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貴方、絶望したこと、ありますね
「貴方にも……あるんでしょ、望み。見えますよ、貴方の心の中。……黒い物がぐるぐると渦巻いていて…………貴方、絶望したこと、ありますね」
男の一言に、嶺は呼吸をぴたりと止めた。
絶望。その言葉が彼の胸を鋭く突き刺す。
男は言葉を続ける。
「そして貴方はこう願っている。……死にたいと」
「そんなこと、思って……」
「思ってますよね。わかりますよ。だって私、人の心が、読めるんですから」
黙るしかなかった。男の能力を疑う気は全くなかった。
死にたいと思っている、それは図星だ。
いや、死にたいというよりも、生きたくないといったほうが適切だろう。
どっちにしろ嶺は、この世から消えてしまいたいと思っていた。
「その願い、叶えますよ」
嶺は一瞬、自分を見つめる瞳の中に、自らの姿を見たような気がした。