37.珍しい組み合わせ
リバイアリスは水を集めると、今度は薄水色のリボンで結ばれた同じ色の布の小袋をポットの近くへ忍ばせてくれる。たぶん、金貨が入っているのだろう。
「忘れるところでした。こちらは先ほどユニコを手伝ってくださったお礼です。カゴの中へ一緒に入れておきますね」
リバイアリスの気遣いに対して、どう反応していいのやらだけど……焼き菓子とお茶は美味しかったし後でお腹が空いたらまたいただけばいいか。
俺が挨拶をしようとすると、先にリバイアリスが微笑しながら俺を優しく見つめてきた。
「それと……お嫌でなければ、私のことはイアリスとお呼びください」
距離を縮めないと言っていたけど、どうやらゲームでいう内部好感度が上がってしまったらしい。
お茶にお呼ばれするくらいだし、それなりに高いかもとは思っていたけど。
リバイアリスなら、いいか。変にベタベタされないだろうし。
「では……イアリス様。お茶とお菓子をごちそうさまでした。俺はこれで失礼します」
「ふふ……イアリスと呼び捨てで構いませんよ。ハル、お気をつけて」
「ハル、また来てね」
リバイアリス……イアリスとユニコに見送られて俺はまた歩き始めた。
カゴはそれなりの重さだから、金貨も思っていたより多くいただいてしまったらしい。
「あと手伝ったことがないのは、青い鳥の下級精霊とウルフくらいか」
「呼びました?」
「呼んだか?」
「わっ!」
俺が独り言を言った途端に、森の中から青い鳥と炎の毛を持つ狼が現れた。
もう少しでカゴをひっくり返すところだったが、何とか踏みとどまる。
すぐに驚かせて悪かったと楽しそうに笑う声が聞こえてきた。
「ウルフと……」
「記憶を失われてから名乗っていなかったかもしれません。あたしは風の精霊ウィンドライ様の下級精霊、皆さんのお食事を担当しているバードです。よろしくお願いします、ハルさん」
「ご丁寧にどうも。それで、ウルフとバードは何をしていたの?」
「ああ、主が薪割りをしていたんだがカティが来たから途中で放り出していなくなってしまったのだ」
いなくなった……デートでもしてるのか?
そういえば、おでかけに誘うっていうコマンドもあったかもしれない。
どうやらカティとヴォルカングの好感度はかなり高いみたいだな。
カティは炎の精霊と恋愛エンドルート一直線みたいだから、俺との好感度は自然と絶望的になるって訳だ。
「あたしとウルフだと薪割りはできないので、どうしようかと困っていたところなんです」
「そうなんだ。俺でよければ手伝うよ。ただ体力にはあまり自信がないけど」
「オレが薪を置くから、ハルが斧で薪を割ってくれると助かる。尻尾で斧を掴めればと思ったが、バードに危ないと止められてしまってな」
ウルフがジャンプすればできるかもしれないけど、なかなか難しそうだしバードの言う通り危なそうだ。
薪割りなんてしたことないんだけど……やってみるしかない。
「どこで薪割りをしてたの?」
「主の家の前だ。主は暫く戻ってこないだろうし、万が一戻ってきたら面倒なことにならないようにオレがすぐに伝えよう」
「分かった。じゃあ、一緒に行こう」
ウルフとバードは仲がいいらしい。ウルフの頭にバードがちょこんと乗っている姿は微笑ましいな。
二人の後についていくと、少し開けた場所に出る。
近くには岩山があって、ゴツゴツとした岩が転がっている。
「主はこの辺りで身体を鍛えるのが趣味でな。オレも一緒によく付き合わされる。ここが主の家だ」
ウルフが教えてくれた家は、石造りのがっしりとした家だった。
灰色で四角い家は、某ゲームの豆腐ハウスを連想させる。
「燃えない素材の家か」
「そうだ。だが、この辺りの夜は冷え込む。主がずっと能力を使い続ける訳にもいかないから、暖炉に薪をくべて暖かくするという訳だ」
「ルカン様はこの場所がお気に入りだから、住みやすい地域には移られないって聞いたけど……」
殺風景な場所が好みだなんて、ヴォルカングは変わってるよな。
まあ、筋トレが趣味ってことは鍛えることに関してはストイックってことだろうし。
俺が考えて悩むようなことでもないよな。




