第一話
俺はアリスにあった
あってしまったんだ
アリスは
今死んだ。
いま、目の前で
彼女は死にかけている。
だけど俺にはどうしようもない。
助けようとも思わない。
だってそうだろ?
首から天井まで血を噴き上げながらビクンビクンとのたうつ彼女には何をしたって無駄だ。
血塗れの顔をこっちに向けて、口を開けたり、閉じたりしている。
何いってるか
聞こえねぇよ。
さっさと死ねよ、
ばぁーか。
狂った眼から光が消えた。
12月に入るのを今か今かと待ち受けていた自治会のジーサンバーサンどもが駅前の広場にクリスマスツリーを飾り付けている。俺はすっかりクリスマスムード一色になった町を眺めていた。腰掛けていた噴水の端には何組かのカップルが乳繰り合いながらクリスマスをどう過ごすか念入りに計画を立てることに夢中なようだ。
退屈だ
そう、おもった。
今までそんなことを思ったことはなかった。退屈など感じる生活なんて送ったことがない。いつでも、俺は死にかけていたんだから。
肉体的にというわけではない。いや、ある意味で肉体的にも瀕死状態なのだが、どちらかというと精神的に死にかけていた。
だってそうだろう?
一日で3人殺したんだから。
明日は2人殺さなければならない。明後日は5人、明々後日は4人、弥明後日は8人、五明後日は……。
そんなことばかり考えて生きてきたんだ。退屈なんて、知らなかった。