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ハイル 救いの物語  作者: 夢落ち ポカ(現在一時凍結中)
第1章 お騒がせな代行者編
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第008話 2か月が待ち遠しい

誤字脱字がございましたらコメントよろしくお願いします。


 



「…ウル、何か聞いておきたい事とかないの?」


 あちらの世界に行く数時間前、デュケイン様が暇だったのか最後の調整をしている私に話しかけてこられました。


「何か…といわれましても、あちらの世界の必要最低限の読み書きは教えてもらいましたし、特にないと思うのですが?」


 することが無かったので試し撃ちとばかりに魔法を使っていたところを一旦止めます。


 話を聞くときには自分の手を止めて相手の目を見る、デュケイン様に教えられた礼儀の一つです。


 ちなみに出来ていなかった場合、容赦なくノルマが倍以上に増えるという恐怖政治が待っています。


「…くっ、何かネタがないかと振ってみたけど、ウルって基本マイペースだから相手の事とか考えないもんね…はぁ」


 失礼な、マイペースなのはデュケイン様ですよ。


「…あ、普通に言うことあった」


 思い出したかのように服から何かを取り出したデュケイン様は、取り出したメモらしきものをぱらぱらとめくりながら言いたいことを探しているようです。


「そ、そうだった、これだよこれ。

 ウルは元々この世界の住人じゃないから、子供は作れないのだっ!!」


 断言されました、はぁそれは確かに種として決定的に終わってますね。


 反応がつまらなかったのか、デュケイン様のテンションがマッハで下降気味です。


 この魔神様本当にマイペースですね。


 どうやらこの世界の『理』から外れてしまっている関係で、私は女性と何度いたしても子など生まれない存在らしいです。


 それを聞いてどうしろと、と思ったのですが、話はまだ続きました。


「えー、こういう時はさ、思春期の子供らしく『やりたい放題じゃんラッキー』くらいの反応とかしない普通?」


「この7日間私の何を見ていたんですか、と一応言っておきます。

 そもそも、元いた世界でもあり得ない(・・・・・)のに、やりたい放題もへったくれもありません。

 そんなことなら仕事しておきます」


「…うっわ枯れてるなあ…という事は、一人で?

 別に恋人作っても別に僕怒らないよ、ウル可愛いからきっと年上に好かれそうだしさ?」


 本当にヒマだったのか、まだ喰い付いてきますこの方。


 勘弁してください。


 こうして、デュケイン様のヒマ潰しに最後の数時間を無理矢理に付き合わされたのでした。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 ギルドから冒険者と認められた次の日、待ち合わせをしていたブリンドが一向に現れないウルにしびれを切らしたのか、寝泊まりしている月下亭に乗り込んできた。


「おいこらテメエウル!!

