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【全年齢】変わりモノ乙女ゲームの中で塩対応したのに、超難易度キャラに執着されました【本編完結】  作者: あざらし かえで
第三章 地道なお手伝いで金貨を稼ごう

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18.伝わってくるもの

 美味しい食事をいただいたし、片付けくらいはと思ってモグを少し手伝う。

 食器を運んだくらいだったけど、モグは喜んでくれた。

 モグとは自然と仲良くなってる気がする。実際に会ってみたモグは妙なしゃべり方だけどいちいち動きがぬいぐるみみたいで可愛いんだよな。

 犬や猫みたいな感じだけど、話ができるっていうのが大きな違いだ。コミュニケーションが取れるのはありがたい。

 土の精霊のグラウディは声を発してくれないため、モグがいないとシーンとしたままの状態が続くだけだ。

 なので、自分の行動や言動がグラウディに対していいのか悪いのか判断がつかない。

 グラウディと接するときは特に、モグの存在が俺にとってもありがたい。

 

 一緒に片付け終えると、モグは客室を整えてくると言って別の部屋へ行ってしまった。

 グラウディもまたハンモックに寄りかかって読書を始めたし、俺もぼんやりと考え事をするくらいしか暇つぶしはできない。

 モグを手伝いに行ければ良かったんだけど、お客様だから座って待っててくださいって言われちゃったしな。

 今も木のカップに入れてくれた甘酸っぱい果物のジュースを飲みながら、ぼーっとしているだけだ。


「あ……飲み終わった」


 思った声が自然と出てしまい、グラウディの読書の邪魔をしてしまったかと焦ったがセーフだったみたいだ。

 カップを置いてしばらくは今までのことを考えたりしていたけど、程よい温度と柔らかな木の香りに包まれているとどうしても眠気に襲われてしまう。


「ん……」


 目を擦ってみても、眠気の方が強い。結局モグの帰りを待つ前にゆっくりと意識が遠のいていった。


 +++


 優しい香りとさらりとした肌触りを遠くに感じる。

 無意識で身じろぎすると、少しずつ意識が覚醒してきた。

 ゆっくりと目を開けると、暗い室内にいるらしく身体はベッドに横たわっている。

 でも、どうしてこの状況になっているのか分からない。


「あれ、俺……ベッドで眠ってたか?」


 ぼんやりした意識で思い出してみるものの、グラウディの家で夕飯の後のお茶を飲んだあとの記憶がない。

 モグが準備をしてくれるのを待っていたら、眠くなってきて……。

 また、寝落ちした? ラブスピの世界に来てから寝てばっかりだな。


「ということは……わざわざ客室に運んでくれたってことか」


 起こしてくれれば自分で客室へ行ったのに……どうやら気を遣わせてしまったみたいだ。

 今何時なのかは分からないが、身体を起こして静かに部屋を出る。

 家の中は薄暗かったけど、灯りが漏れている部屋が見えてきたのでそっと扉へ近づいた。


 扉が開いたままだったところを覗き見するのは申し訳ないとは思いつつ様子をうかがうと、中に見えたのはグラウディだった。

 モグには俺を運ぶことはできないだろうし、ベッドまで俺を運んでくれたのはグラウディしかいない。

 お礼を言おうと扉をノックする。

 

「夜遅くにすみません。お礼だけ言おうと思いまして」


 グラウディはこちらを振り返る。

 モグは寝ているのか、灰緑の髪が俺の方を向いても無言のままだ。

 でも、俺の方を向いてくれたってことは話を聞いてくれそうだ。


「眠っていた俺をベッドまで運んでくださったのはグラウディ様ですよね? ありがとうございました。それだけ言いに来ました。じゃあ、おやすみなさい」


 頭だけ下げると、グラウディが椅子から立ち上がる。

 俺が首を傾げると、グラウディは木のカップを持って俺の方へ近寄ってくる。


「え? カップ……」


 渡されたカップは暖かく、ふわりと立ち上る湯気は甘い香りで鼻腔をくすぐる。

 リラックスできそうな香りだ。

 俺にカップを手渡すと、グラウディはまた部屋の中へ戻っていく。

 何を考えているのかやっぱり分からないけど、どうやら嫌われてはいないらしい。


 暖かいカップを手にゆっくりと客室へ戻り、ベッドの上へ腰かけてカップに口づける。

 

「甘い……」


 花の蜜が入っているのかな? 紅茶みたいだけど、一口飲むと優しい味がした。

 グラウディは何を考えているのか分からないと思っていたけど……行動や雰囲気だけで人柄って伝わるものなんだな。

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