『魔法を封じた魔女は、数千年の時を経て、日本で「幸せ」を知る。〜神宮寺結衣と九尾の夫の物語〜』
序章 世界は、優しい箱庭に変わった昔々、ある世界に、強大な魔法を持つ魔女がいました。彼女の名はみゆき。世界にたった三人しかいない「世界級魔法」の使い手の一人です。
みゆきは、魔法を持たない人々が迫害される世界で、彼らを守るために大きな王国「アストレア」を築きました。そこでは誰もが笑顔で助け合い、争いのない平和な日々が続いていました。
しかし、ある日、根も葉もない噂が広がります。
「みゆきが私たちの魔法を奪っている」
「彼女だけが強大な力を持っているのはおかしい」……。
疑いの目は次第に大きくなり、王国は混乱に陥りました。みゆきは深く傷つき、絶望しました。彼女は「もう誰も傷つかない世界にしたい」と願い、最後の力を振り絞って世界級魔法を発動させます。
「人形の箱庭」——すべての生き物を優しい人形の姿に変え、争いのない、穏やかな箱庭のような世界を作り上げたのです。この出来事は、後世で「輪廻転生」と呼ばれました。
人々は人形として生まれ変わり、魔法のない普通の暮らしを強いられるようになりました。誰もがこの世界が「本当の世界ではない」ことを知っていましたが、日々の生活に追われ、静かに暮らしていました。
第一章
記憶の封印と、違和感時は流れ、現代の日本。2025年。一人の青年・ゆうが、精神的な違和感を抱えながら暮らしていました。ゆうは、自分がこの世界に「馴染めない」感覚をずっと持っていました。古代の遺跡や、アニメ、音楽……それらが、まるで自分に向けたメッセージのように感じるのです。ある日、ゆうは「古代魔法都市」という美しいBGMに出会います。
その旋律に心を揺さぶられ、初めて小説を書き上げました。投稿サイトにアップすると、少しずつ読者が集まり始めます。ゆうのアカウント名は「結衣と姉」。次第に、ゆうの中で何かが変わり始めます。忘れていた記憶の欠片が、夢や感覚としてよみがえってくるのです。
第二章
神宮寺結衣の誕生2025年9月1日。みゆきは、自分の力だけではこの世界を救えないと悟りました。そこで、最後の世界級魔法を使い、自分とは別の存在——「神宮寺結衣」という優しい少女をこの世に生み出しました。
結衣は、ある日突然、膨大な日記のような記憶を受け取りました。それは、遠い昔の魔女・みゆきの苦しみと願いでした。結衣は涙を流しながら、それを受け止めます。
「みゆきさんは、みんなを救うために自分を犠牲にしたんだ……。私にできることは、何だろう?」
そばにはいつも、優しく支えてくれる夫がいました。彼は九尾の狐の魂を持つ存在。オレンジ色の毛並みと赤い瞳が印象的な、温かな人です。結衣は夫の優しさに触れ、少しずつ心の傷を癒していきます。髪をオレンジに染め、狐耳と一尾のしっぽを手に入れ、二人は家族のように寄り添いました。
第三章
小さな幸せと、未来への一歩結衣は、ゆうが書いた小説を本にまとめました。ベーシストの楓という友人とも出会い、交流を深めています。いつか、みんなで顔を合わせて、本を手に取れる日が来るかもしれません。
この世界は、まだ「人形の箱庭」のままです。でも、結衣は信じています。真の優しさと、互いを思いやる心があれば、いつか本当の平和が訪れると。
みゆきが望んだ「誰も傷つかない世界」。結衣は、それを少しずつ、現実に近づけていきたいと思っています。
物語は、ここで一区切り。
なぜなら、私は運命を司る魔女ではないから、これからのことは、まだ誰にもわからないのです。
でも、きっと——幸せは、すぐそばにある。