 後輩が先輩より遅い上約束の時間まですっぽかすたぁどういうわけだこらぁっ!!」


「……………すう」


 宿中に響いた怒鳴り声も、深い眠りについてしまっているウルには全く効果が表れているようには見られなかった。


「このっ、くっそガキがぁ……はぁ、なんなんだったく」


 ベッドにくるまっている布団を引き剥がしてぐっすりと寝込んでいるウルの再度怒鳴ろうとしたのだが、ブリンドの手が固まった。


「…う、さむぃ…あれ、先輩おはようございます」


「おめぇはなんでそんなかっこして寝てるんだ!?」


 ブリンドが騒ぐのも無理もないといえるだろう。


 ブリンドの目の前には、ウルが鎧を着たままの姿で寝ていたのである。


 ようやく起きたウルがブリンドを横切って洗顔しに隣の部屋に移ったのだが、慌てた追いかけたブリンドはウルに理由を聞く。


「おいウル、お前寝間着とか持ってねえのか?」


「買うの忘れてたので仕方なくこの状態で寝たんですけど…寝苦しくて寝るのに苦労しました」


 現在櫨染(はぜぞめ)月は季節的に言うと秋ごろであり、鎧を脱ごうにも鎧と同化してしまっていて、下着一枚では薄い布団で夜の寒さを凌げる気温ではないのである。


 仕方なしに着込んだ鎧は軽くて問題はないのだが、長時間寝込む状態というのは想定外の様で、次第に寝苦しくなって寝るのに時間がかかってしまったである。


 起きれば低血圧でもないウルの支度は早いもので、顔を洗い歯を磨いて準備体操をするとブリンドの待っている食堂へやってきた。


「…ったく、お前には生活能力っていうのがかけらもねえな。

 どっかの貴族みてえだぜ」


「私は貴族じゃないですよ、といいますか、この世界に私の知り合いなんて一人もいませんから」


「…そうか」


 相手はどうやらウルが家族もいない独り身という事を察したのか、この話は切り上げられた。


 …勘違いしてくれて助かります。


「おはようウル君、今日は朝から何か騒がしかったけど、何かあったの?」


 看板娘のシャニがウルに朝食を持ってきた。


 ブリンドも空腹だったのか、軽食を頼んでいたのだが何故かやってこない。


 遅く来たウルの方の料理が早いのに疑問を抱いたのだが、ウルの食べる量が途方もないので、すでに準備されていたのである。


 遅れてやってきたパンとスープを手早く食してウルの朝食が済むのを待った。


 山のような朝食をあっという間に平らげたウルは食器をそのままにしてブリンド共に月下亭を出た。


「ったく、こんなのが2ヶ月続くのか」


 朝から憂鬱とばかりにげんなりするブリンドだが、迷惑をかけたであろうウルは全く空気も読まずに落ち込んでいるブリンドを励ました。


「まあまあ、その鬱憤は歪に向けて晴らしましょう」


「いやお前の所為だからなっ!?」


 傍から見れば仲の良い友人二人と見えなくもないが、この関係は知る者がいれば真っ向から否定するような関係だった。


 からかう反応が面白いのか、茶化し続けるウルにブリンドの疲労感が次第に積っていく。


 ギルドに着いた時、冒険者からすればクエスト掲示板の依頼書が半分以下になってめぼしい依頼が無くなっている頃であった。


 残っていた依頼を探していると、掲示板の近くにある机に冒険者用の無料で配布される情報誌が置かれていた。


 表紙には、最近首都近辺で中位の歪が出没しているらしく、青以下の冒険者は注意するよう注意書きがされている。


 生存率を少しでも上げるためにギルドが広めているのだが、一部の冒険者は情報の有用性を考慮に入れていないようで、あまり減っていないようであった。


 ブリンドが情報誌を二人分とってウルに渡すと、中を確認しながら掲示板の依頼を眺めていた。


「…おいウル、この依頼いけるか?」


「『依頼:首都近辺の歪討伐 *最低10体以上、50体以上は別途報酬あり』ですか。

 いいですね、受けましょう」


 内容を確認してみると、依頼日数は20日以内と書かれているので、これならすぐに終わりそうだとウルも反対しなかった。


「よっしゃ、一人50体以上だからな、終わったら飲みに行こうぜ」


「飲むのは先輩に任せます、私は食べるの専門なので」


 依頼用紙をとると、受付に持っていくウルがそこで違和感に気付いた。


 先日までいた場所に、ブリッツでない人物が構えていたのである。


 人族のようで、何故か露出的なドレスで一部の冒険者の目をくぎ付けにしていた。


 制服などといった規定はないので何を着てもよいのだが、こういった挑戦的な服を常に来ているのは彼女くらいらしい。


「この依頼お願いします」


 誘惑的な胸にも無関心に依頼用紙を渡すと、女性はウルの甘い声でギルドカードの提出を指示してきた。


 依頼内容とそれに見合ったランクなのかを確かめるためである。


 依頼内容は緑以上となっていたので、茶である二人には全く問題はなかった。


 ブリンドのギルドカードは確認せずにウルのみの確認という事は、ブリンドの実力を知っているのが理由だろう。


「…あら、あなたランク高いのねえ、こんなに強くてかわいい子、あたしと会うの初めてじゃないかしら?」


