22.図書館でお手伝い
俺は持ち込んだアイテムを順番に使用していく。
土を盛ったり、栄養剤をあげたりとやっていることは園芸の作業に近い。
ただ、アイテムを使用するとキラキラと光ったりする演出があるから見ていて楽しい。
「ふう……アイテムの効果が出るのは翌日以降だから、今日はこのくらいか」
肥料系は使い切りだと思っていたけど、スコップやじょうろも役目を終えると消えていくことが分かった。
やっぱりその都度アイテム屋で新しいものを買わないとダメそうだな。
「毎回仕入れてくれるんだよな? じゃないと俺は困るんだけど」
今まで溜めていた金貨はなくなってしまったし、まだもう少し時間がありそうだから今日も金貨集めをしたほうがよさそうだ。
「恵みの樹に一番近そうな場所は……」
ここから一番近いのは図書館か。
白い石造りの建物があって、建物の中に本がたくさん置いてある場所がある。
ちなみにアウレリオルがお気に入りの場所でもあり、ここに光の下級精霊がいる。
アウレリオルの住処もすぐ側にあって、白の大理石で作られた光輝く美しい建物だったはずだ。
「失礼します」
建物内に入ると、書物の乾いた香りがする。この香りは嫌いじゃない。
なるべく静かに進んでいくと、奥で本の整理をしているらしい羽の透けた可愛らしいフェアリーたちの姿が見えてきた。
彼らはいつもフェアリーの姿で作業しているけど、全員が魔法の力で一つになると人の形をとることができるという特殊な下級精霊だ。
図書館は恵みの樹の近くにある場所だったから、ゲーム内でもよくお世話になった場所でもある。
「こんにちは」
「本を読みに来たの?」
「手伝いに来ました」
三人のフェアリーがいるが、一斉に二人に喋られると誰に話しかければいいのかよく分からなくなる。
黄色い服を着たフェアリーがコッチコッチと招くので、大人しくついて行く。
「君は……ハル? ビックリしたー。図書館に来てくれるなんて」
緑の服を着たフェアリーが、透ける羽をはばたかせながら俺の周りをくるりと飛ぶ。
光の下級精霊だから、俺の印象はイマイチなのかもしれないな。
でも、冷たい態度というより興味津々って感じがする。
「今、机に積んでいた本をあっちの棚へ戻そうとしていたんだ。帯の色が一緒だから分かるかなぁ?」
「はい。この本だと青い帯だから……右から二番目の棚ですね?」
「そうそう。その調子!」
ピンクの服を着たフェアリーが元気に褒めてくれる。フェアリーたちは三人で一つの本を持って少しずつ本を戻しているし、時間がかかりそうだ。
「俺なら何冊か持てますから。この赤い帯の本は全て戻してきます」
「そう? じゃあ、お願いするね」
フェアリーたちと分担しながら俺はなるべく遠くの棚へまとめた冊数を持っていき、フェアリーたちには俺が届かない上の方の本をお願いした。
うまく分担できたみたいで、机の上に重なっていた数十冊の本は少しずつ本棚の中へ戻されていく。
何度目かの往復で机の上の本は全て片付いた。
「わあ、こんなに早く終わるなんて! レリオル様も喜んでくれるよ」
「いえ、フェアリーの皆さんがいたからこそです。上の方は俺じゃはしごがないと届きませんから」
「そうだね! 協力することは大切だってよく言われるし、ハルに手伝ってもらって良かった」
三人のフェアリーは俺の周りをふわりと飛びながら、口々にお礼を言ってくれる。
何だか、むずがゆい気分だ。
「そうだ、お手伝いしてもらったんだからお礼をしないと! 対価は大切!」
フェアリーたちが一斉に頷くと、三人が順番に俺の手のひらの上に金貨を置いてくれた。
よし、これでアイテム一個分くらいにはなりそうだ。
「お役に立てて良かったです。では、失礼します」
フェアリーたちにお礼を言って図書館を出ようとすると、ちょうど中へ入ってきた人物と目が合ってしまった。
「あ、レリオル様だ!」
「レリオル様ー! 本のお片付け終わりましたよ!」
「ハルに手伝ってもらったおかげです」
フェアリーたちはアウレリオルの側へ行って、口々に報告する。
アウレリオルは報告を聞きながら、無言で俺を見遣ってきた。




