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ハイル 救いの物語  作者: 夢落ち ポカ(現在一時凍結中)
第1章 お騒がせな代行者編
15/97

第013話 金獅子の思い(前)

誤字脱字がございましたらコメントよろしくお願いします。


少し遅れましたが、開演です。

 デュケインだよ、ウルを送って数日ほど暇だったんだけど、今日はほんの少しだけど暇じゃなかったんだ。


 というのも、どうやら女神がこの白い空間…管理者の間を奪還しようと、強力な歪を手当たり次第に送って来てるんだ。


「…とはいえ、僕より強い存在なんて片手で数える位しかいないから結局暇なんだけどなあ…どうしよこの後始末」


 歪を滅ぼすと、魔物だった肉体のみが残ってしまって、白い空間に大小100を超える数の死骸が転がっていた。


 準備運動にすらならなかったんだけど…まさかこれで奪還できるとかホントに思ってたのかなあの女神。


「…暇潰しにいい事思い付いちゃった」


 死骸の中から毒性のある魔物の身体だけを消滅させて、残った40近くの死骸を丁寧に捌いていくのはちょっと面白かったね。


「…本当は食べ物とかいらないけど、趣味で食べている神様とかいるんだよねぇ。

 とお様もよく食べてたし、ちょうど食材送って来てくれるんだし、有効的に使わないと」


 何もない空間に調理場を出現させると、デュケインは保存庫と書かれた物置に食材を適当に置いていく。


「…料理とかってしたことないから、結構いい暇潰しになるかもね。

 その内どっかの誰かが来るかもしれないし、ちゃんとしたおもてなし(・・・・・)しないと」


 近い将来くるだろう誰かのために、デュケインは包丁を取り出すと、まな板に載せた魔物の肉をど真ん中から両断した。


「…ふふ、どう料理してやろうかなあ…」


 ちなみに、はじめて作ったのは魔物の一口ステーキだったんだ。


 結構おいしかったんで、また作ってみようっと。


 料理って面白いかも。


 …けどやっぱり1人なんだよねえ。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 2人の獣人を連れてウルたちは月下亭から少し離れた食堂にやって来ていた。


