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「本当に誰一人わからないと?」
医者らしき人物が数人、彼の威圧に怯え、膝をついて謝罪している。
何この状況...。
*
声が、でない...?
そういえば、さっきから何も話していないような...。
「...この子はどうしたんだミア。」
「分かりません...?」
不思議そうに見つめてくるご主人様とミア。
「あのー、公爵さまぁ...
もしかして、話せないんじゃないですか?」
ドアの前のイーサンが私の状況を読み取ったらしい。
「...」
顔を真っ青にしているミア。
「...い...だ。」
「はい?」
「今すぐ医者を呼べ!イーサン!!」
「えっ!?は、はい!!」
ということで冒頭に戻る。
私は一人ひとり変わるお医者さんの診察を受けたのだが...誰も原因がわからないらしい。
「誰も話せない理由がわからないだと?お前らの頭はお飾りか?」
私が見つめられている訳ではないのに、こっちまで苛立ちが伝わってくる。
(何に対してかはわからないけど。)
「恐れながら、公爵様。お嬢さまが怖がっております。」
ちょっとミア何言っちゃってるの?注目の的がわたしに...!!
ていうかさっきから何も恐れてなかったじゃん!?
「「「お許しくださいお嬢さま!!!!」」」
医師たちが私に頭を下げてくる。
いやいやいや私に言われても...。
これって...私のために呼ばれた、んだよね?
「公爵様!お嬢さまは精神的なものと関係している可能性がございます...!」
勇気ある若い医師が話し始める。
それってストレスってこと?
ストレス...ではないと思うけど...。
何ていうか、話すと喉が〝きゅっ〟ってしまる感じなんだよね。
「治るのか?」
「...」
ちょっと!だんまりしないでよ!
ていうか...話せなかったら、私一生このまま...?
さーっと血の気が引く。
これじゃあ神殿をでてからやりたいことができない。
神殿をでたら、神に捧げる音楽だけじゃなくて、自由にたくさん歌を歌いたかったのに。
森の動物とか植物と話したかったのに...。
何より――怖い。
自分が何に対して怖いと思ってるかは分からないけど。
話せないことに、身体が抵抗しているような。
手の震えも止まらないし、嫌な悪寒がする...
とにかく怖い!!
誰か、助けて――!!
「お嬢さま!!」
ミアにぎゅっと手を握られる。
...あたたかい。
――手の震えが少しずつ収まっていく。
ミアってすごいなあ...。
ミアに読唇術が伝わるとは思えないけど...
これくらいなら...
『ありがとう。』
「お嬢さまっ...!」
わっ、急に抱きしめないでよ...。
でも、やっぱりミアってあたたかいなぁ...。
人肌って久しぶりだっ...。
もう少しだけ...。
「はぁ...もういい。とんだ時間の無駄だったな。
イーサン、次はもっとマシな者を連れてこい。」
「グラキエスが持てる最高峰の技術ですよ!!」
もう!と怒ったように、医者を連れて行ったイーサン。
「...お嬢さま?」
抱きしめていたミアの体温が少し離れる。
私は今どんな顔をしているのだろう。
体の震えが止まらない。
だって、――目の前に立っているのは...
やっと納得できた。
貴族会議に参加していた私が知らない貴族。
王国では珍しい花が、これ程でもかというほど咲いている庭先。
崖に続く、隣国に一番近い川。
ここは王国の敵国であり、目の前にいるのは――
帝国の皇家に続く公爵家、セオドア・グラキエス...!




