46.改めて、買い物へ
ラウディは絶対俺のことを子ども扱いしてるよな。
まあ……なでられるのも悪くはないけどさ。俺たちの様子を見ていたウルフは大きく頷いた。
「ハルは少し落ち着くまでラウディ様の側にいた方がいいだろう。オレは主にもう少し説教してくる。主の問題は下級精霊であるオレの問題でもあるからな」
「そんな、ウルフは何も悪くないのに」
「まあ、慣れてるからいいさ。レリオル様は厳しいお方だが、鬼ではない。しばらく反省のためにカティに接近するなとかその程度だろう」
ウルフは自然と大人にならざるを得ないんだろうな。
ヴォルカングも悪気があるわけじゃなくって、早とちりしただけだ。
前は実際に嫌がらせをしていたわけだから、俺がカティの側にいることに対して敏感になるのも仕方ないのかもしれない。
ただ、命の危機になるようなことはしてほしくないってだけだ。
「その時は俺もアウレリオル様に事情を説明する。ウルフは悪くない、俺を助けようとしてくれてたって」
「それは助かる。しかし、また借りが増えてしまったな」
「そんなことない。俺のことを助けようとしてくれたんだからさ」
隣のラウディもうんうんと頷いて肯定してくれていた。
ウルフは嬉しそうに一吠えすると、またなと言って尻尾を振って去っていく。
そして、カティとヴォルカングを突くと二人を森の奥へ連れていってしまった。
この場には俺とラウディだけが取り残される。
別に嫌とかじゃないんだけど、さっきの出来事が思い出されて気恥ずかしい。
「あー……ラウディ。俺はこれからアイテム屋に行くところなんだ。ラウディは?」
ラウディは無言で指を差す。
その方向には……ラウディの住処があるな。もしかして家に帰る途中だったのか。
「もしかして、帰るところだったのか。モグはおつかいか?」
俺が尋ねると、ラウディは一度頷く。
モグも結構忙しくしてるよな。モグがいないとラウディとは話せないし面倒だと思ってたけど、意外と何とかなるもんだな。
どちらにしても俺とは向かう方向も違うし、ここでお別れだな。
「その……助けてくれてありがとう。また改めて……お礼しに行く」
ラウディはまた頷くと、俺の方を向いてひらひらと手を振ってくれた。
距離感が近づくと、結構普通にしてくれるんだな。
「うん。またな」
俺も手を振り返して、今度こそアイテム屋へと向かう。
金貨を稼がないと育成ができないっていうデメリットはあるけど、精霊に頼もうとすると結構時間を食うから自分でやる方が一気に育成できる。
効率厨になればお手伝い育成ループが確立できるってサイトで読んだから、俺もうまく当てはめてやるしかないな。
暫く歩くと怪しげな看板のかかった、こぢんまりとした丸太小屋が見えてきた。
アイテム屋のワンダーだ。
もう少し入りやすい雰囲気でもいいと思うんだけど……これも商人の趣味なのかな?
扉を開くとやっぱり奇妙な服装にしか見えない紫の服を着た、銀縁丸眼鏡のイケメンが出迎えてくれた。
「お、ハルか。なんや、色々大変みたいやな」
「大変って……そんな情報が回ってくるんですか?」
「商人は情報が大事ってな。そうや、記憶がないって言うてたけどなんか思い出したんか?」
色々大変って、ラウディが暴走したとかその辺りのことかな?
奇妙な言葉遣いがいっつも気になるんだけど、この人も絶対曲者だよな。
もっと詳細情報を調べておけば良かったんだけど……記憶にない。
「少しだけ。妹のことが気になっていて……暫く家に戻ってないから元気にしてるかなと」
妹は俺の妹の哩夢ではなく、ライバルの妹のほうなんだけど……ライバルが気にしていたみたいだし幸せになったのかどうかくらいは知ってもいいよな?
「ハルの妹さんかー……ハルは自分の家のことを思い出せたんか。なんやったっけなー……名前」
紫の商人は頭をかいているけど、思い出せないみたいだ。
そういえば、ライバルの正式名称なんてゲーム内で出てたか?
サイトでもライバルとしか書かれてなかった気がする。
でもライバルだって人間だし貴族設定なら、フルネームがないとおかしいよな。
モブキャラだからってスタッフがカットしたとか?
だとしたら、ヒドイ話だよな。