 ギルド本部で討伐証明の為に集めていた換金部位をお金に変えると、それを2人で7:3の割合で分けた。


 もちろんだが、ウルの方が分けた額は多かったので、財布の中は幸せ太りしている。


「…あのさ、奢ってもらって本当にいいのか?」


 青年と少女が申し訳なさそうな顔をしているが、ウルは気にする事は無いといい、ブリンドが遠慮するなと胸を張った。


「2人の分は私が払います、先輩は覚えていると思いますけど、私の分の支払い、お願いしますね?」


「ちっ、やっぱ覚えてやがったか。

 ただでさえ特別報酬も換金したやつと合わせて70万くらいだったのに…お前が食ったらどれだけ減るんだよ」


「ご希望でしたら財布を空になるまで食い尽くしてもいいですよ?」


「却下だっ!!」


 食堂に入ると4人席を探して座ると、注文を取りにやってきた少女にメニューを2人に渡して好きなものを選ばせた。


 遠慮しているようなので、仕方ないのでウルはメニュー表を見て左半分と答えると、ブリンドがやりやがったこの野郎と悪態をつきながら頭を抱えた。


 メニューは全部で60品目、更にいうと、メニューの左側には比較的に高い料理が大量に明記されていたのである。


「大丈夫ですよ先輩、ちゃんと残さずに食べますから、心配しなくてください」


「お前は俺の財布の心配はしないのか!!」


「もちろんです、先輩のお財布はこの程度ではへこたれません、私信じてます」


「依頼中にそんな言葉を聞きたかったぜこんチクショウ!!」


 30品となるとさすがにテーブルには収まりきらず、時間を見計らって再度追加で持ってくるとのことだった。


 4人は所狭しに置かれた料理を個々人のペースで食べていった。


 2人の獣人は最初こそ遠慮するように食べていたのだが、余程空腹だったのかかきこむ様に食べていく。


 時間をかけて4人は食べても食べても片付かないテーブルと格闘を重ね、一部の気づいた客からは拍手があがっていた。


 ウル以外の3人は満足したのか幸せそうな顔をしてお腹をさすっている。


 ウルは残った料理を黙々と完食していき、サイドメニューにあったデザートも追加注文した。


 ブリンドはもう何も言わずにいたが、目の前に座っている2人からは小さなウルの身体にどうやって入るのか気になっているようだ。


「…ごちそうさまでした」


「ようやく食い終わったのか、ったく時間かかり過ぎだぞウル」


「奢ってもらうご飯は美味しかったのでつい」


「…次からは折半だからな」


「新人の冒険者にたかるんですか、酷い先輩ですね」


「…お前、今回の依頼でいくら儲けた?」


「140万近くでしたっけ?」


 金額を聞いた二人が驚いていて、近くにいた客も思わず振り返っていた。


「140万って、どれだけの歪を狩ったんだよ」


 青年が思わずきつい口調でウルに聞いてきたのだが、ウルは特に気にせずに思い出しながらブリンドに聞いてみた。


「騎士団の団長さんは158体と言ってましたけど…実際は200体近く狩りましたっけ?」


「だろうな、俺は途中からイラついているウルの被害を受けないために後ろで控えていたが」


「先輩が起こしてくれないから」


「普通はありがたがるもんなんだがなあ」


「一回やってみたかったんですよ」


「そんな理由で怒ってたのかよ!?」


 賑やかに話していくうちに再びブリンドが説教をはじめそうになったので、ウルが慌てて軌道修正をした。


「ところで、2人に聞きたいことがあるんですけど、良いですか?」


 耳をピクリと少女が動かすと、青年も思わず身構えるように構えた。


「…あれ、なんで臨戦態勢なんでしょうか?」


 首を傾げるウルに、ブリンドがお前は黙ってろと言って口を塞いだ。


「別にお前らの素性とかはどうでもいいんだ、とりあえずはどこら辺であのベルグリザードと遭ってこっちへ逃げてきたのかを聞きたいんだよ。


 ここで話せねえならギルド本部でしっかりとした防音設備のある部屋で聞いてもいい」


「……」


「……」


 結局、ギルド本部へもう一度行くことになった4人は、食堂を出る事になった。


 少しだけ友好的な関係になれたと思っていたウルは、突然塞ぎこむ形で黙った2人がどうして黙っているのかよく分かっていなかったが、ブリンドには何か思う所があるらしい。


 ギルド本部で部屋を借りると、以前と同じ2階の部屋で話すことになった。


「さて、私は何をすれば?」


「…書くもんあるからこれ書いてろ」


 筆記用具を渡されて、ウルは書記係になった。


 …遠まわしに喋るなって言われた気が。


 事実そうなのだが、ウルも相手が誰であろうとからかう性格を自覚していたので、素直に聞いておいた。


「僕の名前はリオン、こっちはジュリーって言います。

 僕たちは…ここから西の森を更に超えた獣人の国、シュトルンガルドとの境にあるコンサル山のある場所で小さな集落で暮らしていたんだ」


「ブリンド…さんは気づいていると思うんですけど、あたしたちは金獅子と…銀狐の一族なんです」


 ウルは2人が獣人の国でどういう立場にいた一族なのかおおよそだが把握できた。


 ブリンドは黙っている、とりあえずは好きなだけ2人に話させるつもりのようだ。


「3日ほど前、教会の降臨の塔から光の柱が現れる前の日に、山の近くに歪が急に出始めたんだ。

 父さんたちや皆、力のある戦士たちは生活の為にも多くの歪を倒していったんだけど…上位歪が僕たちでも抑えきれない位の数で山を越えようとしてきて、父さんたちは僕たち2人を逃がすために…」


 それから、ぽつぽつと喋っていく内に涙が出てきたのか、聞き取りにくかったがウルが聞く限りの情報を書きこんでいった。


 大人たちが抑え込んでいるうちに、2人は最短距離で教国へ行けるルートに進んでいき、普通に歩いても5日はかかる道を1日半で走り続けてきた2人はベルグリザードの追跡にあい、そしてウルたちと出会った。


 事の顛末(てんまつ)はこういう事だった。


 …なるほど、これはまた意味深ですね、3日前ですか。


 ウルは涙を流している2人と考え込んでいるブリンドをよそに、ウルがこの世界に来ていない頃に突然異常発生した理由を考え始めた。


 …時期的に考えると、私が来たと同時に教国に打撃を与えるためでしょうか。


 うまくいけば私と一緒に教会という大陸の信仰心と神への信頼に衝撃が走るでしょうし…しかし、タイミングが良すぎます、何か裏がある気が。


 考え込むがこの状況では何も答えが出せそうにないので、別の用紙を取り出してウル個人で必要事項を書き込んでいった。


 何か情報が更新できるようなことがあれば、何かヒントになる事が起きればと思ったからである。


 …まあ、今のところ心配なのはその異常発生した歪ですね。


 はあ、と息をつくと2人の涙が止まるまで待つことにしたウルとブリンドなのだった。



読んでいただきありがとうございます。


さて、お食事パートでしたね、特に描写はなかったですが、和気藹々と過ごせた様子でした。

2人の獣人さんたちのパートは、まだ少し続きます。


次回 『第013話 金獅子の思い銀狐の想い(後)』です。


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