 お騒がせな代行者編
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第015話 代行者出陣?

誤字脱字がございましたらコメントよろしくお願いします。

デュケイン様はお料理中で出演拒否されました。

 



 俺みたいな平民が、枢機卿猊下のいるような部屋に案内されるなんて、思ってもみなかった。


 緊張気味にノックして入室を許可されると、教会のトップの1人であるアドルフ枢機卿がデスクに座って待ち構えている。


 他にも名だたる大司教や司教もいて、一体何が起きるのか、俺にはわからなかった。


「まあ掛けたまえシュナイダー君」


 俺のために用意されていた椅子に敬礼をして座ると、そこから俺の経歴を確認して本人確認をしているようだ。


 俺の才能は戦うことに特化していたようで、冒険者ギルドではたった5年で緑になった人間なんて、はじめてだといわれた。


 教会にスカウトされて平民の俺が騎士になれるなんて思ってもいなかったけど、お給料も結構よかったし、毎月一定のお金が入るっていうのは、安心感があった。


 けど、騎士団に入ったのは良いが貴族出身の騎士たちが俺の才能に嫉妬してか、事あるごとに嫌がらせをしてくる毎日には辟易した。


 あげくの果てには新人戦間近でわざと怪我をさせるし、おかげで優勝を逃してしまった。


 けど、呼ばれたのが優勝したやつでなくて負けた俺なのは理由が分からない。


 面接のような受け答えが続いていく中、アドルフ枢機卿は何か確信したのか、持っていた用紙に署名をすると、俺に向かってあることを伝えた。


「シュナイダー君、君にはこれから長期にわたる極秘任務を授ける。

 内容は影武者、ある御仁の影となってもらう」


「…は?」


 いきなり何をっているのか分からなかった。


 影武者?


 ある御仁?


 息を整えて、一瞬だが取り乱したことを謝罪してから、その任務を受諾した。


「それで、ある御仁というのは?」


 はっきり言って、これまで表舞台に出てきた人物たちの誰とも接点もなければ、接格好の近い人物を知らなかった俺は、誰の影武者をすればよいのか分からなかった。


 いや、1人いた。


 この世界における救世主ともいえる存在が、俺と似た背格好をしていたはずである。


 黒い目に黒髪、背格好も比べればほとんど同じくらいであった、あの風変わりな代行者(・・・)という存在に。


 何か含むような表情をしているアドルフ枢機卿が、ようやく口を開く。


「君が影となるお方は…」


 ごくりと、背筋が俗吏とする感覚を堪えながら唾を飲む。


「代行者、ウル・シイハ様だ」


 この時、俺は断ればよかったと心の底から思った。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 夜も更けてきてはいたが、ギルド本部にいる幹部たちは教皇庁へ迅速に移動して会議場に集まっていた。


 既に教会側は準備を整えて待っていて、遅れてきたことの謝罪と早急な対策案に善処すると伝える。


 末席に今回の報告をしたウルが座っていたが、必要以上の発言をする気はないようで、会議が終わるまで終始沈黙を保ったままであった。


 教会側にいるアドルフ枢機卿に伝えている通りに事が運べば、この会議はすぐに解散されるだろう。


 あとは教会側で事を詰めていけばよい話である。


「今回の歪討伐には…代行者様にお出陣していただく。

 そして、ギルドには首都ヘルツィカイトの警備をお願いしたい」


 アドルフがギルドに一方的に伝えると、ギルド側で衝撃が走っていた。


 代行者の情報を秘匿していた教会側が、簡単に情報を開示してきたのである。


 教会側で何か起こったことは大小様々な組織があらゆる手を使って調べていたが、分かったことといえばこの世界に何かがやってきたという、漠然なことしか分からなかった。


「その、代行者…様というのは?」


 ギルド幹部の1人が口を開くと、大司教が厳かに答えた。


「我らが信仰している神が遣わした、この世界の神罰の代行者、といった所でしょうか。

 そのお力は1人で万軍に匹敵するお力を持ち、この度の上位歪の侵攻にも、我らの犠牲を憂いて1人で出陣するとのお言葉を頂きました。

 代行者様のお力は凄まじく、その巻き添えに遭わないためにも、今回の討伐は代行者様自らが行うとのことです」


「…そう、ですか」


 それからは終始ギルド側は他に出来る事が無いかと色々な案を出して言ったが、ヘルツィカイトの治安維持意外にすることがないと分かり、落胆しているようだった。


 ギルド側はこういう時こその冒険者組織だという自負があったのだが、教会側の意向を無視するという訳にもいかないので、その言葉に従った。


 会議は終わり、ギルド関係者は席を立ってその足でもう一度ギルド本部へ戻っていった。


 残った面子は全員が教会関係者。


 何が面白かったのか、最後のギルド関係者が部屋を出て行った途端に笑い始めたウルに、アドルフが何か面白い事があったのかと尋ねた。


「…ふふっ、いえ、最高戦力が揃っていない以上は戦力足りえないという事はあちらも分かっているのに、死傷者増やすような発言ばっかりしているので、何を馬鹿な事を言ってるんだ、と思ったんです」


