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第二章・出会い
涼やかな風が、耳元で笑っている。嬉しそうに。楽しそうに。
全然楽しくなんかないと思いながら、嶺は一人、土手に寝そべってぼんやりと空を見上げていた。
空が青い。すべてを飲み込まんばかりの、紺碧の空。
「空は綺麗」
嶺はぼそりと呟いた。
「空は綺麗なのに、なぜこの世界はこんなに……」
最後は言葉にするのも虚しくて、嶺は静かに目を閉じた。
耳元でそよ風が笑っている。寂しさが募る。
昔からそうだった。周りの楽しそうな声が、自分には辛いものでしかなかった。まるで世界が自分をあざ笑っているかのように感じて。
いつだってそう。自分に本当に優しくする者などいなかった。大抵が偽善者だった。皆、心配するようなふりをして、心の中では嘲笑していた。
暗い考えが嶺の頭を侵す。耐え切れなくなって目を開けると、真っ青な空が飛びかかってきて、嶺はますます自分が孤独になってゆくのを感じた。