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8.実は便利?

 このゲームの記憶はあるし、辺りを歩きまわれば施設の場所や精霊の住処(すみか)がどこだったか思い出せそうだ。

 ゲーム画面越しとはいえ、場所は大体把握していたから問題ないと思う。

 俺が覚えていないのは、ライバルがどういう人物なのかということくらいだ。


 俺が素っ気なくしても、リバイアリスは親切だった。

 水の精霊は本当に性格が良いんだろう。だけど……親しくなりすぎてはいけない。

 ゲームの中ならば、恋愛エンドがあるということだ。

 俺は、精霊たちと恋愛エンドを迎えるなんてごめんだ。元の世界へ帰れるかは分からないが、まずはセオリー通りにノーマルエンドを目指してみようかと考えていた。


「以上です。何か質問はありますか?」

「いえ。特には」

「分かりました。また困ったことがあれば言ってくださいね」


 リバイアリスは俺の家の前まで送ってきてくれた。

 軽く頭をさげてから、家の中へ入る。


 家の中は薄暗い。電気のスイッチがある訳じゃないし、あるのはランプだけだ。

 ランプなんて付けたことはなかったけど、適当にいじって何とか明かりをつけることができた。

 少し歩き回ったせいか、お腹も減ってくる。


「腹が減った……けど、食べ物なんてあるのか? リバイアリスは毎日下級精霊が届けてくれるって言ってたけど……」


 部屋を見回すと、テーブルの上に食事らしきものが置いてあった。

 トレーの上に白いスープといくつかの素朴な見た目のパンとカットされた果物が乗っかっている。


「いつの間に……片付けもしてくれるって言ってたけど……」


 ゲーム世界のせいか、細かいところは都合よくできているらしい。

 俺としても何も分からない場所で自炊しろとか言われても困る。

 一応、一人分くらいなら作れるかもしれないけど……あくまで現代での話だ。

 

「……いただきます」


 俺は両手を合わせてから、木のスプーンを手にとりスープを一口飲んでみる。

 ポタージュみたいな感じか? 素朴な感じで悪くない。

 パンも一緒に持ってスープに少し浸してから食べてみる。


「美味しいんだけど……もう少し量があってもいいな」


 果物も見た目はリンゴみたいな感じで、一口かじっても似ている味がした。

 妙な味のものじゃ食べられないし、見た目どおりそれっぽいものなら助かる。

 なじみのある食べ物を食べると気分も落ち着いてくる。

 これでいきなりトカゲの丸焼きを食べろと言われたら……やっぱり戸惑っていたかもしれない。


 食事も早々に終えてから、部屋をもう少し見て回ってみる。

 室内着的なものもあるみたいだし、服を脱いでクローゼットへかけた。

 俺はベッドの脇に用意されていた丸首の白シャツと茶のハーフパンツを手に取って、部屋の奥に見えた扉を開けてみた。


「え……小屋みたいな感じなのに、シャワーとかあるんだ?」


 てっきり便利なものはないのかと思っていたが、何故かしっかりとお風呂らしきものが完備されていた。

 現代のような素材ではないけど、石と木の素材で作られたお風呂みたいだ。

 蛇口らしきものに触ると、暖かいお湯まで出てくる。


「仕組みはさっぱり分からないけど……現代人としては助かる」


 俺は色々なことを考えながら、身体を流していく。

 石鹸のようなものも用意されていて、身体と髪を綺麗に洗うことができた。

 香りも花の香りで、自然と緊張感も和らいでいく。


 身体を洗ってから、湯が張られていた石の風呂へ入る。

 ちょうどよい温度で、のんびりと浸かっていると身体もじわじわ温まってきた。

 これも下級精霊が準備してくれているのだろうか? 現代より便利すぎて困る。


「はぁ……よく分からないけど、とりあえずゲームを進めてみるしかないってことだよな。ビビッてばかりでも仕方ない。ここは腹を(くく)って進めてみるしかない」


 頬にぱしゃりとお湯をかけ、少し気合いを入れてみる。

 早くも適応でき始めている自分に苦笑いしながら、不安な心を必死に前向きにするよう切り替えた。

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