 ブリンドという最高戦力の1人はいるが、他の黒ランクの冒険者たちは各国で現在依頼をこなしている最中で心許ない。


 ギルド本部の質は確かに良好ではあるが、かといって死傷者が大量に出ることは間違いないといえた。


「…実際、いても邪魔だからあなたたちの騎士団も下がらせてください。

 見学したいのならしても構いませんが、命の保証はしませんから」


 これを聞いたファレルや他の騎士団長たちが眉を潜ませたのだが、ウルは気付かない振りをしてこの後どうするかの協議に入った。


「そうですな…代行者様が会ったというその獣人の2人と話が出来れば、教会側としてはアヴァロンの横暴に対して何らかの一手は打てるじゃろうて」


 リオンとジュリーの話になると、アドルフが積極的に協力を申し出た。


「私としては、あの2人に将来獣人の国の再興をさせようと思っているのですが…困ったことにヘタレのようで、今もギルド本部で泣いていることでしょう。

 親の仇を討つ気概もない軟弱者です、話したところで時間の無駄ですよアドルフ」


 容赦のない物言いに、思わずアドルフ以外の者たちは息を飲んだのだが、アドルフはウルが本心でそのような事を言っているようには思えなかった。


 その時、会議室の扉からノックがする。


 許可を出すと門番をしていた騎士がアドルフの元へいくと、獣人の2人がウルに面会を求めているというのだ。


「…これは代行者様の読み通りという事なんじゃろうかの?」


 訝しるアドルフだったが、ニヤニヤとしているウルの表情から、期待通りの結果が現れているのだと確信しているようだった。


 そのままこの会議室に連れてくるように指示を出すと、急いで戻っていく騎士を見送る一同は、どこまでがウルの計算なのか、そら恐ろしいものを見る目をしている。


「さて、ヘタレ返上くらいの気概になっていればいいんですが」


 連れてこられた2人は先ほどまで泣いていたのか、跡がくっきりと残っていたが諦めなどをはじめとしたネガティブな感情を払拭しているようだった。


 …試す行為はあまり好きじゃありませんが、合格ですかね。


 にやけていた表情を消すと、厳しい表情をして2人に向かってきつい口調で問いかけた。


「…それで、何か答えは出ましたか?」


 教会関係者とウルのみの会議室で、何故ギルド所属のウルがいるのか不思議に思ったリオンだったが、状況を察したのか、すぐに考え込むと自分なりの答えを出した。


「僕は復讐じゃなくて、未来のために戦いたいんです。

 その為に、僕に戦い方を教えてください」


 自分の力ではあの上位歪たちに太刀打ちする事など出来ない事を、リオンは自覚していた。


 家族を、仲間たちを失ったことは哀しくて辛いが、それでも前を進むことを決意した、強い目をしていた。


 ジュリーも同様なのか、力強い目をしていたのだが、ウルが見た限りでは、2人の力は平均よりも大分上だろうが、それでもまだ上位歪には勝てないだろうと推察する。


「…まあ、復讐とかはあまり健康的ではありませんしそれは構いません。

 2人とも適当な席に座って近日中に来るだろう歪たちの情報をここにいる皆さんに分かるように伝えてください。

 …あと、戦い方についてはまた別件です、後にしてください」


 やる気が見られただけでも十分だと理解したのか、近くにあった席に2人が座り込むと、たどたどしいがウルたちにも分かり易いように手ぶりも含めた正確な情報が伝わっていった。


 上位歪を筆頭に、ウルが倒したベルグリザード、鬼のような特徴を持ったファブッターデイモン、全身を岩の表皮を持つロックシュラングンといった歪から、下位にはワルドラットまで伝えた2人は、おそらく数は1000に達すると推測した。