「…ギルドカード返してくれませんか?」


 ブリンドをこれ以上待たせると再び怒鳴ってきそうなので、目の前の女性がウルのギルドカードを返すのを待っているのだが、女性は自己紹介してきた。


「あたしはこのギルドの受付嬢をしているミーネっていうの、あなたは?」


「…カード見ればわかるでしょう」


「あら、あなたの口から聞きたいのよ」


「おーいウル、いつまで待たせんだ、早くいこうぜ!!」


 返そうとしないミーネに苛立ちを覚えながら、後ろのブリンドが叫んでいた。


「…ウル・シイハです」


「あたしはミーネっていうの、よろしくねウルちゃん」


 何故握手をされた上に手の甲にキスをされるのでしょうか。


 ギルドカードを返されると、ブリンドの元へ戻ってどのエリアから歪を狩っていくのか相談することにした。


「ウルが前に歪を狩っていた場所ってどのあたりだ?」


「シリア方面です、少し開けた崖の辺りで襲い掛かられましたね」


「じゃあそっちは除くか、他は…ドバイ方面とアルミナ方面だな。

 用意を済ませたら西門で待ち合わせだ」


「分かりました」


 二人は一旦別れると、ブリンドは市場や道具へ向かっていくといいギルドから出て行った。


 ウルもギルドへ出て近道の為に裏道を使って市場へ向かおうとしたが、怪しい二人組に声をかけられた。


 冒険者のようだが、ウルは早く食料を買おうとしていたので二人組に対して露骨に不快感を示していた。


「よおガキ、ミーネさんにあんな態度無いんじゃね?」


「一度痛い目にあいてえようだなあおい」


「…はぁ、何なんでしょうかこのチンピラAとBは」


 チンピラと呼ばれて怒ったのか、Aは誰がチンピラだこらと怒っている。


 Bも同様で小振りのナイフを取り出した。


 どうやら幅の狭い場所でウルを傷めつけるつもりだったのか、確かにここでは長物である破軍は使えない。


 魔法を使って公共施設を破壊する訳にもいかないのである。


 とはいえ、二人は勘違いしていた。


 体術もある程度修めているウルは、武器が無くても格下相手に苦戦などしないのである。


 ナイフを鋭く突いてきたAの手首を横から素早く握りしめると、そのまま引っ張り鳩尾へ掌底を叩き込む。


 反応の遅れたBには喉元に手刀を一撃して前屈みになったところに膝蹴りを放った。


「ザコが少しは考えたようですけど、時間の無駄だからやめてください」


 時間に遅れるじゃないですか。


 そう言い残すと、悶絶している二人をそのままにして市場へ向かっていくウルだった。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 数十分後、食料や野宿用に使える道具を揃えたブリンドが最初に思ったことはこうだった。


「…そもそもあいつ、野宿とかしたことあるのか?」


 そう考え始めるとウルの生活感の無さを思い出したブリンドに嫌な想像しか浮かんでこなかった。


 可能性を出来得る限り考え十全に対処できる状態を保つのは過去傭兵として過ごしてきた経験として骨身に沁みた教訓である。


 そして、指導係としての役割も果たさないといけないこともあり、もしウルが素っ頓狂なものを持ち出してくればその一つ一つに対して万全の答えを持っていなければならないのだ。


 慌てて最小限の準備しかしていなかったブリンドは、念のために一週間分の食料や二人分の道具を揃えていった。


 そして万全の準備態勢で西門へ待ち構えていたブリンドは、準備ができたウルに荷物確認をした。


「ウル、何を準備してきたんだ?」


「食料はさすがに必要なので、干し肉や長持ちしそうな食べ物を買いました」


 正解である、味は確かに落ちるかもしれないが、長期のクエストなどで買い物ができない際には食糧事情というものが冒険者の精神状態を左右することもあるのだから。


「その他には、これを持ってきました」


 と、なんでも入る不思議バッグの中から出てきたのは…。


「…なんで枕なんだよ!?

 他にはねえのか!?」


 代えの服や救急キットといった道具を、ウルは何も持たずにやってきたのである。


 一体この数十分間一体何をしていたのか、ブリンドは怒るより先にウルに説教を始めた。


「依頼を受けるにあたってまずやることはだなあウル、準備を怠らねえことだ。

 依頼を完璧にこなすには、まず情報を集めて、それに必要なだけの…」


 …説教が長いです。


 門を出て討伐する歪を探し始めるまで、延々と説教をされるウルなのであった。



読んでいただきありがとうございます。

ブリッツさんは一旦退場、新たにクエスト開始です。

元の世界でも大丈夫だったのか怪しいですが、基本抜けた性格の主人公なのでご了承を。

て言いますか、いつの間にか腹黒系になってますよ主人公。

次回から投稿の感覚を開けていく予定です。

そして次回からは本格的に冒険スタート。

先輩に指導されながらですがw

ではでは、次回で。

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