7杯目 雑草でも花は咲く
7杯目 雑草にも花は咲く
暖かいお話になります!是非!
〜♩〜♫。
微かに聞こえる電子オルガンの音。
ゆっくり目を開けると見慣れた木製の天井、ベッドからむくっと上半身を動かしてカーテンと窓を雑に開ける。う〜ん。とベッドに仰向けになって全身を伸ばすと起き上がってスリッパを履く。寒い寒いと言いながら人工毛の部屋着パーカーにてを通してざっとチャックを上げるとだらだらと音楽が聞こえるリビングへ向かう。ざっと引き戸を開けるといつものようにレコードが回って母親の大好きな戦場のメリークリスマスの主題歌のミスターローレンスが流れていた。悲しい曲ではあるが、母親はいつも暖かい気持ちになるのと嬉しそうに話す。
「母さん、おはよ。」
「おはよう。ご飯ちょうどできたから食べなさい〜!今日は卵焼きがうまくできたの!」
「あぁ。分かった。いただきまーす。」
味噌汁を啜り、白米を一口。卵焼きに手を伸ばすと大根おろしを乗せて口に頬張る。
「うん。美味しいね、卵焼き。」
「でしょ〜!マヨネーズを入れてまろやかにしてみた!」
「そうなんだ。」
最近、母親は物忘れが増えて来た。僕はまだ13歳だが上の兄は24歳になる。若年生の認知症と最近診断されたようで、いつ僕を全く覚えられない日が来るか不安な僕はピアノが好きな母親のために3歳から習い始めたピアノをやめる相談をした。やめる理由は2つ。まだピアノが好きなうちにピアノを気持ちよく辞めたいのとやりたい音楽ができたこと。ストリートラッパーに憧れて休みや学校終わりに総合駅へ行きラップを聞いて回ってる。思春期だからこそ語れるラップがあると思う。人生を語るラップは泥臭くがむしゃらにパフォーマンスするラッパーがかっこよかった。
「母さん。実はさ、ピアノの発表会でミスターローレンスを披露することになって今練習をしているんだよね。」
「そうなの?!絶対に観に行くよ!いついつ?」
「2月9日。でさ?その日を最後にピアノをやめることに決めたんだ。いいかな?」
「もちろん、いいわよ〜!良かった、やりたいことが見つかったのね。」
涙を滲ませながら僕を見る母親はなんだか申し訳ないような気がした。
発表会が終わり母親は歓喜極まって泣きなら僕を抱きしめた。母親を満足できたみたいで良かった。それから僕はピアノの知識を活かしてラップを作るようになり、中学生ラッパーとして注目されるようになった。僕の才能に惚れ込んだ先輩方が曲を作って欲しいと言われるようになり、プロデューサーのようなこともするようになった。
「私、ファンです!あの、なんでラッパーの名前じゃないんですか?」
「考えてなかったなぁ、、。う〜ん。じゃあ、グラスにしよう!英語で雑草という意味。」
「雑草ですか、、。グラスってい響き、カッコイイです!!」
「そう?良かった。」
それからグラスとしてラッパー活動をするようになった。
15歳の冬。
もうすぐ3年が経とうとしたある日。
今日も所属グループと相手とのバトルを繰り広げていた。今日もやり切ったと気分よく片付けをしていた時。大柄な男性が僕に声をかけて来た。
「グラスさん。アイドルグループに興味はありますか?本格的なヒップホップのアイドルグループをデビューさせたくてスカウトにきました。」
「アイドルですか。」
雑草にも花が咲く雑草もある。
縁の下の力持ちのような立ち位置だったのに花が咲く雑草だとは。
これも何かの縁かもしれない。
いかがでしょうか?
癒されるような物語の印象を持たれたらいいなと思います。