 その数にほとんどの者たちは驚愕の声を上げていたが、ウルとファレルは別段驚いた様子が無く、教会関係者たちが静まるのを待っている。


「…そういえば、リクエスト聞きたいんですけど、どうしましょうか?」


 突然ウルが話をアドルフに振って、びくりと震えたアドルフが何をする気なんだといった顔をしていた。


「リクエスト…といわれると?」


「ほら私って代行者じゃないですか?」


 リオンとジュリーの2人はどういう事なのかと不思議そうな顔をしていた。


 リオンたちは生活のほとんどを山で過ごしてきていたらしく、ここ最近は近くにある里などには下りていなかったらしい。


 ウルが代行者といわれても、特にぴんと来ないのだろう。


「はぁ…それで?」


「神様の遣いらしく、光の魔法とかで歪たち倒した方が士気とかが上がったりしませんか?」


「…代行者様は、水や氷の魔法を使われるのでは?」


 調べていた情報では、ウルが使っていたのは水系統の魔法だったはずだとアドルフは思ったのだが、調べられていたことに対して不快感を示さずに、ウルが違うと答える。


「確かに、特に使っているのは水系統ですね、治療系の魔法が多いですから。

 補助としては闇属性も使いますけど…神の遣いが闇系統の魔法を使うというのはいかにも外聞が悪くないですか?」


 ウルは軽く流すつもりだったようだが、他の者たちはそうはいかなかったようで、ウルが2種以上の間を使うことに驚いていた。


 眠気もやってきたのか、瞼が重くなってきたのを感じたウルは驚いている者たちを無視して、そのまま話を続けていく。


「とりあえず実戦まで使うのに少々不安があるので使わないだけです、一応言っておきますが、私の使える系統は全部で8つです。

 その中に光系統の魔法があるので、それを使って神の遣いらしい荘厳…言ってて恥ずかしいですね、そんな魔法で片を付けようと思うのですが、教会側は如何ですか?」


 個人的には、『この場を白に満たせ(ヴァイスンゲライヒ)』を大規模展開させたりして歪たちを氷の彫刻にするといった方法や、ベルグリザードを倒した時のような闇系統の魔法で倒してしまえば楽なのですが、デュケイン様はおそらく満足しないでしょうしねえ。


「…私をこの世界に送った神の性格上、代行者の威光を知らしめるような、そんな衝撃的な状況をお望みのはずですから、こちらの方が教会側としては良いと思うのですが?」


 正確に言うと、面白い事しないと後々面倒なだけなんですけどね。


 それを聞いてか、アドルフは一も二もなく賛成して、大司教や司教たちに指示を出すと、騎士団長4人とリオンたちを残して出て行った。


「…さて、じゃあ私は帰ります。

 そこの2人も私と一緒に帰りますよ、部屋は余っているから今日は泊まっていきなさい」


「えっと…いいの、ですか?」


 ジュリーが不安そうな顔をして聞いてきたが、ウルは気にせずにリオンにも言った。


「どうせ今日寝泊りする事なんて考えていないのでしょう?

 私が泊まっている月下亭は値段が高いから高ランクの冒険者しか寝泊まりしないんです。

 本当は先輩に任せたいのですが…先輩の泊まっているところ知りませんしね」


「あ…ありがとうございます!!」


 別れてからはそのまま解散という流れだったので、ブリンドに任せる訳にもいかなかったのである。


「あ…代行者様、影武者の件なのですが、本日決まりましたので挨拶に…」


「眠いから嫌です、歪を倒す前にもう一度ここに来ますから、その時に会います」


 有無を言わせずにアドルフたちを黙らせ、ウルたちは教皇庁から出て行った。


 止めようと思ったが、アドルフたちは断念する。


 せっかく事がうまく運んでいる最中に、肝心要のウルの機嫌を損ねる事は愚行というものだった。


 ウルは月下亭に戻り新たに1部屋を1週間分支払うと、リオンたちにお休みといって自分の部屋に戻っていった。


 リオンとジュリーはウルに感謝の言葉を伝え損ねたと落ち込んでいたが、明日の朝一で伝えることを決めて、部屋に入った。


「…これは」


「…あの子、部屋を取るときなんて言ったんだろ」


 2人が目にしたのは、大きめのサイズのベットがある、いわゆる夫婦が使うような部屋だったのである。


 2人は今更ウルに部屋を変えるように頼む訳にもいかず、枕を境界線代わりにして寝に入るのだった。


読んでいただきありがとうございます。

さて、第一章ももうすぐクライマックスですね、うんうん。


次回、『影武者と代行者』です。

ではでは、また次回まで。

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