59.心を切り替えて、お手伝い
ラウディのした行為については、精霊使いと精霊の間で行われる行為ということで解決できそうだけど……ラウディが声を発するのはやっぱり深い意味があるってことか?
つまり、内部好感度によるって解釈になるのか……?
「ラウディ様は、ハルさんにどう思われても自分のお心に従うと決めたんです。ですから、ハルさんもハルさんのお気持ちのままでいいんですよぉ」
「でも、俺はラウディを悲しませるかもしれなくて……」
「だとしても、ラウディ様はそれも含めて選択されました。あっしは、ラウディ様がご自分で選択されたことを応援するだけですよぉ。ハルさんも、お心のままに行動してくださいですー」
「モグ……」
俺の決心が揺らぐようなことばかり言われてしまう。
どうせなら、俺がいなくなったら存在ごと最初からなかったことになってしまえばいいのに。
「ハルさんはもっとご自分のことを大事にしてあげてください。それに、ハルさんのことみんな好きだと思いますよぉ。ラウディ様のこと、たくさん考えてくださってるじゃないですかぁ」
「ごめんな、俺は自分のことばっかりだ。正直、迷ってる。でも、モグやみんなに話せることじゃないんだ」
「無理しなくていいんです。もし、ハルさんが話してもいいって思った時は聞かせてくださいねぇ。あっしでよければこうしていつでもお話を聞きますよぉ」
「モグ……ホントにありがとな」
俺は嬉しくてモグに頬擦りしてしまう。
モグはくすぐったいですよぉと言いながらも、俺のことを受け入れてくれた。
認めたくなかったけど、俺はこのラブスピ世界のことが好きになってきているんだ。
世界だけじゃなくて、モグやウルフたち下級精霊。
そして、少し面倒で個性豊かだけど根は優しい精霊たち。
みんなのことが気になっているから、自分でどうしていいか分からなくなりつつある。
それでも、俺は元の世界のことも諦められない。
俺がいるべき世界はここではないから――
「そうだハルさん。ここで会ったのもご縁ですし、あっしのお手伝いをしていただけませんかぁ?」
「もちろん。俺もモグに相談できて安心したし、ぜひ手伝わせてほしい」
「ありがとうございますぅ! では、行きましょうハルさん!」
モグは俺の肩の上にトトトっと走ってきて乗ってくれる。
俺もモグを撫でながら、気持ちを切り替えてモグと一緒にお手伝いの場所へ向かうことにした。
+++
モグが連れてきてくれたのは、一面畑の場所だった。
最初にモグと出会った畑だよな。
「今日はこちらの畑のイモモが収穫できそうなので、お手伝いしていただこうと思いましてー」
「分かった。芋掘りか……子どもの頃にやったけど、うまくできるかな」
「そうなんですねぇ! ハルさんは貴族だと聞いてましたが、珍しいですねぇー。芋掘りの記憶は思い出されたということですかぁ」
「へ? あ、ああ。うん。ええと、ほら慈善活動の一部みたいな」
しまった、ライバルのハルが芋掘りなんてするはずないの忘れてた。
俺の記憶を言ったらダメだよな。
慌てて言い直したけど、モグは信じてくれたみたいだ。
「なるほどですー。貴族の方も大変なんですねぇ。カティさんは確か平民の出身だとお聞きしていましたが、ハルさんはお家のこともありますし……」
そこまで言いかけて、モグは話すことをやめてしまった。
そうだよな。俺はきっと家に帰るだろうと思われてるよな。
「まだ決めてないんだけど……その時が来たらきちんと話す。約束する」
「ハルさん……分かりました! あっしもその時までハルさんのことを全力で応援してますからねぇー!」
「ありがとう。俺もモグのお手伝いを全力で頑張るよ」
俺たちは二人で頷き合って、協力して芋掘りをこなしていった。
結構大量に芋が掘り出せたから、後でバードに渡して美味しい芋料理を……じゃなくて、イモモ料理を作ってもらわないとな。




