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飛び降りるって決めて30秒。やっぱり怖いよ!!!
つい後退りしてしまう。
「んぅ?」
「!」
メイドさん起きちゃった!?後退りの音か...。
どうしよう...!!
「ん...?えっ、お嬢さま...!?え、え?、って危ない!!」
あー、もうこうなったら...!
止めようとしてくれたメイドさん、ごめんなさいっ!!
私は勇気を出して(今度こそ)飛び降りたのであった...。
さよなら、走馬灯...。
*
空中で浮かぶのはかなり怖い。
でも、私も無謀で空に飛び込んだわけではない。
今回は崖のように岩はないし、地面とも近いから骨折程度で済むはずである。
地面についたときに治癒魔法で外傷を治し、門に向かって走っていけばなんとかなるだろう。
これくらいの小さな体であれば、すばしっこい可能性もなくはない。
...でも、この体って治癒魔法使えるのだろうか。
聖女は身体と心のバランスが大事である。そう習った気もしなくもない。
では、憑依(?)の場合は?
もしくは転生(?)の場合は??
これはもう駄目かもしれない...。
このまま捕まって屋敷の主人につかまるくらいなら、いっそ...。
静かに目を瞑った。
女神様、お許しください。二度目の人生(?)も上手くいきませんでした。ていうか同じ最後を迎えております。
そう思い、諦めていたのだけど......
不思議と地面が痛くないのである。というかむしろ柔らかくて、いい匂いがする。花の香りという訳ではないけど――
目が覚めると、そこには今にも人をやりそうな目をもった人がたっておりました。
私はその人の腕の中にいます。丁度ぴったりなスペースに。
これって、finにしたら私死なないで済むのかしら。
無駄に太陽光に当たっているからか、キラキラしている髪にどれだけ冷たいんだというほどの瞳。
に今私はガン見されているのである。凍てつきそう。
後ろにいる人は私を見てどういう表情をしているのだろう。
とにかく、顔がいいこの人に釘付けになるのは許して欲しい。
庭先にある美しい花が見えないくらいに。
あと本当に目が怖い。
「公爵さまあーーー!!お嬢様は無事ですかぁーー!!??」
びっくりした...!!
メイドさん声でかっ...!
ぴくっと、私を抱き上げていた人の眉毛が動く。
「ミア...声が大きい。うるさいぞ」
わお。声がかっこいい...!
いや、でも声ちっさ!聞こえる?
「すみませーーーん!!ていうかこっち来てくださーーーい!!お嬢様のお身体にさわりまーーす!」
メイドさん耳良すぎ...。
ていうか、音量変わってなくない...?
私を抱き上げている人はため息を一回つき......
私はなぜか見ていた景色からさっきいた部屋に瞬間移動していた。
「わっ!!?びっくりしたぁ。
もー、本当慣れないんですからやめてくださいよぉ。」
「お前が来いって言ったんだろ。」
「お前じゃないですー、名前がありますー。」
...これまでの行動を見るに、この子がメイドで主人がこちらの方ですけど...。
大丈夫なのかな...。
「ていうか!!
お嬢さまを返してください!目が覚めたら、私が一番最初に話しかけたかったのに!」
いや、まだ話しかけられてないんだけど...。
ほら返してとほぼ強制的に主人さん(?)の胸の中からメイドさんの腕に替わった。
「はーい、可愛いお姫様は布団の中でおねんねしましょうねー」
そういってベッドに連れていかれ、シーツをかけられる。
私そんなことされる年じゃないんだけど...。
やっぱり、走馬灯じゃなくてこの子の目にも私が幼女に見えるらしい。
認識阻害魔法くらいなら楽だったんだけど......身長的に無理か。
「あの怖い人に抱いてもらって怖かったでちゅねー、もう大丈夫よー。」
何も大丈夫じゃないし、死にたくないからやめて。
「あ、私はミア!あっちにいる怖い方は屋敷の主人でーす!」
怖いを連発しないで、お願いだから。
ていうか、ご主人様ってことは...ロリータコンプレックス...!?
どうしよう、死ぬまで監禁?それとも一生着せ替え人形に...!!
「勝手に寝かせるな。」
彼が一言発しただけで、一気に部屋の気温が下がる。
聖女だったときから怖い人の対応はしていて慣れたつもりだったけど、手の震えが止まらない。
今の姿が原因なの?それとも――
「ちょっと、公爵様!こんな可愛いお嬢さまに殺意を向けないで!」
と、私の後ろにあった枕を投げる。
そして枕は見事命中し...主人さまの顔から落ちた。
これ、死ぬ?
「...」
主人さまが私のところに近づき――しゃがんだ。
「......すまない。怖がらせるつもりはなか――「公爵様!!急にいなくならないでください!!探しましたよ!!!」
急にドアが開かれ、赤と紫と茶色が混ざったような色の髪をした眼鏡の男性が入ってきた。
さっき見た、主人様の後ろにいた人物である。
「...イーサン」
ご主人様がさっき開けられたドアの方向を向く。
...どうしよう、こっちを向いていないのに禍々しいオーラがこちらに伝わってくるんだけど。
「申し訳ありません、お嬢さま。あちらの無礼な者は公爵さまの補佐官のイーサンです。」
...とりあえず頷いておこう。
ていうかさっきから聞く、公爵様って...。
こんな顔の公爵は国にはいなかったはずだけど...。
「イーサン、後にしろ。そして今この瞬間から俺がいいと言うまで一言も話すな。」
そう言って、補佐官のイーサンさんは、諦めたように頷いた。
そしてご主人様は私の方を向いた。
「...すまない。あいつの顔が怖いのは勘弁してくれ。生まれつきなんだ。」
自分のことを言ってます?
イーサンさん泣きそうですよ?
そんなイーサンさんに容赦なく睨みつけるミア。
「...さて、こんな知らない奴らに囲まれて君も困惑しているだろう。私の名前はセオドアだ。こっちがミアで、あいつは...まあいい。」
イーサン泣きそうな顔でこっちを見ないで...。
そして、ミアも睨まないで?
「君は、私が残と......狩りをしていた途中に川岸で倒れていた。川に流れ着いたような跡もあった。そこから今は私の屋敷で過ごしてもらっている。」
(今残党狩りって言おうとしてた...?)
そんなことより、ロリータコンプレックスと言ってしまってごめんなさい命の恩人様。
この国にこんな優しい人がいたなんて...私、感激しちゃう。
ていうか、私川に流れ着いたってことは......どういうこと?
この体が川で洗濯でもしてたの?
...この子は誰?
「信じられないと思うが、君の名前を教えてもらえないか?」
私の名前...。えっと...とりあえず適当に...
「...どうした。」
「顔が真っ青ですよ、お嬢さま...大丈夫ですか...?」
心配そうに見つめてくる二人に返事ができない。
(どういうこと......声が、でない。)




