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一生報恩 万生摂理

作者: 尚文産商堂

「……これが遺言状となります」

親族一同勢ぞろいして、死んだ曽祖父が残した遺言状の検認と、開封を聞いていた。

検認自体は家庭裁判所で一通り済ませて、今は弁護士が持っている遺言状の内容を、家のリビングで聞いているところだ。

8畳和室を、部屋として区切っているふすまを取り外して50畳は優に超える大広間としている。

ところどころに柱があるが、それが邪魔にならないように座って、上座にいる弁護士の話をしっかりと聞いていた。

曽祖父の娘や息子の生きている人達だけで5人はいる。

さらに孫や俺の世代であるひ孫まで含めると30人は超える。

そのうち、娘や息子つまり子供世代に対して事細かく遺言状では遺産の分配を書き記していた。

俺の祖母も、しっかりと遺産の一部である株券と山を2つ3つもらうこととなった。

「……遺言状のうち本文は以上となります。最後に故人が遺言状の末尾に記した文章を公表いたします」

弁護士は遺言状の最後の部分を開いて、俺らに読んで聞かせた。

「……『君ら兄弟姉妹はよくよく遺言に従い、先祖からの家を絶やさぬようにせねばならない。さすれば家は安泰となるであろう。受けた恩義は必ず返し、いかなることも真理を探究せよ。人生は長い旅だ。一筋の光を誰にでも照らし、そのことを頼りとせよ。一生報恩、万生摂理。一燈照隅、万代道標』」

そこまで読み上げると、少し目を閉じ、弁護士はそれから遺言状の紙を最初と同じように折りたたむ。

「……読み上げは以上となります。なお、遺言状の通り、わたくしがこの度の遺言執行人として指名を受けております。皆様がよろしければ、このまま就任させていただきたいのですが、よろしいでしょうか」

「よろしくお願いします」

声を返したのは、喪主を務めていた長男の人だ。

俺から見たら祖母の兄にあたる人物が代表をしている。

俺の家の新しい家長にもなった。

「承りました。では遺言に関しては以上となります。相続人の方は、遺言状の中で名前を呼ばれた方についてはそのまま残ってください。後の方は、そのままこの部屋でお待ちください」

弁護士はとんとんと書類を机で整えてから、チラッと俺らのほうへと向く。

しかしすぐに相続人の人らと一緒に別室へと移動していった。

あの四字熟語の意味は分からないけれど、とても心に残った。

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