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路地裏の少女
嶺がサタンと契約をしたのと、ほぼ同じ時刻。
人気のない路地裏に、一人の少女が倒れていた。
彼女の胸には縦に長い切り傷が走っており、とめどなく流れ出る血液が、美しい銀色の髪を汚している。
傷口に添えた手の爪は驚くほど長く、血に汚れている様子から、この爪で自らを切ったのではと思われる。
そして宝石のような黄金の瞳からは、大粒の涙があふれていた。
「どうして?」
不意に、彼女が弱々しく呟く。
「どうして私は……」
涙に濡れたその瞳は、何も映し出していなかった。
まるで、この世界を見ることを拒むかのように。
「どうして……」
呟いて彼女は、意識を失った。
人気のない路地裏。
少女の残酷な運命の物語は、すでに、始まっていた。