1杯目 郷に入っても郷に従わない
三日月珈琲。
コーヒーを飲み終えると月が見えるのだそう。
実話をもとにしたエッセイ風の短編小説になります。
コーヒーが好きで飲みながらサクッと読める短編を目指してます。
3月10日。妹が東京の就職が決まり私は妹と逃げるように妹に着いて中部から関東へ引越しをした。
実家暮らしはとにかく窮屈で親の顔色を伺いながら親をまるで子供の相手をするように機嫌を取るのが”本物”の子どもである私と妹の役目だった。私の両親は、親からの愛を貰わなかった。だから私たちも愛を貰うことは無く、両親は幼少期や青年期に親にもらえなかった愛を子どもから要求をしていていて不自由な生活だったからと自由な生活を送りながら、構ってもらえなかったからと、私たちには過保護に構うのが成人してもなおあった。機嫌を崩すと暴力と暴言が飛び交う。泣くことも許されないような生活を20数年ほど送っていた。これは窮屈な生活ではないだろうか。姉妹でよく話していたのが”ここを出よう”という夢がやっと一つ叶った。
引越しから数日。郷に入ったら郷に従えとかよく言うが、この町にきてそれはできないと悟った。せっかちに自分のことしか考えられない余裕がない人が多く舌打ちや暴言や小言の多い冷たい町で、このまま呑まれたらいい人生なんて送れないと感じ強い気持ちを持ち合わせ行こうと決意した。私は従えない。感謝すること、いい何処を見つけて伝えること、すると暖かい輪が広がる。それは地元で学んだ素敵なコミュニケーション術。冷たい町で、熱い意志で輪を広げようと毎日、身構えて生活をするようになった。
それから感じるのは、テレビをつけると地元の話題に敏感になって街にホームシックになって、スーパーに行けば野菜の少なさに驚いてホームシックになり、イオンモールが恋しくなるようになった。豊かな生活をしていたのだなぁ。そうかぁ。と感傷的になることもしばしば。
成人してから心疾患の診断をもらっている私は春と秋は重い症状で薬がないと生活ができなくなる。引越しがちょうど春だし想定より早く症状が出てしまい病院探しが始まった。
見つけた病院は昭和中期の映画に出てきそうなレトロな内装で受付を済ませて問診と診察と検査をしてもらい、「もし通院されるなら私に任せてください。」と逞しくも若い男性医師が話してくれた。「よろしくお願いします」と私は頼もしいなと感じ一つ目の私の居場所が生まれた。
憧れの書店があり、引越し前に履歴書を郵送して、1週間後に面接をした。その書店はポップが多く、本気で本を売りたいと熱意が強い書店で中学生の頃に読書が趣味の祖母に連れられて「ここは本が本当に好きな人しか来ない素敵な書店なんだよ」と教えてもらって通うようになった思い出があった。書店ならではの質問では好きな作家や作品の話をして、文豪が好きなのになんだか鼻につく印象を与えるかもなと瞬時に判断して最近読む現代作家さんの話をすると思ってた以上に深く掘られてしまいあまり中身のある話をできなかったのは後悔がある。
家族である妹は仕事で朝から日付が変わる夜中まで仕事をして帰ってくる。慣れない他人に囲まれる独りの時間は孤独と恐怖と不安が入れ混じることもある。一階に住んでるのもあるし夜はあまり眠れない。まずは職を見つけて、その後は友人を作らないといけないなと毎回、不安な気持ちを和らげるように自分に言い聞かせている。そんな中、良かったなと思うことがある。それは推しがいること。私にとっての推しとは、、会えないような雲の上のような人に好きという感情を抱くこと。まるで家族のように好きな声優アーティストだったり、同世代だけど努力して成長し続けるカッコイイ推しだったり。独りだけと独りじゃないかもなと安心できる拠り所に推しのみんながなってくれてるから推しがいなかったらより心細かっただろうなと思う。そして、人が1番いい。私はそう思う。
最寄りの駅の橋から見える大きな山々はエネルギーを送ってくれるようなどっしりと私を見つめてくれた。
終わりが見えない短編集になるので、長く投稿ができたらいいなと思います。よろしくお願いします。




